ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

Fate/ZERO―イレギュラーズ― 第43話:とある侍の愛憎譚=その10・再起ルート=
作者:蓬莱   2014/02/02(日) 20:01公開   ID:.dsW6wyhJEM
二代とシュライバー達が白騎士に挑まんとしている頃、大型貨物船上では、ランサー達によって、空を浮かぶビグ・ラングに乗り込むための大仕掛けが始まろうとしていた。

「さぁ、一騎駆けはあの娘に任せるとして―――」

とここで、大仕掛けの提案者であるランサーは、二代たちが厄介な“白騎士”を惹きつけている事を確認すると、凛達を救う為にビグ・ラングに乗り込まんとする時臣達に目を向けた。
当然の事ながら、護衛であるバグ達を引き連れて上空を飛ぶビグ・ラングに乗り込むには並大抵の手段では無理な話である。
そこで、ランサーが用意したのは―――

「―――こっちの準備はいいかしら?」

―――ランサーの宝具である“騎士団”を応用して形作られ、大型貨物船の甲板に設置された“巨大なカタパルト装置”だった。
ランサーの立てた“ビグ・ラング突入作戦”の大まかな内容はこうだった。
まず、ビグ・ラングに乗り込む際の障害となる“白騎士”を二代たちが引き付けた後、ランサーの“破城槌”で、ビグ・ラングの周囲に展開するバグ達に叩きつける。
無論、ランサーの魔力で顕現された“破城槌は、バグ達の“AMF”に守られたビグ・ラングそのものに損傷を与える事はできない。
だが、先の浅間が放ったズドン攻撃でも見たように、大量の魔力を有する攻撃ならば、“AMF”の効果が発揮するまでにある程度の時間が掛かるのだ。
そのため、この間においては、バグそのもの破壊は可能であり、この“破城槌”も周囲に展開するバグ達の破壊する事でビグ・ラングへの道を切り開くためのモノなのだ。
そして、すかさず、残ったバグ達が防衛網を再形成する前に、時臣達をカタパルト装置で発射し、ビグ・ラングへと乗り込むというのだ。

「ところで、ランサー…本気なのか? とても正気とは思えないのだが…」

とここで、ランサーに無理やり、時臣達と共にカタパルトに乗せられたケイネスが、この方法の提案者ランサーに不安と不満が入り混じった声音で本当に大丈夫なのかと確認するように問い質してきた。
当然の事ながら、ランサーの提案した方法は、普通の状況下ならば考えた時点で即却下されるほどの、某世紀末系漫画のアニメ版で見られる人間砲弾並に無茶なモノである。
しかも、それを、サーヴァントではなく、魔術師や異世界の人間とはいえ時臣達のような生身の人間にやらせるのだからその無茶振りも直の事である。
そんなケイネスの不安に対し、ランサーは、しばし考えた後、軽く笑みを浮かべながらこう言い返した。

「そんなの決まっているでしょ…正気じゃないから、本気でこんな方法を思い付いて実行できるのよ!!」
「待てぇえええ!! それは笑顔で自信満々に言う台詞じゃないぞ―――!!」

もはや、狂気でなければやれないという正気の沙汰とは思えないランサーの言葉に対し、顔を青褪めさせたケイネスは、ランサーに向かって、思わず抗議の声を上げた。
“というか、何故、私がこんなにも身体を張らされるのだ…?”
ここ最近、何か自分に身体を張らせようとするランサーに対し、ケイネスは、もはや狂気の沙汰としか思えないマスターである自分の扱いにそう頭を抱えたくなった。
だが、慌てふためくケイネスに対し、時臣は“だが…”と静かに言葉を呟きながら、ランサーにこう告げた。

「…凛を助けられるならば、私は一向に構わない!!」
「「…」」
「…任せなさい。最短で最速であんたの娘のところまでぶっ飛ば…届けてあげるわ」
「ちょ、今、言い直したで御座るな!! 何気に言い直したで―――ふん!!―――うぼぁ!?」
「まったく、命知らず共が…」

まさしく、不退転の覚悟で凛を救わんとする時臣の覚悟を見たランサーは、時臣の覚悟に応えるように心得たと笑みを浮べて返した。
そして、言葉こそないものの近藤と桂も、凛を助けたいと願う時臣の言葉を聞き、“俺達に任せろ”と言わんばかりの笑みを浮べていた。
ちなみに、ランサーの物騒な発言を聞いた犬臭い忍者がツッコミを入れた瞬間、ランサーの裏拳で撃沈されたのはどうでもいい話である。
そんな時臣達の姿に何か思うところが有ったのか、ケイネスも、やれやれといった様子で悪態を吐きながらも、腹をくくって観念したかのようにカタパルトへと座り込んだ。

「さて…まずは、道を開けましょうか、“破城槌”!!」

そして、時臣達全員の覚悟を確認したランサーは、時臣達の突破口を開くべく、バグ達の防衛網の開ける為の巨大な杭“破城槌”を顕現させた。
だが、如何にランサーといえども、このまま、“破城槌”をぶつけただけでは、バグ達の防衛網に穴を開けるだけの高さには届かない。
故に―――

「…そいつをぶん投げちゃいなさい、狼娘!!」
「お任せですわ。マスター達の道…こじ開けますわよ、“銀鎖”!!」

―――人狼としての怪力を有するネイトに、ランサーは顕現させた“破城槌”を、ビグ・ラングの周りにいるバグ達にむけて投げつけさせた。
ネイトも、ランサーの声に応じるように発動させた“銀鎖”を“破城槌”に巻きつけると、遠投するかのように上空にいるバグ達に向けて力の限り投げつけた。
そして、ネイトの怪力によって投げつけられた“破城槌”は、ビグ・ラングの周囲を守るバグ達を次々と破壊していった。

「やはり無効化されたか」
「だけど、それは承知の上よ!! それじゃあ…スリーカウントで発射するわよ!! 一…!!」

だが、何百体もいるバグ達の“AMF”による魔術無効化には耐えられなかったのか、投げつけられた“破城槌”はまるで霞のように、ビグ・ラングに届く前にかき消されていった。
改めて、バグ達の“AMF”の効力を目の当たりにした正純に対し、それも織り込み済みだったランサーは、“破城槌”で開けた突破口―――バグ達のつくる防衛網にできた穴に、時臣達を乗せたカタパルト装置を向けた。
そして、ランサーは、カタパルト発射の合図となる3カウントを告げながら―――

「…カタパルト発射!!」
「「「「2と3は―――男は一だけ覚えとけばいいのよ―――うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ―――!!」」」」

―――面倒臭くなったので1カウントでカタパルト装置を起動させた。
この予想外のカタパルト発射に、時臣達は思わずツッコミをいれるが、ランサーが某破壊神系警察長官の言葉を口にすると同時にカタパルト装置が作動し、時臣達を上空に浮かぶビグ・ラングに目掛けて発射された。
徐々に小さくなっていく叫び声と共に遠ざかっていく時臣達を見送ったランサーは、紅蓮に煌めく灼眼に込めた真剣な眼差しで、時臣達の無事を願うようにこう告げた。

「囚われのお姫様ぐらい格好よく助けなさいよ、男の子」

そして、ランサーは“騎士団”の力で、炎の馬達を顕現させると、とある事態に対処すべく、甲板に残った正純達と共に“天道宮”へと向かわんとした。



第43話:とある侍の愛憎譚=その10・再起ルート=



一方、ビグ・ラングの下半身部分で、群がるバグ達と戦っていた真島と荒瀬は―――

「よぉ…今、どんだけ、こいつらぶっ壊した?」
「何や? まだ、若いのにボケが始まったんか?」

―――お互いに軽口を叩くようなやり取りをしながら、追い詰められたかのように無数のバグ達にとり囲まれていた。

「質問を質問で返すんじゃねぇよ。それに…もうこっちもいい加減、弾切れしそうなんだよ」
「なるほどなぁ…五十くらいぶっ壊してから、数えてへんわ。というか、さっきから急に攻撃が通じへんのや」

この状況に至るまで、真島と荒瀬は、襲い掛かるバグ達を火球と銃弾で応戦しながら、既に三桁にも及ぶ数のバグを破壊してきた。
だが、時間が経つにつれて、荒瀬の持っていた銃弾が底をつき始め、真島の火球も、複数のバグ達が壁役として対処し、強固な“AMF”を形成する事で無効化されていた。

「ちっ…冗談じゃねぇぜ。桐生とやり合っていねぇのに、こんなところで死ねるかよ」
「そうやのう。ほなら、軽くぶっ倒して―――そこのヤーさん、退いてくれぇっ!!―――ん?」

だが、そんな絶体絶命の状況下であっても、宿敵である桐生一馬との再戦を誓う荒瀬は、未だに戦意を消失することなく、逆に戦意を高めながらこの死地を戦い抜かんとしていた。
それは、桐生一馬を永遠のライバルとする真島も同様であり、調子を合わせるように軽口を叩きながら、火球が効かないならばと拳で直接殴ればいいと両拳の中に魔力を集中させて、両拳に熱気を迸らせた。
そして、いよいよ、バグ達に突撃せんとしたところで、真島の耳に、こちらに向かって注意を促すように叫ぶ声がいきなり割り込んできた。
思わず、何事かと思った真島が、とりあえず、身の危険を感じたので後ろに数歩下がりつつ、徐に叫び声のした方向に目を向けた。

「「「「ぶ、ぶつか、ぎゃああああああああああああ!!」」」」
「何や、これ?」
「俺に聞くんじゃねえよ…」

その直後、カタパルト装置で発射されて、バグ達の包囲網にできた穴を潜り抜けた時臣達が、夜空に響き渡るほどの絶叫を上げながら、先ほどまで真島たちがいた位置に激突した。
これには、修羅場慣れしている真島も、この余りにぶっ飛んだ展開に理解が追い付いていないのか、思わず、隣にいる荒瀬に首を傾げながら尋ねてみた。
もっとも、荒瀬も、真島と同じ気持ちなのか、俺が知るかと言わんばかりに投げやりにぼやくしかなかった。

「どうやら乗り込めたみてぇだな…」
「あぁ…多少の痛みはあるが問題はない」
「というか…なぜ、あれだけ激しくぶつかったのに、その程度で済んでいるのか不思議なのだが…」
「なんというか…本当に人間なのか…?」

一方、ビグ・ラングの頑丈な装甲に激突した近藤と桂は、ところどころ痛む体を起こしながら、全員無事にビグ・ラングへとたどり着いたことに安堵していた。
もっとも、ビグ・ラングにぶつかる直前に、魔術を行使することで衝撃を和らげた時臣とケイネスにしてみれば、常人ならば大怪我確定の激突にも、身体が痛む程度で済んでいる近藤と桂の頑丈さに唖然とせざるを得なかった。

「あぁ〜とりあえず、お前ら、どないな状況でここに来たんや?」
「実は―――」

とここで、そんな時臣達のやり取りを見ていた真島は、とりあえず、どうして、貨物船で凛達を救出している筈の時臣達が、このビグ・ラングに乗り込んできたのか尋ねた。
そんな真島の疑問に対し、気を取り直した時臣は、なぜ、ここに乗り込んできたのか説明し始めた。


そして、時臣達が真島と荒瀬に合流していた頃、別の空域では、重力などないかのように空を自在に飛ぶ黄昏時を思わせる朱色の装甲を纏った白銀の騎士と空を駆け抜ける白色の巨犬を足場に疾走する青の装甲を纏った女との奇妙な空中戦が繰り広げられていた。

「―――」
「アンナ殿!!」
「了解ですの!!」

とここで、二代が“蜻蛉切”の間合いにまで近づいた瞬間、“白騎士”は左腕の付け根に取り付けられたガトリング砲と腰に備え付けられたミサイルを発射してきた。
即座に、二代は、迫りくる弾丸とミサイルの弾幕の隙間を見切りつつ、足場となってくれているアンナに注意を促すように名を呼んだ。
対するアンナも心得たかのように頷くと、高速移動する二代に先回りできるほどの速度で移動しながら、二代と共に“白騎士”の放った弾丸とミサイルの弾幕の隙間を潜り抜けた。
その間に、牽制となる攻撃を放った“白騎士”も、二代達が攻撃を回避する間に、すぐさま、背を向けると、自身の有利となる位置を得るように距離を取り始めた。

「むぅ…中々、近づけさせぬで御座るな」
「それは仕方ないね。そもそも、お互いに相性が悪いからね」

またもや、“蜻蛉切”の届かない距離を取られた二代は、あくまで二代の間合いに自ら近づこうとしない“白騎士”の戦い方に歯がゆいものを感じるように言った。
一方、アンナに跨るシュライバーは、どうしたものかと悩む二代を宥めつつ、二代と “白騎士”では闘い方に違いが有る為に、お互い攻めづらくなっている事を指摘した。
実際、近・中距離の戦闘を主とする二代と遠距離での戦闘を主とする“白騎士”では、互いに得意とする間合いに差が生じる為に、如何に自分の間合いを取るかが勝負の決め手になっていた。
その為、二代は自分の得意とする間合いを取らんと攻めるも、二代の間合いで戦う事を避けたい“白騎士”は牽制の為の弾幕を張ると同時に距離を取り続けているため、二代は自分の間合いを取れずに相手を攻めきれずに膠着状態に陥っていたのだ。
無論、二代達には、この膠着状態を打破し、“白騎士”を倒す方法が無い訳でもなかった。

「ヴォルフ―――駄目だよ―――むぅ、まだ、何も言ってないですの!!」
「アンナの言いたい事ぐらいすぐ分かるよ。でも、約束は約束だからね」

“もうアンナ達で倒しちゃおう”―――アンナが提案する前に制したシュライバーは、不満そうに唸るアンナを宥めながら、自分たちの主であるラインハルトとの約束についてどうしたものかと思案した。
確かに、シュライバーとアンナが本気でこの戦闘に参戦すれば、一瞬で“白騎士”に追いついて、すぐにでもけりをつける事が可能だった。
しかし、シュライバー達は、事前に、主であるラインハルトから、この凛とイリヤの救出作戦を自分達と闘う前の試験と位置づけて、その上で、“この作戦中、シュライバー達は、直接、戦闘行動を取ってはいけない”という命が下されていた。
このため、ラインハルトの意を汲んだシュライバー達は、直接、“白騎士”と闘うのを我慢し、二代のサポートに徹せざるを得なくなったのだ。
とはいえ、アンナの言うようにこのままでは埒が明かないのも事実であり、シュライバーがどうしたものかと頭を悩ませていると、二代達の前方を飛んでいた“白騎士”が突如として制止した瞬間、二代達と向き合うように急転回させた。

「―――」
「何と!?」
「突っ込んでくるですの!?」
「…仕掛けてきます!!」

さらに、“白騎士”は二代達にむかって突撃しながら、それまで牽制としてしか使っていなかったガトリング砲とミサイルで攻撃を仕掛けてきた。
この“白騎士”の攻撃に対し、シュライバーは即座に“白騎士”が勝負を決めに来たのだと勘付き、驚く二代とアンナに注意を促した。
とここで、二代達に突撃してくる“白騎士”が得物である複合型ランチャー砲を構えた瞬間―――

「二代さん!! アンナ!!」
「―――“翔翼”!!」
「負けじと倍速ですのぉ!!」

―――黄昏を思わせる朱色の装甲が晴天を思わせる青色へと変化した白騎士は、背中から展開された六枚羽の翼を思わせるようなブースターによってさらなる加速を上乗せした。
先ほどとは比較にならない速さで迫る“白騎士”に対し、シュライバーが二代とアンナの名を呼ぶと同時に、二代とアンナも“白騎士”の速度に追いつかんと牽制の攻撃をかわしながら加速せんとした。
そして、常人には残像しか見えないほど加速した二代達が複合型ランチャー砲からビームを乱射し突撃してくる“白騎士”を迎え撃たんとした。

「む?」
「アンナ!?」
「了解ですの!!」

とここで、二代達の予想に反し、“白騎士”は二代達との真っ向勝負を避けるかのようにそのまま、するりと“蜻蛉切”の穂先をかわし、迎撃せんとする二代達の真横を通り過ぎた。
続けて、即座に急転回し、二代達の背後に回りこんだ白騎士は、まるで槍を突きつけるかのように、自分との勝負を避けた“白騎士”の行動に首を傾げる二代の背中に複合型ランチャー砲の砲口を突き立てんとした
だが、二代の仕留めんとする“白騎士”が複合型ランチャー砲で二代の背中を貫く直前、二代の危機を告げるシュライバーの声に答えたアンナは、ロデオの牛のように背中を突き上げると、背中を貫かれんとする二代を宙へと跳ね飛ばした。

「助かったで御座る、アンナ殿」
「まぁ、窮地を脱した訳じゃないけどね…どうしたものか…」

そして、“白騎士”が二代への攻撃を外したのも後に、即座に方向転換したアンナは、先ほど跳ね飛ばした二代が海へと落ちる前に先回りすると、落ちてきた二代を背中で受け止めた。
咄嗟の判断で“白騎士”からの攻撃から持ってくれたアンナに礼を言う二代であったが、シュライバーはヤレヤレといった様子でボヤキながら背後から追ってくる敵影の姿をチラリと見た。
そこには、さらなる追撃を仕掛けんとする“白騎士”が、次々に弾丸とミサイルを放ちながら、追いすがるように二代達の背後から迫ってきていた。
“いつもならあっさり振り切れるんだけど…”―――もっとも、シュライバーにとっては蝸牛の歩み並でしかない“白騎士”の速さを振り切って、“白騎士”の背後を取る事など何の問題もなかった。
だが、もし、今ここで、シュライバー達が最高速度で“白騎士”を振り切ろうとすれば、アンナの足場としている二代が追い付けなくなるのが問題となってくるのだ。

「うむ…アンナ殿、ヴォルフ殿」
「何です―――後は頼むで御座る―――へ?」

とここで、どうしたものかと悩むシュライバーとアンナに対し、何かを思いついた二代がシュライバーとアンナに声をかけてきた。
何か打開策を思い付いたのかとアンナが声を掛けようとした瞬間、二代はそう一言だけ告げると―――

「「何しているんですか(の)―――!?」」

―――二代の無謀な行動に驚くシュライバーとアンナの声を背に、迫りくる“白騎士”に挑むように、アンナの背中から勢いよく飛び出していった。

「では、改めて、御相手仕る」

そして、夜空へと身を投げ出しながら、相打つかのように“蜻蛉切”を構える二代に対し、“白騎士”はその返答の代わりのように、身動きの取れないはずの二代にむけて次々と弾丸とミサイルを発射した。
この時点で、白騎士”には、後は海へと落ちるだけ二代に見切りをつけて、ビグ・ラングに突貫した時臣達を排除するという選択肢が有った。
だが、現状における脅威を排除するというプログラムに従う機械人形のサガ故に、“白騎士”は現状における脅威である二代を仕留める事を優先してしまった。
そして、“白騎士”は自らの手で最大の愚を犯してしまった―――

「―――“翔翼”!!」
「―――!?」

―――ミサイルという名の足場を二代に与えてしまったという過ちを!!
即座に術式“翔翼”を展開した二代は即座に一発目にはなったミサイルを踏み込むと、次々と放たれるミサイルを足場にしながら、“白騎士”へと向かっていった。
もはや、それまで“白騎士”が牽制として放ったミサイルをかわし続けていた事で、目がミサイルの速さに慣れた二代にとって、次々と迫りくるミサイルを足場にしながら走り抜けるなど容易い事だった。
無論、飛び交う攻撃をかわしつつ、次々と発射されるミサイルを足場にするなど、人間はもちろんのこと、並のサーヴァントであっても到底真似のできない芸当である。
だが、二代にはできる…できるのだ。
そう、“東国無双”本多忠勝の名を襲名せんと目指し、数多の戦場を潜り抜け、多くの猛者たちと死闘を繰り広げてきた二代にはできるのだ…!!

「勝負、“白騎士”殿!!」
「―――!!」

とここで、一騎打ちを挑むかのような声と共に自身の間合いへと踏み込まんとする二代に対し、“白騎士”はすぐさま、徐々に迫ってくる二代へと、エネルギーチャージを終えた複合型ランチャー砲にて迎撃せんとした。
すでに、二代が足場としていたミサイルのほぼ全ては、二代の後方へと飛び去った後であり、二代と“白騎士”との間には数メートルの距離が離れているにも関わらず、すでに足場となるミサイルは残りわずかとなっていた。
その為、“白騎士”は、二代が最後の足場であるミサイルから宙に飛ぶ瞬間を狙うべく、空へと身を投げ出したことで身動きの取れない二代を仕留められる攻撃―――複合型ランチャー砲に組み込まれたビーム砲で撃ち落す事を目論んだ。
そして、“白騎士”のほぼ思惑通りに、二代が最後のミサイルを踏み出すと同時に、“白騎士”は、宙へと身を投げ出した二代にむかって、エネルギーチャージを完了したビーム砲を発射した。
やがて、二代に向かって撃ったビームの余波で爆発したミサイルによる白煙を吹き飛ばして現れた“白騎士”は―――

「“白騎士”…討ち取ったり!!」

―――“白騎士”の手にしていた複合型ランチャー砲の砲身に乗りながら勝鬨を告げる二代の“蜻蛉切”によって動力炉を貫かれていた。
なぜ、二代は、身動きの取れない空中にて、ビーム砲で撃たれたにも関わらず、ビーム砲の攻撃をかわしただけでなく、“白騎士”を仕留める事が来たのか?
実は、“白騎士”がビーム砲を発射する直前、最後の足場であるミサイルから踏み出した二代は、“蜻蛉切”の石突きでミサイルをわざと爆発させていたのだ。
これにより、二代はミサイルの爆風を受ける事で“白騎士”との距離を大幅に縮めただけでなく、結果として“白騎士”のビーム砲をかわす事ができたのだ。
やがて、二代の“蜻蛉切”によって動力炉を貫かれた“白騎士”のモノアイから光が失われると同時に、機能停止に陥った“白騎士”は徐々に失速しながら、力なく海面に向かって落ち始めた。
このままでは、二代まで機能停止となった“白騎士”と共に海面へと落下する事になるが、二代は何故か慌てる事無く、“白騎士”から“蜻蛉切”を引き抜いた。
そして、二代は、“白騎士”の砲身から躊躇うことなく飛び降りると―――

「まったく…無茶をする人ですね…」
「アンナが追い付けなかったら、どうするつもりですのー!!」
「いや、大丈夫で御座るよ…」

―――二代が背中から飛び降りた後、急いで二代のところに駆けつけ来たアンナに飛び乗った。
そして、“白騎士”が海面に没したのを確認した後、シュライバーとアンナは、アンナの背に跨った二代に向かって、いくら何でも無茶をし過ぎだと苦言を呈した。
だが、二代は絶対にシュライバー達が駆けつける事を確信していた事を告げつつ、“白騎士”を討ち取ったにもかかわらず、少し複雑そうな表情で気落ちしたようにこう返した。

「今まで、拙者が追い付けるようにゆっくり走ってもらっていたで御座るから…」
「「…」」

そして、少しだけ無念さを込めた声で告げる二代に対し、シュライバーとアンナは無言という回答でもって、二代の言葉を肯定した。
そう、“白騎士”との戦闘の中でも、二代はちゃんと気付いていたのだ―――二代がキチンと追い付けるようにアンナが二代の速度に合わせる程度に手を抜いてくれた事を。

「まぁ、それに気付いていたなら、今後の期待も込めて、及第点ぐらいならあげますの」
「そうだね…」

“だから、今度は僕達に追いつけるほど強くなりなよ”―――アンナとシュライバーは、背中に跨る二代に期待を込めてそう願いながら、ランサー達と合流すべく、“天道宮”へと目指して走り出した。



一方、二代達が“白騎士”を撃墜した同じころ、この場に来なかった衛宮切嗣に取り返しのつかない破滅への一歩を踏み出そうとしていた。

「離せ…離すんだぁ…!! 僕は、僕はぁ…!!」
「衛宮切嗣…銃器不法所持の現行犯及び冬木市連続爆破テロの容疑で逮捕させてもらう!!」

そして、自分の身体を抑え込む男達に向かって訴えるように叫びながら、必死になって暴れもがく衛宮切嗣の両腕には、切嗣の罪状を告げる一人の刑事によって、切嗣が犯罪者である事を示す冷たい鉄の手錠が嵌められた。


■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
作者からのメッセージはありません。
テキストサイズ:18k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.