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ONE PIECE ONLINE 第2話 「クエスト:世界最強の見極め 前編」
作者:波良田瑛太   2013/01/22(火) 17:56公開   ID:ic3DEXrcaRw


目の前が、一瞬で暗くなる。
世界は、真っ黒だ。
その世界に、一つの声が入ってきた。


「・・じょ・ぶで・・。だい・・ぶ・・か?」


その声は、次第に大きくなってきた。


「大丈夫ですか!?」


声を、言葉として認識した時に、頭が起きた。
続いて、身体も起きる。
瞼が動くようになり、目を開く。
目の前には、どこか幼さの残った、男の顔。
その顔には、心配の表情が張り付いている。


「大丈夫ですか? 僕のこと見えてますか?」
「ああ、見えてる。だから、どいてくれ」
「あっ!? すいません」


男はそう言って、前のめりに出していた身体を元に戻す。
俺も体を起こす。
ついでに周りを見渡す。
ここ、どこ?


「いやぁ〜、ビックリしましたよ。僕が日課の散歩をしていたら、道のど真ん中で、あなたが倒れていたんですから」


ふむ、どうやらここは、散歩道らしい。
いきなりなんかのイベントか?
唐突すぎるな。
チュートリアル的なの無いわけ?
それともこれがチュートリアルか?


「あなたは、どうしてここで倒れていたんですか?」


男は質問をしてきた。
こいつは、礼儀がなっていないな。


「俺に質問する前に、まずは名でも名乗ったらどうだ?」
「あっ!? いや、すいません。僕の名前はツリーエと言います。近くの村に住んでいます」


名乗り始めた男を横目に、俺は指を動かす。
確か、さっきの女性の話だと、「ステータス」の・・・・・・
あった。
ここに、シークレットコードを・・・。
“Selected hero”
入力を終えると、胸元に何かが現れた。
手でつかみ、見る。
それは、真っ白なカードだった。
男の方も話し終えたようで、俺の手元を見ていた。


「もしかして、海賊の方ですか?」
「あ?」


今こいつ、俺の手元を見て言ったか?


「あ、いえ、服装が」
「ん?」


言われて自分の服を見る。
頭には、無地のヘッドスカーフ。
ボーダーのTシャツ。
ボロボロのパンツに、帯までつけて。
腰には、ナイフ。
まんま、海賊だな。
これなら、そう思われても仕方ないか。


「ああ、確かに海賊だ。名前は、シイグ」
「そうですか! よかった・・・。あなたに、頼みがあります」


俺が海賊だとわかって、男は顔を輝かせた。
よかったァ?
何こいつ、海賊になりたいの?
こいつはァ、・・・無理だな。


「実は、この村にある海軍基地を潰してほしいんです。お願いします!!」


・・・なんだよ。
いろいろ考えちゃったじゃん。
どうやって断ろうかとか。


「まずは、何で潰してほしいのか、そこから聞こうか」
「ぶっ壊して、ギッタンギッタンに、してくれるんですか?」
「いやいや、話を聞くだけだし、そこまで言ってないし」


この子、恐いわ。
男は、少し俯き、言葉を紡ぎ始めた。


「僕たちの村は、海軍の人たちが来てから、平和になりました」
「それは、いいことじゃん」
「ええ、最初のうちは」
「最初?」
「海軍は、とても強かったんです。それはもう、そこらの海賊じゃ相手にならないほどに」
「いいことじゃね?」
「ですがね。強すぎたんですよ。その有り余る力を使い、ついには僕ら村人を襲い始めました。捕まったものは奴隷のように扱われます。税金は、バカみたいな値段で。なのに、給料は、少ししかもらえず。・・・税金を払えなかったものは、即刻死刑です。・・・・・・父さんも殺されました」


少年は、完全に顔を俯けた。
そのせいか、最後の方は、良く聞こえなかった。
強すぎる力は、時として、自らの身を滅ぼす。
そういうことか。


「村人の不満は、限界を超えました。反乱を起こしたんです。・・・・・・ですが、返り討ちに会い、何人もの村人が、牢獄につかまりました。奴らは決して、殺しすぎないんです。いつまでも支配し続けるために」


ふむふむ。
そういうイベントね。
悪い海軍をぶっ倒して、村人を助けろと。
なんか、燃えてきた。


「事情は、わかった。俺の任せろ。お兄さん」


サムズアップ。
あんま自信ないけど。


「本当ですか!? ありがとうございます。それと、お兄さんじゃなくて、ツリーエです。さっき言ったじゃないですか」
「ツリーエか。変な名前だな」
「“変な”は、余計です」


だって、変じゃん。


「詳しくは、他の場所で話します。ついてきてください」



―――――――



俺は、ツリーエにカフェっぽいところに、連れてこられた。
席に着き、俺はコーヒーを、
目の前に座ったツリーエは、ミルクティーと、アップルパイと、コアラのマーチを注文していた。
・・・ちょっと待て。
誰が払うの?
頼みすぎじゃね? ツリーエさん・・・
どうやらそれが顔に出ていたらしく、


「ああ、大丈夫ですよ。ここは、僕が払いますから」


ツリーエがそう言ってきた。
そすか。ならよかった、よかっ・・・って、よくねぇよ!
最後の何?
コアラのマーチ?
あるの?
“この世界”にもあるの?


「コアラのマーチですか? ありますよ。さっきも頼んだじゃないですか。この村の名産品ですよ。美味しいんですよねぇ。あれ」


顔をほころばせながら、ツリーエは言った。
うあァ・・・
気色悪いもんを、見せるなよ・・・


「・・・って、そんなことより海軍のことですよ。この村の海軍トップは、“槍手”のフーズです。階級は、中尉。他は、たぶん、新兵ばかりだと思います」


中尉か、まあ、最初の敵にはちょうどいいか。
さてさて、どうしますかねェ?


「あ、これどうぞ」


俺がイメトレをしていると、頼んでいたものが運ばれてきた。
ツリーエが気を利かせたらしく、コアラのマーチを差し出してきた。


「・・・いや、すまんね」


差し出されたものを、ちょいともらう。


「・・・・・・」


頭に糖分がちょうどいい感じで、摂取される。
美味いな、やっぱ。
もうチョイ。
もぐもぐ。
あとちょっと。
もぐもぐ。


「うっ、えっ? ちょっ、もう、だ・・・」


もうちょっと、
もぐもぐ。
糖分っていいよね。
もぐもぐ。


「食ァべすぎじゃ、ボケェェエエエエエエエエエエッッ!!」
「げェふォっ・・・」


ぶん殴られた。
痛い。
ふぇ、えええ、
睨んでらっしゃる。


「す、すいやせん」
「許すか、ボケ」


それから二時間ほど、ツリーエさんのお説教が始まった。
内容は主に、コアラのマーチの歴史と、自分がどれだけコアラのマーチを好きか、というものだった。
こいつ、ホントにNPCか?
その思いが、リアルすぎる。


「・・・さて、今回はこれぐらいにしときますか」
「へ、へい」
「次はないですよ?」
「う、うい」


ひ、冷や汗が止まらねー。
・・・と、その時、目の前に《クエストを受注しました》という、ウインドウが現れた。
遅くね?
それともここまで進めないと、出てこないの?
・・・なんか、
何か不安になってきたわ。
大丈夫なのかね。


「早くいきますよ、シイグさん」
「あ、はい」


まあいい、
今は、“槍手”のフーズだ。




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■作者からのメッセージ
2013年7月8日 改訂

どーも、波良田瑛太です。第2話、見て頂きありがとうございます。
これからもがんばっていきますので、応援よろしくお願いします。
それと、感想ありがとうございます。返答させていただきますと、雷が家に当たりゲームから出られなくなるということはありません。それに、この小説を黒歴史にするつもりもありません。あと、ご指摘ありがとうございます。これから、直させていただきます。それでは。
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