ただいまの年、西暦1997年でございます。というわけで現在23歳です。
そろそろ落ち着いた行動を取らないといけませんね。なにせ前世では社会人になった年ですし。
なーんて、精神年齢が50を過ぎたおっさんの言うことじゃないな。というわけで、相も変わらずゴーイングマイウェイでいかせて頂く所存にございます。
とまあ、ちゃかしたところで、今年が大きな分岐点になることは間違いないわけで。というのも、リヨンハイヴ奪還作戦でAL4の計画の成果が試されるのだ。
これによっては、干涸らびてビクンビクン痙攣しているAL5のG弾推進派が息を吹き返す可能性もなきにしもあらず。
というか、限りなく0には近いんだが、完全に0でないなら徹底的に叩く必要があるだろう。そのあたりの意見は夕呼とも調整してある。
まあ、失敗する要素はあまりないんだが。
それはそれとして、A−01部隊に新たに42名の新人衛士が入ってきた。
「やったね、ゆうこりん、仲間が増えるよ!」
っていったら、
「おいばかやめろ!」
とマジギレされました。前日に見せたダーク系のエロマンガが原因であろうことは疑う余地もない。
前年度と合わせると76名と二個大隊を構築してなお余る。とはいえ、内一人は未だに病院に入っているのだが。
思ったよりも内臓の損傷が激しいらしく、柊町の病院送りになった。現在iPS細胞での臓器修復治療中だ。
実績は十分にある病院なので問題ないと思うが、実働人数は75名か。
新人どもはマブジジョに指揮を執らせておいて、あいた3名の遊兵枠をマブアクア、マブエターナル、マブヘタレに割り振るか。
あの三名ならそれなりに役に立ってくれるだろう。
なにせまりも並の技量の持ち主が3名である。しかもAL4用の独自戦術機である「AL4専用97式戦術歩行戦闘機」名称「迅雷(じんらい)」を授けられるエースオブザエースなのだ。
総生産台数4台、内一台はみちる用だ。
皆様お待たせ、迅雷のスペックだよ!
体長、不知火より少し大きい。
重量、不知火より少し重い。
推力、不知火の2機分くらいかな?
うん、わかりづれー。
詳細なスペックは、夕呼にでも言って見せてもらってくれ。え?おれの方が詳しいだろうって?まあ、そうなんだけどね。
簡単に言えば、YF−23の近接格闘主体の第三世代戦術機の思想をおれなりに昇華させた機体である。
先進撃震参型も近接格闘主体を主眼に置いてあるのだが、あれはあくまで第一世代の戦術機がベースである。それを近接戦では何も手を加えていない状態でAL計画不知火改修型とがちでやり合えるYF−23に、このおれが第三世代の長所をいかんなく伸ばすことに主眼を置いて設計した機体といえば、どれだけの物かは想像くらいできるだろうか。
言ってみれば、化け物だ。第三世代戦術機の最高傑作機と呼んでも過言ではない。
装甲には、撃震参型に使用する予定の装甲材を使用しているため、そのため強度については保証付きだ。この装甲材、特殊な電磁波を当てることでのみ柔軟性を獲得し、加工が可能となる。そのあと、また特定の電磁波を当てることで硬化する。
そのためかはしらないが融点が恐ろしく高い。一万度を超える。そして恐ろしく硬い。モース硬度15?なにそれ、美味しいの、てなレベルである。
装甲の構造としては、装甲材、緩衝材、装甲材の驚きの3重構造。ちなみにAL04用の改修型不知火も3重構造である。
主機関は、AL4−01エレメント反応炉を搭載。
水と反応するAL4製の特殊触媒を使用した機関である。先進撃震参型を超える1万5千馬力をはじき出す。AL4−01エレメントは、柊町で製造した希少金属で、1Kgあたりの製造費はおそらく1億円程度だろうか。
触媒として使用すると100gで、大体24時間フル稼働で1年近く持つ。燃料としてはなかなかにいい燃費だ。まあ、水を補充する必要はあるのだが。
重量は主機関が重いせいで、不知火よりも少々重めのできになっている。
とはいえ、跳躍ユニットは先進撃震参型と同じハイブリッド型になっているので、燃費は長期作戦行動にも対応している。
で、問題は、何で4機しかつくっていないかというかと、これは簡単。
先進撃震参型と同じでまともに使える人間がいないのだ。
そもそも不知火改修型でも、潜在能力をフルに使えるのはみちるをのぞいて2〜3人程度だ。その2〜3人も、リミッター解除された不知火改修型に振り回せれているため、一度出撃する度に医療班のチェックを受ける必要があるという軟弱ぶり。
というか、みちるが頑丈すぎるのか。
そのため、「迅雷」となると通常の衛士が使おうとしても、その性能の半分も引き出せないだろう。
言ってみれば、先進撃震参型と同じ決戦兵器としての側面持っているのだ。とは言え、気増幅機構をつんでいないので、あれほど出鱈目な活躍は期待できない。
せいぜい、一騎当千くらいか。ちなみにまりもだと、万夫不当である。桁が違う。さすがまりも、そこにしびれるあこがれる!
そういうみちるは、不動の四番でエース、といった立ち位置を確立している。
A−01部隊の確固たる象徴として祭り上げられていたりする。なにせ、1年間転戦して、犠牲者0の部隊の指揮官だ。
世界中から注目を浴びているが、基本表だってその戦果は報道されていない。
なぜかというと、一応AL4自体が機密計画だからだ。とはいえ、人の口に戸は立てられない。
参加した作戦の部隊員からどうしても目撃証言が漏れるのだ。
おまけに、実戦経験を積ませる都合上、世界注目の先進撃震参型を配備する日本帝国軍第十三戦術機甲大隊と一緒に行動をしているのだ。
各所から問い合わせが来るのはアホでも予想できる。
そこはまあ、いちおう機密事項だから、ということでのらりくらりと躱しているが。
さすがに不知火改修型の性能は外から見ておかしかったらしく、こちらについてはスポンサーである国連からも情報提供の圧力があった。
こっちについては、夕呼に丸投げである。
もともと一般庶民だったおれに、政治がらみの交渉は無理だっての。
まあそのかわりと言っては何だが、出せる限りのものは出す用意がある、とは夕呼に伝えてある。
あやつなら、それなりの成果を引き出すことだろう。
国内の情勢については、相変わらず頭がお花畑の連中がのさばっている。
戦線が大陸内部にあるからだろうだが、時たま帝都内の情報を収集すると辟易する。たまにこいつらを戦場に投げ込んでやりたくなる。
とはいえ、今はまだそのときではない。なにせ、悠陽の政威大将軍任命のための駒になってもらわないと困るからな。
そのために、いろいろと美味しい思いをさせてやっているのだ。ちなみに不正の証拠などはことごとく掴んでいるので問題ない。
ふふふ、逃げられると思うなよ。
ちなみに次期政威大将軍と目されている人間に対しては、様々な妨害工作を駆けている。
軍部、政治、両面から悠陽の持つ優位性を際立たせている。相手は今頃大慌てだろうが、悪いな、おれは負ける戦いはしない主義なんだ。
夕呼と榊是親のおっさん、珠瀬珠瀬玄丞斎のおっさん、さらに鎧衣えもんなど使える人脈を使いまくって、悠陽を政治的に有利な状況に持って行っている。
もちろん、未だに政威大将軍に居座っている爺様にたいしての牽制も怠っていない。
可もなく不可もなく。平時においては名君だろうが、今は乱世だ。そんな事なかれ主義のおっさんは、さっさと隠居してもらいたい。
大体が順調に推移しているのだが、少々気になる動きがあるのも確かだ。
大陸派兵部隊の指揮官に彩峰萩閣が選ばれたということだ。
AL因果律発動と、彩峰萩閣の大陸派兵部隊の指揮官就任。なにか繋がりがあることは間違いない。
慧もなんだかんだで、心配そうにしていたからな。
マブレンジャーたちの心のケアもおれの仕事の内の一つだからな。めんどくさいが、そろそろ撃震参型の発表といこうか。
萩閣のおっさんには、撃震参型と一緒に暴れてもらおう。そうすりゃ、多少はましな結果になるだろう。
というわけで、小塚三郎さんに設計図を渡した。
問題は装甲材が特殊なのですぐさま量産体制ができないところか、とでも言うと思ったか!
ここ数年雌伏の期間を設けていたのはなにも意味もなくそうしていたからではない。日本帝国の誇る宇宙工房でその装甲材を作成するラインを整備するのに費やしていたのだよ。
つまり量産即OKということになる。
ちなみに主機関は相変わらず電力供給型のバッテリーとなるのだが、その蓄電性能が桁違いだ。現在最高性能のバッテリーの性能を1とすると5くらいの違いがある。
近接格闘武装もよりどりみどり。カーボンブレード、モーターブレード、ジャマダハル型ブレード、その他もろもろ。まさに兵器市といった感じだ。
九十六式電磁投射砲の装備も可能。外部バッテリーの容量を少なくして、機体から電力を供給するということも可能になる。つまり、九十六式電磁投射砲の取り回しが格段に楽になると言うことだ。
操縦感覚は撃震弐型と同等、むしろ撃震を知るものほどよりその潜在能力を生かし切れる。
まさに死角なしだ。
あ、いや、死角はあるな。というか、ねたみだ。
言うまでもなく、不知火開発チームからのねたみの視線。いやあ、ちくちくと痛いこと痛いこと。
撃震参型のライセンス生産については、早速米国から打診があった。をいをい、まだ運用実績もないんだぜ、と思ったのだが、それだけ小塚印の製品に信頼を置いているのだろう。
流石は投機大好き米国人。リスクなしのリターンなどないとわかってらっしゃる。
問題と言えば、米国と日本だけが現在勝ち組になっていることだな。しょうがないので、米国以外の国には宇宙開発関連の技術を格安で提供しておくか。
とはいえ、米国くらいしか精密機械の量産体制が整っている国が無いんだよな。
オーストラリアも選択肢にあるんだが、オージーの野郎共、どうも日本帝国を侮っている節があるんだよな。
一度がつんとやって、どっちが上か分からせてからじゃないとしばらくは積極的な取引はなしだな。
まあ、技術者連中は気の良い連中が多いんだが、政府とか世論がな…
ちなみに米国については、思い切り友好的な関係を保っている。
それもこれも、AL5推進派のアホ共を押さえつけていることが大きい。
もちろん、それなりにこちらがBETA戦の未来像を提供していることも影響しているのだが。
なんにせよ、敵が少ないことは良いことだ。今は人類同士でやりあっている余裕はないからな。
さてと、そういえばそろそろマブレンジャーたちをつれて、ハイヴ巡りの旅に出る時間だ。
整列するのは8機の強化外骨格。
初期の頃に比べてだいぶスタイリッシュになっている。
気力増幅機構の変換効率もかなり上がっている。これを着ていれば、まあ、死ぬことはないだろう。
ちなみに各機体の右上腕部にはパーソナルカラーのしましま模様が入っている。
まあ、慧の場合はマブブラックなため、非常に目立たないが…おかげで、慧の視線が痛い。
ま、それはともかく、これからBETA討伐カーニバルの開催だ。
慧の親父さんのためにも、東部のBETAを思う存分刈り尽くすぜ!
いやまさかね、なぞのBETA大陸東部大移動と時期がかち合うとは思っても見なかったんだよ。
おかげで、マブレンジャーたちは大量の経験を得ることが出来たんだけど。
運が良いのか悪いのか、おれたちが遠征を行う時期と大陸東進の時期が食い違っていたら、大陸東部の戦線はかなりの大ダメージを負っていただろうな。