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マブラヴ 転生者による歴史改変 43話
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2013/06/16(日) 20:39公開   ID:I3fJQ6sumZ2
 「・・・いやな事件だったね」

 おれはそう呟きながら、詳細な資料が書き記された書類をシュレッダーにかけた。
 先週まで駐屯していたソ連の最前線基地で起きた事件の内容を詳細にまとめたレポートだ。
 無論表向きに発表されたものではない。裏の、真実を書き留めたレポートだ。しかも国向けではなく、おれ向けつまり第十三戦術機甲大隊所属特殊部隊の団長向けのものだ。その内容のおぞましさは押して知るべし。
 ちなみに表向きの発表、はキリスト教恭順派と一部それに同調するソ連軍の士官が最前線基地で蜂起、しかしその場にいた日本帝国軍の特殊部隊により瞬く間に鎮圧される、というものだ。
 事実は、キリスト教恭順派を利用したソ連の一部派閥の手による日本帝国軍へのテロなのだが、さすがに国際世論的にもそんな事が表に出ればソ連にとっては大打撃だ。
 しかもターゲットに選んだのが、世界の前線でいかんなくその実力を発揮し、まさに衛士中のまりもともよばれる神宮司まりもの身柄の確保、および、数々の困難な任務を成功に導いてきた第十三戦術機甲大隊の装備奪取となれば、最悪国連中の国々から総スカンをくらい今後一切の技術供与や、資源の輸入を止めるなどの制裁を受けかねない。
 裏で政治的駆け引きがあったことは想像に難くない。日本帝国軍側に一切の被害がないことや、ソ連が珍しく身内を庇わずに作戦に関与した高官などの引き渡しに応じたため、わりとスムーズに後始末は終わったらしい。
 まあ、これにより日本帝国はソ連に大きな貸しをつくることになったわけだが、アラスカにいる狸どものがそれを返すつもりがあるかはまったくもって謎である。
 でもまあ、裏の情報は国連の常任理事国クラスには流されているので問題はないはずだ。もしかりに踏み倒そうとすれば、それ相応の報いを受けてもらうことになる。

 「まったく、本当よ!隆也くんってば、最低!」

 お冠なのは言うまでもなくまりもである。テロ鎮圧事件以来おれに対する風当たりがきつい。
 帰国した当日なんかは、夕呼とまりもの2人にぼこぼこにされたくらいだ。
 おまけに自室を家捜しされ、隠し持っていた秘密のまりもコレクションと夕呼コレクションを奪われてしまった。ちなみに、これが一番堪えた。
 あー、おれの夜のおかずが。
 ぶつぶつ言いながら、おれと一緒に書類をシュレッダーに掛けるまりも。
 ちなみにここは国連軍に貸し出されている日本帝国軍柊町基地である。いちいち言い直すのも面倒なので、以降国連軍柊町基地とする。
 その一室、オルタネイティブ4計画の研究主任としてのおれに貸し与えられている専用の部屋で書類整理の真っ最中である。
 なぜかというと、訓練兵の教官をする間の教官室として、おれの部屋を使うことになったからだ。
 夕呼曰く、

 「良かったわね、これで仕事中も好き放題出来るわよ」

 とか言っていたが、けしからんな。言っておくがおれはそんなに不真面目ではないぞ。
 仕事中はきちんとするし、むろんセクハラだってする。え?セクハラは仕事ではない?
 またまた、ご冗談を。セクハラっていうのは伝統的なお代官様プレイに始まる日本の文化ではないですか。
 ちなみにただいまの暦は1995年10月。
 まりもによる日本帝国軍所属柊町高等部衛士育成学科の教導は明日からだ。
 それなのに今になって部屋の整理中?といわれそうだが、日本に戻ってきたのがほんの数日前なのだからしかたがない。
 おかげで、夕呼とまりもによってぼこられた傷がまだうずくぜ。

 「でもまあ、ずいぶんと変則的ではあるが、教官ということは、教師も同じだな。生徒たちを大切にしてやれよ」

 場を誤魔化そうとそう口にすると、まりもの表情がふっと柔らかいものになった。

 「そうね。出来るだけみんな生き残れるように導いてあげないとね」

 「おう、まりもんなら、きっといい教官になれるさ」

 「うん、そうなるように努力するわ」

 などと、場の雰囲気を和ますべく色々と苦労するおれであった。
 ちくしょう、何で自分の部屋なのにここまで苦労しなけりゃならんのだ。
 え?自業自得?はて、なんのことやら。
 ちなみにおれはおれですることは山ほどある。
 まずは、1992年にスタートした斯衛軍次期主力機開発計画である「飛鳥計画」。これがどうも行き詰まっているらしい。
 そもそもベースとなる不知火自体すでにかなりの水準の機体である。それをベースにするとなるとどうしても技術的な革新が必要になってくるのだが、それがなかなかできない。
 それもそのはず、革新的なブレイクスルーの殆どを帝国技術廠の小塚三郎少佐率いる開発室がすでに行っているからだ。
 そのため必死に、開発企業である富嶽重工と遠田技術が技術的革新を模索しているがそれがうまくいっていないらしい。
 で、ついに、小塚三郎さんに開発担当者が泣きついてきた。
 間の悪いことにそのときに、おれはソ連の戦場の空の下にいたので、すぐには良い返事がもらえなかったらしい。
 で、だ。おれとしては日本帝国の戦力アップになる話なので乗っても良いとは思うのだが、散々こちらの助力無用とか言っておきながら今になって泣きついてくるとか、さすがに少々しゃくにさわる。
 というわけで、小塚三郎さんには条件次第では手を貸すように提案してある。
 条件とは、開発の最高責任者を煌武院悠陽にすげかえるということである。
 今の将軍、まだまだ現役に居座るつもりらしい上に、次の候補者はなんと悠陽以外の五摂政家の人間が目されているらしい。
 それはいかん、それはいかんですぞ。
 なにせ、悠陽には早いところ将軍職についてもらって、一夫多妻制の導入を促進してもらわないと行けない。
 というわけで、裏で表で悠陽が将軍職に就くように現在暗躍しまくっているところである。その一環として今回の斯衛軍次期主力機開発計画を利用させてもらう。
 なにせ斯衛軍の将来を託す機体の開発に成功すれば、それだけ大きな成果としてアピールすることが出来る。
 現在の技術的課題などについては、小塚三郎さんが聞き出しているので、そのあたりの技術については幾つかストックがある。
 撃震参型用に用意していた技術を流用するのも良いかもしれない。
 柊町から世界に発信している様々な技術革新の影響で、この時代の工作レベルはかなり上昇している。
 ちなみに柊町の工作レベルに関しては世代が違う。多分2〜3世代は先を行っているんじゃなかろうか。
 産業スパイが必死に秘密を探ろうとしている見たいだが、そもそも技術情報の発信源からして秘匿しているので、柊町までたどり着くのはごく一部、そのごく一部も柊町の結界の前には手も足も出ずにすごすごと引き返している状況だ。
 鎧衣えもん、まじぱないっす。まあ、結界要員の育成には手を貸しているのだが。
 そういえば撃震参型なんだが、上から早いところ先行量産型を完成させろとせっついてくる。
 いや、設計図はすでに数種類用意しているのだが、言ってくる連中の態度が気にくわない。
 小塚三郎さんなんかは、いつも愚痴っている。偉くなったから色々と大変らしい。
 そうそう、その小塚三郎さんで思い出したのだが、小塚三郎の幸せを願う会からの刺客が、ついに小塚三郎さんから告白された。
 本人も小塚三郎さんが好きで志願したので、ほくほくだそうだ。今は絶賛ラブラブ恋愛中だとのこと。
 職場ではさすがに自重しているらしいが、仕事が終わると途端にいちゃラブ状態に移行するとのこと。報告は、小塚三郎の幸せを願う会所属の特殊観測員だ。
 ただ、本人たちの希望か、それとも刺客である相川雅奈の貞操観念故か、今のところベッドインはしていないらしい。
 見ていて実にほほえましい。
 そんなこんなで、小塚三郎さんも仕事はともかく私生活は充実しているようだ。
 それで話を戻すが、撃震参型なのだがどうするか。
 今のおれの欠点として、設計図が出来た瞬間にすでに完成されているということだ。そのため通常であれば、先行量産機ができて数年かけて調整していくべきところが、すでに完全に調整された状態で設計されているのだ。
 そのため、普通の戦術機の開発ペースを遙に短縮しているのだが、そのせいで上層部の感覚がおかしくなっているところが挙げられる。
 確かに現行の改修機であれば、ある程度短い時間でも完成するのだろうが、撃震弐型、撃震参型は、改修機という名の実質の新造機なみの改修が行われている。
 まあ、その当たりが周辺外国から異常視される原因なんだが。
 今のところ、ハイローミックスで、ハイを不知火、ローを撃震弐型でやっていこうと考えていたのだが、どうやらお偉いさんの中で、不知火開発に乗ってこなかった連中の中には、ハイを撃震参型、ローを撃震弐型にと考えているらしい。
 でもまあ、考えると日本帝国で今稼働している戦術機ってわりと種類があるよな。
 撃震、撃震弐型、先進撃震参型、陽炎、不知火、瑞鶴。しかも、F4の派生系である撃震、瑞鶴にしても、相当日本独自の仕様となっている。
 技術大国日本とは言え、このちっさな国でよくもまあ、これだけの種類を作り上げたものだ。
 しかも前線国家じゃないんだぜ、この国。
 まあ、おれがちょっかい出さなければ、今頃はユーラシア大陸東部戦線はかなりこっちによってきていただろうけど。それにしたって尋常じゃない様な気がする。
 そう言えば撃震を改修して撃震改にして海外に中古として輸出、その金で撃震弐型に機種転換。
 日本は最新機を配備でき、前線国家は実績のあるF4系の機体でなおかつ日本帝国の手により改修された撃震改を格安で手に入れることが出来るというWinーWinの関係を築いている。
 あれ、もしかして今のBETA大戦中の世界情勢って、ある程度日本が中心になって回っていないか?
 まあ、いいけど。

 「さて、と片付け完了。あとは私の資料を運び込むだけね」

 いらない書類をあらかた処分し、整理も終わったおれの部屋に、まりもがてきぱきと自分の書類を運び入れる。もちろんおれも手伝っている。
 あのソ連の前線での一件以降、おれが私物に触ることに関して極端に警戒するようになったまりもだが、さすがに仕事で使う書類などについては気にしていないようだ。
 ふふ、あまいな。
 やつら、あやし毛っていうのは、いつどこに潜んでいるかわからないのだ。そしておれはあやし毛すらもおかずに出来る猛者。
 もちろん、DNA鑑定してきちんとまりも本人のものであるということを確認してから使うけどな!
 等とかんがえていたら、まりもにやっぱり手伝わなくて良い、と目が笑っていない笑顔で告げられた。
 さすがは女の勘LV7、ハンパないぜ。
 そのあまりの鋭さに、すごすごと引き下がるのであった。

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