スピードレーシングを終えた一同は、レイヴンの計らいでフードコートでカレーを振る舞われていた。
「当店自慢の絶品カレーだ」
「「「「わ〜〜♪」」」」
運ばれたカレーの香ばしい香りに、食欲がそそられる。
レヴィに至っては今にも食べそうであった。
「これレヴィ! いただきますの号令がまだだぞ!」
「う〜〜・・・・」
「誰が音頭をとる?」
「それならユリウス先生が適任じゃない」
「わかった。それでは、この世の全てのカレーに感謝を込めて、いただきます」
「「「「いただきます!」」」」
若干変な音頭だったが、気にせずカレーをほうばる一同。そして、衝撃を受ける。
「何これ! メチャクチャ美味いじゃない!」
「こんな美味しいカレー初めてだよ!」
「うん♪ 頬っぺたが落ちちゃいそう♪」
アリサ、なのは、すずかの三人は絶品カレーの美味さに驚きながらも、手を止めなかった。
「何か王様の味に似ているね」
「当たり前だ。これは我とレイヴンの合作レシピで作っておるからな」
「互いのレシピを出し合い、吟味したからな。チビ王の味に似ているのはそのせいだろう」
「そうなんだ〜〜うま♪うま♪」
レヴィはカレーに夢中であまり説明を聞いてはいなかった。
その一方、熱心にレシピについて聞いている人物がいた。
「なるほど・・・・そんな隠し味があるとは」
「ただし量には注意せよ。あまり多すぎるとカレーがダメになってしまうからな」
「分量的には?」
「小さじ半程度だ」
ディアーチェの解説に熱心に聞くユリウス。彼はカレーに目がなく、よく同僚の知得留先生とカレー廻りやカレー研究会を開く程である。噂によると、知得留先生に洗脳されてカレー好きになったとか、真相は謎である。
カレーを食べながら談笑していると、プレシアが血相を変えてやって来た。
「大変よ!! アリシアがいないの!!」
「え? アリシアならそこに・・・・って、いない!?」
先程まで席に座っていた筈のアリシアは、姿形もなかった。プレシアはますます取り乱す。
「店内のカメラを全て見たけど、何処にもいないのよ! はっ! ま、まさか・・・・誘拐!? 何てこと! アリシアは小さくて可愛いから、ロリコンなオッサンに拐われたに違いないわ! 許せん! アリシアの可愛さに気づくのは認めるけど、手を出すのは、例え神であろうと、英雄の王様だろうと許さないわ! 見つけ出して―――――」
「落ち着け」
「きゃん!」
暴走するプレシアの頭をお玉で叩くレイヴン。
プレシアは少し涙目になりながら、レイヴンの方を見る。
「痛いわよ〜」
「お前が暴走するからだろうが」
「でもアリシアが・・・・」
「それなら手紙をもらっている。ほれ」
そう言ってレイヴンは、手紙を広げた。
“王様へ。
お嬢さんは頂いた。
返して欲しければ、皆を連れて八神堂に御越しください。
貴方のちびタヌキより”
そんな文面が書かれていた。
それを見たディアーチェはわなわなと体を震わせ。
「あのうつけがーーーー!!」
ディアーチェの叫びは店内中に響く。
そんな中、手紙の文面を見た優人はタメ息を吐く。
「こんな文章を書くのははやてぐらいしかいないな・・・・まったく」
「一体誰なんですか?」
「本屋八神堂の店主さんだよ。私達と同い年なんだけどね」
「飛び級で大卒。確か今年で社会人一年目だったかな?」
「そんな十才児がいるのかよ!?」
「ふぇ〜凄〜い」
優人の話を聞いて慎二は突っ込み、なのはは感心する。
「取り合えず。向こうから招待されたのなら、行くのが礼儀わよ。
ここからなら、そんなに遠くじゃ無いから」
「待て遠坂。先にレオの場所を教えてくれ」
「それなら大丈夫ですよ。レオがいる所が、八神堂ですから」
「何? 確かにレオは本も読むが、あそこではブレイブデュエルは出来ないぞ?」
「ふふふ。まあ、それは着いてからのお楽しみですよ」
凛は不敵な笑みを浮かべた。
そんなこんなで、手紙に書かれてある八神堂に赴く一同。
因みに、プレシアもついていこうとしたが、リンディに見つり、敢えなく捕まってしまったので、同行を涙目ながら断念した。
店の近くに行くと、一人の少女が立っていた。
「おお! よく来たな王様! 優人さんもいらっしゃい」
「こんにちははやて」
「我を使いっ走りにするとはいい度胸だな子狸」
「それでも連れてきてくれるから、王様は大好きなんや♪」
「ええい! 抱きつく出ないぞ!」
はやてはディアーチェに抱きつき、ディアーチェははやてを抱き付くはやてを引き離そうとした。
そんなやり取りを見ていると、なのははある疑問を口にした。
「二人は姉妹さんなのかな?」
「いや、赤の他人だよ。世の中にはそっくりな人間が三人いると言うからね。
ほら、レヴィとフェイトが似ているように」
「因みに、遠坂に同性同名同性格の叔母がいるよ。
髪の色が違わなかったら、クローンって思う程だよ」
「あれは衝撃的だったな・・・・本当はクローンじゃない?」
「ちょ、ちょっと! どういう事よ!?
そりゃ、初めて会った時は驚いたけど、私は正真正銘の真人間よ!」
「えっと・・・・・・・・」
優人と慎二の話を聞いて、真っ向から訂正を求める遠坂。どう反応すればいいか悩むなのはだった。
すると店から、白髪褐色の青年が騒ぎに駆けつけたのか、顔を出した。
「騒がしいと思ったら君達か、それにしても珍しく大所帯だな」
「あ、シロウ兄」
彼の名は衛宮シロウ。衛宮優人の兄で、八神堂の副店長をしている。
「おお! 師匠ではないか! ええい! 離れよ子狸!」
「ああん! 王様のいけず!」
ディアーチェははやてを引き離すと、身だしなみを整え始めた。
「見苦しい所を見せてしまったな師匠よ。ところで、ちびヒヨコがこちらに来ている筈だが?」
「ああ、アリシア君なら来ているぞ」
「レオも来ていると聞いたが?」
「ああ、レオも地下アリーナで遊んでいるぞ」
「地下アリーナ? 八神堂にそんな物があったけ?」
優人は首を傾げた。結構長く八神堂に通っているが、地下アリーナどころか、そもそも地下施設がある事すら初めて知ったのだ。
「それは見てからのお楽しみや。ついつきてや」
そう言ってはやては八神堂に入って行った。優人達もその後を追う。
中に入ると、カウンターに銀髪の女性が座っていた。
「うちの店員のアインスや」
「初めまして、八神・リィンフォース・アインス。アインスと呼んでおくれ」
アインスは丁寧に挨拶を交わす。
すると慎二はアインスをじっと見ながら、小さく呟いた。
「・・・・・・・・・・・・いい」
「へ?」
「良いよ、凄く良い! かなりドンピシャじゃないか!!」
「お、落ち着けよ慎二! 何が言いたいのかさっぱりだ!」
「衛宮! どうしてもっと早くアインスさんを紹介してくれなかったんだよ!?」
「え!?」
「仕草とかもろ好みだよ。ああいうのって、大和撫子って言うだよな」
(アインスは一応外人なんだけど・・・・・・・・)
「ああいうのって癒されるんだよね〜。周りにまともな女がいないから、余計に癒される」
「あら? それは一体誰の事かしら?」
凛はにこやかな笑顔を浮かべているが、慎二の話を聞いていたのか、内心怒っている事がよく分かる。
「ん? どうやら自覚があるみ―――があ!?」
慎二は言葉を言う前に、凛のアイアンクローを喰らう。
一体どれ程の握力だろうか、その状態のまま慎二を持ち上げた。
「あだだだだだ!?」
「すごいすごい♪ 片手でチンジを持ち上げてる♪」
「ほお〜〜、アイアンクローを生で見るのは初めてや」
「それよりも・・・・・・こやつ人間か?」
「は、早く止めないと!」
「問題あるまい。シンジなら」
「ああ、慎二ならきっと大丈夫。どんなふうになっても、三秒で復活するさ」
(僕はギャグキャラじゃな〜〜〜い!!)
慎二の魂の叫びは、誰にも届かなかった。
一悶着あったが、取り合えず騒ぎも収まり、慎二も無事復活を果たしたところで、優人達は地下アリーナに案内された。
「まさかこんな所があったとは・・・・・・・・完全に見過ごしていたな」
「いや、誰だって書店の地下にこんなのがあるとは思わないって」
「まるで秘密基地だね」
「まったく、博士も悪ノリが過ぎるな・・・・」
「どうや? 当店自慢の地下アリーナは?」
「正直、言葉も出ないわ・・・・」
「驚きの連続だもんね・・・・」
そうして話していると、アナウンスが聞こえ、珍妙な機械に乗ったバニー姿のアリシアが現れた。
《レディース! アンド! ジェントルマン! T&Hの看板娘にして、出張ウグイス嬢のアリシアだよ〜〜〜!》
アリシアの登場に呼応するかのように、会場は熱気に包まれる。
《さて! 今宵のスペシャルマッチはゲートクラッシャーズだ!》
ゲートクラッシャーズ。
幾重にもあるゲートを破壊し、先にあるターゲットを破壊する単純明快なゲームである。
《それでは選手の紹介です!
八神堂のマスコット! 鉄槌の騎士ヴィータ!》
《うおっしゃ!》
ヴィータが画面上に現れると、歓声が上がる。
彼女の人気の高さがうかがえる。
《続いて、ロケテスト二位! 星光の殲滅者! シュテル・ザ・デストラクター!》
《よろしくお願いします》
シュテルと呼ばれた少女がおじきをして現れた。
一見、氷のような冷たさを感じる一方、その内には灼熱のような闘志があると、優人は感じた。
《そして最後の選手はこの人だーー!》
アリシアが叫ぶと、画面には優人の顔馴染みのレオ・B・ハーウェイの姿が映し出された。
《ロケテスト全国一位! デュエリスト頂点に立つ最強のデュエリスト! 太陽王子! レオナルド・B・ハーウェイ!》
《どうも、レオナルド・B・ハーウェイです。良い試合にしたいと思います》
レオが爽やかな笑顔を見せると、女性達の黄色い声が鳴り響く。
「ふん、相変わらずキザな奴だよな。気にくわない」
「レオが女の人にモテるのは今に始まった事じゃないだろ?」
「それでも気にくわないだよ! アイツに取り巻きの女の子を取られた僕の気持ちが分かるか!?」
「いや、まったくわからん」
「少しは分かれよ!」
「んな無茶な!」
「二人とも、馬鹿な話ししないでモニターを見なさいよ。始まるわよ」
凛に言われ、優人と慎二はモニターに視線を移す。
するとヴィータが最初に動いた。
スキルを発動させ、渾身の一撃を持って次々とゲートを破壊進める。
一方レオとシュテルは動かずにいた。
「ふむ、シュテルの奴め、アレをやるつもりだな」
「レオの奴も器用だよな。普通の奴じゃあんなの出来ないぜ」
「?? どういう事だ?」
「まあ見ていれば分かるわよ」
凛はそう言って再びモニターに集中し始めた。
優人もモニターに視線移した瞬間、レオとシュテルから焔と炎が巻き起こる。
《ガラティーン!》
《ブラストファイア!》
二つの炎熱砲がゲートを貫き、ほぼ同時にゴールターゲットを貫いた。
因みにヴィータは余波に巻き込まれ、ダウンしてしまっている。
「す、凄い・・・・」
「なんつう迫力・・・・」
「あれが一位と二位の実力・・・・・・」
「・・・・・・・・」
あまりにも歴然の差に驚く初心者四人だったが、その中で優人となのはは驚くと同時にある気持ちが沸き上がる。
((戦ってみたい!))
その機会は直ぐに訪れるのであった。