『究極!!変態仮面』の作者のあんど慶周様へ
勢いで書きました。申し訳ありませんでした。
今回の話も多分に気分を害する可能性がある描写が入っています。
二言で言っても、これはひどい、です。
読んでいる途中で気分が悪くなった場合は、戻るをクリックすることをお勧めします。
「むしゃくしゃしてやった、次回からは平常運転に戻す」
などとまたもや意味不明な供述をしておますが、次話からは通常運行に戻る予定だそうです。
通常運行がすでにひどい件、については、作者からは、
「おれが、平常運転だ」
とのコメントを受けております。
1995 晩夏 シベリア最前線
高級士官用の食堂で各々席に着いた各員の前に食前酒が配られる。
まりもはそれを見つめていた。先ほどの情報で今回の企みである大規模テロ偽装事件で自分がターゲットになっているのは分かっている。
自分たちを無力化する一番の方法何か?
一番は武器による制圧である。だが、それでは弾みで自分を殺すことになりかねない。ぞっとする話ではあるが、ソ連はまりもの生体サンプルを欲しているらしい。
ならばなるべく生きたままの捕獲が望ましいだろう。
となれば、非殺傷兵器による制圧か。これもまた難しい一面を持つ。衛士というのは鍛え上げられた兵士の側面も持つ。暴徒鎮圧用の非殺傷兵器では効果が薄い可能性がある。
可能性を潰していくと、この状況を最大限に生かした手を打ってくる可能性が高い。
つまりは、薬物による無力化である。ということは、目の前に配られた食前酒、これから配られるであろう食事、全てに薬物混入の可能性を疑う必要がある。
致死性の毒物ならともかく、無力化を目的とした薬物程度なら何とでもなる、とは思うが、これはまりもに限った話だ。
残りの2人、小塚夫妻に関しては致死性の毒物を盛る可能性もある。
どうするべきか考えるまりも。
自分1人だけ別の薬物を盛る可能性は低いだろう。となれば3人とも同じ薬物を混入してくるのでは無かろうか。などと楽観的な観測を行ったが、完全に0ではない限り出来るだけ避けるべきだろう。
そのとき、扉を乱暴に叩きつけるような音が部屋中に響き渡った。
「なんだ?」
高官は不機嫌そうな顔を浮かべると、扉の脇に控える男性兵に扉を開くように指示する。
高級士官用ということで、万が一の安全性を確保するために、内側から開錠しないと勝手に入ることが出来ないような仕組みなっている。ちょっとしたセーフティールームの役割を果たすようになっているのだ。
この辺りはソ連独自の設計と言うべきか、さすが粛清の嵐が吹き荒れる物騒な国である。
「どうした?」
扉を小さく開けて、部屋内の兵士が油断無く訪問者を迎え入れると、慌てて駆け込んだソ連兵が大きな声でこうぶちまけた。
「同士アモソフ、大変です作戦に重大な支障が!」
ぎょっ、となったのは、同士アモソフと呼ばれた高官だ。秘密の作戦に支障が出たのは大変だが、それを大声でこの席で伝えるとは。なんたる無様な。
アモソフが怒りの形相で報告を挙げた兵士を睨む。
「馬鹿者が、ここには日本帝国からの客人もいるのだ。場をわきまえろ。火急の知らせであれば今から執務室で聞く」
慌てて席を立ち上がろうとするアモソフ。だが、それは駆け込んできたソ連兵の声で中断される。
「その必要はありません、同士アモソフ。なぜなら、今ここで重大な支障が起こるからです!」
ソ連兵の一般的な装備を身につけ、ヘルメットを深く被った男の言葉の意味が、ゆっくりとアモソフの脳内に浸透していく。
突然の出来事にその席にいた全員が驚き、警戒の視線をその兵士に向けている。
いや、1人だけあきれたような視線を送っているものがいる。神宮司まりも大尉、その人だ。言うまでもない、彼女はこの小芝居の主演者が誰であるかを見抜いていたのだ。
バチン、と部屋の電気が切れるとともに、深い闇が部屋を覆う。
「な、なんだ!?」
「どうした!?」
浮き足立つソ連軍の関係者をよそ目に、まりもは小塚次郎中佐と小塚冷子大尉を急いで引っ張り部屋の隅へと避難する。
「どういうことだ、神宮司大尉?」
「どうもソ連の一部で我々第十三戦術機甲大隊に対する工作が計画されているようです」
「なるほど、そういうことか。さすが露助、やることが汚い。で、今の状況は?」
「これから分かると思います。それでお願いが」
「なんだ?」
言いにくそうにまりもが口をもごもごしたあと、
「これから起こることは秘密にしておいてほしいのですが」
「何でだ?」
「多分、潜入してきたのは立花伍長だからです」
と言った瞬間、納得した風に小塚次郎中佐は頷いた。
「なるほど、そういことか、それなら仕方ないな」
「ありがとうございます」
隆也だから、と納得されるのは少々複雑な気分であるまりもであったが、ここは理解ある上司と言うことで感謝すべきだろう。
部屋が暗闇に満たされていたのはわずか十数秒、慌ててたソ連関係者が暗闇の中とっさに室外に逃げだそうとしたのか、ばたばたと足音がしていた。
闇の中一ヶ所に人が集まろうとすれば、そこで起こるのは大渋滞と衝突だ。
「ぐあぁ!だれだ、私の鼻に頭突きをくらわせたのは」
「いて!スネをスネを蹴られた」
まりもたちが避難した位置とは対角線上に位置する出口は阿鼻叫喚の地獄絵図、とまではいかないまでのちょっとしたパニック映画さながらの光景が繰り広げられていた。
そして、闇が明ける。
「ふふふふふ、ふははははははははははは、はあはっはっはっはっはあ!」
光の中に、食台の上に立ち尽くす人影が浮かび上がる。
その姿は異形。
鍛え上げられた筋肉質の身体。それはボディビルダーの様な見せる肉体ではなく、徹底的に実戦に即した美しき肉体美。
その肉体を覆うのは数少ない衣類。
両足は扇情的な紫の網タイツで覆われ、股間は漆黒のブーメランパンツで隠されている。
問題はそのブーメランパンツだ。本来腰骨にフィットする部分をのばして、右端の部分を左肩に、左端の部分を右肩に通している。
そして、そしてなによりもその姿を異様にさせるのは、その顔をの部分を覆うパンティ。
会えて言おう、パンツではなく、パンティだ。
扇情的な赤を基調としたそのパンティ。非常にエロイ。そしてそのパンティが顔面に装着されているのだ。
その姿は異形、しかし何か人を引きつけて止まない、エロティックさがあった。
「悪あるところ光有り、闇あるところ正義有り。変態の使者、まりもんの使用済み勝負パンツ仮面、参上!」
「いやああああああああああ!」
まりもが大きな声で口上を遮った。
「むっ、なんだ、神宮司大尉。人の口上を遮るとは感心しないな。それと補足しておくと、ストッキングはゆうこりんのものだな」
「感心しないな、じゃないわよ!なによそれ、私の、私のパンティじゃない!」
「だから言ったではないか、まりもんの使用済み・・・」
「きゃあああああああああああ!」
またもや大音量のまりもボイスで遮られる。
「いわないで、いわないでよう・・・」
普段の毅然としたまりもしか知らない者がみれば、ギャップ萌えに目覚めかねないほどショックを受けて半泣きのまりもがそこにいた。
その姿にしばし呆然とした小塚次郎中佐だったが、
「神宮司大尉、お前、あんなエロイ下着を着けていたのか」
とつぶやいて、妻である小塚冷子大尉の突っ込みを頭に受けていた。ちなみにまりもはショックのあまり完全に沈没していた。
それとは別に、ソ連軍たちは混乱の極地にいた。
光がついた瞬間に外に出ようと扉を開こうとしたが、いっこうに開く気配がない。では、外部に連絡を取ろうとするが一切の通信機に反応がない。
そこにもってきて、この異形の人物である。もはや彼らの頭は困惑と混乱でいっぱいになっていた。
「貴様らの企みはすでに周知のものとなった。そして、計画に利用されたキリスト教恭順派の一派はすでに全員捕獲済みだ。それでもなお抵抗するというのなら、このMさんの勝負パンツ仮面が相手になってやろう」
「な、なんだ、何のことだ?企みだと、貴様こそ我が軍の基地でこのような勝手な振る舞い、絶対に許さんぞ!」
アモソフが毅然と言った姿とは遠い、何かにおびえるような姿で声を挙げるが、我らが変態仮面もといパンツ仮面はいっこうに動じない。
それどころか股間のパンツをごそごそとまさぐると、そこからどうやってそんなものをしまえていたの?という量の紙を取り出し、ソ連連中に向けて投げはなった。
「ひぃ、生暖かい!?」
「ち、縮れ毛がついている!?」
などと阿鼻叫喚に包まれる。
それでも何とか立ち直った大隊隊長がその紙面に目を通すと、そこには今回の日本帝国第十三戦術機甲大隊に対する工作の全貌が書き込まれていることに気づく。
「ば、ばかな、なぜ貴様がこれを」
今度こそ本当の驚愕に包まれるソ連の士官たち。
「正義は常に悪を見ている。そして、悪に裁きを与える」
格好良く決める我らがパンツ仮面、しかしその姿は変態そのものである。
「観念するんだな、貴様らの野望は潰えた!」
「くそっ、こうなればせめて神宮司大尉だけでも!」
アモソフが隠し持っていた拳銃を取り出し、対角線上にいる2人の上官をかばうように立ちふさがっているまりもに向けた。そしてトリガーを引こうとした瞬間、彼は気づいた。
先ほどまで鉄の感触を返してきていた銃身が妙に生暖かいことに。
そして妙に弾力に富むことに。
「残念だったな、それは私のおいなりさんだ!」
「ばかなあ!?」
そう、アモソフが銃を取り出した瞬間、パンツ仮面は一瞬にしてアモソフの側面に移動、そして彼が狙いをつけた一瞬を狙って銃を取り上げると同時に、自らのおいなりさんを握らせたのだ。
あまりもの早業。そして違和感をまったく感じさせない手さばき。どれをとっても人類の最高峰の技術だった。
「きさまらには少々お仕置きが必要なようだな」
片手に取り上げていた拳銃を、丁寧に折りたたみそれを床に放り投げる。
その折りたたまれた拳銃をみて、ソ連将校たちが目を剥く。
「では、これより正義を執行する、あ、姓技じゃないので、そのへんよろしく」
といった瞬間、それは始まった。
慌てて、背後にいる2人の目を隠すまりも。自分もそれを見ないようにする。
恐ろしく精神衛生上よろしくない光景が映し出されているに違いなからだ。
「ひぃぃぃぃ、やめろ、やめろお!」
「いやだああ、ママ、ママあああ!」
「柔らかい、柔らかいよぅ」
「生暖かい、人肌だあ!?うあああああ!」
「たすけ、助けて、私を私を誰だと思って、ぎゃあああああ!」
わずか数分で正義の執行は完了した。後に残ったのは、無残にも白目を剥いてぴくぴくと蠢くソ連士官たちだけ。
そして正義のパンツ仮面は姿を消していた。
「パンツ仮面、ありがとう」
「あなたの勇士は忘れないわ。ありがとう、パンツ仮面」
などとコントじみたやり取りをしている小塚夫妻を目に、まりもは1人がっくりうなだれていた。
そこには、せんきゅーまりも、と書かれた紙と、丁寧に折りたたまれたまりもの勝負用パンティが置かれていた。
かくして表に出れば一大外交問題に発展しかねない、第十三戦術機甲大隊に対するテロ偽装襲撃計画は未遂に終わった。
その外交カードを元に、第四計画の責任者である香月夕呼、そして日本帝国外務省が多大な利益を受けたことは、どの歴史書にも記されていない。
ちなみに、ぶち切れたまりもに隆也がボロボロにされたのも無論、記録に残っていない。一緒になって隆也をつるし上げた夕呼の記憶を除けば。