T&Hで行われていたスピードレーシング。
それに乱入という形でユリウス、ディアーチェ、アリシアの三人が参加する事になった。
《それでは、突如参加する事になったアリシアに代わって、エイミィ・リミエッタが実況を勤めさせて貰います。
解説役はT&H店長を勤めるプレシア・テスタロッサと当店自慢のシェフ、レイヴン・マイグラトリーさんです》
《アリシア〜! フェイト〜! 頑張って〜!》
《・・・・おい、これは一体どういうつもりだ?》
レイヴンと呼ばれた男性は、やや不機嫌そうにプレシアに問い詰めた。
《愛娘達が頑張っているのよ! これは応援しなくちゃ!》
《それはお前の都合だろう? 何で仕事中の俺まで駆り出されなきゃならんのだ?》
《貴方、最近フェイトに構って無いでしょう? こういう時ぐらい応援しなくちゃ》
《・・・・後でリンディに叱られても知らんぞ》
《き、気をとり直して! 早速ですが、途中参加者達のアバターについての解説をお願いします!》
《そうね、最初はアリシアから行きましょうか》
《・・・・親バカだな》
プレシアは端末を操作し、スクリーンにアリシアのアバターを写し出した。
《アリシアが使用するクラスは、アーチャーの派生系であるガンナーを更にアレンジをしたエクストラクラス。その名もラッキースター》
《エクストラクラスは特殊だからな、その殆どか使用者が勝手にクラス名をつけている場合が多い。
因みに、ラッキースターはキャスターの特性も備わっている為、距離を選ばない戦闘の他、様々な補助スキルを持っている。その反面、ステータス値は他のクラスに比べて低めだ》
《次は王様ことディアーチェについてね》
プレシアは再び端末を操作し、ディアーチェのアバターをスクリーンに映し出す。
《彼女のアバタークラスはキャスター。衛宮くんが使用しているキャスターとは違い、広範囲攻撃特化のキャスターよ》
《幅広く攻撃が出来るが、精密さが欠け、上手く運用しないと味方も巻き込みかねん。
やや使いづらい所があるが、総じて優秀なキャスターとなっている》
《最後は彼ね》
プレシアは端末を操作し、最後の乱入参加者であるユリウスのアバターを写し出した。
《これは・・・・!?》
《何ともまあ・・・・》
ユリウスのステータスを見たプレシアとレイヴンは驚きの表情を浮かべた。
《あの〜お二人とも解説を・・・・》
エイミィの言葉に我にかえる二人は、改めてユリウスのアバターの解説を始める。
《こほん、ユリウスさんのアバタークラスはアサシン。
主に隠蔽スキルによる奇襲が得意とするクラスで、あまり正面から戦うクラスでは無いんだけど・・・・・・・・》
《ステータスを見る限り、バリバリの前衛だな。しかも圏境というレアスキルがある。これは、筋力、耐久、敏捷、固有スキルのどれか一つをワンランク上げる事が出来る優れ物だ。アサシン固有スキル、気配遮断に使えば相手に見つかる事はほぼ無いだろう。
スピードレーシングでなかったら間違いなく高校生チームの勝利だったろうな》
《解説ありがとうございました! それでは後半戦を始めたいと思います!》
エイミィの言葉によって、レースの第二幕が開幕するのであった。
レースが始まり、最初にトップに躍り出たのはレヴィ、チヴィ03、続いてフェイト、凛、グレリン、ユリウス、アリシア、なのは達が後を追う。
その後方、慎二と優人、アリサとすずか、チヴィ01、02がターゲットを奪いあっていた。
そして、その更に後方ではディアーチェがたたずんでいた。
「ふむ、そろそろ頃合いか。いくぞ紫天の書よ」
【承りました。主】
ディアーチェは紫天の書を開き、詠唱を唱える。
すると、ディアーチェの回りに無数の剣が展開された。
「行くがよい剣兵! レギオン・オブ・ドゥームブリンガー!!」
展開された剣は瞬く間に周囲のターゲットを破壊した。
《おーと! これは凄い! ディアーチェ選手の必殺魔法でスタート付近のターゲットを全て破壊した!》
《今のは魔導書の効果による広範囲攻撃ね。
キャスターのクラスでは条件を満たすと、魔導書の装備が可能になり、これによりスキルカードの上限を越えて発動が可能になるわ》
《だが、魔導書を装備したキャスターは魔力以外のステータス――――特にに筋力、耐久、敏捷のステータスが極端に下がり、前衛が全く出来ない。更に魔力消費力も増えるから、考えて運用しないと直ぐに魔力切れを起こす。
先程のレギオン・オブ・ドゥームブリンガーはもうこのレース中は撃てないだろう》
《解説ありがとうございました。それではレースの様子を見てみましょう》
レースは既に中盤に差し掛かっていた。
「慎二! これからどうする!?」
「スタート付近のターゲットを殆ど取られたしまったけど、まだ逆転の余地はあるさ。
二週目からは高得点のエクストラターゲットが出るからね。お? 噂をすれば」
慎二の視線の先には、羽が生えているターゲットと地上には巨大ターゲットが出現していた。
「衛宮! お前は羽の方を頼む! 僕はデカブツをやる!」
「わかった!」
慎二は地上に降り、巨大ターゲットに向かった。
優人は慎二の指示に従い、羽付きターゲットに狙いを定める。
「炎天よ! はしれ!」
優人が放った札がターゲットに迫る。しかし、容易くかわされてしまった。
(普通に撃っては当たらない・・・・絡め手じゃないと)
「タマモ、何かいい方法は無いか?」
【もちろんございます。
御主人様のアバターには炎の他、氷、風の三属性が備わっているんですよ】
「三つも!? 普通、属性って一人に一つ位じゃ無いのか?」
【普通はそうですけど、中にはマルチ、御主人様みたいなトリプルを持つ事もあります。中にはアベレージ・ワンと言って、五属性を持つとんでもアバターが存在したりもするんですよ】
「五属性も・・・・とんでも無いな」
【まあ、そうは言っても使いこなす人は殆どいません。せいぜい一つや二つが限度だと思います】
「わかった。ありがとうタマモ、何とかなりそうだ」
【お役に立てて、タマモは嬉しいです♪】
タマモの説明を受けた優人は、再び札をターゲット目掛けて放つ。
先程と同じようにかわされてしまうのだが――――。
「気密よ! 集え!」
ターゲットの付近で札は破裂し、風が巻き起こる。その風に巻き込まれ、複数のターゲットを破壊した。
「よし、これなら!」
優人は次々と札を放ってターゲットを破壊していく。
もちろんこれを黙って見ている人間はいなかった。
「スキル! アイスバインド!」
「いっけぇぇぇ!!」
アリシアのアドバイスによって、すずかとアリサは習い事のヴァイオリンをイメージする事により、広範囲の合体攻撃が出来るようになっていた。
「これは少し分が悪いな・・・・でも、負けられない!」
優人も負けじと、炎天と密天の二種類の札を使い分けながらターゲットを破壊していった。
一方、ディアーチェは遠方から巨大ターゲットを攻撃していた。
「剣兵よ! 行け!」
ディアーチェのドゥームブリンガーはターゲットに目掛けて放たれる。しかし、威力不足なのか、放たれた四本の剣は弾かれてしまう。
「ぬうう・・・・! やはり先程のレギオンで、魔力を使い過ぎたか・・・・」
魔力の残量が残り少ないディアーチェでは、遠方からの攻撃では巨大ターゲットは破壊出来ない。しかし、陣取った場所が悪く、ディアーチェのスピードではつく頃に他のプレイヤーに破壊されているだろう。今みたいに――――。
「カルバリン砲! 放てぇ!」
砲台を召喚した慎二は巨大ターゲットに目掛けて砲撃を放つ。
至近距離かつ高威力を持つカルバリン砲に、巨大ターゲットは耐えきれず破壊された。
「アーハハハ! 所詮はただデカイだけの的さ!
僕のカルバリン砲の敵じゃないね!」
破壊された巨大ターゲットを見ながら慎二は高笑いをした。
よほど気持ち良かったのか、しばらく笑っていると、慎二の横をアリシアが通り掛かる。
「うわぁ!? 危なっ!」
「油断大敵だよシンジ!
いっくよー! ハリセンスマッシュ!」
何処から取り出したのか、アリシアはハリセンを取り出し、そのハリセンで巨大ターゲットを吹っ飛ばした。
「ああ!? 僕のターゲットが!?」
「早いもの勝ちだよ!
さて、次のターゲットは・・・・」
アリシアは早くも次のターゲットに狙いを定めた。
慎二も慌てて追いかけるが、アリシアの方がスピードが早かった。
「二体目いただき―――」
「光翼斬!」
突如、先頭集団にいた筈のレヴィが現れ、巨大ターゲットを切り裂いた。
「へへっーん♪ どうだ! カッコいいだろう!」
「「・・・・」」
レヴィは得意気に言うが、アリシアは反応に困り、慎二はため息を付きながら、レヴィにツッコミを入れる事にした。
「・・・・あのさ、お前どうしてこんな所にいる訳?」
「ん? だって、チンジ達ばかりにカッコいい所を取られたく無いから」
「・・・・お前、馬鹿だろ?」
「バカじゃないよ! 僕はアホの娘だもん!」
「・・・・じゃあ、アホだろ? こいつらより一位の方が得点高いのは知っているだよな?」
「もちろん知っているよ。
確かに一位は狙えなくなったけど、チヴィ03がいるから十分三位は狙える。
三位さえ押さえればターゲット撃破が多い僕たちの勝ちだ!」
「・・・・なら、お前のマントに絡まっている奴は何?」
「・・・・・・・・え?」
レヴィは後ろを振り返り、自分のマントを確認した。
そこにはマントに絡まっているチヴィ03の姿があった。
「そ、そんな馬鹿な〜〜!?」
レヴィの叫びが、空しく響き渡る。
これにより、ダークマテリアルズの敗北は決定した。
一方、先頭集団はというと、高校生チームとT&Hチームとの熾烈な一位争いをしていた。
現在一位はフェイト、その後を凛が追いかけていた。
「くぅ〜! やっぱり装甲を削っているだけはあるわね! 僅かに届かない・・・・」
フェイトのアバターは耐久力を削っているため、凛よりスピードが出ていた。
凛の後ろにいるユリウスが、凛に話しかけた。
「遠坂、このままでは2位と三位を取っても、撃破数で負けるかも知れん。
俺は一旦ここで得点を稼ごうと思うのだが?」
「ええ良いわ。あたしとグレリンだけでも十分よ」
「そうか、それでは後を頼むぞ」
そう言ってユリウスはスピードを落とし、周囲のターゲットを攻撃し始めた。
その後もフェイトと凛は熾烈なトップ争いをするのだが、フェイトに軍配が上がった。
「くそ〜、でも勝負は終わっていないわ! グレリンが三位を取れば私達の勝利よ!」
「なのは・・・・」
フェイトは心配そうに見ている。初心者のなのはには荷が思いのでは無いのかと。
しかし、フェイトの心配をよそに、なのはの飛行技術は上達していった。
「嘘!? あの子初心者でしょ!?」
「凄い・・・・」
その上達振りは、凛とフェイトを驚かせた。
(こうやって・・・・こうして・・・・)
なのははレース中でも、レヴィ、フェイト、凛、ユリウスの動きをしっかり見て、その動きをずっと真似ていた。それがレース終盤で開花したのだ。
(あとちょっと!!)
グレリンとなのはは並び、ほぼ平行線で飛んでいた。
そしてゴール間近の直進コースに差し掛かる。
「いっけぇぇぇ!!」
なのはは叫びながら、真っ直ぐ飛んだ。
グレリンとほぼ同時にゴールした。
「どっち!?」
「判定は!?」
凛とフェイトは実況しているエイミィに聞く。
エイミィは端末を操作し、ジャッジを下す。
《三位は・・・・・・・・高町なのは選手です!》
「「やったー!!」」
フェイトとなのはは、互いに喜びあった。
その後の得点発表で、一位はT&Hチーム、二位は高校生チーム、三位はダークマテリアルズとなった。
こうしてスピードレーシングは幕を閉じた。
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キャラ紹介。
レイヴン・マイグラトリー
T&Hのフードコーナーを取り仕切る。正体不明の謎のシェフ。
詳しい経歴は不明で、プレシアとリンディの友人としか分かっていない。
父親がいないアリシアとフェイトにとって、父親代わりとなっている。
因みに、彼のカレーのレシピはディアーチェと一緒に考えて作った物である。