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Fate/ZERO―イレギュラーズ― 第44話:とある侍の愛憎譚=その11・再起ルート=
作者:蓬莱   2014/02/20(木) 23:24公開   ID:.dsW6wyhJEM
銀時と第一天のデートの出歯亀を切っ掛けとして始まった一夜の大騒動も、いよいよ、大詰めを迎えようとしていた。

「あぁ〜何や…知らんかったとはいえ、おたくの嬢ちゃんを危険な目に合わせもうて、すまんかったなぁ」
「いや、あの状況を切り抜ける事を考えるなら仕方ない事だ…」
「んで、こいつらはどうするつもりなんだ?」

時臣達から凛達がビグ・ラングのコクピットに囚われている事など諸々の事情を聞いた真島は、故意ではないとはいえ、凛達の身を危険にさらしたことを知ると時臣に向かって罰悪そうに申し訳なく謝罪した。
とはいえ、時臣としても、無数のバグ達にとり囲まれた状況下では闘わざるを得ない事を理解しているので、真島を非難するような言動はしなかった。
とここで、ビグ・ラングから脱出する為に、真島らと一時休戦した荒瀬は、残り少ない弾丸を装填しながら、時臣達に、自分たちの周囲に群がり始めたバグ達をどう対処するのか問いかけた。
如何に数を減らしたとはいえ、未だにバグ達は数えきれぬほど多く残っており、凛達を救出する障害としては充分すぎるほどの脅威だった。
だからこそ―――

「なら、こいつらの足止めは俺が引き受けるぜ。親父さんと桂は、凛ちゃん達を早く助けに行きな」
「近藤…良いのか?」

―――この正念場において、これまでの戦闘を経て、既に刀身がボロボロとなった刀を手にした近藤がバグ達の足止めに名乗りのあげたのは当然の事だったのかもしれない。
早速、凛とイリヤを助けに行くように促す近藤に対し、桂は、近藤がどう答えるのかを分かっていながらも確認するかのように静かに問いかけた。
そんな桂の分かり切った問いかけに対し、近藤は“良いも悪いも…”と前置きをした後、他者を勇気づけるような心強い笑みを浮べながらこう告げた。

「俺は凛ちゃんの使い魔で、何より市民を守る警察官だ。なら、ここが、真選組局長・近藤勲にとっての命を懸けるべき戦場だ!! だから、てめぇらも、さっさと自分の戦場に行ってきな!!」
「君は…」

そう時臣と桂に凛とイリヤの救出に向かうよう檄を飛ばした近藤は、時臣達を排除せんと動き出したバグ達の行く手を阻むかのように勢いよく斬り込んでいった。
“本気で凛を助けたいと思ってくれているか”―――これまで魔術師としての世界しか知らなかった時臣は、凛を救う為に命を懸けて戦おうとする近藤の姿に眩しいモノを感じずにはいられなかった。

「そうやったら、わし等もちいと命の一つでも懸けようやないか」
「ふん…この程度の窮地を切り抜けずして、何がロード・エルメロイか。だから、さっさと助けに行ってきたまえ」
「まぁ、こうなっちまったら、とことん付き合うしかねぇよな」

さらに、近藤の熱い檄に触発されたのか、燃え盛る炎の拳を宿した真島と月霊髄液を発動させるケイネス、二丁拳銃を構える荒瀬の三人も思い思いの言葉を口にしながらも、それぞれ義侠心と闘志を漲らせていた。
次の瞬間、戦闘態勢に入った真島達も、時臣と桂が凛とイリヤの救出するのを援護すべく、群がるバグ達を相手に孤軍奮闘する近藤に助力せんと斬り込んで行った。

「さぁ、とっと行ってきな!! ここは俺達に任せろぉ!!」
「…すまない!!」
「皆、絶対死ぬでないぞ!! 近藤…お前も含めてな!!」

そして、近藤は、襲い掛かってきたバグ達を次々に斬り捨てながら、一刻も早く時臣と桂に凛達を救出しに行くよう叫んだ。
この近藤からの後押しの声を受けた時臣と桂は、足止めをかってでてくれた近藤達に礼を告げると、凛たちが囚われているビグ・ラングのコクピットへと向かって走り出した。
それと同時に、凛達の救出へとむかった時臣と桂の背後では、近藤達の、勝利を勝ち取らんと奮い立たせる咆哮のような声と共に、次々と斬撃と銃撃に入り混じって、無数の爆音が轟き始めた。

「近藤君は…彼らは大丈夫だろうか?」
「案ずるな、時臣殿。あ奴らは…俺の知る限り、近藤勲という男は、あの程度の雑魚にやられるような者達ではない。あの機械兵器を倒しつくした後に、必ず生きて戻ってくる!!」

一方、自分たちの背後で繰り広げられる激戦に対し、時臣は、バグ達の足止めをかってでてくれた近藤達の身を案じずにはいられなかった。
これまでの戦闘で、近藤はもちろんの事、真島やケイネス、荒瀬もかなりの手傷を負い、肉体的にも精神的にもかなりの負担を強いられていた。
それほどまでに消耗し、真面に闘う事すら厳しい近藤達がバグ達の足止めするのは、もはや無謀としか言いようがなく、命を捨てるのに等しかった。
だが、そんな時臣の不安に対し、桂は、まるで近藤達が生き残る事を確信しているかのように断言した。
―――幕府に仇為す攘夷志士のリーダーと幕府を守護する真選組局長。
―――相反する組織に所属するモノとして激しく敵対してきた。
―――困難にぶつかった時には呉越同舟と互いに協力して死線を潜り抜けてきた。
そんな敵であり仲間でもある奇妙な関係だからこそ、桂は、時臣に対してこう言い切る事ができた。

「…俺達の背中を預けられる心強い…友だ!!」

それは、元いた世界では口が裂けても言わないであろう、桂小太郎からの近藤勲に対する最大限の信頼を込めた言葉だった。
そして、丁度その時だった―――

「「「「…すまねぇ(んな)!! やっぱ、無理だった(やった)!!」」」」
「「何ぃ―――!?」」

―――尋常じゃないほどの数で群がるバグ達に追いかけられる近藤達が謝罪の言葉を口にしながら、本当に近藤達が戻ってきたことに仰天する時臣と桂に追いついてきたのは!!

「早い、いくら何でも、早すぎる!! まだ、1ページももっていないよ!!」
「いや、そうは言っても、小説家にとって1ページ書くのって結構きついもんがなんだぜ!!」
「えぇい、仕方がない!! こうなれば…」
「そいつは…!?」

先ほどの心配を返せと言わんばかりに叫ぶ時臣に対し、時臣の隣を走る近藤は無理無理と手を振って、ややメタ臭い言葉を交えながら精一杯の言い訳をした。
もっとも、数百以上いるバグ達からしてみれば、近藤達足止め組に適当な数を割いて、残りは時臣と桂を追撃すればいいだけなので、四人だけの足止めなんぞはっきり言ってほとんど無駄なのだが。
とはいえ、状況が最悪なのには変わらないので、桂は愚痴をこぼしながらも、この状況を打開すべく、懐に手を入れるとあるモノを取り出した。
そして、桂が目を見開かせて驚く近藤の声と共に取り出したのは―――

「んまい棒…鬼音沙羅堕(オニオンサラダ)!!」

―――子供の頃、一度は食べた事はあるだろうスナック菓子だった。
ちなみに、作者はコーンポタージュ派である。

「貴様ぁ、こんな時に食べている場合かぁ―――!!」
「貴様ではない…桂だ!! それに、これは菓子などではない」

思わせぶりな口調でお菓子を取り出した桂に向かって、ケイネスは思わず某サイボーグ軍人風のツッコミをいれてしまった。
そんなケイネスのツッコミに対し、桂はいつもの返しを入れつつ、取り出した“んまい棒・鬼音沙羅堕”を背後から追ってくるバグ達に投げつけた。

「何や、あの菓子、爆弾かいな…おもろい事考えるもんやな」
「だが、火力が足りてねぇな…」
「…いや、待て」

次の瞬間、桂の投げつけた“んまい棒・鬼音沙羅堕”は、バグ達の前で、ポンという小さな爆音と共にキラキラと光る銀色の薄いフィルムのようなものが周囲にまき散らされた。
この時、桂の投げつけたお菓子が爆弾だと知った真島が妙に感心しながら呟きつつ、“今度、わしも機会があればやってみるか”と場違いな事を目論んだのはまた別の話である。
だが、荒瀬の言うように、爆弾としては威力不足だったらしく、バグ達を破壊するには至っていなかった。
しかし、ふと背後のバグ達を見た時臣は、桂の投げつけた“んまい棒・鬼音沙羅堕”の影響が出始めていることに気付いた。

「これは、いったい…!?」
「どうやら、俺の推測通りに上手くいったようだな」

それまで一糸乱れぬ波状攻撃を仕掛けてきたバグ達であったが、“んまい棒・鬼音沙羅堕”が爆発したのを境に、まるでお互いの動きが見えていないかのように、次々とバグ同士でぶつかりあい始めていた。
次々と勝手に自滅していくバグ達の様子に何が起こったのか困惑する時臣に対し、桂はしてやったりという表情を浮かべていた。
あの時、桂の投げつけた“んまい棒・鬼音沙羅堕”はただの手投げ爆弾ではなく、細かいアルミニウムの薄片を周囲にばら撒く事で電波を乱反射させる“チャフ・グレネード”と呼ばれる代物だった。
これにより、内蔵された小型レーダーでお互いの位置を把握して、お互いに連携行動を取っていたバグ達は、“んまい棒・鬼音沙羅堕”によってその機能を妨害され、お互いに連携が取れずに自滅を始めたのだ。

「とはいえ、効果は一時的なモノだ。僅かな時間でしか足止めは期待できんぞ」
「あぁ…一刻も早くコクピットに向かおう」

しかし、“んまい棒・鬼音沙羅堕”の妨害効果は短時間であり、その証拠にバグ達も時間が経つにつれ、徐々にその機能を取り戻しつつあった。
そして、懐から手持ちの“んまい棒・鬼音沙羅堕”を取り出した桂に頷いた時臣は、足止めされるバグ達を尻目に、再び、凛達の囚われているビグ・ラングのコクピットへと向かって走り出した。



第44話:とある侍の愛憎譚=その11・再起ルート=



バグ達の追撃を止めつつ、時臣達が凛達を助けに行く一方で、ビグ・ラングの内部でも凛達によるビグ・ラングからの脱出が試みられていた。

「さて、どうにかここまで潜り込めたが…この辺りがちょうどいいか」

その凛達の代行者であるアサシンの宝具“オール・アロング・ウォッチタワー”の一枚が、あるモノを背中にくくりつけながら、コクピットの隙間からケーブル伝いで、ビグ・ラングの内部奥深くへと潜り込み、見るからに怪しげなコンピューターが存在する空間に辿り着いていた。
もっとも、アサシンには、機械に関する知識が聖杯によって与えられた最低限のモノしかないため、これがどんな機能を司っているかは分からなかった
だが、アサシンは、とりあえず、この状況を少しでも打開すべく、このコンピューターに狙いをつけて破壊することにした。
だが、“オール・アロング・ウォッチタワー”1枚だけでは脆弱な力しか持たないため、このコンピューターを破壊することなど、アサシン単独では不可能だった。
そう、確かに、アサシンの力だけでは破壊できないが、アサシンには、このコンピューターを破壊するための手段を、凛達から得ていた。

「まぁ、とりあえず、持ってきたコイツを取り付けてと…」

そして、アサシンは、ビグ・ラングの内部を破壊するために、背中にくくりつけたあるモノ―――凛達から渡された水晶片を、この怪しげなコンピューターに取り付け始めた。
“とはいえ、これだけでどれだけ破壊できるかが問題だな”―――そんな不安混じりの疑問を抱きつつ、アサシンは水晶片をコンピューターに取り付けながら、凛達にこの水晶片を手渡された事を思い返した。

「これは…水晶か?」
「うん。この前、宝石魔術の修行の時に、お父様に出された宿題で作ったの」

アサシンがビグ・ラングの内部に侵入する少し前、凛達と如何にして、ビグ・ラングの内部を破壊するかという事を検討していた際、アサシンは凛が取り出した水晶片をもの珍しげに見ながら問いかけた。
アサシンの問いかけに対し、凛は首を縦に振って頷くと、アーチャーを引き取りに行く際に持ってきた水晶片について簡単に説明した。
今回、凛が持ってきた水晶片は、元々、魔術の修行の折に、時臣から出された宿題の一環として造られたモノだった。
そして、その中でも、この水晶片は作製したモノの中でも一番目に上出来なモノであり、凛の予想では、この水晶片に充填してある魔力を一気に解放すれば、ちょっとした爆発が起こるはずだった。
だが、凛はそんな危険な事など試したことが無いので、この水晶片に充填した魔力でどれだけの爆発が起こるか分からなかった。

「今から、これに、私とイリヤの魔力を限界ぎりぎりまで充填するわ」
「多分、それで大きな爆発が起きると思うんだけど…」

その為、凛とイリヤは、万が一のことを考えた上で、この水晶片に自分たちの魔力をさらに充填する事を決断した。
これにより、水晶片の魔力を解放した際に怒る爆発の威力を底上げし、ビグ・ラングの内部に深刻なダメージを与えようというのだ。
確かに、子供とはいえ、魔術師としての優秀な才能を持つ凛とイリヤ二人分の魔力を充填すれば、この小さな水晶片でもビグ・ラングにダメージを追わせられる爆発を起こせるかもしれなかった。
どのみち、ビグ・ラングを内部から破壊すること自体、成功する保証のないような分の悪い賭けに近いものだった。
その為、アサシンも特に反対することなく、凛とイリヤの提案に乗る事にした。

「まぁ…有力一族のお子様二人分の魔力…精々期待させてもらおうかな」

そして、現在、コクピットの隙間からビグ・ラングの内部に侵入したアサシンは、限界寸前まで魔力を充填した水晶片を、見るからに怪しげなコンピューターに取り付け終えた。
“せめて、ビグ・ラングの機能を一部破壊出来れば良い方か”―――そんな事を思いつつ、アサシンは、このコンピューターを破壊すべく、水晶片の魔力を一気に解放しようとした。
―――この時、アサシンは知る由もなかった。
―――自分が破壊しようとしているコンピューターが、ビグ・ラングだけでなく、バグ達を制御するためのモノだという事を。
―――この爆破によって、意図的にプログラムされた暴走ではなく、本当の意味で制御不能となったビグ・ラングとバグがさらなる暴走を引き起こす事を。
そして―――

「えっ―――」

―――凛とイリヤによって水晶片に充填された魔力が余りにも膨大であったために、アサシンの予想以上の大規模な爆発となってしまった事を!!


そして、アサシンによって引き起こされた爆発の威力は、外にいる時臣達にも気付かせるには充分すぎるモノだった。

「何だか知らねぇがやべぇ事になってそうだな…」
「あぁ…って、元はと言えば、てめぇらが凛ちゃん達を誘拐したのが発端じゃねぇか!?」

“というか、何で、普通に馴染んでんだ、このヤクザ!?”―――荒瀬が徐々にGM粒子に染まりつつあることなど知る由もない近藤は、いつの間にか仲間ポジションに居座りつつある荒瀬におめぇらが原因だろう!!とツッコミを入れた。
だが、ビグ・ラングで何かが起こっている以上、一刻も早く凛達を救出したい時臣達は、そんな些細なことに構うことなく先を急ぐことにした。

「くっ…こんな時に…!! さっきのヤツは!?」
「悪いが鬼音沙羅堕は打ち止めだ。残りはコレしか―――ちょい貸せや―――あ、おい!?」
「まぁ、無いよりマシちゅうやろう。とりあえず、喰らえや―――!!」

だが、そんな時臣達を妨害するかのように、凛達の元へ向かおうとする時臣達の前を、ビグ・ラングの上半身と下半身を連結する部分に、予め時臣達より先回りしていたバグ達が待ち伏せていた。
既に待ち伏せをしていたバグ達に忌々しげに舌打ちしたケイネスは、すぐさま、桂にバグ達の動きを制限させる“んまい棒・鬼音沙羅堕”を出すように叫んだ。
だが、桂は、すでに持ってきた“んまい棒・鬼音沙羅堕”が無くなったことをケイネスに告げると、自身の言葉を証明するかのように懐から“んまい棒・鬼音沙羅堕”とは種類の違う“んまい棒”を数本取り出した。
とその時、その桂の隣を走っていた真島が、桂の持っている“んまい棒”数本を横からもぎ取ると、桂が真島に向かって何かを言おうとする前に、前方にいるバグ達に“んまい棒”をすべて投げつけた。
そして、真島の投げつけた“んまい棒”の一つがバグ達の一体に接触した瞬間―――

「おい、真島…何を投げつけやがったんだ…?」
「あらぁ…?」

―――堅牢なビグ・ラングの装甲を吹き飛ばすほどの爆発が次々と巻き起こり、辺り一帯に爆音を激しく轟かせるような広範囲に渡る爆発によって生じた爆炎と爆風が待ち伏せていたバグ達を飲みこんでいった。
この思わぬ惨状に、荒瀬が思わず真島を問い質そうとするが、“んまい棒”を投げつけた真島自身が“何で?”といった様子で呆気に取られていた。
とここで、“んまい棒”の持ち主である桂は、ヤレヤレといった様子でため息をつきながらこう告げた。

「まったく、人の話は最後まで聞けとお母さんから習わなかったのか…先ほど投げつけた“んまい棒・智金火霊”は高性能爆薬だというのに…」
「言っている場合かぁ―――!! 早く上に飛び移れぇ―――!!」


まるで、説教するかのように説明する桂であったが、大慌てで走り出しながらツッコミをいれるケイネスの言うようにそんな悠著な時間などなかった。
どうやら、先ほどの“んまい棒・智金火霊”の爆発によって、ビグ・ラングの上半身と下半身を連結する部分が大破したために、下半身部分が千切れ落ちようとしていた。
その上、先ほどの爆発によって下半身部分に保管されていた弾薬に誘爆し始めたのか、下半身のあちこちで小規模な爆発が起こり始めていた。
このままでは、爆発寸前の下半身と運命を共にすることになりかねない事を察した時臣達は、次々と起こる爆発を避けながら、急いでビグ・ラングの上半身へと飛び移らんとした。
だが、この命がけの局面で、時臣は、後に凛にも遺伝されることになる遠坂家伝統のうっかりスキル(窮地限定仕様)を発動させてしまった。

「なっ…!?」
「凛ちゃんの親父さん!?」

やがて、近藤達が次々とビグ・ラングの上半身へと飛び移るのに成功する中、時臣も周囲で巻き起こる爆風に耐えながら飛び移らんとした。
しかし、うっかり、爆風による勢いについて考慮していなかった時臣は、自身の予測よりもビグ・ラングから離れすぎてしまい、ビグ・ラングの上半身に捕まる事が出来ずにビグ・ラングの横を通り過ぎてしまった。
これを見た近藤が時臣にむかって手を伸ばしながら必死に掴まんとするが、時臣の体は既に近藤がどれだけ手を伸ばしても届かないところまで離されていた。

“死ぬのか? 私は、こんな、こんなところで…!!”

もはや、時臣自身さえも、じわじわと沸き起こってくる死の実感と凛を救う事さえ出来ないまま死ぬ事への絶望に己の心を囚われようとした瞬間―――

「させるかっ!!」
「これは…!?」

―――咄嗟に魔術を行使したケイネスが鞭のように長く伸ばしつつ、先端を手の平型に変形させた月霊髄液でビグ・ラングから落ちんとする時臣の体を掴めなくなる寸前のところで掴みとった。
そして、すぐさま、ケイネスは、月霊髄液で掴んだ時臣を自分たちのところに一本釣りのごとく勢いよく引き寄せた。
そして、ケイネスに助けられた時臣がビグ・ラングの上半身に取り付いた直後、連結部分から千切れ落ちたビグ・ラングの下半身は、海面に落着した。
それと同時に、ビグ・ラングの下半身は、遠目からでもはっきり見えるような巨大な水柱を巻き上げる爆発と共に、その残骸ごと海の藻屑として冬木の海に沈んでいった。

「すまない…ロード・エルメロイ…助かった…」
「ふん…こちらとしても手を貸している以上、こんなところで勝手に死なれては目覚めが悪いからな…」

間一髪のところで命を救われた時臣は、目前まで迫った死の実感に息も絶え絶えながらも、ケイネスに向かって感謝の言葉を口にした。
この時臣からの感謝の言葉に対し、ケイネスは、本来ならば敵対関係にあるマスターという立場故なのか必要以上に仕方なくという事を強調した口振りで返事を返すだけだった―――何を照れてしまったのか、妙に赤くなった顔を見られまいとするようにそっぽを向きつつ。

「まぁ、結果的に下半身を切り離せたのは、不幸中の幸いといったところか…」
「そうだな…後は、凛ちゃん達のいるコクピットまで―――ボンッ!!―――うおぉ!?」

とはいえ、時臣達にとってかなり危険な状況ではあったものの、桂の言うように、誘爆の恐れがある下半身を切り離せた事は、凛達の安全を確保する意味でかなり大きかった。
しかも、バグ達も海面へ落下するビグ・ラングの下半身に巻き込まれた上に、海中に没したビグ・ラングの下半身の大規模な爆発によって全滅したことで、時臣達の行く手を阻む障害もなくなっていた。
そして、桂の言葉に頷いた近藤は、とりあえず、安全な今のうちに、凛達のいるコクピットのところまでよじ登ろうとした。
だが、次の瞬間、ビグ・ラングの装甲をよじ登ろうとした近藤はいきなり、見えない無数の手によって自分の体を無理やり引っ張られるような強い衝撃を感じた。
突然の事に何事かと狼狽する近藤は、ビグ・ラングから引きがされまいとビグ・ラングに慌ててしがみ付いた直後―――

「な、何だ…!? 急に動きだしたぞ、こいつ!?」
「いや、それだけではない…!? この動き…先ほどとは比べ物にならんほどの速さだ…!!」

―――それまで空中にて静止状態を保っていたビグ・ラングが凛達の起こした爆発を引き金に制御機能を破壊された事で暴走状態となり、冬木市へ向かうように動き始めていた。
しかも、桂の言うように、この時、ビグ・ラングは重荷となっていた下半身を失った事で、一撃離脱の高速機動戦闘を目的とした機動兵器としての本来の速度を取り戻していた。

「こ、このままじゃ…俺達全員…こいつから振り落とされちまうぞ…!!」
「くっ…こんな、こんなところで…!!」

この高速移動するビグ・ラングに対し、近藤達は凛達のいるコクピットによじ登るどころか、ビグ・ラングから振り落とされないようにしがみ付くのもやっとの状態だった。
しかも、ビグ・ラングの移動速度はさらに加速を増しており、何れ振り落とされるのも時間の問題だった。
もはや、あと一歩のところで凛を救出することのできるところで生じた最後の障害に、時臣は思わず、悔しさの余り、血を吹き出さんばかりに唇をかみしめた時だった―――

『届かせるぞ、その一歩…マスター!!』
「正純君!?」

―――ランサーと共に“天道宮”へと向かい、この窮地を打開できる起死回生の一手を打った正純からの念話が時臣の元に届いたのは!!



一方、ある意味で暴走の引き金となった凛とイリヤは、突如として暴走し始めたビグ・ラングのコクピットの中で慌てふためいていた。

「り、凛…どうなっているの、これ…?」
「だ、大丈夫よ…!! 何とかなると…思うから…」

一向に止まる事無く暴走するビグ・ラングに不安を感じたイリヤは、何時泣き出してもおかしくないほどの涙目になりながら、この状況で唯一頼れる存在である凛に震える声で尋ねた。
だが、必死になってイリヤがパニックにならないように宥める凛も、最悪な方向で状況が動いてしまった事に内心で“どうしてこうなった!!”と頭を抱えて泣き出したくなっていた。
しかも、凛とイリヤの知る由もない事だが、ビグ・ラングは現在、冬木市へと目指して移動していた。
もし、このまま、ビグ・ラングが冬木市へと進行した場合、建物や住人に被害が出るだけでなく、ヴェヴェルスブルク城が召喚された時のように出撃してきた航空自衛隊によって撃墜される可能性がないとも言い切れない。
故に、その事を見越していたのか、ランサーは、ビグ・ラングが暴走した場合の予防策を用意していたのだ。

「ねぇ…あれって、何?」
「え?」

そして、凛とイリヤは、自分たちの眼前にあるモニターに映りながら、冬木市を目指すビグ・ラングを阻むかのように立ち塞がる巨大な城塞―――“天道宮”を目の当たりにしていた。



一方、秒殺単位でバグ達を全て駆逐した“天道宮”にいるランサー達も、こちらに向かって迫ってくるビグ・ラングの姿を捉えていた。

「さぁて…いよいよ大詰めといったところね」
「ほ、本当に大丈夫なんですか!? これ、かなりガタが来ていると思うんですけど!!」

重装型のみで形成された“騎士団”を最大限の規模で展開したランサーは、徐々に近づいてくるビグ・ラングと対峙するかのように見据えながら覇気を漲らせていた。
時臣達をカタパルトでビグ・ラングに叩き込んだ後、ランサーは、ビグ・ラングがこの場から撤退した場合を想定し、ある次善策を講じていた。
とはいえ、策と言っても言葉にすれば単純なモノで、“天道宮”で先回りして撤退するビグ・ラングを捕らえようというのだ―――ビグ・ラングに“天道宮”をぶつけて強制減速させつつ、ランサーとここにいる武蔵勢達全員が総掛かりとなって素手で受け止めて。
だが、そんなやる気満々のランサーとは対照的に、壁役として最前線に立たされたアデーレを代表に武蔵勢は不安を隠せないでいた。
如何に人外の存在であるサーヴァントとはいえ、ビグ・ラングの巨体を受け止めるのは並大抵の事ではなかった。
しかも、肝心の“天道宮”も度重なるバグ達の攻撃によって多大な損傷を受けており、ビグ・ラングと衝突に耐えきれるかという不安もあった。
だが、そんなアデーレを含む武蔵勢を鼓舞するかのように、ランサーはわざとらしいほど大仰に大見得を切りながら振り返ると自信満々にこう告げた。

「まぁ大丈夫よ。あのガヴィダの造った“天道宮”なら耐えきれる―――」

その直後、ランサーが大見得を切った際の足踏みの影響なのか、“天道宮”の一部が大きな音を立てて崩れ落ちた。
思わず、“え…?”と思わず疑問の声を口にしてしまうほど唖然とする武蔵勢に対し、ランサーは、若干、額に冷や汗を垂れ流しながら言葉を濁すようにこう付け足した。

「―――筈よ…多分ね…うん…まぁ、そう信じましょうか」
「「「「待てぇ―――!?」」」」
『マティルダ…来るぞ!!』

不安を煽りまくりのランサーの言葉に、ツッコミポジションな正純―――ルビーの力で呼び出した黄色を基調とした重装甲型のマキナと称される武神にのりこみつつ―――を筆頭に武蔵勢からの盛大なツッコミが入った。
とここで、せめて、自分だけでも真面目にシリアスを貫こうと決心したアラストールが、ビグ・ラングが進路を変える事無く、まっすぐに“天道宮”へと激突しようとしている事を大声で叫ぶように告げた。

「“騎士団”…!! 力の見せ所よ!!」
「では、あっしもコレで止めるでござんす」
「あいたぁ―――!! ちょ、シャレになってないですよ―――!! これは痛いですって…!!」
「“地摺朱雀”…踏ん張るさね!!」
「まったく、本当に無茶をするもんだ!!」
「“銀鎖”…全力で止めますわよ!!」
「絡め捕れ、バレット・アーム!!」
「「「「おぉおおおおおおおおおおおおお…!!」」」」

次の瞬間、ランサーと武蔵勢は、“天道宮”への激突の瞬間に銀色の球体をランサー達の背後に投げ飛ばし、“天道宮”の上層部を抉るようにして突き進むビグ・ラングを文字通りの総掛かりで受け止めた。
―――自身の展開できる限りの重装型たちと共に、ビグ・ラングを受け止めるランサーと壁役であるアデーレを盾にしつつ、アデーレの泣き言をスルーして踏みとどまる外道丸。
―――地摺朱雀と義でビグ・ラングの両腕のクローアームを抑え込む直政と義康。
―――展開した四本の“銀鎖”と伸縮自在の“バレット・アーム”でビグ・ラングの機体を抑え込むミトツダイラと正純。
そして、残りの武蔵勢のメンバーも、“自分たちを信じてくれたマスターの為に、たかが鉄屑の一つや二つ押し止めてみせる!!”や“やれるかどうかじゃない…小生の守るべき幼女の命が懸っているんだ!!”や“葵殿に知られたら、拙者、近藤殿のように焼き土下座+十字型腹切り程度じゃすまないでござる!!”などの想いから力の限り、悪足掻きのようにもがくビグ・ラングを押し留めんとした。

「くっ・・!! 壊れかけの癖に何処にこんな力が残っているのかしらね…!!」
「それでも…絶対に離しませんわよ!!」

しかし、如何にサーヴァントであるランサーや武蔵勢といえども、ビグ・ラングの巨体を抑えるのは並大抵の事ではなく、限界値ギリギリまでバーニアを全開にしたビグ・ラングに押され始めていた。
しかも、ビグ・ラングによる激突の衝撃に加え、ランサーと武蔵勢からの拘束から逃れんと暴れる事で、“天道宮”の崩壊が加速度的に進み、完全崩壊も時間の問題だった。
それでも、減らず口を叩くランサーを筆頭に一同はビグ・ラングを押し留めんとし、ミトツダイラも持ち前の怪力でビグ・ラングを拘束する“銀鎖”をさらに締め付けんとした。
やがて、ビグ・ラングが“天道宮”の中央でようやく押し止まった瞬間―――

「こいつ、まだ、武器が残っていたの!?」
『まずいぞ…この至近距離では…!!』
「とりあえず、少しでも被害を最小限に喰い止めるのに、アデーレ様を盾にするでござんす」
「え、ちょ…こ、この人、ナチュラルです!! ナチュラルに鬼です!?」

―――試作型ビーム砲を格納した口吻を開いたビグ・ラングは、進行の妨げとなるランサーと武蔵勢を排除すべく最後の一手を打ってきた。
ここにきてのビグ・ラングの隠し玉の登場に、さすがのランサーとアラストールも衝撃を隠せなかった。
確かに、如何に強力なビーム砲とはいえ、サーヴァントであるランサー達を倒す事は出来ないだろう―――身動きの取れないランサー達を怯ませることで、自身の拘束を振りほどく事は出来ても!!
“だって、あっし、外道を極めし鬼神でござんすから”―――そう心中で返した外道丸は、ジタバタともがくアデーレを蓋代わりにして、ビグ・ラングのビーム砲を防ごうとしていた。
だが、起死回生の隠し玉を有しているのは、ビグ・ラングだけではなかった。

「決めろ、お前達!!」
「いい加減に―――」
「大人しく―――」

次の瞬間、ランサー達の後方に投げ出された銀色の球体―――ビグ・ラングが激突する直前、ケイネスが咄嗟に展開した“月霊髄液”の中から、“天道宮”とビグ・ラングが激突した際に生じたショックから立ち直った近藤達がケイネスの檄を背中に受けながら飛び出してきた。
すぐさま、刀を手にした近藤と桂は危険を省みる事無く、すでに鈍ら同然となった刀で、ビグ・ラングのビーム砲の発射口を斬り飛ばした。
そして、近藤と桂がビグ・ラングのビーム砲を破壊した直後―――

「―――ぶっ壊れろや!!」
「Intensive Einascherung“我が敵の火葬は、苛烈なるべし”!!」

―――真島の放った火球と時臣の放った炎の蛇が、近藤と桂が破壊したビグ・ラングのビーム砲の発射口を通して、ビグ・ラングの内部に叩き込まれた。
そして、これが致命的な一撃となったのか、ビグ・ラングのモノアイから光が消えうせると同時に、その命が尽きたかのように動きを止め、完全に機能停止となった



一方、ビグ・ラングのコクピットにいた凛とイリヤも少なからず被害を受けていた。

「うっ…だ、大丈夫、イリヤ?」
「と、とりあえず、何とか…」

とはいえ、凛とイリヤも、“天道宮”激突の際に、安全装置として取り付けられたエアバックが功を奏したのか大事には至っておらず、少しだけ気を失う程度で済んでいた。
未だに残る眩暈を振り払った凛とイリヤは、お互いの無事を確認すると安堵の声を漏らしそうになった。
やがて、状況がどうなったのかを知るために、凛が薄暗くなった周囲を見渡そうとした時、不意にコクピットのドアが開かれた。

「お父様…」
「凛…」

そして、薄明るい月の光がさす方向に視線を向けた凛は、一同の中で真っ先に機能停止したビグ・ラングに駆け寄り、そのコクピットのドアを開けた時臣と対面することになった。
この一連の激戦を潜り抜けた時臣の姿は、お世辞にも優雅とは言えないほど無様な姿だった。
だが、今の凛にとっては、その無様な姿こそ自分を助ける為に命を懸けてくれたことの証であり、これまで見てきた時臣の姿の中でもっとも誇らしいモノだった。
やがて、凛と時臣はしばし、互いに見つめ合った後、お互いに口を開いてこう告げあった。

「ただいま…お父様」
「あぁ、おかえり…凛」

それは、どこの家族でもよく見られるごく当たり前の、しかし、時臣と凛にとってはお互いに親子の絆を実感できるには充分すぎるほどの言葉だった。


その後、コクピットから凛とイリヤを助け出した一同は、お互いに傷の手当てをしつつ、崩壊寸前の“天道宮”で陸地を目指して移動していた。

「ははっ…お互いひでぇ姿になっちまったもんだな」
「あぁ…とても優雅なんていえたものでないが―――」

この後、事のあらましを聞いた葵に殺す気の笑顔で某将軍の“地獄の断頭台(ガチ)”を掛けられることなど知る由もない近藤は、メアリから傷の手当てを受け終えた時臣に軽く笑いながら話しかけた。
そんな近藤に対し、時臣はヤレヤレといった様子で自身の有り様に軽く自嘲しながらも、誇らしげにこう言い切った。

「―――凛を助け出せたなら、それでも構わない」
「そうかい…なら、良かったじゃねぇか」

そう護るべき者を救えたと語る時臣の晴れやかな表情を見た近藤は、それ以上、多くを語る事無く、時臣に向かってニッカリと笑みを浮べながら満足そうに頷いた。
とここで、時臣は、少しだけ痛む体に我慢して立ち上がると、少し早目の杯を交わし始めようとしているランサー達と武蔵勢の元に歩み寄った。

「それに…娘の為に助力を頂き、本当に感謝の言葉も…」
「マスター…そういう時は、この一言だけで良いんだ」

そして、時臣はたどたどしい口調ではあるモノの、今回の一件で助力してくれたランサーや真島、武蔵勢にむかって礼を言わんとした。
だが、あくまで遠坂家の当主としての立場から感謝の言葉を口にする時臣を制した正純の言葉を受けると、時臣は、時臣個人の自身の胸中をおのれのおもむくままに打ち明けんと深く頭を下げてこう言った。

「皆…ありがとう」
「私もそれなりに楽しめたし…あんたも大切な一人娘を取り戻せたんだから、皆良かったじゃない」
「わしも色々とおもろかったから、それで良しにしとこうや」

それは、時臣からの、娘である凛を助ける為に力を貸してくれた仲間に対する、遠坂時臣という一人の父親として、一人の人間としての心の底からの感謝の言葉だった。
そして、そんな時臣からの感謝の言葉と姿に対し、ランサーや真島を筆頭に一同は、まるで気にするなと言わんばかりに満面の笑みを浮べていた。

「ねぇ…桂…」
「む、どうしたのだ、リーダー? あぁ、そうか!! 腹が減ったのだな。では、帰りに夕飯でも食べに行くか。ちなみに、俺の好物は蕎麦だ」
「さりげなく、何で好物を言うでござんすか?」

ただ、凛と同じように救われたにもかかわらず、一人だけ暗い表情で沈み込みながら、寂しげに隣にいる桂に問いかけるイリヤを除いてだが。
そんなイリヤの問いかけに対し、桂は、無理やり、明るく振舞おうとして大仰に答えながら、さりげなく蕎麦を食べに行こうと誘導して、即座に外道丸からのツッコミが入った。
だが、イリヤは、そんな桂と外道丸の即席漫才をスルーしながらも問わずにはいられなかった。

「どうして…どうして…キリツグは来てくれなかったの…?」
「イリヤ殿…」
「…」

まるで、父親に見捨てられたかのように泣くじゃくるイリヤを前に、桂と外道丸はどうする事も何もいう事も出来ずにただ押し黙るしかなかった。
まさか、この時点で、切嗣が警察に逮捕されているなど知る由もなく…
そして、切嗣が警察に逮捕されたほぼ同時刻に―――

「ちょ…おま!?」
「んっ…」
「えっ…?」

―――セイバーが、互いに唇を重ね合うようにしか見えない銀時と第一天の姿を遠目から目の当たりにしてしまった事など知る由もなく!!



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