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マブラヴ 転生者による歴史改変 歴史介入の章その43
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2014/01/19(日) 19:18公開   ID:I3fJQ6sumZ2
1997年 初夏 カシュガルハイヴ周辺

 「『インドラの矢』着弾を確認、衝撃波が数十秒後に到達するぞ、準備はどうだ?」

 「A−01部隊、第十三戦術機甲大隊共に全機指定ポジションに着きました。あとは衝撃波が通り過ぎるのを待つだけです」

 茜の言葉に満足そうに隆也が頷く。

 「そうか、なら大丈夫だな。後は、衝撃波で舞い上がったBETAが降ってくるかもしれないから、上空に注意するように指示を出しておいてくれ」

 「了解しました」

 隆也の指摘に茜が通信を行う。

 「これより数十秒後に衝撃波が来ます、各員注意してください。なお、衝撃波で上空に舞い上がったBETAが落下してくる可能性があるので、頭上に注意して下してください」

 「AL1、了解、おまえたち聞いたな。滅多にお目にかかることのない上空からのBETAの自爆攻撃だ。せいぜい注意しろ」

 「「「了解」」」

 まりもがA01部隊に発破をかける。

 「Eナイト1、了解。おまえら、今日は晴れ時々BETAらしい、全くおかしな天気だよな。というわけで頭上注意だ。空から降ってきたBETAに潰されるなんてアホな死に方はするなよ」

 「「「了解」」」

 小塚次郎中佐の声に、第十三戦術機甲大隊の面々が返事を返す。
 歴戦の猛者達でも、空からBETAが降ってくるなど、初めての経験だ。どれだけの規模なのか、そしてどれだけの密度で降ってくるのかで、状況はまるで変わってくる。
 軽々しい口を叩きつつも、小塚次郎中佐はその難易度の高さを予想していた。

 「最悪、ある程度の損耗を覚悟する必要があるか?」

 ぽつりと呟くと、首を横に振った。

 「いや、そんなくだらない、攻撃でもない事で貴重な部下を失うわけにはいかないか。ここは撃震参型の能力を信じるか」

 撃震参型は、観測衛星からの緻密な観測結果に基づく衛星データリンクを活用することで、BETAの攻撃範囲を可視化することを可能にした。
 その結果、乱戦の中であっても相手の攻撃が届かない場所、つまり安全地帯を的確に把握することができ、それに伴い撃震参型がBETAの攻撃を受ける確率は劇的に低下した。
 また、通常のデータリンクの情報も総合することで、得られたデータを三次元的な情報として扱い、対BETA戦においての圧倒的なアドバンテージを手にすることが出来たのだ。

 「こちらEナイト1より、RAIUN管制へ」

 「こちらRAIUN、どうしましたEナイト1?」

 秘匿回線からの通信に、オペレーター代わりの茜が返事をする。

 「いや、管制ではなく、そこにいる変態にとりついでもらいたいんだが」

 「はいはい、お呼びの変態ですよ、小塚隊長」

 茜の代わりに、隆也の軽い声が通信から返ってくる。

 「頭上から降ってくるBETA、これに対して撃震参型の対BETA用攻撃予測シミュレータは正常に稼働するのか?」

 「愚問ですね、小塚隊長。帝国技術廠きっての俊才、小塚三郎少佐が手がけた撃震参型ですよ?その程度はお茶の子さいさいですよ」

 「ほお、お前がそう言うのならば大丈夫なんだろうな」

 小塚次郎中佐は、この変態紳士である隆也が、撃震参型の作成に関わっていることを推測していた。
 開発関係者のお墨付きと言うことであれば、安心出来るというものだ。

 「お、そうこう言っているうちに、衝撃波、来ます。大丈夫なはずですが、注意だけはしておいてください」

 「了解だ」

 小塚次郎中佐が前方に目をやると、確かに衝撃波によって砂塵が巻き上げられて出来る壁のようなものが徐々に迫ってきている。

 「衝撃波到達、ラザフォードフィールド正常展開。よし、特に問題はないようだな」

 「BETAが空から降ってくるっていう話はどうなった?」

 状況を確認し満足そうに頷く隆也に、小塚次郎中佐が確認をしてくる。

 「観測衛星によると、結構な数が空に舞い上がっている見たいですね。地上落下の衝撃で90%以上は、そのまま行動不能になる予定です」

 衝撃波により吹き飛ばされてきたBETAがラザフォードフィールドに触れてミンチになるのを見ながら、平然と言葉を返す隆也。

 「そうか、やっかいなのは逃げ場もないくらいの密度で降ってこられた場合なんだが」

 「そこまでの密度で舞い上がっている様子はないですね。第十三戦術機甲大隊の衛士たちの腕を持ってすれば、十分対応可能な範囲です」

 「了解した、済まんな、つまらん質問をして」

 「いえいえ、作戦に参加した部隊の安全に気を回すのは、指揮官としては当然のことですからね」

 「そうか、さすが変態は理解があるな」

 「いえいえ、むっつりスケベには負けます」

 「誰がむっつりだ!」

 思わぬ呼ばれかたに、小塚次郎中佐が反論をする。

 「もちろん、1人しかいないでしょう?奥方がいないことをいいことに、1人で道具を使って慰めるなんて…。しかも自分の嫁に似せたやつを」

 「な、てめえ、なんでそれを」

 「ふふふ、変態の道は変態ということですよ、むっつりスケベ様」

 「ど、道具?」

 会話を盗み聞きしていた茜が、思わず反応する。

 「あー、お前にはまだ早いから。まあ、そんなに気になるなら、ヘタレに聞いてみ?あいつもなにげに道具愛好者だからな」

 「わかりました、今度聞いてみます」

 「お、おう」

 冗談のつもりで言ったのに、まさか本当に聞くとは思わなかった隆也がちょっとびっくりして答える。
 これが発端になって、孝之の1人エッチが禁止され、彼の性処理は厳しく女3人の手により管理されることになるのだが、それは流石の隆也も見抜けないことだった。
 そしてそのことにより、ますますストレスをためた孝之が癒しを求め、そしてついには…。いや、未来はまだ確定してない。そう、まだ彼があの女性の魔の手にかかると確定した訳ではないのだ。
 とはいえ、それは限りなく確定に近い未来である。実現可能性と本当に実現するかどうかについては、天と地ほどの開きがあるのだ。

 「衝撃波、通過完了しました。これより通常戦闘を再開してください」

 「AL1了解、A01部隊、再度部隊を展開」

 「「「了解」」」

 「Eナイト1了解、おまえら部隊を展開しろ」

 「「「了解」」」

 瞬く間に避難する前の陣形を展開させるA01部隊と第十三戦術機甲大隊の衛士たち。
 この展開速度の速さは、まさに一級品だ。並大抵の練度ではこうはいかない。
 それだけに第十三戦術機甲大隊の衛士たちは困惑していた。まりも、みちる、孝之、水月、遙の5名はわかる。だが、残りの8名は一体?
 今まで共に戦ってきたからこそ分かる、A01部隊の練度の異常なまでの高さ。それに全く引けをとらない無名の衛士が8名もいることに驚きを覚える者も少なくない。
 なぜなら、まりもを筆頭とする5名は、一度でも戦場を共にすればその圧倒的なまでの技量に舌を巻くしかないからだ。
 最精鋭と言われる第十三戦術機甲大隊の面々をして、まだまだ自分たちは及ばない、と思わせるだけの技量を持つ5名。それに匹敵する技量の持ち主。
 興味は尽きないが、今はとりあえず一緒に戦う衛士の腕がよいことを喜ぶことにしよう、そう結論づける第十三戦術機甲大隊の衛士たちだった。

 「直上、BETAの反応有り、各員、頭上に注意してください」

 衝撃波により空中に舞い上がっていたBETAが続々と地上に向かって落下を始めるのを、雷雲の管制室で確認した茜が注意喚起を促す。

 「「「了解」」」

 第十三戦術機甲大隊の面々は。撃震参型に搭載されているBETAの行動データ予測システムからもたらされる情報を元に、空から降ってくるBETAを悉く躱していく。
 A01部隊も同様に華麗に降ってくるBETAを回避している。
 そして直進すること数分、ようやく空から降ってくるBETAがなくなってきた頃、それは姿を現した。
 オリジナルハイヴの地表構造物。モニュメントだ。
 地上にそびえ立つその異形の構造物は、これまで見てきた事があるハイヴのどれよりも巨大だった。
 今はまだ頂上部分しか見えていないが、これから近づくにつれその巨大さが身に染みていくように実感されることだろう。

 「敵本拠地の地表構造物を視認。重光線級の射程に入るまであと30分弱。その前に、地下茎に侵入します。各自、装備を確認、ハイヴ攻略用装備に換装が必要な機体は早めの換装を行ってください」

 「「「了解」」」

 茜の指示に、A01部隊と第十三戦術機甲大隊が従う。もっともA01部隊は換装の必要がない。彼らの機体である「迅雷」は如何なる条件下でも行動可能であり、装備もまた条件を選ばない。
 それが地上であろうと、ハイヴ内であろうとだ。
 逆に第十三戦術機甲大隊の操る「撃震参型」はその装備によっては、状況に応じて武器の換装を行う必要がある。それだけハイヴと通常の地上でのBETA戦は勝手が違うと言うことである。
 「迅雷」が異常なだけで、「撃震参型」が戦術機の標準的なものであることはいうまでもない。

 「侵入予定の地下茎入り口ポイントα12を視認。一時停止し、各員の装備確認を行います」

 相変わらず荷電粒子砲をどっかんどっかん撃ちまくりながら、雷雲から茜が指示を飛ばす。
 作戦開始から3時間、部隊はついにオリジナルハイヴの入り口にまで到達したのであった。



1997年 初夏 カシュガルハイヴ上空衛星軌道

 「AL4の新型兵器により、地上の新型BETAはほぼ稼働していない状況になりました。作戦空域に戻り引き続きAL弾の発射を続行を具申いたしますが?」

 「ああ、それでいい」

 マイヤーが「インドラの矢」の威力に舌を巻きながら、オペレーターの具申を採用する。
 高々度からの地上への質量攻撃。言葉にするのは簡単だが、それを実際に行うのは言うほどたやすくない。
 特に地上の的など1000m先の針の穴を狙うよりも遙に難易度が高い。如何にコンピュータによる照準の補正があるとはいえ、ピンポイントにそこに攻撃を命中させるなど至難の技だ。
 そしてそれ以上に脅威なのは、あの恐ろしいまでの高出力を誇るレーザー攻撃を受けてもものともしない弾頭役を果たした金属だ。
 一体どのような金属なのだろうか?
 普通の金属ではまずあり得ない。あれほどの高出力のレーザーだ。そんじょそこらの鉱物、合金では瞬く間に溶かされてしまうだろう。
 AL4、その内容はたかだか一宇宙軍の中佐であるマイヤーには伺うことが出来ない機密の固まりだが、その成果は確実にBETAを追い詰めるのに役立っている。
 頼もしい反面、それが逆に人類同士の抗争に使われたらと思うとぞっとしない。

 「あと2分ほどで元の爆撃位置に展開が完了します。情報によりますと、新型BETAが1匹だけ残っているそうですが、身体の半分を失っているためまともに機能していないとのこと。集中爆撃による完全破壊を具申いたしますが?」

 「ああ、それで良い。また出てきたらそのときはそのときだ。とりあえず今はあの新型BETAを一刻も早く討ち滅ぼすことが肝要だ」

 「了解しました」

 マイヤーは指示を出しながら、新型BETAがまた出てきたときについて考えたが、そのときはもう一度「インドラの矢」の世話になることしか手はないだろう、と思っていた。
 なにせ、衛星軌道からの爆撃は悉く撃墜されるのだ。しかもAL弾頭での重金属雲すらものともしない。
 こちらで打てる手段はないに等しい。
 それから十数分後、AL弾頭の集中運用と、それに平行して行われた軌道降下爆撃により、かろうじて姿を留めていた2匹の超重光線級とともに、身体の半分を失いながらもレーザー照射機能を有していた最後の超重光線級の機能停止が確認された。
 そして、軌道降下部隊の突入の指示が出される。

 「幸運を」

 「またハイヴ内で会おう」

 「帰ったら、本物のウィスキーをおごってやるよ」

 「おれ、無事に帰ったら彼女に結婚を…」

 「「「おい、ばかやめろ!」」」

 「え?」

 まだ若い衛士が諸先輩から総突っ込みを受けたのにびっくりした表情を浮かべる。

 「いいか、そう言うのはフラグっていってな、不吉極まりないんだよ!」

 「え、え?」

 「お前、前線にいながらMANGAもLIGHTNOVELも読んだこと無いのかよ!」

 「え、いや、暇があれば、彼女に手紙書いていたから…」

 「「「けっ、このリア充めが!!」」」

 未だに独身で彼女なしの男性衛士から怨嗟の言葉を投げかけられるまだ年若い衛士。完全に八つ当たりである。
 そんな感じで軽口を叩きながら準備を完了した軌道降下部隊。
 マイヤーの指示と共に、彼らは宇宙船から解き放たれ重金属雲の中へと身を投じていく。
 同時にソ連の軌道降下部隊も、地上へと向かって行く。
 これから先は時間が勝負だ。AL4の成果で、ハイヴ内の構造データはあるが、そこに到達するまでにどれだけのBETAに出くわすことになるかは全く未知数だ。
 あとは軌道降下部隊の手腕に頼るしかない。
 しかしその目的が、反応炉の破壊ではなく、国益のためのアトリエ占拠にあるということに、内心忸怩としたものを感じるマイヤーであった。
 彼もまた、人類をBETAから守りたいと願う1人の戦士だからに他ならない。

 「軍人とはままならないものだな」

 1人自嘲するように笑うマイヤーであった。


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