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ONE PIECE ONLINE 第3話 「クエスト:世界最強の見極め 後編」
作者:波良田瑛太   2013/01/23(水) 18:14公開   ID:ic3DEXrcaRw


ツリーエのありがた〜い話を終え、俺たちは、海軍基地に前の茂みに隠れていた。
門の前には、門番が二人いる。
はて、俺はなんでこんなことをしている?


「なぁ、なんでこんなところに隠れているんだ?」
「はぁ、そんな当たり前のことを、聞かないで下さいよ」


ツリーエは、溜息をつく。
その挙動が、いちいちウザったい。
むかつくな。
そんな俺の心中を知ってか知らずか、
ツリーエはなおも、ウザったい態度で言葉を続ける。


「もしかしたら、門番がどこかに行ってくれるかも知れないじゃないですか」


その言葉を聞き、今度は俺が溜息をついた。
はァ
なるべくウザったく。
俺の行動は、上手く言ったらしく、ツリーエはむっっとしていた。


「なんですか。もしかしてそんなわけないとでも思ってるんですか?」


まぁな。


「なんでそう言い切れます?」


そんな当たり前のこと聞かないで下さいよ。
ここは、ゲームの中じゃないですか。
・・・とは、言えないので。


「勘だ。第六感的何かが、そう告げた」
「ええっ!?」
「つーわけで、行くぞ!」


ツリーエが驚いているが、関係ない。
茂みから飛び出し、門番の前に、姿を現す。
門番が、驚きの表情を浮かべる。


「な、何者だ!?」


その時、目の前にウインドウが現れる。
そこには、『海賊か、海軍だと、お答えください。または、自分のなりたい職業をお答えください』と、書かれている。
ふむ、・・・job設定か。
俺は、もちろん、


「海賊。名は、シイグ」


そう答える。
すると門番が、先ほどより驚いた顔で、叫ぶ。


「ぬぁにっ!! お前が“ルーキー”のシイグかっ!! おい、おれはこのことを中尉に伝えてくる。お前はここで足止めしといてくれ」
「えっ? いや無理だから。お前が足止めしてくれよ」


ちょっと、“ルーキー”ってなに?
俺、知らないんだけど。
けど、俺の疑問を答えてくれる者はいない。
二人で言い争っている。
しかし、片方がもう片方を押し倒し、
ダァアアアアアアアアッッ!!
という音とともに、突っ走って行った。
残った方は、立ち上がり、俺に聞いてきた。


「なぁ、本当に“ルーキー”のシイグなのか?」


いやいや、まったく知らないんだけど。
おいおいどーする、これ。


「そうだ!」
「ぬぅあ!! 本物ならおれ一人じゃ・・・」


え?
言ってることと考えてることが、違うって?
怯えてくれるなら、それに越したことはないじゃん。
それに、俺の予想じゃ、登録したばかりの海賊は、皆“ルーキー”になるんだと思う。


「だがな、中尉が来るまでは、もたせてみせる!!」


なんかいつの間に、覚悟したような顔してるし。
門番は、手に持っている槍を構える。


「うぅおおおおおおおおおおっっ!!」


掛け声とともに、槍の刃を下に向けながら、こちらに向かってくる。
門番は、俺の胸辺りを貫こうとする。
俺はそれを、何とか左に避ける。
ぅ、危ねぇ・・・。
意外に速い。
だが、門番はその俺の行動を見切り、攻撃を一旦止め、再度俺を貫こうとする。


「マジすかっ!?」
「ハァアアアアアアアアアアッッ!!」
「ック・・・・・・」


重力に任せ、身体をかがめる。
ギリギリ間に合い、門番の攻撃は、空を切る。
その瞬間を見逃さず、脛に蹴りを入れる。


「ぐぅおっ・・・・・・」


門番は、脛を抱えてうずくまる。
クリティカルヒットだ。
俺は右手を振りかぶりながら、素早く立ち上がる。
ふんっ、
くらえっ・・・


「ウゥルゥアアアアアアアアアアアアっ!!」


俺の拳骨が、門番の顎を的確にとらえた。
鈍い音をたてて、門番の身体は倒れる。
ポーン。
何の音だ?
レベルアップか?
ウインドウを開く。
レベル2だ。
先の攻撃により、スキル『攻撃・強』を覚えていた。
このスキルは、攻撃の威力を強化するらしい。


「す、すごいっすね・・・」


遅れてツリーエが茂みから出てくる。
遅すぎでしょ。


「ずっと見てたのかお前」
「いやぁ、僕が戦えるわけないでしょ」
「はい。聞こえなかったんだけど。お前も戦うよね。むしろなんで闘わないの?」
「バ、バカなこと言わないで下さいよ。僕がもし、戦ったら3秒でケリがつきますよっ!?」


すげぇな。
お前。
3秒とか、俺でも無理だよ。
最強じゃん。


「いやいや、そっちじゃないですって。勝てないですって。3秒で負けますって!!」
「じゃぁ、その腰に下げてる刀は何だよ」
「これは・・・・・・もしものためですよ。もし、シイグさんが殺り損ねた奴が、僕の方へ来たらどうするんですか」


もしものためという割には、なんか強そうだな。
見たところは、普通の真っ白い剣なんだけど。
その白が、まるで神に仕える巫女のように全てを浄化し無くしてしまうような白だ。


「この刀は、“この世界”のすべてを維(つ)なぐ鎖を断ち切る刀。うちの家宝です」


なにそれ、カッケー。
最強じゃね?
俺がツリーエの刀に見惚れていると、
遠くの方から、声が聞こえてきた。


「貴様かァ!! “ルーキー”のシイグはァ!!」


おっと。
忘れてた。イベントの途中だったな。
俺は、刀から視線をずらし、声の方を見る。


「うぅあぁ・・・」


思わず、声に出していた。
・・・・・・何アイツ。
現れたのは、左手が槍になっている、巨大なグロッキー。
と、その部下らしき男二人。
あれ? さっきの門番もいた。


「おうおう、やってくれたのぅ・・・」


いや、わかっていたぜ?
二つ名からして、そうかなーって。
覚悟もしていたさ。
でもこれほどとは。
あっ、あっ、い、痛い。
あいたたたたたたたたたたたたたたた。


「わしの部下をこんなにしおって」
「まあな。おれは海賊だし。お前らは悪い奴っぽいし」
「ふん。なるほど、ならこれは、村人の反乱か? なら、貴様を倒した後で、きっちりと罰を与えんとな」


フーズの“罰”という言葉に反応し、ツリーエが声を張り上げる。


「や、やめてください!! これは、僕が一人で考えたものです!! 村の皆は、関係ありません!!」
「しるかいなぁ。村人は、運命共同体じゃけん。誰か一人のミスは、皆のミスじゃ」
「んなっ・・・っ!」


フーズの残酷な声明に、ツリーエはまた何か言い返そうとしたが、それを手で制する。
まあまあ、落ち着けって。


「そういうのは、俺を倒してから言えよ」


威嚇の意味で、フーズを睨みつけながら言った。
自信はない。
初の戦闘だ。
倒せというのが、無理な話だ。
だけど、そこは俺。
ゲーマーとしての意地がある。
ひひ、絶対倒す。


「はァッはァッはァッはァあ。威勢がいいのゥ。だが、まずはコイツらだ」


部下の二人が前に出る。


「行け」
「「ハっ!」」


武器は二人とも刀。


「フーズ様が出るまでもない。おれたちでお前をとらえる!!」


二人で俺を左右から挟むように突っ込んでくる。
・・・・・・どうしよう?
詰んだ。
一手目から詰んだ。
まず、自分の選択肢を見つめてみよう。
俺の攻撃手段は・・・って、もう目の前に敵がいるゥ!?


「死ねェえええ!!」
「斬殺じゃァああああ!!」


とりあえず、一歩下がり、攻撃を避ける。
俺の攻撃手段は、拳、足、ナイフのみ。
どうやって刀に勝てる?


「まだまだぁああああああ!!」
「こんなもんじゃないわぁあああああ!!」


テンションの高い二人は、叫びに叫びまくる。
正直ウザったい。
攻撃もウザったい。
俺の首を正確に狙ってる。
殺す気かよっ。って、殺す気か。
そうかそうだよな。
横にずれ、すれ違いざまに足をかける。


「ぬおっ?」


態勢を崩したところを、後ろから蹴り飛ばす。
うつぶせに倒れたところを、背中に乗り、右手を地面に縫い付けるように、ナイフを突き刺す。


「ぐぁああ・・・」


ダメ押しで、左手も関節の逆方向に折っておく。


「くっ、えっ、がァァああああああああああああっっ!?」


ふぃぃ〜。これで動けないだろ。
動けるのは一人。
一対一なら、勝てる。
相手の攻撃を避けて避けて、ちょっとずつダメージを与えていけば勝てる。
せこくてもいい。
勝てばいい。


「おぅうううんむぅああああぇええええええええっっ!!」


残りの一人がうるさいな。
おうおう、真っ直ぐ向かって来とるわ。
攻撃はやはり、首。
わかりやすいし、狙ってる場所がわかっているなら、避けるのなんて容易い。
今回も、身体を反らし目の前を刀が通るのを見る。
刀が通り過ぎ、相手に一瞬の硬直時間が来る。
そこを狙い身体を起こし、ボディブローを決める。
それで相手が腹を押さえ、身体を折った瞬間。
頭をつかみ、顔に膝をぶちこむ。


「があああ、・・・・・・」


痛がっている。
まあ、痛いだろうな。
俺も痛かったし。
この攻撃は、俺がよくクラスメイトにやられたことだ。
すげぇ痛かったし。
すげぇ悲しかった。
今はどうでもいいことか。


「・・・止めと行くか」


顔を押さえ、悲鳴を上げている海兵の背中を踏みつける。
身体の下に入っている相手の手を取り、肩を外す。
両肩。
次は、足。
足のすねと、足の付け根のところを持ち、自分の膝に打ち付ける。
これでもう、ボキボキだな。


「うぅああ・・・・・・」


さて、残りの奴は・・・・・・
ああ、まだ生きてる。
心臓一突きでいいか。
右手を押さえていたナイフをとり、心臓を刺す。


「ふ〜、終わった」
「ハッハッハァ! やっとか、あまりに遅いんで退屈だったぞい」
「なんも言わないんだな」
「んん? わしがお主に何を言うんだ?」
「いや、結構残酷な倒し方をしたなと、自覚はしているんだが・・・・・・」


まあ、ゲームキャラに感情を持てという方が、無理か。
・・・・・・まずいな。
こいつに勝てるビジョンが浮かばない。
いざとなったらあいつに・・・・・・。
て、いねぇっ!?
なんで?
逃げたの?
俺が戦っている横で、尻尾巻いて逃げたの?
ふざけんなよ。
最後まで見届けろよっ!!
依頼主だろバカヤロー!!


「何をキョロキョロしておる? ああ、なるほど。仲間が逃げたか。だが、心配するな、アイツも大罪じゃ。必ず貴様のところへ送り届けてやるわ」


フーズは、言い切ると同時に飛び出してきた。
デカい図体の割には、中々俊敏だな。


「ハッハッハァ。三秒で終わらせてやる。“ブラッディ・マシンガン”!!」


三秒!?
すげぇな。
だが、それはツリーエが相手なら出来たかもしれねぇが。
俺には無理だ。
スキル・“ブラッディ・マシンガン”は、三連続の高速突きだ。
俺は、スレッスレッのところで避けたり、ナイフでいなしたりして、やり過ごした。
やってやる。
さっき思い出した、もう一つの俺のカードで。


「スキル“攻撃・強”」


俺の両腕を、赤い光が包み込む。
おお・・・
何か不安だ。
い、いや、いけるよ!
信じていれば、何でもできる。


「今度は、こっちから行くぜっ!!」


フーズに向けて走り出す。
フーズは、真っ直ぐ真っ直ぐ走る俺に、カウンターで槍を突き出す。
顔を横に傾ける。
頬をかすった。
だが、動きを止めるほどじゃない。
俺はがら空きの腹に、渾身の右ストレートをねじりこむ。


「ううううううううううううらああああああああああああああああああああああああっっ!!」
「・・・ぐぅおっ・・・・・・!!?」


フーズの身体は、少し後退した。
少しの間、フーズの身体は停止する。
その間に、さっき戦った海兵の刀を手に取る。
俺、刀スキル持ってんのかな?
ステータス画面から、スキル一覧を見る。
一つあった。


「はっ・・・はっはっ、ハッハッハァ。中々にやりてじゃぁないか。お主」


フーズはふらふらしていた。
だがそれでも、俺に向かってくるのをやめない。
もういいだろうが。
俺はそう思うのに、フーズはなお向かってくる。
真っ直ぐに、俺を倒すことのためだけに
理解できない。
しようとも思わない。
けど、


「もういいじゃねぇか」


ゲームのキャラに、そう声をかけてしまった。
俺も気が狂ったな。はは。
フーズは、


「まだだ。わしの部下をわしの目の前で、あんな倒し方をされたんだ。何も思わないわけないだろうがっっ!!」


・・・・・・こいつ
はんっ
我慢してたのか。
馬鹿だろ。
でも、少しだけカッコいいなと思った。
だから、あと一撃で倒す。
さっき見たスキルを発動させる。
刀を左腰にため、動きを止める。
一瞬の静寂のあと、俺の刀が光を帯び、


「・・・お、ま・・・たお・・」


一足で間合いを詰め、横一文字に刀を振るう。


「“一刀流 閃”」


フーズの上半身と、下半身が離れた。



―――――――



「はぁっと」


なんかどっと疲れたな。
深くため息をつく。


「そうだ、ツリーエの奴ぅ、どこに行きやがった」


ツリーエを探す。
だが、どこにもいない。
くそつ、次会ったらシカトだ、シカト。
精神攻撃じゃ。
そう考えたとき、目の前にウインドウが現れた。
《クエスト完了しました》
そう書かれていた。
どうでもいいことかもしんないけどさ。
これいつも、出てくるの遅くないかな。
まあいいか。
報酬として、海兵の刀をもらった。
これからは、剣士としていくか。
ミホーク並に強くなる。
目標が決まったので、今日はもう終わりにし、ログアウトした。


そして、二年の時が過ぎ、事件が起こる・・・・・・



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■作者からのメッセージ
2013年7月8日 改訂

どーも、波良田瑛太です。序章はこれで終わりです。次から本編が始まります。
それから、感想ありがとうございます。涙が出そうになりました。参考にさせていただきます。本当にありがとうございます。頑張っていきます。それでは。
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