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マブラヴ 転生者による歴史改変 歴史介入の章その40
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2013/12/29(日) 19:22公開   ID:I3fJQ6sumZ2
1997年 初夏 カシュガルハイヴ周辺

 「作戦開始地点に到達、これより戦闘準備を整えます。第十三戦術機甲大隊においては、準備が完了次第小隊単位での『疾走』からの発進をお願いします」

 雷雲に備え付けられている司令室から、マブマダーから疾走の指揮制御室へと連絡が入る。ちなみにマブマダーこと、涼宮茜の肌はつやつやしている。
 いわずもがな、マブアクア、マブエターナルの肌もつやつやである。
 対照的にマブヘタレはげっそりとしていた。なぜだろう?

 「こちらEナイト1了解。きいたから、てめえら、全機発進準備、完了した小隊から各機出撃だ。今世紀最大のパーティータイムだ。全員気を抜かずに派手にやらかせ!」

 「「「了解!」」」

 「さてと、それじゃ俺も愛機に乗り込むかな」

 司令官用のイスからゆっくりと腰を上げると、そのまま制御室を後にする小塚次郎中佐。この作戦が終わればおそらく大佐に昇格、そして今いる第十三戦術機甲大隊の指揮からは離れることになるだろう。
 次に準備されているのは、第一大陸派兵部隊副司令官の座だ。彩峰萩閣中将の懐刀として招かれているのだ。
 ちなみに小塚次郎中佐がいなくなることにより、第十三戦術機甲大隊の指揮官の座が空くことで、その座を狙って帝国軍内でも激しいつばぜり合いがあった。
 何せ、一癖も二癖もある第十三戦術機甲大隊の隊長である。生中な人物ではつとめることが出来ない。
 下手に侮られでもすれば、戦闘中に不幸な事故が起きてもおかしくない。そんな部隊なのだ。
 それが帝国の戦術機甲大隊でも随一を誇る部隊であると言うことは、軍の首脳陣にとっては頭の痛い問題であるが、それらの声を押さえつけるだけの戦果を挙げ続けてきたのがこの第十三戦術機甲大隊である。
 そのため、隊長職を日本帝国の名門武家の出である真壁家のものを就任させるという話も出たが、生憎と全員が斯衛に在籍のためそれはすげなく断られたらしい。
 とまあ、いろいろとすったもんだあった結果、隊長には現在の副隊長が昇格、軍部の息がかかる者は1人も入り込めなかったというお粗末な結果になった。
 これはひとえに、小塚次郎中佐の暗躍と、彩峰萩閣中将の政治、そして、なぞの紳士の活躍によるところが大きい。
 ちなみに第十三戦術機甲大隊は、その所属を第一大陸派兵部隊に移し、今までの遊撃的な活躍を続けることになる。ちなみに第一大陸派兵部隊は、ユーラシア大陸のいかなる戦線にも派遣されるという過酷極まりない部隊だ。
 第二は中華大陸、第三はインド方面、第四は中東方面、第五はヨーロッパ方面である。これだけの大戦力を恒常的に展開できるのは今や米国を除けば日本以外にあり得ない。
 つまりそれだけ今の日本帝国の発言権と国際的地位は高いものとなっている。次代の覇権を狙うソ連や米国などとっては目の上のたんこぶ的な存在とも言えよう。
 EU各国やその他の国とっても、日本の動向は気になるところだ。ネックは日本が米国と同盟関係にあることだろうか。なにせこの二国が手をむすぶとなると、BETA戦後の世界経済の8〜9割は押さえられるとの試算が出ている。
 第二次大戦で日本帝国を敵に回して戦ったことのある国にとっては、米国と手を組んで世界の覇権を狙う日本帝国の図が頭をちらついてしょうがないことだろう。
 とはいえ、日本帝国の最高執政機関である内閣は現在人類の共存共栄を掲げ、BETA戦の終結こそ人類の未来を照らし出す光明であり、人類同士の争いなど以ての外と標榜している。
 これは裏を返せば、各国間で紛争を起こそうなら、内政干渉も辞さないと受け取れる宣言である。無論、いまの総理大臣である榊是親にはそのような気は毛頭無い。
 下手にそのような行動を起こせば、いらぬ火種を招いてしまうからだ。打つ手を間違えれば、本当に米国と日本、そしてそれ以外を巻き込んだ世界大戦が起こってしまう可能性だってないとはいえない。
 もっとも、BETAが健在であれば全面戦争に突入、ということはないだろうが。

 閑話休題

 「俺の愛すべき第十三戦術機甲大隊での最後の指揮だ。誰1人死なせない、なんてうぬぼれちゃいないが、少しでも少ない被害でこの作戦を成功させてみせる」

 力強い言葉と共に、愛機である撃震参型のシートに身を投げ出す。身体をシートに固定し、網膜投影をONにする。
 自分と機体が一体となったような錯覚。自身が大きくなるような感覚、この感覚を小塚は気に入っている。

 「さあ、ショータイムだ」

 今、戦いの幕が上がろうとしていた。



 「あー、てすてす。聞こえるか、我らが精鋭達よ!」

 雷雲の館内放送に、聞きなじみのある声が流れる。

 「これから、桜花作戦、別名オリジナルハイヴかち込み大作戦を決行するに辺り、多くの人類の期待を一身に背負った諸君らに一言伝えたい」

 すでに全員が着座している13機の戦術機の中にも当然その音声は届いている。

 「この作戦、勝利はすでに約束されている。ならば何をもって作戦の成功とするか?答えは簡単だ。完膚無きまでの勝利、圧倒的なまでの勝利、一片の曇り無き勝利。すなわち完全なる勝利を持ってして作戦の成功とする」

 雷雲には整備兵はいない。自動整備用のロボット整備兵が全ての整備を人間の整備以上の精度と速度をもって行うのだ。
 つまり聞いているのは、マブレンジャー12名と、神宮司まりも、そしてマブデカ1名のみ。
 彼らは一様に不敵な笑みを浮かべている。
 何を今更、である。
 彼らの力を持ってして完全なる勝利以外あり得ない、全員がそれを確信している顔であった。

 「ま、いうまでもないか。というわけで、桜花作戦発動まであと1分を切った。開始時間と同時に雷雲から敵BETAに対して荷電粒子砲を一斉射、同時に13機の戦術機が出撃、全速で敵ハイヴへと突撃を仕掛ける。以上だ。これよりカウントを開始する、残りあと30、29」

 軽い口調で締めくくると、カウントダウンを続ける。そのカウントダウンはだんだんとテンションを上げていく。

 「ラスト10、いくぜぇ!」

 もはやお祭りである。
 一斉に、各機の床面が開かれ、大地が流れていく光景が現れる。
 現在雷雲は時速500Kmで巡航中だ。
 迅雷、激震ALは、固定用ハンガーにつるされた形になっている。

 「ふぁぁぁぁいぶ、ふぉぉぉおぉっっ!!!すりぃぃぃ、とぅぅぅぅぅぅ、わぁぁあああああん、じぇろにもぉぉぉぉ!」

 「各機、出撃!」

 カウントじぇろにも(?)とともに、まりもの凛とした声が響き渡り、全機が雷雲から下降出撃を開始した。
 時速500Km、言葉にすれば簡単だが、その速度はいかばかりか。F1でさえ時速400Kmを超えることはないことからそれがとんでもない速度であることがわかる。
 だが、雷雲から降下出撃を行った13機はいずれも完璧に降下を完了させ、陣形を一糸乱れぬ動きで完成させる。

 「チャージ完了、荷電粒子砲、発射!」

 茜の声が上がる。
 雷雲から断罪の光が、地上に蔓延るBETAに向かって放たれる。

 「荷電粒子砲掃射完了後、サブ荷電粒子砲を一機づつ、3秒間隔で掃射します。各機注意ください」

 茜の注意喚起は、雷雲組、第十三戦術機甲大隊に向けて行われる。

 「AL01了解、A01部隊、注意を」

 「「「了解!」」」

 「Eナイト1了解、おめーら、注意しろ」

 「「「了解!」」」

 各機の了解の声を聞き、茜はスイッチを切り替え、隆也用の連絡回線に繋げる。

 「師匠、まずはフェイズ1完了しましたよ」

 「おう、こちらでも確認した。衛星からの情報と、量子電導脳のリーディングで、レーザー属種の居所は丸裸だ。丸裸と言えば、昨晩はお楽しみでしたね?」

 「ぶっ!!」

 思わず噴き出す茜。

 「まあ、心配しなさんな。のぞき見するような悪趣味な真似はしないよ」

 「ほ、本当ですよね、師匠!」

 「ああ、ほんとうだとも」

 といいつつ、心の中で盗み聞きしないとは言ってはいないがな、などと呟くろくでもない紳士であった。

 「米国とソ連から、降下機動部隊の許可申請が来ているな、荷電粒子砲の一斉射が終わり次第、いつでもカモン、と返事を頼む」

 「了解しました」

 茜は素早く回線を衛星回線につなぎ替えると各国とのやり取りを開始する。
 最初の1分で、陸上の荷電粒子砲の範囲にいるレーザー属種は全ていなくなった。

 「こちらAL1より、A01部隊各機へ。これより『雷雲』および『疾走』と併走しつつオリジナルハイヴを目指す。戦闘は必要最小限を心得ておけ、敵の本拠地だ。何が潜んでいるか分からんぞ」

 「「「了解」」」

 まりも率いるA01部隊は総じて士気が高い。
 何せあの厳しくも優しく自分たちを導いてくれてた師匠であるまりもが一緒の戦線にたっているのだ。如何にマブレンジャー達が早熟の天才達だとしても、その心強さと士気に与える影響は半端ではない。

 「おーおー、向こうは冷静だな。おまえら、俺たちも歴戦の猛者だ。まだまだケツに卵の欠片をひっつけたような連中に遅れを取るんじゃねえぞ?」

 「「「了解!!」」」

 第十三戦術機甲大隊の面々も一斉に返事を返す。彼らが敬愛する部隊長と一緒に作戦行動を取るのがこれで最後だと分かっているだけに、こちらも負けずに士気が高い。
 血気に逸らなければいいがな、と心の中でこぼす小塚次郎をよそに、部隊全員は恐れを知らない戦士のように愛機を駆っている。べつにそのように振舞っているわけではなく、本当にそうであるのが問題だ。

 「全機、生きて帰ることに死力を尽くせよ、基本的に、今作戦の俺たちは見届け人の側面が強いんだからな」

 つい心配でそんな声をかけてしまう。我ながら大した余裕だな、と思う。
 BETA戦でそんな声を掛けることができるほど自分は卓越した衛士なのか?と、心の中で問う声がする。

 「分かっていますよ、隊長。生き残るのが第一、作戦の結果は、それについてくるおまけみたいなものだって」

 「分かってればいいんだよ、分かってれば」

 全員、肩に力は入っていないようだ。安心して、作戦指揮に戻る小塚次郎だった。



1997年 初夏 カシュガルハイヴ上空衛星軌道

 「『雷雲』からの一斉射が完了したと連絡が入りました」

 「完了した、か。10分間荷電粒子砲を打ちまくっておいて、一斉射とは恐れ入ったな。これはステイツに取って脅威以外のなにものでもないぞ」

 「そんな心配は、生きて帰ってからにしたらどうです、中佐?」

 「ああ、そうだな」

 米国軍の降下機動部隊の指揮を取るマイヤー中佐はそう答えると、友軍機にAL弾による降下爆撃を要請した。
 凄まじい勢いで地上に打ち込まれるAL弾頭を搭載した軌道降下ミサイル。
 よく見るとソ連の宇宙軍からも同時に打ち込まれているのが見る。

 「今回はどちらも同じハイエナ同士、なんとか仲良くできないものかね?」

 どだい無理な注文を口に出して呟く。

 「それは無理な注文でしょう。あいつらは自国愛に凝り固まりすぎて、他者との連携という者がまるでわかっちゃいない。過去、何度か作戦を一緒にしたんですがね、そりゃあ酷いものでした」

 「そうなのか?」

 「ええ、口を開けば、我が祖国では、我が祖国ではって、自分たちのやり方をごり押ししてきますからね。ありゃあ、相当我慢強くないと共同戦線を張るのは無理ですよ」

 「なるほどな」

 会話を続けながら、マイヤーは上空に形成される重金属雲を見つめていた。
 それの一部が突如として消失した。

 「な!?何が起きた?」

 続けざまに、重金属雲に穴があいていく。
 その下には異形のレーザー属種が佇んでいた。
 まずその巨体。要塞級よりもさらに大きい。
 次にレーザー出力口とおぼしきレンズ体の数、実に9つ。しかも一つ一つが重光線級を凌駕している。
 その数は実に8体。後に超重光線級と名付けられることになるBETAである。
 成層圏外の宇宙船は認識圏外であるのか、反応はしないものの、カシュガルハイヴ上空に飛来する全てのAL弾を撃墜。
 どころか、重金属雲の彼方から飛来するAL弾については、途轍もない出力のレーザー照射で重金属雲に穴を空けながら打ち落としてしまう。

 「おいおい、軌道降下どころの話じゃなくなってきたぞ…」

 マイヤーの呟きは、むなしく機体内に響いた。


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