初デュエルの次の日。
放課後になるといつも通りに慎二がやって来た。しかし、レオの姿がそこにはなかった。
「あれ? レオは?」
「ああ、アイツならユリウス先生に捕まる前に逃げたよ」
「逃げた?」
「何でも今日突然家の用事が出来たらしく、それが嫌で逃げた」
慎二が言うには、“二日もブレイブデュエルが出来ないなんて耐えられない!”とか言っていたらしい。
(あのレオがそこまで熱中するとは・・・・ブレイブデュエル、恐ろしい子!)
「まあ、いない奴の事を言ってもしょうがないさ、それよりも今日も行くんだろ?」
「ああ、今日も色々教えてくれ慎二先生」
「もちろんさ、この僕が教えるんだから、あっという間に一流デュエリストにしてやるよ」
慎二は上機嫌で言った。
どうやら先生と呼ばれたのが嬉しかったらしい。
そんなやり取りをしていると、一人の少女がやって来た。
「あら、楽しそうね。私も混ぜてくれるかしら?」
「げぇ! 遠坂・・・・・・・・」
金髪碧眼でツインテールの少女の名前は遠坂凛。
外見はどう見ても外国人であるが、れっきとした日本人である。
「それで一体何の話?」
「お前には関係な―――」
「慎二とブレイブデュエルの話をしてたんだよ」
「おい馬鹿! 何しゃべっているんだよ!?」
「ブレイブデュエルって・・・・ああ、そう言えば一般解放したんだっけ?」
「あれ? 凛ってブレイブデュエル知ってた?」
「ええ、私もテストプレイヤーよ。自慢じゃないけど全国ランカーなの」
凛は髪を掻き分けながら言った。
その姿に優人は思わず見とれてしまった。
「ユウもブレイブデュエルやってるのよね? それなら私が色々教えてあげるわ」
「ちょっと待ったーー!! 何勝手に話を進めてんだよ!」
慎二が叫び、優人と凛の間に割って入る。
「こいつは僕の弟子なんだ! お前の出るまくは無い!」
「え? あんたがユウを教えるの? 冗談でしょ? 私の方が分かりやすく教えれるわよ」
「何だと!?」
「何よ!?」
「ふ、二人とも落ち着いてくれ!」
何故か始まってしまった優人の先生or師匠の座争奪戦。
優人は二人を宥めようとするが、それに聞く耳を持つ二人ではなかった。
「よーし! それならブレイブデュエルで勝負だ!」
「ええ良いわよ。完膚なきに叩きのめしてあげる」
二人は揃って教室を出ていってしまった。
「ち、ちょっと二人とも! 待てよ!」
優人は慌ててカバンを持ち、二人の後を追った。
三人がT&Hに到着するが、開店オープンから二日目であるにも関わらず大盛況であった。
「あっちゃ〜これはかなり並ぶわね・・・・・・・・」
「しょうがない。コミュルームで時間潰すか」
「それならカードローダーに行きましょ」
「ん? どうしてだ?」
「あ、そっか、ユウは初心者だから知らないのね」
「一日一枚必ずカードが貰えるだよ。衛宮は初心者だから、来た時には必ず貰った方が良いよ」
「そうなのか、わかった。早速一枚引いてみる」
優人はカードローダーの所に行き、カードを一枚引いて戻った。
「何を引いたの?」
「えっと・・・・遠見の目」
「遠見の目か・・・・普通の補助スキルだな」
「効果は自分の回りの索敵、つまりレーダーみたいなスキルって考えても良いわよ」
「探索か・・・・バトルに役に立つのかな?」
「ブレイブデュエルはバトルだけじゃなく、様々な競技があるんだ。それはおいおい説明するよ」
「ねえ、ユウのアバター見たいんだけど・・・・良い?」
「良いけど・・・・シュミレーターはまだ空きそうにないよ」
「それならこれを使えばいい」
すると慎二は近くにあったテーブルを操作し始めた。するとテーブルが開き始めた。
「このテーブルは簡易シュミレーターになっているんだ。まあ、かなり小さいけど、それなりに遊べるんだよ」
「へぇー・・・・」
「感心するのも良いけど、ユウのアバター見せてよ」
「あ、ああ、わかった」
優人は凛に急かされながら、テーブルに自分のホルダーをセットした。
するとテーブルに自分のアバターが映し出された。
「へぇー、まるで陰陽師みたいだわね。クラスは・・・・キャスター? まんま陰陽師なのね・・・・」
「別にいいだろう。それよりも凛のアバターも見せてくれないか?」
「え? 私の? 別に良いけど」
そう言って凛は、自分のホルダーをテーブルにセットする。
するとそこに映し出されたのは、黒い髪に赤い軽装、赤い槍を持った凛の姿が映し出された。
「あれ? 髪の色が違うけど・・・・?」
「カスタムしたのよ。アバターなら髪や目の色とか変えられるし、それに・・・・ほら私の髪、金髪じゃない。そのせいで小さい頃苛められてね。昔から黒い髪に憧れてたのよ」
凛は少し恥ずかしそうに呟いた。どうやら凛自分の髪をあまり気に入ってはいないようだ。
そこで優人は自分が思っている事を凛に伝えた。
「うん、黒い髪も似合っているけど、凛の金髪も綺麗だと思う」
「な!? なに言ってんのよ馬鹿!!」
「ぐあ!?」
「衛宮!?」
凛は顔を真っ赤にして、優人にボディブローをぶちこんだ。
「まったく! 衛宮くんの癖に生意気なのよ!・・・・・・・・でも、ありがとう。この髪を誉めてくれたのは貴方ぐらいよ」
「ぶくぶくぶく・・・・・・・・」
「おい衛宮! しっかりしろ!」
「・・・・・・・・あれ?」
優人は泡を吹き、慎二は優人を抱きかかえ必死に呼び掛けていた。
その後しばらくして、優人は無事に息を吹き返した。
「はあ、死ぬかと思った・・・・・・・・」
「ごめんなさい・・・・つい力が入ちゃって・・・・」
「つい、で人が死ぬ所だったんだぞ! 反省しているのか暴力女!」
「ぐっ・・・・」
「まあまあ、大事に至らなかったんだし。それぐらいにしておけよ慎二」
「十分大事だよ! っていうか、何で僕がキレてんだよ!? ここは衛宮がガツンと言う場面だろ!」
「えっと・・・・取り合えず暴力はダメだぞ凛」
「うん、次から気をつける」
「それだけ!? それだけで済ましちゃうの!?」
「だったら慎二はどうするんだよ?」
「僕? そうだな・・・・あれくらいの事をしたんだ。ただでは済ませないね」
「ど、どうするのよ?」
「もちろん弱味に漬け込んで、あんな事やこんな事を――――」
「ふん!」
「のわぁ!?」
凛のボディブローが慎二に直撃した。
「あんた最低ね」
「うぐぐ・・・・衛宮・・・・こいつ全然反省してないぞ」
「ちゃんとしているわよ。ちゃんと生きてるでしょ♪」
「反省する所が違う!」
そんなコント染みた事をしていると、別の所から声が上がった。
「あーーー!」
「ん?」
「なに?」
「この声は・・・・」
声の方に目をやると、そこには全日デュエルしたレヴィという少女がいた。
「見つけたぞユウトン! あとチンジ」
「僕はオマケかよ! あと慎二だ!」
「どうしたのレヴィ?」
レヴィの後から小学生位の少女達がやって来た。
「あれ? リンに慎二に・・・・えっと」
「優人。衛宮優人」
「あ、初めまして、フェイト・テスタロッサです」
「私は姉のアリシア・テスタロッサだよ」
「えっと、高町なのはです」
「月村すずかです」
「アリサ・バニングスです」
少女達はそれぞれ自己紹介をしてくれた。
「私は遠坂凛よ。よろしくね」
「僕は間桐慎二だ」
凛と慎二も自己紹介をした。
話を聞くと、フェイトとアリシアもテストプレイヤーで、ロケテスト時に凛と慎二と知り合ったらしい。
「おいこらー! 僕を無視するなー!」
「え? ああごめん。それでなに?」
「だーかーら! この前のリベンジだユウトン! 前回は油断したけど、本気の僕が負ける筈が無いのだ!」
「わかった。その勝負引き受けよう」
「よーし! ケチョンケチョンしてやる!」
「あ、そうだ! 折角だからチーム戦をやってみない?」
「「「「チーム戦?」」」」
「ふ、ふ、ふ、このアリシアちゃんに任せなさい♪」
アリシアは不敵な笑みを浮かべた。
T&Hにあるスタジアムルームでは大勢の人で集まっていた。
司会役のアリシアはそれはもうノリノリで解説をしていた。
《さて今回紹介するのはこのスピードレーシングー!
各チョックポイントとターゲットを破壊してゴールを目指す競技です!
それではチームの紹介をして行きます!》
アリシアがそう言うと、最初に紹介されたのはフェイト達のチーム。
アリシアのハイテンションに、フェイトは恥ずかしそうにしていた。
次に紹介されたのがレヴィのチーム。
彼女は一人の為、残りはフレンドNPCと呼ばれるお助けキャラが使われていた。
《そして最後に! 新進気鋭の高校生チームです!》
「ど、どうも・・・・」
「精一杯頑張ります♪」
「アリシアも分かっているじゃないか。これこそが僕が求めていたステージだ!」
優人は緊張していたが、凛と慎二は慣れているのか、堂々としていた。
そんなこんなで紹介が終わり、作戦会議が始まる。
「作戦は単純に、ランサークラスの私とぐれリンがゴールを目指すわ」
「ぐれリンって・・・・あのやさぐれている凛?」
優人が指を刺した方向には、二等身で明らかにやさぐれている凛のフレンドNPCがいた。
「やさぐれは余計よ! あれでも優秀なんだから!」
「それはともかく、僕と衛宮でターゲットを破壊。遠坂とフレンドNPCはゴールを目指す。それでいいんだな?」
「そういう事。頼んだわよ慎二、ユウ」
優人と慎二は頷いた。
作戦会議も終わり、いよいよスピードレーシングーが始まろうとした。
《それでは各チーム位置について下さい!》
アリシアの指示に各チームは位置につく。
《それではスピードレーシングー! レディーゴー!》
アリシアの声を合図にスピードレーシングーがスタートされた。
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キャラ紹介
遠坂凛
月海原学園に在籍している少女。
金髪碧眼だが、れっきとした日本人。
その容姿のせいか、過去にいじめを受けた経験があり、その経験から黒い髪に憧れ、自身のアバターに反映させている。
ブレイブデュエルの腕前は全国ランカーに匹敵するが、よくポカをするのでなかなかランクが上がらない。
使用クラスはランサー、デバイス名はクーフーリン。