ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

ネギま!―剣製の凱歌― 第三章-第33話 弟子入りしよう!〜決闘編〜
作者:佐藤C   2013/06/23(日) 22:01公開   ID:CmMSlGZQwL.



 “では、始めるがいい!!”


「―――失礼しますネギ先生」

 エヴァンジェリンの掛け声と同時、茶々丸がネギに突進する。


 ――バッ!

 しかしそれと同じくして、
 ネギは半ズボンのポケットから携帯用の杖を取り出した。




 ・
 ・
 ・



 試験が迫る土曜日、時刻はPM 4:30――……。


『これで時間内に教えられることは全て教えたアル!
 後は運を天に任せ、残りの八時間は休息と回復に使うヨロシ!!』

『ハイッ!古老子!!』

 返事と共に、両の拳を胸の前で突き合わせて礼をするネギ。
 それを見つめる少女達の後ろから、彼は姿を現した。

『……と、何やら師父が用事があるそうアル』
『え、シロウ?』

『ここしか時間がとれなかったからな。
 それでも全然足りないが……ま、お前なら二十分もあれば形になるだろ』

『……?』

『―――ひとつだけ、お前に教えておきたいことがある』




 ・
 ・
 ・



「ラス・テル・マ・スキル・マギステル! 『戦いの歌カントゥス・ベラークス』!!」


 ネギはその身に魔力を纏い、茶々丸を真正面から迎え撃つ――――!









     第33話 弟子入りしよう!〜決闘編〜









 一直線に迫る茶々丸の左腕。
 本来なら―――今までならば対応できなかったであろうソレを、
 ネギは強化された左腕で危なげなく逸らして躱した。

 間髪入れず繰り出される右の拳を、今度は体勢を変えて左腕で受け流すネギ。
 パンチを繰り出す勢いで前進してきた茶々丸の動きに合わせて回転し、
 彼女の背中に腕を回して裏拳を喰らわせる!!

“八極拳・転身胯打!!”

 …しかしそれは、茶々丸の右腕に難なく防がれた。
 彼女は踏み出していた左足を蹴ってその場を飛び除き、ネギに相対する形で体勢を立て直す。

『おおっ!?』
『ム、惜しい!!』

 その攻防にギャラリーが沸き立つ側で、開始される拳の応酬。
 一撃、二撃、三撃、四撃…五撃六撃七撃八撃……!
 鈍い音を響かせながら、両者の拳は軌跡を描いてぶつかり合う―――!!


 ―――ガッ!ガキッガゴッ!ドカバキッ!!ガガッガキッ!!


『な…ななな何やコレ!?』
『ポコポコ殴りあうだけだと思ってたのに、あの二人何者!?』

 予想外の戦いに、一般人’sギャラリーが揃って驚愕の声をあげた。

『あのスピード!!やるアルよネギ坊主!!』
(で、でもあれは……)
(心配は無用だぜ姐さん!あの魔力供給はこの前までの我流じゃなくて、
 旦那仕込みのちゃんとした身体強化呪文だからな!)

『ほう、自身への魔力供給を使える程度にはなったか。だが………』


「うぐっ!!」

 茶々丸の蹴りを交差させた腕で受けきった筈のネギは、
 しかし威力を殺しきれず後方に吹き飛ばされた。


『わずか三日の修行では、スピード・パワーが追いついたところで勝てんぞ?』


 エヴァの言葉は正鵠を射ていた。
 こういった体術は、時間をかけてゆっくりと鍛練しなければ本当の意味で体に身に付かないものだ。

 この時点でネギはまだ、習った型にそのまま沿っただけの戦いしかできなかった。
 そもそもその基本すら習熟が浅く、
 応用の不完全さは見る人が見れば目も当てられない。

 そのために対応が遅れ、ネギは茶々丸の繰り出す攻撃を受け流しきれていなかった。
 その衝撃は確実に彼の体ににダメージとして蓄積されていく。
 ―――蓄積、されていた。


 ――ガクンッ!!

「ッ!?」

 吹き飛ばされたネギが―――膝を崩して着地に失敗した。

 その隙を見逃す彼女ではない。
 背中のスラスターを噴出した加速で踏み込み、茶々丸はその剛腕をネギの腹に叩きこむ!!

『ネギ君っ!!』


 ――――ガッ!!


「………!!」

『―――上手い!!』

 茶々丸が僅かに瞠目し、古菲は舌を巻く思いで声を上げる。
 ネギは体を茶々丸の右側にズラし、突き出された彼女の右拳を右手で逸らし。
 そのまま左手で―――茶々丸の手首を鷲掴みにした。

『こ、これって―――』
『ハイ、いけます!』
『いけ!兄貴ーーーーー!!』

 ―――茶々丸を、捕らえた。
 彼女の腕を引き寄せ、今こそ、ネギ渾身の一打が炸裂する――――!!


“八極拳・霍打頂肘!!”


「……!?」


『――――な』


 …何が起きたか理解できない。
 ネギの思考は呆気なく停止して、達人の古菲は呆けた声が漏れ出る驚愕。

 茶々丸の姿が、ネギの視界から掻き消えた。
 そしてその実態を、一部始終をギャラリー達は目の当たりにしている。

 彼女は、茶々丸は宙空に存在した。

 腹に肘を打ち込まれる直前、茶々丸は石畳を蹴って宙に跳んだ。
 ―――ネギに腕を掴まれたままで。
 結果、彼女はネギに掴まれた腕を軸に回転しながら落下してくる。
 気づくのが遅すぎた彼に向け、回転と落下と体重を乗せた蹴りが容赦なく降り注ぐ――――!!


「がっ……………!!」


 ―――ドガッ!――ダンッ―ダダンッ!!―――ッズシャアァァァ………!!


 地面を数回跳ねながら、呆気なく数メートル吹き飛ばされる小さな身体。
 強烈な一撃を喰らった少年は、もはやピクリとも動かなかった。

「………ネギ君………!」
「くっ…………。」

 応援席の一同は、皆一様にして歯痒い声を口々に漏らす。
 ……だが、唇を噛む思いだったのは…ネギの応援ギャラリーだけではなかった。


(――チッ、ナギあいつの息子がこの程度か……。…まあ、鷹の子が鷹になるとは限らん)

「フン。こんなところだろう」
「ケケケ、御機嫌ナナメダナ御主人」

 失望から来る不機嫌さを隠しもせず、
 エヴァンジェリンは腕を組んだままネギに向けて口を開いた。

「残念だったなぼーや、だがそれが貴様の器だ。顔を洗って出直して―――」


「へ…へへ………ま、だです………」


「…ネギ!?」
「ネギ君っ!?」

 倒れたネギに駆け寄ろうとした明日菜とまき絵は、
 起き上がろうとする少年を見て疑問の声を上げて立ち止まる。


「まだです……まだ僕くたばってません・・・・・・・・よ、エヴァンジェリンさん」

 震える足を抑えつけ、そう言いながらネギはゆっくりと立ち上がった。


 “―――貴様のカンフーもどきで茶々丸に一撃入れられれば合格。
 貴様が手も足も出ずにくたばればそれまでだ”


 エヴァは「負ければ終わり」という意味合いニュアンスで言ったのだろうが………彼女のセリフを、
 文字通りの意味で、究極的に解釈すれば。

 「死なないくたばらない」限り、試験の成否は決定しない事になる。時間制限も特に設けられていない。

 しかもエヴァは、「その条件でいいのか」という確認に「是」と答えてしまったのだ。
 言質は既に取っている。今さら撤回など不可能……いや。


「まさか貴様………!!」


 ―――撤回など、絶対に許さない。
 ネギの瞳に宿る光が、明らかにそう言っている。
 エヴァンジェリンはそれを見て…それ以上何も言えず口籠った。

(あれが…十歳のガキがする眼か……!?)

 驚愕を顔に貼り付けるエヴァの姿を、士郎は後ろから見つめて思う。


(……やっと気付いたか。…エヴァ、お前はネギを舐め過ぎた)


 彼女は―――エヴァは、ネギにナギを重ねている。
 “鷹の子が鷹になるとは限らない”……確かにその通りだろう。

 …だが、彼女は忘れている。
 鷹になれない、どころか羽ばたく事も出来ない鳥ですら持っている―――意地と根性という名の、泥臭い『誇り』を。


 “どんなに無様でも。情けなくても、みっともなくても……!”


(退く気の無い人間てのは、嫌になるほど手強いしつこいぞ?)


 考えれば当然だ。ネギを見てきた明日菜や士郎ならすぐ解る。
 彼には初めから諦める気など、どこにも全く持ち合わせていないのだと。


「一撃入れるまで…何時間でも粘らせてもらいます!!」

「し、しかし先生………」

 困惑した茶々丸が、躊躇いがちに声を出す。
 何故ならネギは脚をガクガクと震わせており、先の蹴りが確実に響いている事は明白だった。
 ……とても、まともに試験を続行できるとは思えない。

「…茶々丸さん手を抜かないでください。
 手加減してもらってテストに受かっても…意味無いんです!!」

 ―――ス………ッ

 構えをとり、本気の視線で茶々丸を睨みつける。
 ……彼女にはそれが、少年が自分に懇願している様だと解った。


「…………わかりました。本気で………お相手させて頂きます」

「やああああぁぁッ!!!」


 ……そこからの戦いは、とても勝負と名状できるものではなかった。
 身体強化の効果が尽き、パワー、スピードが地に落ちる。
 ボロボロの身体を引き摺った子供の拳法は、もはやケンカ以下の遊びのよう。

 あまりに雑。あまりに稚拙。―――なんて、無様。

 それでも茶々丸は、ネギに「やめろ」とは言わなかった。
 目の前の少年が取る構えは、付け焼刃の特訓で身につけた未熟過ぎる八極拳。
 それはたった三日ぶんでも、彼の誇りの結晶だったから。





 ◇◇◇◇◇




「…ネ、ネギ先生、まだやるつもりなん?」
「こんなの勝ち目ないよ………」
「ネ、ネ、ネギ君………!!」

『はぁっ…………はぁっ…』
『ネギ先生………』

 ネギの頬と瞼は痛々しいほど腫れあがり、内出血して紫色に変色している。
 口は切れて今も血が流れている。
 息が上がり、体は疲労に震えている。
 もはやネギは……いつ倒れてもおかしくなかった。

「お…おい、ぼーやもういいだろ。いくら障壁で防御しても限界がある。
 お前のやる気はわかったから、な?」
「根性アルナーアイツ」

 あまりの姿にエヴァさえやめるよう勧めるが…ネギは全く意に介さない。
 ………止める訳には、いかないのだ。
 自分の力で、自分だけの実力で、望む結果を出すまでは……!!

「ま……まらでふまだです………。」


“―――崩拳ポンチュワン!!”


 弱りきった子供の中段突きなど、遅過ぎて当たる筈もなく。
 …むしろ容易くカウンターで返された。


 ―――ドカァッ!!


「ひゃあっ!!」

 傷だらけの少年が一方的に痛めつけられる光景に、
 亜子や木乃香は悲鳴を上げて眼を瞑った。

「センセ、もーやめてーーーっ!!」
「……もう1時間以上になる」
「な、なんであんなに頑張るの――」

 裕奈やアキラも、もうまともに見ていられる状態ではなかった。
 これまでネギを尊重して、拳を握りながら耐えていた明日菜も……もう我慢の限界だった。

「…も、もう見てらんない!!止めてくる!!」


「―――だめ!!アスナ、止めちゃダメ!!」

 …一歩前に出た明日菜の腕を、細い両手が掴み取った。


 ……「もう見てられない」。それは既に広場の人間すべての総意。
 しかしそれに真っ向から反する声の存在に、一同は驚いた顔でその人物に視線を向けた。


「……ま………まきちゃん………!?」

 駆けだそうとした明日菜を制止したのは、今にも泣きそうな顔をしたまき絵だった。

「な、何でよ!もうボロボロじゃない!!
 あんなにケガしてまで頑張ることないよ!!」

「だ、だめだよ………だって……ネギ君頑張ってるもん。
 どんなことでも頑張るって言ってたもん!
 いま止めちゃう方が…ネギ君にとってヒドイと思う!!」

 本音を言えば自分だって今すぐ止めたい。止めさせたい。
 彼女の目端に溜まる涙がその思いを如実に語る。

 それでも、彼女はずっと堪えている。
 ―――それが、あの少年を想えばこそ、まき絵が取った選択だった。

「……で、でも、あんなの子供の意地っ張りだよ。
 誰か止めてあげなきゃ……」

「違うよ、ネギ君は大人だよ!子供の意地であそこまでやれないよ!
 う、上手く言えないけど………ネギ君には、カクゴがあると思う………」

「…覚悟?」

「…うん。ネギ君には目標があって、その為に自分の全部で頑張るって決めてるんだよ。
 アスナ、アスナの周りにちゃんと目標持って生きてる人いる?
 あやふやな夢とかじゃなくて、ちゃんとコレだって決めて生きてる人いる!?」


(な、なんて青い…………これが若さか………)

「照レンナヨ御主人」

 一部始終を聞きながら、エヴァンジェリンは頬を紅潮させて若人達を眺めていた。


「…覚悟、ねえ」

「オ、アノガキノ言イ分ニ文句デモアンノカ」

 呟いた士郎に、チャチャゼロは面白そうな声色で問いかけた。

「ああ。ネギが持ってるのは決心とか決意とかそういうもので、
 覚悟なんて大層なものじゃないと思うな」

「…まあ確かに、十歳のガキが覚悟などそうそう持てるものではないが」

 殴られて仰け反るネギを見ながら、
 エヴァンジェリンは渋々士郎の言葉に頷いた。

「まき絵ちゃんは違うって言ってたけど……ネギのアレは意地だと思う。
 ただし子供の意地じゃない。あれは…男の意地だ」

「…プッ。ケケケ、ナンダソリャ」

 思わず噴き出したチャチャゼロを意にも介さず、
 士郎は誇らしげに…優しい笑みともとれるように口角を上げて口にした。

「簡単だよ、“勝つまでは絶対負けない”…それだけだ。
 どんなに自分が弱くても、そういう意地だけは、張っていようって決めたんだ」

 ――――背中しか見えない、“誰かそのひと”に追いつくために。



「ネギ君は大人なんだよ。目的持って頑張ってるもん……。
 だから…………だから今は止めちゃダメ」

「まきちゃん…………」


 まき絵の声が聞こえないのは、満身創痍のネギだけだ。
 それ以外の全ての者が、程度こそあれ彼女の言葉に訴えられて動きを止める。

 明日菜も木乃香も、刹那も古菲も。亜子も裕奈もアキラも。
 エヴァンジェリンも、士郎も、チャチャゼロも……
 ―――茶々丸も。


「……まき絵さん…………」


 まき絵の声が聞こえなかったのは、ネギだけだ。
 誰もが動きを止めた世界で、動いていたのはただ、一人―――


「―――あ! オイ茶々丸!!」
「え」


 ぺちんっ


 ………その、あまりにか細い音の正体は。

 ネギの拳が、茶々丸の頬を微かに叩いた音だった。


「なっ…」
「オー」

 予想だにしなかった、信じられないその結果こうけい
 チャチャゼロは声を上げ、エヴァンジェリンはあんぐりと口を開けて言葉を失う。

 …頼りなく、情けない音であったものの。
 それは確かに…届いた「一撃」が奏でた凱歌おとだった。


「あ………当たり…まふぃた………」


 ドサッ……。


 確かめるように呟くと、ネギは糸が切れたように崩れ落ちた。


「やったーーーーー!!!」
「ネギくーーーん!!」
「コラーーっ!!茶々丸ーーーー!!」
「す、すすすいませんマスター!!」

 少女達はネギの勝利を心から喜び、歓声を上げながら彼の下へ駆けだした。

「ケケケ士郎。テメエモ青イナ」
「自覚はあるよ。でもさ、一撃入ったろ?」
「結果論ジャネーカ」
「ハ、何とでも言え。言ったもん勝ちだ」


「ネギ君っ!!」
「………あ…まき絵ふぁん………。あれ、僕 てふとテストは…………?」

 明日菜に抱きかかえられながら、朦朧とした意識で彼は問う。
 ………本当に、ギリギリの一線で立っていたのだろう。
 彼はもはや直前の記憶すら、既にあやふやだったのだ。

「大丈夫よネギ!」
「合格だよネギ君!」

「ネギ坊主…良くやたアル!!」
「うん、スゲー見直した!!」
「ネギ君、ウチ御褒美においしーゴハン作ったげるからなーーー!」

「お疲れ様。ネギ君」
「ふぁい………。まき絵ふぁんも…」
「……え?」


「…まき絵ふぁんも……頑張ってくらはい………」

 腫れた瞼でまともに前も見えないだろうに、
 ネギは最後に、まき絵を見上げてそう言った。

「………うん! 任せてネギ君!!」

「………すーー……すーーー……」

 そうして、少年は穏やかに目を閉じる。
 それを見届けた彼の生徒達は、どこか誇らしげな顔をしていた。





 ◇◇◇◇◇




 ―――およそ七時間後。日曜日の中等部専用体育館。


「次ー、五番・佐々木まき絵」
「ハイ!!」

 新体操部員が一堂に会し、大会の選抜メンバーの座を巡って演技を披露する。
 顧問の二ノ宮教諭の号令で、まき絵が静かに前へ出た。

「リボンでいいんだなー?」
「はい」


(さーて…この前はキツイ事を言ったが、
 あれからどう仕上げてきたか……な………っ?)

 二ノ宮教諭は一瞬、言葉を失う。
 それほどに、彼女は我が目を疑った。


「………まき絵、お前なにかあったか?一瞬誰かと思ったぞ」

「えっ……別に何もないですよ?」

「そうか……?」


(いや、それにしては雰囲気が変わったというか……まき絵らしさは消えてないのに、
 どこか凛としているというか………)


 ―――そう、有り体に言えば……以前より「大人びている」。
 それ以外に表しようがなく、またそれが何より正しい答えに思えた。


「ん〜…まき絵。まさか好きな男の子でも出来たか〜?」

「っ!? な、なにオヤジみたいなコト言ってるんですか先生!!」

「ハハハ、冗談♪」
「も〜〜〜!」

「じゃあいくぞ。五番・佐々木まき絵、演技スタート!」

「ハイ!!」


 軽快なステップで、彼女は体育館の床を蹴って舞い踊る。
 その表情は、何処までも晴れやかだった。









<おまけ>
「テストエンド・ドリーム」

ネギ
「………はっ!ここは…?」

 気づけばネギは、板張りの剣術道場に横になって倒れていた。
 道場の白い壁には「ばくはつえんじょう」「ブラコンイズジャスティス」などの
 ラクガキが見てとれる。

???
「よーやく起きたわね!ネギ!!相変わらずボケボケのチビなんだから!!」
ネギ
「…っ!?」

 背後から聞こえた大声にビクッと肩を震わせる。
 次いで慌てて振り返ると―――そこには。

弟子1’いちダッシュ
「やっぱりネギには私がついてないとダメね!」
ネギ
「――ア、アーニャ!?」

 そこには、無い胸の前で腕を組んで仁王立ちする、ネギの年上の幼馴染み―――
 爆裂娘こと、アンナ・ユーリエウナ・ココロウァ………に瓜二つの美少女がいた。

ネギ
「……えーと、アーニャ。なんで体育着?」

 思わずネギは訊いてしまう。
 何故なら彼女の今の服装は、襟と袖に赤いラインが走った白い半袖Tシャツに、
 真っ赤なブルマという出で立ちだったから。

弟子1’号
「違うわ、私はししょーの弟子兼小間使いをしている弟子1’号よ!覚えておきなさい!
 服に関してはよく分からないけど、ここではこれが…正装?
 ていうか制服らしいのよね。どう?似合う?(フフン)」
ネギ
「あ、うん。赤色はアーニャに似合ってて可愛いと思うよ。
 体育着の雰囲気も、活発なアーニャにぴったりだと思うし」

弟子1’号
「……………////」
ネギ
「………?アーニャ?」

弟子1’号
「はっ!!な、何よッそんなお世辞なんか覚えちゃって!!
 アンタなんかに褒められたって全然嬉しくないんだからね!!(プンスカ)」
ネギ
「え、お世辞じゃなくて、思った事を言っただけなんだけど…」
弟子1’号
「えーいうるさいうるさーい!!もう今回のお仕置きを始めちゃうわよ!!
 いい、ネギ!この道場はね、無茶したアンタに説教するための空間なのよ!!」
ネギ
「え、ええーーーーーーーっ!?」

???
「こら、ダメよダッシュちゃん。間違ってるわ。
 説明はしっかりしてあげないと」

ネギ
「―――…!?こ、この声は……!!」


 ―――びたーんっ!!

 道場の床の間(掛け軸とかが掛けてあるあの段差の場所)が、忍者屋敷よろしく
 回転扉となって一人の人間を出現させた。

 それは腰まで届くほどの金の長髪をポニーテールにした、蒼い瞳の女性。
 しかしその風貌に反し、黒い着物に袈裟という日本の尼僧を思わせる出で立ち。
 そして2mはあろうかという、先端にガーネットの宝石が填め込まれた長大な魔法杖を持っている。
 ちなみに何故かその杖は、柄の模様が黒と黄色のストライプ―――虎柄になっていた。

ネギ
「ネ……ネカネお姉ちゃんっ!?」
ネカネ師匠
「さあ―――ネギ!“スプリングフィールド道場”を始めるわよ!!」

 ネギの従姉にして姉代わりの女性、
 ネカネ・スプリングフィールド………にそっくりの美女は盛大に宣言した。


 ・
 ・
 ・


ネギ
「……………ロ……ロリブルマッ!?」ガバッ!!

 意味不明な台詞を口走り、ネギは勢いよくベッドから起き上がった。

ネギ
「………あ、あれ?僕……」

明日菜
「ネギ!?よかった、アンタだいぶ魘されてたわよ?」
木乃香
「お、ネギ君起きたんかー。
 ほんならとびっきりの朝ごはん作ったるからなー♪」

 時刻は、弟子入りテスト明けの朝。
 目の前の光景は見慣れた寮部屋のもの。
 心配そうに自分を見る明日菜と、
 張り切ってエプロンを着る木乃香の姿にネギは目を丸くした。

ネギ
「………いえ、なんか変な夢を見たみたいです」
明日菜
「そう?あんまり無理しちゃダメよ?
 茶々丸さんも申し訳なさそうに心配してたし」

 …どうして自分はこんなにびっしょりと寝汗をかいているのか。
 ネギはもう、自分がどんな夢を見ていたのか思い出せなかった。



〜補足・解説〜

>『戦いの歌』
 ホントは瞬動も仕込ませたかったんですが、そこまでやっちゃうと士郎の干渉がエヴァにバレそうなので『戦いの歌』だけに留めました。
 ちなみにこの時点でネギの『戦いの歌』の持続時間は10分弱。覚えたてなので短いです。

>わずか三日の修行では
 原作では「二日」ですが、
 今作では試験を言い渡された木曜、金曜、試験直前の土曜で「三日」としています。

>エヴァ、お前はネギを舐め過ぎた
 コミックス1〜2巻辺りのネギは自分勝手で独善的でお子様で嫌いなんですが、彼の努力と成長を見てたら応援したくなってきちゃうんですよねー。
 25巻のラカン戦で完全に漢になりましたねアイツ。あの辺りからネギ好きですわー。

>鷹の子が鷹になるとは限らない
 「蛙の子は蛙」の対義語のようなもの(正しい対義語は「鳶が鷹を生む」)。
 優秀な人の子供が、同じように優秀になるとは限らないということの喩え。

>言質は既に取っている。今さら撤回など不可能
>あれが…十歳のガキがする眼か……!?
 エヴァンジェリンは悪の魔法使いです。なので以前にも書いたように、
 「無法に生きるが故に義理堅く、一度交わした約束は守る」のが信条。
 そのため前言撤回をするという行為自体、彼女にとって好ましくないことなのです。
 なのでネギがルールを拡大解釈して試験を無理やり続行しても、それを容認したのは「ネギに気圧されたから」という事が主要因ではありません。
 あくまで理由の一つといった所です。

>彼女にはそれが、少年が自分に懇願している様だと解った。
>それはたった三日ぶんでも、彼の誇りの結晶だったから。
 茶々丸ってもはや人間だよね(´ω`)
 他人の心情読み取り過ぎだろ……。

>男の意地
 意地の強さを舐めたらアカン。特に男の意地は半端無い。
 意地の為に命をかけて、限界を超えられるのが男というスーパー生物。
 とはいえ意地なんて、言ってしまえばくだらないプライドとやせ我慢のカタマリでしょう。
 しかし、一度張ったそれを守るために、自分の全てを注ぐ事ができるのが男なのです。

>おまけ
 本編がシリアス過ぎておまけに反動が来たんだよ!そして夢オチw
 しかし…弟子1’号にネカネ師匠だと……いったい何者なんだ……。

>スプリングフィールド道場
 言わずと知れた“あの道場”のパロディですw
 遠慮せず光になれ!!(それ違う

>弟子1’号
 二次創作とはいえ公式を差し置いて勝手に2号を名乗らせるのはアレだと思い、
 1’(いちダッシュ)という微妙な数字になりましたw



【次回予告】


「ネギ先生、私達もその場所の探索に連れて行ってくれませんか?
 私達は図書館島やこの学園の秘密……あなた達魔法使いのことが知りたいのです」

「だ、だめですよ!修学旅行からも分かる通り、こっちの世界にはいろんな危険が…」

「構いません先生!!」

「ダメですって!!」

「私達には手がかりを見つけたことの正当な報酬を受け取る権利があります!!」

「ううっ!?」


 次回、「ネギま!―剣製の凱歌―」
 第34話 21世紀の日本に竜なんているワケない


「ド、ド、ドラゴン!!?二人とも、逃げてーーーーーー!!」

《GYAaaaaaaaaaaaaッッ!!!》


 それでは次回!

■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
 誤字脱字・タグの文字化け・設定や内容の矛盾等、お気づきの点がありましたら感想にてお知らせください。
テキストサイズ:18k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.