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マブラヴ 転生者による歴史改変 歴史介入の章その28
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2013/09/01(日) 17:32公開   ID:I3fJQ6sumZ2
1997年 初夏 リヨンハイヴ攻略前線基地 日本帝国区域

 「ふふふ、撃震参型とったどー!」

 「「「おおお!!」」」

 帝国軍大陸派兵部隊第十三大隊のミーティングルームで、小塚次郎中佐の宣言に部屋中がわき上がる。

 「すごいっす、隊長、やっぱり隊長はやってくれる男だと信じていたっす」

 「さすが隊長ね、既婚なのが惜しいわ」

 「うほっ、良い隊長」

 「さすが隊長、そこにしびれる、あこがれるう!」

 「よし、良いぞ隊長、褒美にケツの穴を掘ってやる!」

 賛辞をあびながら、興奮する部隊員をまあまあとたしなめる小塚次郎中佐。

 「俺たちがいつも国連のひよっこどもの成長の手助けをしているんで散々愚痴をたれたら、優先的に回してくれることになった。きっかり36機の撃震参型だ。機種転換にかけられる時間は限られているが、おまえらならやってくれると信じているぞ!」

 「「「合点承知!!」」」

 彼ら帝国軍随一の使い手集団とも言える第十三戦術機甲大隊の連中にかかれば、撃震弐型から撃震参型への機種転換はさして時間を取ることはないだろう。
 問題は、撃震参型特有の近接兵装になれる時間が少ないことだが、これについては問題があれば通常の近接長刀を使えば問題は解決する。

 「というわけで、今は一分一秒が惜しい、これより早速機種転換訓練に移る。全員衛士強化装備着用で、シミュレータールームに集合だ」

 「「「了解!!」」」

 かけ声と共に、一斉に部屋を飛び出していく隊員達を見つめながら、

 「どさくさに紛れて、恐ろしいことを口走った奴がいるな…寝るときは高級士官用の宿舎に退避しておこうかな」

 小塚次郎は、出産のため本作戦に参加していない妻のことを思いながら、1人ため息をついた。



1997年 初夏 リヨンハイヴ攻略前線基地 EU区域

 「ESFPのデータ採取を中断し、今回の攻略作戦に組み込まれる事となった、何か意見はないか?」

 ミーティングルームには、ESFPのテストパイロットとして選ばれた各国のエース級の衛士たちが揃っている。
 皆一癖も二癖もあるが、腕は確かだ。厳にESFPの完成度は、配備当初と比べて比較にならないほどの性能を有している。
 これらは、彼らテストパイロットの成果である部分が大きい。むろん、彼らの要望を実現した技術開発部の能力の高さも、現在に至るESFPの性能の向上の要因である。

 「聞いた話だが、フランスがラファールの先行量産型を今回の作戦に持ち込んだと聞いたんですが」

 「ああ、事実だ。作戦本部に正式に報告が挙がってきている」

 「ほお」

 一同の中に一瞬緊張が走る。EUのECTSFを離れて独自に作成を開始したフランスのラファール。正式配備は1998年からだが、先んじてこの攻略作戦の場をアピールの場とするために、一足先に戦場に投入するようだ。
 その成り立ちから、ESFPのライバル的存在となるラファールだ、テストパイロット達が注目するのは当然のことだろう。

 「あっちは、もう先行量産、来年には正式配備開始までこぎ着けたのに、こっちはまだまだか。先は長いな」

 愚痴った衛士の心情も分からないではない。彼らはかれこれ3年近くテストパイロットをやっているのだ。計画では来年には先行量産用の機体開発が始まっていなければならないのに、未だにデータ取りが完全にすんでいない。
 原因はひとえに、日本帝国の戦術機開発技術による。
 すでにESFPを超える機体を、日本帝国が公式発表したのだ。
 その名は撃震参型。
 第一世代と第三世代の差こそあるものの、日本帝国がプレゼンしたスペックが本物であれば、第一世代でありながら、第三世代の標準スペックをぶっちぎりで振り切っている。
 諜報部と特殊技術戦技研の解析に寄れば、現在のESFPのままでは撃震参型と直接戦闘を行った際に、同数では確実にESFPが敗北するとの結果が出ている。
 それだけならまだましで、去年から国連で運用されている不知火改修型についても、公式スペックは全て秘匿されていながらも、ESFPを圧倒的に上回る戦果をはじき出している。
 この機体についても解析の結果、確実にESFPを上回ると出ている。
 こちらは開発中とは言え、本来なら世界に存在する戦術機のトップクラスの性能を持つことが宿命付けられた機体にもかかわらず、すでにこの段階で複数の戦術機にその性能面で上を行かれている。
 これは由々しき事態と言える。

 「だが、ラファールの機体性能はどうなんだ?聞いた話じゃ、日本帝国の不知火と同程度だと聞いたが」

 別の衛士が式台に立っている試験部隊の隊長に質問を投げかける。

 「ああ、実際にほぼ五分となっている。数年というアドバンテージを持ってして、ようやく日本帝国の今の戦術機と対等のものを作り出すことしか出来ないとは、実に口惜しいな」

 「まったく、日本帝国の技術陣は化け物ぞろいだな。それとも、それもこれも全て小塚少佐の手柄なのか?」

 「撃震参型については、彼の手柄で間違いないだろう。だが、問題は国連の不知火改修型だ。こちらについては、国連軍日本帝国基地の独自改修仕様となっている」

 「つまりは?」

 「すくなくとも、不知火改修型については、小塚少佐は関係ないということだ。さらには、独自の戦術機を開発したという情報もある」

 試験部隊の隊長の回答に一同が騒然となる。

 「そんな計画、国連にあったのか?」

 「噂くらいは聞こえてきても良さそうだが、初耳だぜ?」

 「私も話しに聞いたのは、本日の全体会議の時だ。他の国の連中もお前達と同じような反応だった。詳しい話は今はまだ秘匿されている。なんでも国連主導の機密作戦に関わることだからだそうだ」

 隊長が肩をすくめて話を続ける。

 「とりあえず先ほど言ったように、今回の我らの目的はESFPのデータ採取ではなく、ハイヴ攻略作戦への尽力だ。もちろん、多数の戦術機が入り乱れる戦場でのデータ採取を否定する物ではない。ただ、主目的はあくまでBETAの殲滅とリヨンハイヴの奪還だ。これがかなえば、EU圏にあるハイヴの攻略の足がかりとなることは必定。諸君らの奮戦を期待する、以上だ」

 「「「了解」」」



1997年 初夏 リヨンハイヴ攻略前線基地 国連軍横浜基地用区域

 「これより、国連軍横浜基地所属A−01部隊の部隊編成を発表する」

 式台にたつのは、言わずと知れたA−01のヴァルキリーこと伊隅みちる大尉だ。
 これは夕呼が指揮官レベルの人間にはそれなりの地位が必要、ということで半年毎に行われる査定毎に昇進させた結果こうなった。
 ほかにも中尉になりたてが6名いる。

 「いうまでもなく、今回は今年入隊した一年生も組み込む事になっている。各員、油断のないような」

 「「「了解」」」

 「よし、それでは陣容を説明する。まずは第一大隊A−01アルファ、戦略呼称アルファ大隊、大隊長は伊隅みちる…」

 部隊編成を読み上げるみちる。ちなみに今年入隊の一年生は例の歓迎会を先日やられたばかりのためか、今ひとつ疲れ気味だ。とは言え例外はいる。
 鳴海孝之少尉、速瀬水月少尉、涼宮遙少尉の三名だ。
 この三名は去年のみちるをも上回る獅子奮迅の戦いぶりを見せつけ、先達の対抗心を大いにあおっていた。

 「別働隊、鳴海孝之少尉、速瀬水月少尉、涼宮遙少尉、貴様らには専用機が与えられる。任務は遊撃。友軍の援護を行え」

 「「「了解」」」

 この三名は遊軍として活動する。しかも乗り込む機体は最新鋭の戦術機『迅雷』である、これはすでに知らされていたことだ。
 従って動揺は少ないが、それでもねたみややっかみはどうしても起こる。

 「おいおい、大丈夫か、一年生。確かに昨日の歓迎会では大した働きだったようだが、新型での遊撃なんて大役、恐れ多くてつとまらないんじゃないか?なんなら変わってやっても良いぜ?」

 第一期生のなかでも一番プライドが高い衛士が孝之にちょっかいをかける。
 憤然とする水月と、腹黒い笑みを浮かべる遙を押さえて、孝之が声を挙げる。

 「気を悪くさせたのであれば謝ります。ですがこれは、香月副司令からの命令です。自分に拒否権はなく、また先輩にも命令権はありません」

 「うっ…」

 歴戦の戦士である自分を前にしてまったく動じた様子を見せない、いや、むしろこっちが怯むような鋭い眼光を投げつけてくる孝之を前に、その衛士は一気に空気が抜けた風船のようにしぼみ込む。

 「遠藤、あまり後輩をいじめるな。鳴海、すまなかったな」

 「いえ、遠藤少尉の気持ちもわかりますので。自分のような若輩者の身を案じてのこともあると思いますので」

 「孝之…」

 「孝之君…」

 「はい、そこ、なにぽっ、とかラブコメやっている。これからミーティングだぞ、気を締め直せ」

 「「は、はい」

 水月と遙が、慌てて孝之を見つめていた熱い視線をみちるに向ける。

 「それと鳴海、すまんな、そう言ってもらえると助かる。さて、それでは我々に任された今回の作戦について説明する」

 淡々と作戦概要を説明するみちる。
 戦略航空機動要塞の凄乃皇弐型、その直援につくのがみちるを始めとしたアルファ大隊、その周辺で展開するのがブラボー大隊。
 そして臨機応変にそれらの部隊を援護するのが孝之を始めとした三名の遊撃部隊。
 AL4専用97式戦術歩行戦闘機、通称『迅雷』についての説明と、この戦術機を与えられるのが、みちる、孝之、水月、遙の4名だけということ。
 これについては、多少の反発が見られたが、戦術機適正値とシミュレーターの実績を元にみちるが淡々と説明をすると、皆なっとくして引き下がった。
 今回の作戦の主役である凄乃皇弐型は、その巨体故、宇宙へ打ち上げその後自力で前線基地へと軌道降下することになっている。
 ちなみ操縦者についての情報は全て機密という名のベールに覆われている。
 まあ、みちるたちマブレンジャー組は知っているのではあるが。
 とはいえ、まさか他のマブレンジャー達が、黒い幻影として戦場で活躍するために一緒に運ばれてきているとは夢にも思っていなかった。
 かくして、舞台は整いつつある。
 時は1997年8月、人類二度目のハイヴ攻略の正否は如何に?



 「さて、派手な花火を打ち上げようぜ、凄乃皇弐型」

 「勝手に戦場に乱入しても良いのかしら?」

 「戦場、父さんもがんばっている?」

 「ふむ、ハイヴ攻略作戦か、腕がなるな」

 「壬姫だいじょうかなー」

 「うーん、光学迷彩でぼくたちの姿って分からないんだよね。流れ弾とかだいじょうぶかな?」

 「それなら、師匠が電磁投射砲の直撃でも大丈夫だって言ってたよ。凄いよね、気の力って」

 それとは別にご機嫌な隆也と、自分たちのような未熟者が戦場に立って良いのか思い悩むマブレンジャー達であった。


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