ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

ネギま!―剣製の凱歌― 第二章-第26話 京都決戦・参 白烏の覚醒め
作者:佐藤C   2013/01/28(月) 18:00公開   ID:9Cof9XyQbDA



「……な、なんとか逃げれた。奴はまだこちらに気づいていません」


 考えるより先にあの場を離れ、息も絶え絶えに刹那が言う。
 彼女達三人がいるのは、祭壇に繋がる桟橋の中腹――祭壇から30mほど離れた地点。
 ネギを抱えた明日菜は自慢の身体能力で、刹那は瞬動で難を逃れた。

 祭壇にはまだ、『石の息吹』の白い煙が満ちているのが見えている。


「……ハァ…ハァッ……」
「…ネギ、大丈夫?ひどい死にそうじゃない…」

「っ!! ネギ先生、その手…!」

「…だ、大丈夫。掠っただけです…」

 ネギは咄嗟に右手を隠した。
 それを見て刹那は、自分が目にしたものが正しかったと直感する。
 彼女には、ネギの右手が……指先から石灰色・・・に変わっていくように見えた。


(………ダメだ。きっともうネギ先生は戦えない…!)


 ネギは苦しそうに肩で息をしている。
 カモ曰く魔力は限界、今の様子を見れば体力も限界だろう。
 彼の魔力がなければ明日菜もただの一般人、戦力には数えられない。


(………もうこれ以上…二人を危険な目には遭わせられない)


 ……固く唇を結んで………このとき刹那は覚悟を決めた。

 今まで築き上げてきたものが、失われる感覚を味わいながら。
 彼女は意を決して口を開いた。


「……お二人は今すぐここから逃げてください。お嬢様は私が救い出します!!」

『…えっ!?』

 ネギ達はそろって驚きの声を出し、刹那は構わず話を続ける。

「お嬢様は千草と共にあの巨人の肩の所にいます。私ならあそこまで行けますから」

「で、でもあんな高い所までどうやっ――」


「なんや。まだごちゃごちゃやっとったんか」

 重なるように明日菜の声を遮って、千草の声が湖に響き渡った。


「ホンマは新入りに任せとったらええんやろけど…まあ丁度ええわな。
 スクナの力の使い方――あんたらで試したるわ!!」

『……なっ…』

 ――刹那達は絶句する。
 千草はそんな憐れな仔羊たちを、厭らしいくらい口角を吊り上げて嘲笑った。


「あ…明日菜さん!!早くネギ先生を連れて…!」
「え、で、でも!刹那さんは――」


《――オ………》




《―――――グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ァァアアアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!!!!!!》




 ―――ビリビリビリビリビリビリ……ッ!!


 空が、雲が、大気が。湖が、木々が、山々が、大地が。
 世界の森羅万象が、その音圧で割れんばかりに震動した。
 眠っていた動物たちは皆飛び起き、自分達の住処を捨ててこの山から逃げ出し始める。

 リョウメンスクナの鬼面が割れ、裂けた口から轟き出でるその絶叫。
 地の奥底から響いてきたと思わずにはいられない、圧倒的な暴威の雄叫び。「鬼神の咆哮」。

 ネギも明日菜も刹那もカモも呆然として動けない。
 「気圧されている」とは、この状態を言うのだろう―――。


「あっはははははは!!ええ面やなぁ!何を呆けとるんや!?そら…いきますえ!!」


 ――――ギュゴッッ!!


 膨大なエネルギーが、開いたスクナの口に収束・集約されていく。
 直径4mほどのその光球は、
 周囲の温度が数℃上昇した錯覚を覚えるほどの熱量と光を発し、湖を明るく照らし出す……!!


ぇえッ!!!」




鬼鬼哭吼砲キャカオオヅツ!!”





 ―――目も眩むほど巨大で強大なエネルギーの塊。
 まるで太陽が迫ってくるみたいだと……現実味のない気持ちで刹那は思った。

 真に強大な“力”の前では、人間は…抗う意思すら喪失する。

 自分達に向けられた不可避の暴力を、ネギ達は無抵抗で受け入れる以外なかった―――




「―――――――神鳴流決戦奥義」


 聞き覚えのある声が鼓膜を叩く。
 その声は確かな強い意志で、至大の暴威に剣を向けた。



真・雷光剣ッッッ!!!!!




 ネギ達に放たれた魔力砲撃に、“気”によって集束された巨大な電気エネルギィが衝突する。
 それらは一瞬だけ搗ち合い、せめぎ合い、喰らい合い。
 激しい衝撃波を起こして――――相殺した。


「わぁぁああああああああッ!!!」
「きゃぁああああああああああっ!!!」
「どわぁああああああああっ!!?」

 身を裂く突風にネギ達はおろか、離れた場所の千草さえも体を屈めて目を覆った。









     第26話 京都決戦・参 白烏の覚醒め









「………お前ら、なんで」

 この場に現れた二人の少女に士郎は驚きを隠せない。

「なに、楓が綾瀬に呼ばれてな。応援…もとい付き添いだよ」
「師父、そのオバケ達本物アルか!?」

 士郎の後方に見える河原の大岩に現れたのは、
 仕事道具・・・・のギターケースを抱えた真名と、中国拳法の達人・古菲。

(…おい、何でクーまで連れ…)
(そう心配しなくていい、こう見えて腕は立つ)

 士郎は念話で真名に苦言を呈すが、あっさり遮られる。
 無意識ながら"気"を操る古非は、戦闘力だけなら確かに一般人とは言えないが…。



《グォオオオオオオオオオオオオオオオオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ァァアアアアアア゛ア゛ア゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!!!!!!》



「……っおいおい…! 何だアレは……!!」

 耳を劈くその雄叫びに耳を押さえ、士郎の口から驚愕の声が漏れる。
 離れた位置に在りながら「ソレ」は……この場所からでもよく見えた。


 ―――二面四手の大鬼神、〈リョウメンスクナノカミ〉の姿が。


《……ほう、アリャ凄いわ》

 自分達とはケタ違いの霊格である"鬼神"の顕現に、
 軍勢の首領格である「オヤビン」も感嘆の声を漏らした。


(…クソッ!何で今までアレ・・に気が付かなかったんだ…!?)

 舌打ちしそうな感情を冷静に抑えながらも、士郎は僅かに困惑した。

 彼の疑問の原因は、スクナを目覚めさせた儀式によるもの。
 この山一帯に密度の濃い魔力が充満した事が、士郎の魔力探知を狂わせていた。

 そんな彼の焦りを感じ取ったか、あくまで冷静な状況判断か。
 真名は士郎に祭壇へ向かうよう促した。

「……これはまた、厄介なコトになっているな。
 ここは引き受けてあげるよ士郎さん。さあ、アナタはいくらで私を雇う?」

「…金取るのかよ」

「当然♪」

 薄い笑みを浮かべる少女に、士郎は肩を落として溜め息を吐いた。
 ……このとき彼女が見せた悪戯染みた笑顔は、士郎以外が見る事はできないものだと、彼は知らない。




 ◇◇◇◇◇



 衝撃波の暴風が次第に治まり、山と湖と祭壇に静寂が戻ってくる。
 凪のように穏やかな風が吹き抜ける中……一同は瞑っていた目を恐る恐る開いていく。


 そこには……野太刀を握る一人の男が、ネギ達の前方で桟橋に立っていた。


「…え…」
「あ、アレは…!」

「な………お……長………!!」


 震える声で、千草は彼―――近衛詠春を見て瞠目した。


「今のは……長が……!?……いや…そうか。せやな、当然や。
 十八年前にスクナを封印したんは、サウザンドマスターと……!」

「この私なのですよ天ヶ崎。ようやく理解しましたか」

 二ィッと不敵な笑みを深めて、鬼神を操る女を見上げた。


「………そ、そんな……!!」
「長さん…!」

 震える声を出したのは千草だけではない。
 刹那とネギも、明日菜に至っては声も出せずに顔を蒼白に染めている。

 ………詠春の左腕が、肩から先が無くなっていたから。


 ――ザッ…


「……随分しぶといね、近衛詠春。
 石化に侵された腕をまさか斬り落とすとは思わなかったよ」

 祭壇から桟橋に歩いてきたフェイトが、相対するように詠春と対面した。

「いえ、なに。また石にされて役立たずになるよりはマシでしょう?
 体が少しばかり軽くなって、鈍った身体には丁度いいですよ」


 軽口を言う詠春だが、虚勢である事は明白だ。
 自分の腕を自分で斬り落とすというその行為は、体力と精神力を著しく消耗する狂気の沙汰だ。

 ネギ達やフェイトからは見えないが、詠春の左腕の斬り口・・・近くには血文字で梵字が書かれている。
 おそらく何らかの術を応用して無理やり出血を抑えているのだろう。
 神鳴流剣士である刹那や詠春は本来、戦闘補助以外の陰陽術をほとんど修めていない。
 故に止血は不完全で、ポタリ、ポタリと、紅い雫が桟橋の床に滴り落ちていた。

 無茶で疲弊した精神に、無理を強いたその身体。
 これで平然としていられる人間など…いる筈もなかった。


「………刹那君」

「…っ!? は、はいっ!!」

 片手で野太刀を構えながら、詠春は背中越しに話しかける。

「私は長くは保ちません。…あの場所に居るこのかを救いだすには、君の力が必要です。
 ……お願い、できますか」

 どこか躊躇うような声色を滲ませながら、詠春は悲痛な面持ちで請う。
 刹那は、迷いなく是と返答した。

「…はい。元よりそのつもりです、このかお嬢様は私がお救い致します……! ………長…」


「……拾ってもらったあの日から、今日まで…………お世話になりました」


 その言葉に不覚にも目頭が熱くなるのを……詠春は何とか抑え込んだ。

「……その台詞は、全て終わってから受け取りましょう。
 私がスクナの気を引きます。君はその隙にこのかを!!」

「はい!!」

 そんな会話を耳にして、千草の心中は穏やかではない。


(チィ…まさか長がここまでやるとは…完全に舐めとったわ…!!
 「スクナの相手をする」?そんな事されたらどないなるかわからん!!)


「…なんぼ強くても今は手負いや、新入り!スクナの完全復活までまだ時間がかかりますえ!!
 何とかして長を抑えといてや!!」


 必死の形相で眼下の部下に叫ぶ彼女。
 するとフェイトは、依頼者クライアントに対し呆れた様子で不満を漏らした。


「全く…本当に困った人だね彼女は」



「手負いの獣ほど、怖いものはないというのに」


 視線の先に立つ剣士の威圧感を浴びて、フェイトは本心からそう思った。
 ……ただ、自分が詠春かれに負けるとも思わなかったが。


「さて、近衛詠春。僕を抜けられると思っているの?」

「止められると思っているのですか?」

 同時に、両者は駆け出した。




 ◇◇◇◇◇



 スクナの完全復活を目論む千草。
 木乃香を救うためスクナへの接近を目指す詠春。
 彼をスクナに近づけたくないフェイト。

 三者の思惑が交錯する中……彼女もこの時、行動を開始した。



「……ネギ先生、明日菜さん……私、お二人にもお嬢様にも秘密にしていたことがあります……。
 …この姿を見られたら…もうお別れしなくてはなりません」

「え……?」

 ネギと明日菜に背を向けて、…自分に言い聞かせるように、刹那はそう口にした。

「でも今なら………あなた達になら…………!」


 刹那が背中を丸めてかがむと………異様な事に、彼女の制服のシャツが勝手に・・・まくれ上がる。
 それはまるで………、何かに押し上げられるように・・・・・・・・・・・・・――――。




 ―――――羽根が舞う。

 月の光に照らされて、舞い散る羽根が光を放つ。

 山々に囲まれた湖。晴れ渡った夜の三日月。輝き踊る白い羽根。

 幻想的な光景に、二人はきっと魅入られている――――。



「………あ……」

 ネギと明日菜は唖然として、その光景に目を奪われる。


 ―――刹那の背中に現れたのは、一対の白い翼だった。



「…これが私の正体……。奴らと同じ……」


 「犬上小太郎」。
 彼は人間と大差ない姿でありながら、狗の耳と尾を持つ少年だ。
 何故ならそれは、彼が人間と「狗族」の間に生まれた混血児であるが故。
 ……同様に、刹那は―――


「化け物です」


 桜咲刹那は、人間と「烏族」の混血児ハーフだった。


「あっ……で、でも誤解しないでください!お嬢様を守りたいという気持ちは本物です!!
 ………い、今まで、秘密にしてきたのは………」


「この醜い姿をお嬢様に知られて嫌われるのが怖かっただけ………!!」

「ふぅーん」

「ひゃっ!?」


 ――わしゃっ。もふもふ……さわさわ………


「あ、え? あの…………あ、明日菜さん…?」

 翼を好き勝手に弄り回す明日菜に、刹那は困惑しきった様子で問い掛ける。
 すると明日菜はそのまま……大きく腕を振り上げた。

「え…」

「………あんたは…何言ってんのよこの…ッ!バカチーーーーーーーーーーーン!!」


 ―――ばっちーーーーーーーーーーーん!!!


「きゃうっっっっ!!?」


 刹那の背中を思いっきり引っ叩いた。
 そりゃあもう強烈に乾いた音がしたと記しておこう。
 しばらく刹那の白い背中に赤い紅葉マークが残ったのは余談である。

「あ、明日菜さん!?何を!?」

 堪らず悲鳴を上げて涙目で刹那が抗議するが、明日菜はそれに答えなかった。

「あんたさあ、このかの幼馴染みで、その後も二年もずっと見守ってたんでしょ?
 ………その間、あいつの何を見てたのよ」

 刹那をじっと見つめて明日菜は、目の前の少女に呆れ果てていた。
 本当に……この友人は。

 ――――木乃香のことになると、どうしようもなく臆病だ。


「このかがこんなこと・・・・・であんたのことを嫌いになったりするって、本当にそう思うの?
 ホンットにもう…………バカなんだから」


 化け物とのハーフ? 羽根が生えている?
 だからどうした。

 ……確かに最初は…びっくりしたとか、驚いたとか、度肝を抜かれたとか―――そんな事を思ったかもしれないが。
 刹那を嫌いになるという思いは、明日菜の中に全く無い。
 それは木乃香も同じだろう。同じ友達を持つ仲だ。

 羽根があろうと何だろうと、桜咲刹那は自分の友達だと。明日菜は胸を張って言える。
 そんなことも分からない友人にその意思を示すように、明日菜はニカッと笑って言ってやった。


「それに…こんなの背中に生えてくんなんてカッコイイじゃん?」

「あ…………明日菜さん…………………。」


 烏族の里では、白い翼を持つ同胞―――『白烏』は迫害される。
 生まれた時から蔑まれ、忌避され……刹那は自らの姿を「醜いもの」と思っていた。
 …目の前のひとはそれを、容易く肯定してみせる。

 ずっと遠い昔から、多くの悪意に晒された。
 …その苦しみを消し飛ばす、たったひとつのその言葉。

 悲しくて、悔しくて、苦しくて…泣いた過去は数えきれない。けれど。
 刹那は今………「嬉しくて」涙が止まらなかった。


「…行って、刹那さん。私達が援護するから! いいわよねネギ!!」

「ハイ!!」

「グッドラック!刹那姉さん」

 ネギとカモも強く頷く。
 彼らは明日菜と共に笑みを浮かべて、刹那を空へと送り出す。


「…は…はい!!」


 その場にしゃがみ込み、刹那は翼を大きく広げて力を溜める。
 …飛び立つ前に、言っておきたい事があった。


「………皆さん。このちゃんのために頑張ってくれてありがとうございます」


 本当ならこんなこと、言う必要など無かった。
 彼らは木乃香にとっても刹那じぶんにとっても、信頼できる友達と仲間だ。礼などただの無粋だろう。
 ……だから、この戦いが終わったあと。

 ――――彼らと別れなければならないのが、辛い。


 …羽撃はばたく音が木霊する。
 数多の想いを振り切って、刹那は桟橋から飛び立った。





 ◇◇◇◇◇




 ―――バササッ…!!


「…!」

 岩をそのまま削り出したような、
 自身の身の丈に倍する大剣…『石の剣』を振るい詠春と剣を交えるフェイトは、
 その羽音を耳にして顔を上げる。

「アレは…成程。彼女は亜人種だったか…させないよ」

 スクナに向かって飛び立つ刹那を、フェイトが『石化の邪眼』で狙う。


 ――ぶんっ!!

 だが直前、聞こえてきた空を切る音。
 彼が視線を目の前の男に戻すと―――視界の端に、フェイトじぶんの頭上を山なりに越えていく野太刀が見えた。

(武器を自ら捨てた…?)

 詠春が、太刀を手放して放り投げた。
 ――その逡巡。一瞬だけ逸れた思考は絶好の間隙となる!!


「ッ!!!」

 ―――詠春の、瞬動。
 鋭い双眸を備えた顔が、フェイトの懐に入っていた。

 驚く暇もなく、しかしフェイトは驚きに目を瞠る。


(これが…腕一本落とした人間の動きなのか!?)


“―――神鳴流・紅蓮拳”

 "気"を纏った右拳がフェイトの腹に突き刺さる。

“烈蹴斬”

 前屈みになったフェイトの顔面を、気を乗せた膝蹴りで搗ち上げる。

“斬空掌ッ!!”

 突き出した右掌をフェイトの腹に当て、圧縮した気を零距離で放出する……ッ!!


 ―――ズ ドンッ !!!


 魔法障壁は密着状態からの攻撃に対し最小限の効果しか発揮しない。
 放たれた気の弾丸は一切の容赦なく、フェイトの腹を打ち叩く―――!!

(…近衛、詠春…ッ!!)


 怒涛の連撃に少年は為す術もない。
 彼は再び、湖―――桟橋から十数メートル離れた地点まで吹っ飛ばされた。


「…アーウェルンクス。私のこの二十年は衰えただけではありません。
 伴侶を得て…娘が生まれて、養息むすこができた。武器を放る戦い方は、うちの義息むすこ十八番オハコでしてね……!!」


 強かに笑みを漏らすと、詠春は刹那を追ってリョウメンスクナの下へ走った。



「………ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト。
 小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ。その光我が手に宿し、災いなる眼差しで射―――」

魔法の射手サギタ・マギカ光の一矢ウナ・ルークス!!」

 ―――バチィッ!!

 詠春の背中を狙ったフェイトの腕に、一条の光が直撃した。
 常に展開している障壁によりダメージは皆無だ。だが確実に詠春を行かせてしまう。

 フェイトが光の起点に視線をずらすと、震える体で杖を掲げる赤毛の少年が立っていた。

「…まだ戦意があるんだ。僕の足止めでもするつもりかい?」

 体を湖に浸したまま彼は、乾いた笑いを浮かべる少年達を見やった。



 ・
 ・
 ・



「さて……これからどうしようかカモ君?」

「…さあ、どうすっかな…。何も思いつかねえや……へへっ」

 この圧倒的不利に、ネギとカモは笑うしかない。

 対魔力が高いお陰か、ネギの右手の石化スピードは限りなく遅い。何とか戦闘は可能だ。
 しかしそれは動かすのがやっとであり、石化に伴って体力も消耗し続けている。
 魔力は辛うじて残っているが……今の身体でどこまで保つか………。



『ぼーや。聞こえるか、ぼーや?』



「「!?」」

 突如、ネギ、明日菜、カモの頭の中に同じ声が響いた。

 女性らしい高い声だが、同時にそして幼すぎる。
 何より彼らに聞き覚えのあるこの声は…。

「こっ、この声は……!」


『いつまでへばってるつもりだぼーや?まだ限界ではないハズだ意地を見せろ!!
 私がそこへ行く。あと一分半持ち堪えられたなら…私が全てを終わらせてやる!!』


 ―――その声は紛れもなく、勝利の女神の囁きだった。


『さて、先達からアドバイスをくれてやろう。
 ぼーや、貴様の戦い方は戦略や戦術ばかり…小利口に纏まり過ぎてあまりに脆い。今からそんなんじゃナギあいつには追いつけんぞ?
 偶には後先考えず突っ込んでみろ!!ガキならガキらしく、後の事は大人に任せてな!!』


 『彼女』の参戦に、明日菜の顔に希望が浮かぶ。
 力が戻った強い眼をして、彼女はパートナーの名前を呼んだ。

「…ネギ!!」

「……すぅっ…ふぅ―――〜〜………」

 荒れる呼吸を整え、ネギは深呼吸して精神こころを落ち着かせる。


 …覚悟は決まった。勝機は見えている。射した光明を逃しはしない。
 この「一分半」……全力で凌いでみせる……!!


「……アスナさん…行きます!!」
OKおーけぇッ!!」



「…来るのかい。では相手をしよう」

 湖の上に浮遊しながら、フェイトはネギ達の奮起を見て戦闘態勢に移行する。


「流石に少し、目障りになってきたからね」

 そう口にして、虚空瞬動で宙を駆けた。




 ◇◇◇◇◇



「ははっ、神鳴流のひよっこ!アンタまさか烏族のハーフやったとはな!!
 けどそれがどないしたんどすか!?」

「く…っ!!」


 ―――ギリッ…ギリィッ……!!


 軋む音は、スクナの四つ腕が全て塞がっている事による。

 肩から伸びる前腕の両手に……巨大な二つの弓を構え。
 背中から突き出す後腕の両手が、弓に張られた弦と共に魔力の矢を引き絞る。
 すなわちふたつの弓張り月―――。



双破月ソウハゲツ




 ―――ガシャァアアッッ!!!!


 スクナが矢羽根を手放すと、弓と矢の擦れる音が周囲に轟く。
 太さの直径3mはあろうかという光輝く特大の矢が、空を舞う刹那を正確無比に狙い撃つ!!

「――はぁっ!!」

 翼を翻して急速に切り返し、何とか刹那はその二射を回避する。

 しかし今の彼女は空を飛んでいる、避けたからといってそれでは済まない。
 音速の矢が大気を走れば風が発生し気流が乱れる。
 翼で風を掴めなければ、刹那に訪れるのは「落下」の二文字なのだ―――。


 ―――ギリギリギリッ……!!

「……っ!!」

 既に"次"が、刹那に狙いを定めていた。


「矢は周りの魔力を掻き集めて作っとるからなァ、弾切れはありませんえ!!
 射てやリョウメンスクナノカミ!!当たるまで何度でも!!」

 ――――ボッ!!


「―――うおぉぉおおおおおっっ!!!」


 臆する暇も怯む間も無い。考える時間があるなら逃げろ…!!
 そう自分に言い聞かせ、刹那は最大速力で今いる空域から離脱する。
 直後、後ろで空を切る音がして、吹きつける暴風に刹那の飛行が乱された。


「くぅあ……ッ!!」


 体勢を崩し錐揉み回転する中、思わず閉じた目を何とか開く。
 ―――スクナの大弓が、既に次の矢を番えていた。

(間に合わ…!)

「射てぇッ!!」


“斬鉄閃!!”


 ――ズガァアンッ!!!


「わぷっ…!!な、なんや!?」

 飛来する螺旋状の斬撃がスクナの鬼面に直撃する。
 千草は衝撃に顔を覆い、刹那は慌てて体勢を立て直して地上を見た。


「…お待たせしました刹那君。無事ですか?」

「長!!」

 祭壇に到着した詠春は、刹那を見上げて笑みを浮かべた。


「な、なんやて…」

 歯軋りしたい衝動に駆られながら千草は慌てて周囲を見渡す。
 足止めを任せた白髪の少年は、別の少年少女を相手に戦っている。

 隠しもせず盛大に舌打ちし、千草は叫ぶように新たな命令をスクナに与えた。


「リョウメンスクナノカミ!!
 あのひよっこの神鳴流はもうええ、今すぐ長を叩き潰すんや!!」

《…ォオオオオオオオオッ!!》

「「!!」」

 四つ腕を占めていた弓矢が掻き消える。
 そのままスクナは全ての腕を腰に回し……刀を抜くように腕を振り抜いた。


 ――その手に現れたのは、四本の巨大な小太刀。

 日本刀のような拵えや鍔はなく、柄に布が巻かれているだけという粗雑な意匠。
 スクナの覚醒が不完全だからか、持ち主と同様に光を帯びて輝いている。
 大鉈を思わせる、その重厚な刃―――。



四神大刀タチアズマ




「……刹那君、アレは一振りで湖が割れるので気を付けて」

「えっ…! は、はい!!」

 十八年前を苦々しげに思い出して、詠春は刹那に助言した。


(…やれやれ、真っ向からアレの相手をするのですか。かつての戦友あのバカ達が恋しいですね。
 …この身体では……恐らくチャンスは一度のみ…!!)


 スッと目を細め、詠春は瞑想して己の裡に精神を埋没させた。


 ――"気"の操作を疾く精密に。
 ――集中力は最大に。
 ――反射と反応を…究極まで研ぎ澄ませる……!!



「…!! お、長!!逃げてください!!」


 目を閉じた詠春の頭上に、振り上げられた巨大な腕。
 刹那が叫ぶが無情にも……彼が動く前にその大刀は振り下ろされた。



「――――ォあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」



 ―――ギャギィイッ!!!」―――ッドォォオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッッ………!!!!!!



 ……刹那は目を見開いて絶句した。
 事前に聞かされたとはいえ…実際に目にするのとは全く違う。

 振り下ろされた一刀は積み木を崩すように祭壇を破壊し、至大の威力で湖を真っ二つに引き裂いた。

 ネギ達が戦う桟橋を辛うじて避ける形で湖が削られる。
 斬撃で生じた一筋の塹壕に、湖の水が滝の勢いで落下していく。

 ………そんな、現実逃避もここまでだった。



「…そん、な…………お、長………!!」


 刹那は今でも信じられない。
 …その衝撃の…爆心地と呼べる地点に、その暴力を受けてなお立つ男がいる……!!


「………がふっ…いや…やはり……コレを受け流すのは容易ではない……!」


 鬼神の一刀が放つ衝撃をその身に受け、吹き飛ぶ湖水と湖底の土砂に身を晒し、
 血反吐を吐きながらも………近衛詠春は立っている。

 大刀が地面を抉る衝撃音の直前、聞こえた小さな金属音。
 それは鬼神の一振りを、人間の太刀が逸らして流す「技術の極致」。

 ―――体の内部に気を流しての耐久強化、体の表面に気を纏わせる防御強化、野太刀の強度を気で強化。
 全神経と集中力を「受け流すこと」に割きながら、これだけの“気”の操作を同時に行なうその絶技。

 かつて彼が所属した『紅き翼アラルブラ』の戦友、「最強の傭兵剣士」はこう言った。
 「剣技に関しちゃ詠春ヤツが最強」――――……!


「神鳴流奥義――――雷鳴剣!!!!!」


 ―――バヂィインッッ!!!


《グォオオオオオ…ッ!!?》


 空に向かって雷が落ちた瞬間、落雷と放電。二つの音が木霊した。
 同時にスクナが、耐え難い苦痛に呻いて体をよじる。

 大刀を真っ向から受け止めた、互いの剣の接触状態。
 そこから放たれた『雷鳴剣』はリョウメンスクナを感電させる。


「あなたにとっては静電気の様なものでしょうが………その隙は、致命に過ぎる」


“奥義・斬岩剣”


 文字どおり、岩の如くに硬くぶ厚い皮膚を穿ち。
 詠春の刀は鬼神の右腕を肘の先から切断した。



《グォォオアアアアアあアアアアアアアあああああああああああ!!!!!》



「んな…んなアホな!!そんな…こんな、こんな事が―――」

「夜更けに少々騒がしいですよ。『斬空閃』ッ!!」


 振り抜いた気の刃が顔面を直撃し、スクナが………大鬼神が、遂にその体をよろめかせた。

 四本の腕のうち、二本を地面に着き巨体を支え、自由な腕は僅か一本になる。
 ――ならば彼女でも対応可能だ。


「今です、刹那君!」


 少女は上空へ羽ばたいて鬼神を見下ろす位置まで昇る。

 そのまま翼を大きく広げ、刹那はスクナに向けて急降下して突進した。




 ◇◇◇◇◇



 リョウメンスクナノカミは飛騨の民衆を苦しめたと言われているが…逆に彼らを救ったという説もある。
 だがどんな伝承にも共通するのが、スクナが強大な武力を持つ存在だったということ。

 二面四手に身長十八丈の身体を持ち、腰の左右に刀を差し、二対の弓矢を操ったという。
 強大な力を持ち、朝廷に逆らい、飛騨で信仰される存在。

 故に"鬼の神"…人に害なすモノの王であり、同時に"鬼神"…人を災いから救う神霊。
 それが〈リョウメンスクナノカミ〉。


 その伝説が今、刹那の目の前に立ち塞がる。


 しかし恐れるに値しない。
 千草は言った。「このかお嬢様の力で完全に制御可能」だと。

 いくら強力な鬼神だろうと、それを操るのはただの人間。
 しかも己の力だけで操る力量もない、一介の呪符使い。

 それが飛騨の鬼神の力を完全に使役するなど、出来る筈がない。


 鬼神に敵う者などいないと油断しているのか。
 鬼神を制御下において慢心しているのか。
 ……それ程まで心酔した最強の駒が、腕を失って呆然としているのか。


 ―――――――〈翼ある剣士GLADIARIA ALATA


 天ヶ崎千草には。己に迫る翼の剣士が見えていなかった。



 ―――バサァッ!!


「!? お前は!!」

「天ヶ崎千草。お嬢様を返してもらうぞ!!」


 人間に使役されてないスクナだったなら、刹那の接近に当然気づいただろう。
 だが今…「彼」は、千草によって完全に制御・・・・・されている。
 それは千草の命令がなければ、スクナが指一本動かせない事を意味していた。

 愚かな人間の手によって、鬼神リョウメンスクナノカミは木偶の坊に成り下がった。


「くっ、いつの間に!?近過ぎてスクナの力が使えん!! 猿鬼!!熊鬼!!」

 慌てて二体の式神を召喚する。だが悪あがきもいいところ。

 翼を出した状態こそ刹那の真の姿。
 通常よりも霊格・霊力が上昇し、戦闘能力も飛躍的に強化される。

 月を背負い純白の翼を広げ、刹那は速度を落とさず千草と式神に接近する。
 たかが二体の着ぐるみに―――彼女の行く手を遮る事など出来はしない!!


 ――――ボシュッ!!


 一瞬で式神ニ体を斬り刻む。
 そして――……その腕に木乃香を抱いて、刹那は鬼神から離脱した。




「お嬢様、大丈夫ですか!?お嬢様!!」

「ん〜〜〜………?」

 眠るように意識を失っていた木乃香が、刹那の呼びかけに反応して声を漏らす。
 そのままゆっくりと瞼を開けた彼女は…朦朧としたまま、目の前の親友の名前を呼んだ。

「………ああ……せっちゃん…。えへへ…やっぱり、また助けに来てくれたー……?
 ……? せっちゃん、その背中のはー……?」

「えっ…あっ、こ、これはっ………え?」

 思わず刹那の口から声が出た。
 今の彼女の翼を生やした姿を見て、木乃香が…柔らかい笑みを浮かべていたから。


「キレーなハネ……。なんや天使みたいやなー………」


 やけに大きい三日月を背に、自分を抱える親友が白亜の翼で空を泳ぐ。
 その光景を、夢心地の中で、ただ純粋に。

 綺麗だと木乃香は思った。









<おまけ>
「機械天使」

明日菜
「念心!」
カモ
「合体!!」
ネギ
「Go!ア●エリオ――――ン!!!」

刹那
「アクエ●オン……セツナ!!」ガシィーン!!

木乃香
「キレーなハネ……。なんや天使みたいやなー………」

・がっつりネタに走ってみたw
 本編がシリアス過ぎたので…つい…。木乃香の台詞が台無しw



《リョウメンスクナノカミ・オリジナル技の設定》

>“鬼鬼哭吼砲キャカオオヅツ
 自らの呪力(魔力)と"気"、周囲に満ちる大気の魔力を集束して撃ち出す鬼吼砲。魔法でいう『精霊砲』に類似する。
 本来ならば山が複数消し飛ぶほどの威力を誇るが、日本の地形が変わってしまうためスクナ自身は本気で使った事が無い。今回は千草に操られている事と、復活がまだ不完全だったために弱体化している。本気の一撃だった場合、詠春はネギ達を庇う余裕はなく、自分一人の身を守るので精一杯である(そもそも詠春一人なら直撃しないように立ち回れるのだが)。
 出典は無し、完全に今作オリジナル。だってビーム撃たせたかった。

>キャカオオヅツ
 「鬼鬼哭吼砲」を音読みすると「キキコクコウホウ」なので、このルビは完全に当て字。
 「キャ」「カ」は五大(世界を構成する要素)における「キャ」のうち、空(空間)と風のこと。この技は「大気を貫く咆哮」というイメージなので、そこからそれらの語を使用した(大気→空間、風)。「オオヅツ」はそのままおおづつ大砲おおづつ)。

>鬼鬼哭吼砲
 意味も由来も特になし。
 始めに思いついた「鬼吼砲」に、ミスの形で「鬼哭」をテキトーにコピペした結果偶然誕生した漢字五文字のただの羅列。

>“双破月ソウハゲツ
 デカイ弓矢。弓は実体だが、矢は魔力を収束したもの。魔法の矢のような破壊力はないが非常に高い貫通性能・突貫力を持つ。
 出典は、リョウメンスクナノカミの原典である〈両面宿儺〉が「四つの手で二張りの弓矢を用いた」という伝承から。

>ソウハゲツ
 至って普通の読み方。厨二的ネーミングを考えるのは疲れるのよ。キャカオオヅツを見てみなさい、全くもう…。

>双破月
 意味はそのまま「二つの破月」。破月とは半月の別称であり、「弓張り月」とも呼ぶ(弓つながりのネーミング)。

>“四神大刀タチアズマ
 士郎が使う干将・莫耶(Fate)に似た、鉈の様に太く短めの刀身を持つ四本の太刀。日本刀のような拵えや鍔はなく、柄の部分に布が巻かれているだけという雑多な意匠。スクナの覚醒が不完全だからか、持ち主と同様に光を帯びて輝いている。
 出典は、リョウメンスクナノカミの原典である〈両面宿儺〉が「左右に剣を帯びていた」という伝承から。つまり元ネタでは二刀流と思われるが、この小説では「せっかく腕が四本あるんだから四刀流にすればいいじゃない」という安易な考えに走っている。

>タチアズマ
 「タチ」は「太刀」から、「アズマ」は「あずま」という名字に由来する。

>四神大刀
 四神とは、東西南北の四方を守護する霊獣、青龍・白虎・朱雀・玄武のこと。
 この技名では単純に、「四」という数に関連する語として使用した。


討龍千鬼トウリュウセンキ両面宿儺之神リョウメンスクナノカミ

 この小説でリョウメンスクナノカミが完全に復活したら、という「if」の妄想設定。
 「討龍」とは、かつて民衆を苦しめる毒龍を討伐したという伝承から。

 木乃香の肉体ごと全魔力を取り込んで自意識を取り戻し、千草の制御から解放された完全覚醒状態。復活によりもちろん脚部含む下半身も顕現しているため、瞬動を用いての高速戦闘も可能。
 高火力・高機動に加えて屈強・頑健な全高60mの巨体、遠中近全ての戦闘距離に対応できるマルチタイプのオールラウンダーとなっている。

 四本の大刀『四神大刀』、二つの弓矢『双破月』、腰回りを覆う鎧『鬼邪鎧套』、速度を上げる草鞋『韋駄天脚』、腕力を強化する篭手『金剛籠手』、呪法防御を上昇させる勾玉の首飾り『六宝龍珠』で完全武装したフルアーマー形態であり、前述したオリジナル技全てを十全に使いこなす。
 この状態ならば最強種「真祖の吸血鬼ハイディライトウォーカー」のエヴァンジェリンと真っ向勝負が可能な実力を発揮するという。

 ちなみに真祖と同格とされる龍種は相性的に有利で難なく勝てる。これはスクナのフィジカルが圧倒的過ぎるためで、瞬動で龍種に接近して翼と首を千切ってハイ終了。
 エヴァのような不死身と強大な魔法力を持つか、ナギのような圧倒的超火力がなければ打ち勝つ事は不可能。

 この完全覚醒スクナと『紅き翼』メンバーを比較すると、詠春は本気を出してようやく太刀打ちでき、ゼクトは熟練の魔法により何とか戦闘可能。ラカンはステゴロ勝負を挑んで決着がつかない。アルは重力魔法で動きを鈍らせるのがやっとで、ガトウは火力不足で負ける。
 アリカ王女は本人の器の大きさ(王族の気品とか覇気とか気高さとかオーラ)でスクナを服従させる…らしい。

 ただしこれだけの力を持つ反動か消耗が激しく、持久戦を不得手としている。
 1600年前はこの弱点を突かれ、疲弊しきった所を封印された。(18年前はナギと詠春の二人がかりでフルボッコされ力づくで封印された)。



〜補足・解説〜

>白烏の覚醒め
 ルビを振ると「白烏びゃくう覚醒めざめ」。白烏は「しろがらす」とも読むが、ネギま!の設定用語としては「びゃくう」が正しい。
 白烏は日本古来より吉兆を司り、また太陽の精=太陽の使いと言われてきた。ギリシャ神話でも太陽神アポロンの聖鳥とされ、遠く海を離れた二つの国のこの共通点は面白い。
 …話が脱線したが、つまり白烏とは「吉兆を支配し、太陽の精とされるほど格の高い鳥獣」であるということ。故にその名を冠する「白い翼の烏族=桜咲刹那」は、烏族の中でも強大な力を生まれついて持っている。烏族の里ではこの「強大な力」を恐れ、白烏を「禁忌」として迫害するという。

>祭壇から30mほど離れた地点
 距離感わからないんで適当です。

>今まで築き上げてきたものが
 「築き上げてきた」と言うと少しニュアンスが違うかもしれませんが…「手に入れる事が出来た大事なもの」という感覚でしょうか。

>士郎は念話で真名に苦言を呈す
 ネギは仮契約カードを通してしか念話できませんが、「念話魔法」なるものがあるので士郎は普通に使用できます。

>士郎の魔力探知を狂わせていた
 仲間の危機を察知できるような第六感(主人公補正)は彼には無いのですよ。幸運値はむしろ低いですし。
 なお、直感(偽)のスキルは不発だった模様。

>「…金取るのかよ」
 これが後々の伏線になるとは、当時の私は思いもしなかったのです。

>薄い笑みを浮かべる少女
 「…少女?」とか言っちゃうのは禁句w
 少女ではなく女性と言っていい大人びた容姿をしていて実際に年齢不詳だけれど彼女は現役の女子中学生です…!!(笑)

>士郎以外が見る事はできないもの
 このとき真名の隣に古非がいますが、彼女には微妙に背を向けるように体を傾けているので見えていません。

>今日まで…………お世話になりました」
>目頭が熱くなるのを……詠春は何とか抑え込んだ。
 木乃香と仲良く遊んでいる姿を見ていれば、刹那の事も娘の様に考えていたのではと思うんですよ。何より彼女を拾って保護したのは詠春ですし。
 自分の娘が「今までお世話になりました」とか言ってきたらお父さんそりゃ泣いちゃうよって(涙

>しばらく刹那の白い背中に赤い紅葉マークが残った
 具体的には二日ほど。修学旅行最終日に見ても薄っすら赤かったそうな。明日菜ェ……。
 内出血して青くなっていない辺り、無駄に絶妙な力加減やで…。

>岩をそのまま削り出したような、自身の身の丈に倍する大剣…『石の剣』
 原作にも登場していますが、名称は不明。
 『石の剣』は勝手につけた暫定的な名称です。ラテン語なら「エンシス・ペトラス」とでもなるのでしょうか?

>成程、彼女は亜人種だったか。
 生まれも育ちも魔法世界であるフェイトらしい言い方。

>神鳴流・紅蓮拳
 気を籠めた拳で殴る。出典は、ネギま!と同一世界観の作品「ラブひな」。
(※作者はラブひな未読。紅蓮拳など、一部の神鳴流の技はネット知識です)

>烈蹴斬
 気を纏わせた脚で放つ斬撃。
 今回は気を乗せた足で膝蹴りとして使用した。

>斬空掌
 気を弾丸のように放つ技。出典は「ラブひな」。
 今回は密着状態から零距離で使用した。

>伴侶を得て…
 詠春の奥様にして木乃香のお母様…原作に登場しないのは何故か…。お陰で死亡説が出る始末。信憑性というか可能性があるから困る。
 二次小説では「木乃実」さん、「木乃葉」さんなどオリキャラとして創作されていますね。この小説ではどんなスタンスを取るべきか……。今の姿勢はノータッチです(汗
 もし生きてらっしゃるとしたら、何処か遠い場所で病気療養中という事にしようと思ってます。京都に居るなら木乃香に会いに来る、もしくは木乃香が会いに行くでしょうから。……厳しいですね、やはり死亡説が有力か…。
 まさか麻帆良地下のアレに関わっているとも思えな……いや、それはそれで面白い発想かも。

>アレは一振りで湖が割れる
 刹那や詠春もその気になれば出来ますが、それは"気"で強化したり奥義を使っての話です。スクナのように「ただ剣を振る」だけでは不可能。デカさは強さ。なのに最近の漫画・アニメでは巨大化=弱体化という風潮があって納得いきませぬ。

>十八年前を苦々しげに思い出して、詠春は刹那に助言した。

詠春「はははははははっ!!協会の爺ども、俺が婿養子だからって舐めやがってぇぇえええええ!!!」
スクナ《グォォオオオオオオオ……ッ!!》
ナギ「おー、詠春のヤツやるじゃねーか。二年のブランクがあるとは思えねえ」
??「何やら欝憤を晴らしているだけに見えるがのう…」
??「フフ…彼は怒ると怖いですからね」

 前線を退いて二年後、関西呪術協会の長に就任する前の詠春。
 かつてこんな事があったかもしれませんw

>「剣技に関しちゃ詠春が最強」
 さすが剣技の極致サムライマスター!そこに痺れる憧れるゥ!!
 え、気の操作技術は剣技じゃない? ……神鳴流なら剣技に含まれるんだよきっと。
 鬼神の一振りを受け流したのは間違いなく剣の技術ですし、大目に見てくださいw

>スクナが、耐え難い苦痛に呻いて体をよじる。
>静電気の様なもの
 弱い電圧・電流でも、触覚が鋭敏な手や指先に流れれば大ダメージとなる…静電気のその性質を利用しました。
 …ですが、雷鳴剣(実際の落雷)レベルの電圧でようやく静電気扱いか…スクナまじパネェっす。



《あとがき》
 今回のサブタイトルは「白烏の覚醒め」…つまり刹那がメインなのに、詠春やスクナの活躍が半端無かったですね。でも彼女も、要所で存在感を見せて最後をキッチリ持っていったので良しとしましょう。……え?最後を持っていったのは木乃香?



 次回、ネギま!―剣製の凱歌―
 「第27話 京都決戦・肆 タイトル未定」

 それでは次回!

■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
 誤字脱字・タグの文字化け・設定や展開の矛盾点等お気づきの点がありましたら、感想にてお知らせください。
テキストサイズ:32k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.