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マブラヴ 転生者による歴史改変 歴史介入の章その46
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2014/02/09(日) 17:35公開   ID:I3fJQ6sumZ2
1997年 初夏 カシュガルハイヴ内部

 反応炉へと続く大広間、それは彼、立花隆也にとっては来慣れた場所のはずだった。
 それが、今までとは全く雰囲気が違う。そのことに彼は、一瞬戸惑った顔を見せた。
 彼が戸惑う、それは言ってみれば、いざ事に及ぼうとして、相手の股間に見慣れた物が付いていたり、えっちっちーなMANGAと思って中を見たら、エログロの際物だったりとそう言うことでもない限りあり得ない事だと周囲には認知されている。
 どんなやつだよ、それは。という突っ込みがあるのは仕方がないが、それが彼、立花隆也、自称紳士オブ紳士である。

 「因果律の干渉…どうやら本格的に始まったみたいだな」

 1人呟く彼は、密かに撃震ULの時空相転移炉に灯を入れる。すなわち、世界を相手取る事が出来る超兵器の出撃を想定している行動である。

 「どうかしたの、隆也くん?」

 秘匿回線で直接隆也に連絡が入る。相手は神宮司まりも、彼のパートナーにして、因果律改変計画の最初の犠牲者とも言える人物である。
 独力で得た「女の勘」により、世界中の誰よりも、隆也の変化に敏感である困った女性だ。

 「いや、ちょっとな…まりもん、撃震ALの調子はどうだ?」

 「すこぶる順調よ。先進撃震参型よりも遥かに動きがいいわね」

 この作戦に先立って与えられた撃震ALの性能にご機嫌のようである。この辺りは、さすが戦術機乗りである。
 全世界の衛士から、エースと称えられる彼女であるがゆえに、その能力を十全に生かし切ることが出来る戦術機は希少である。
 現存の量産型の中で彼女の操縦に追従できる機体は、存在しない。かろうじてAL4計画が持つ、先行量産機である「迅雷」が彼女の操縦に耐えられるくらいだろう。

 「そうか、そりゃよかった。武とヘタレに、言っておいてくれ。いつもと同じと思うな、何かが違う、とな」

 「?わかったわ、そう言えばいいのね」

 「ああ、頼む」

 「了解、それじゃ、本当に何もないのね?」

 「今のところはな。ただ、気になることがある。それは確かだ。もっとも何がどう気になるかが分からないんだが…」

 隆也の珍しく歯切れの悪い態度に、まりもが驚いたように目を瞬かせる。この男、へんた、もとい紳士につき、が合い言葉の隆也がシリアスに語っている。
 こやつ、偽物じゃなかろうか?などという失礼な疑念がまりもの頭をよぎる。だがまあ、彼がたまにシリアスモードになることもないではない。
 朝食に変な物でも食べたのだろう、などと思うには、彼女の持つ「女の勘」は敏感すぎた。

 「そう、それなら何か分かったら教えてね。手遅れになる前に」

 「ああ、そうする」

 通信回線を切って、しばらく脳内シミュレーターでコネコネと状況をやり返すが、出た答えはいつも通りだった。
 だが、間違いなくいつもと違う。第六感が警鐘を鳴らしている。

 「まあいい、なにかあれば、それごと叩きつぶして、突き進むのみだ」

 獰猛な笑みを浮かべ、傲岸不遜に呟くと、雷雲の操縦に専念する。
 なにせ今は敵地のど真ん中。それも本丸の前の最も苛烈な防御陣とも言える場所なのだ。呑気に過ぎるといえば呑気に過ぎる。
 だが誰もそれを疑問に思わない。
 なぜなら、並列思考と同一化した00ユニットにより今この瞬間も、雷雲は苛烈な戦闘行為を続行しているのだから。
 そんな中にあって、中に乗る隆也の変調に気づいたまりもの「女の勘」こそ恐るべし、である。

 「よし、サブ荷電粒子砲、5秒間並列発射後、M314搭載自律誘導弾を1秒間隔で全門発射。続けて240mm電磁投射砲30秒斉射後、120mm電磁投射砲30秒斉射」

 「了解」

 雷雲の管制室にいる涼宮茜から了承の声があがり、雷雲に備えられているサブ荷電粒子砲4門が火を噴く。あふれ出す破滅の閃光。その光に触れたBETAは次々と原初の塵へと変わっていく。
 その一瞬で数千単位のBETAが消滅する。
 続けざまにM314搭載自律誘導弾が発射される。S11よりも高威力のM01、それをさらに改良して威力をましたものがM314だ。
 通常弾頭に搭載できるまでに軽量、小型化されているのにその一発は、本作戦に参加している戦術機が反応炉破壊用に装備しているM01と同等の威力を誇る。
 それが36門の発射口から順次発射される。
 一発のミサイルで優に1000単位のBETAが吹き飛ぶ、それが36発。出鱈目な威力だ。

 「はわ〜、すごいですね、武さん」

 「ああ、師匠が持ってきたんだからとんでも兵器だろうとは思っていたけど、やっぱりとんでも兵器だったな」

 「ふむ、流石は師匠だな」

 などと、マブレンジャー達は素直にその火力の凄まじさに感心しきりである。
 もっとも、自分たちも大概ではある。わずか16才の身でありながら身分を隠して、桜花作戦に参加。しかも扱う機体はAL4計画専用機「迅雷」。
 誰もが憧れる性能を持つ機体でありながら、誰もが扱いきれないじゃじゃ馬。それを難なく乗りこなしながら、凄まじいまでの勢いで迫り来るBETAを駆除していく。
 マブピンクこと珠瀬壬姫は、毎分数百発の弾丸をばらまく36mm突撃銃を一発の外れもなく、相手の急所に叩き込む。しかも、全く無駄な弾は使っていない。
 相手BETAを打ち倒すのに必要な弾しか撃ち込まないのだ。まさに神業である。
 マブシルバーこと白銀武も、迅雷専用戦術刀と36mm突撃銃を使い、縦横無尽にハイヴ内を駆け回っている。
 その軌道は、まりもの超一流を超えた戦術機動と互角の動きをしている。その証拠に、最初の頃うさんくさげな視線を向けていた第十三戦術機甲大隊の面々は度肝を抜かれた様子で、その姿を呆然と見つめるしかなかった。
 当然、小塚次郎中佐の大目玉で正気に返るまでのほんの一瞬だったのだが。
 それでも一瞬の隙は命取り、の言葉通り、A01部隊の支援がなければ1機か2機はBETAの攻撃をもろに喰らっていたことだろう。
 そして最後のマブブルーこと、御剣冥夜操る二刀流の機体。突撃級だろうが、要撃級だろうが、お構いなしにその刀でぶった切っていく。さながら暴風圏だ。
 その間合いに入った物は全て分断され、裁断され、細切れの破片へと姿を変える。

 「AL4計画ってのは、化け物でもなけりゃ入れないのかね?」

 とぼやくのは小塚次郎中佐だ。自分だって、一流の自負はあるが、それだけにあの異常さついて行けるとは思えない。
 それだけの動きを彼らは見せつけていた。

 「あれでもし、おれよりも戦術機乗りの期間が短いようだったら、正直凹むね。あ、そういえば神宮司にも戦術機の搭乗時間は勝っていたな…やめよう、気が沈むだけだ」

 何かを悟ったように、目の前の戦車級に36mmを打ち込むだけの簡単な作業を再開する小塚次郎中佐であった。
 そんなこんなで大進撃を続ける彼らが大広間の中程にさしかかった頃、すでに雷雲を始めとした突入部隊がこの広間で屠ったBETAの数は10万近くに達しようとしていた。
 ちなみに無数の残骸は、暇を見つけては雷雲が荷電粒子砲で消去処分していたので、彼らが通ったあとはわりと綺麗な物である。

 「師匠、震度計から特定パターン検知。例の地下侵攻用の大物が来ます!」

 「ほう、BETAにとって神聖不可侵であるハイヴの壁面を突き破って出てくるってか。敵さんも必死だね。よし、全機にその情報を知らせろ」

 「了解、あ、パターン検知さらに増大、最大6体の母艦級が迫ってきています!」

 「出現位置の特定急げ、奴さんが口を開くのと同時にM314搭載自律誘導弾をぶち込む。いいか、くぱぁ、て開いたところに、硬くてぶっといやつを」

 「あ、はい、了解」

 「え、ちょっと、ねえ、最後まで聞いてよ、ねえってば」

 すげなくスルーされ、焦る隆也。彼はもしかしたら息をするように下ネタを発していないと生きていけない生き物なのかも知れない。それが紳士という生き物なら、ちょっといやかも。
 茜からもたらされた情報は、すぐに全軍に伝えられる。

 「地上戦でも姿を拝んだことのない母艦級か。まさかこんな地の底で見ることになるとはな」

 ぼやく小塚次郎中佐。

 「でも、姿を現した途端に、『雷雲』が例のミサイルをその口の中に叩き込むんですよね?」

 「まあな」

 言って、小塚は表示されている母艦級の予測映像に意識を向けた。
 一言で言ってしまえば、棒である。先端部分がシールドマシンのようになっているらしく、地下走査用衛星の資料などからくみ上げられたシミュレーター映像である。
 予測ではこの棒の先端にあるシールドマシン状の部分が開くことにより、中から大量のBETAを進攻先へと送り出すらしい。

 「A01部隊は、取りこぼしを最優先で駆除、AL1はRAIUNの支援のもと前方のBETA群を引き受ける。なにかあるか?」

 まりもがA01部隊に指示を出す。

 「こちらA−01リーダー。取りこぼしに関しては、第十三戦術機甲大隊と年長組であたりたいと思います。年少組はAL1と共に前方のBETA群を相手取った方が効率がよいかと愚考いたしますが?」

 A−01リーダーこと、伊隅みちるの言葉に、一瞬考え込むAL1ことまりも。
 確かに第十三戦術機甲大隊と一緒ならば年長組だけで手は足りるだろう。

 「だが、そうすると後方の守りがおろそかになるぞ?」

 そう、BETAは侵入経路外の地下茎から続々と大広間に向かって近づいてきているのだ。

 「おそらくそれまでには片が付くかと思います。なにせ、あのM314搭載自律誘導弾の威力は並ではありません」

 「ふむ」

 確かに、あれを相手の体内に2発も打ち込めばそれで片は付くだろう。
 時間的にそれほど余裕はないが、無理でもない、といったところか。

 「いいだろう、その作戦で行く。年少組は私に付いてこい!」

 「「「了解!」」」

 「A−01リーダー、年長組は私に付いてこい!」

 「「「了解!」」」

 そして十数秒後、地獄の門が現れる。

 「おお、振動計に感あり、戦術機搭載のでも分かるってのよっぽど近いのか…」

 「そうみたいですね、隊長、ほら」

 第十三戦術機甲大隊の隊員が、器用に戦術機で指さすその先には、ぱらぱらと壁面崩壊を始めたハイヴが。
 それからそれが姿を現すまで、ほんの一瞬だった。
 尖った歯のような物でびっちりと覆われた壁。一目見た印象はまさにそれだった。
 一本一本の歯状のものは大きく、下手をすれば戦術機並の大きさのものもある。

 「あれが、母艦級。映像で確認されるのは初めてだな…」

 どこか惚けたような声が、第十三戦術機甲大隊の隊員の口から漏れる。
 それほどまに、それは巨大だった。要塞級すら小さく見えるその大きな丸い壁、いや掘削口か。
 そしてそれがゆっくりと開いていく。
 中に垣間見えるのはBETA、BETA、BETA。無数のBETAが犇めいている。
 よくよく目を懲らすと、ハイヴ内では今まで観測されたことがない要塞級の姿すらあるではないか。
 大自然の驚異の前に震えるだけしか出来ない人間の様に、第十三戦術機甲大隊の面々はそのあまりのスケールの違う光景に飲まれかかっていた。
 だが、それを打ちのめす一声がこだまする。

 「いまだ、くぱぁ、したところに突っ込むんだ、くぱぁ、したところにだぞ!」

 「はいはい、了解」

 いい加減げんなりした茜の声が答えると共に、M314搭載自律誘導弾がその口内へと飛び込んでいく。
 そして次の瞬間、強烈な衝撃と共に母艦級の口から火が噴き出す。その圧力から逃れるように、口内から文字通り飛び出してくるBETA。
 それをみちる操る迅雷を筆頭に、年長組が的確に処理していく。

 「Eナイト1、お代わりはまだ5体います。油断なさらないように」

 「お、おう、Eナイト1了解だ、すまんな」

 「いえ、お気になさらず」

 すぐさま気を入れ直して、迎撃の指示を飛ばす小塚次郎中佐。
 そして、みちるの言葉通り、続々とやってくる母艦級。惚けている時間などなかった。
 現れる母艦級、くぱぁ、と開かれる口。

 「ふへへへ、おらあ、奥まで飲みこむんやで」

 という紳士の台詞と共に、雷雲から飛来するM314搭載自律誘導弾。

 「らめえぇ、奥まで入れたら嘔吐いちゃうのぅ!」

 という紳士の代弁と共に、母艦級の口から噴き出す爆風。そして舞い上がるBETA。
 地上に墜落してもまだ蠢いているそれに留めをさすだけの簡単なお仕事を淡々とこなす第十三戦術機甲大隊とA01部隊の面々。
 ある意味地獄絵図だった。

 「よっしゃ、これでラスト!奥の奥まで突っ込んでやれや!」

 「了解」

 ここまでくると、茜も半分やけくそでちょっとノリノリでもあった。

 「奥の奥まで突っ込んでどっかん!」

 という、茜の声と共に最後の母艦級が盛大に爆煙をあげながら沈黙する。
 後日、茜はこの時の台詞をネタに散々弄られる事になるのだが、今はハイテンションのためそんなこと露とも思っていないのであった。
 そして6匹の母艦級を相手にしている内に、雷雲はついに反応炉に続く壁面、門級BETAの元にたどり着いていた。

 「予定通り門級BETAのところまで到着したな。例の薬剤を制御脳に注入開始」

 「了解」

 指示を受けたマブグリーンこと、鎧衣美琴が雷雲に搭載されている門級BETAの制御脳用の薬剤を取り出すと、そのままぶすっと制御脳に突き刺す。
 この門級BETAというやつは、ハイヴ構内の壁面に擬態したBETAである。通常は、反応炉の指示を受けて開閉するのだが、その制御は制御脳と名付けられた小型の制御用装置で行われている。
 先ほどのリヨンハイヴ攻略の際に入手した情報により、その制御脳を制御する物質の解析、製造はすんでおり、こうやって人の手で開閉を自由にすることが出来るのだ。
 ちなみになぜ荷電粒子砲でぶち抜かないのかについては、この門をくぐった後は、再び門を閉鎖。そして制御脳を破壊することで後続のBETAを防ぎ止めるためだ。

 「やだ、いきなりなんて、乱暴ねぇ」

 「師匠、気持ち悪いこと言わないでよね」

 お姉言葉で茶化す隆也に、本当に気持ち悪そうに答える美琴。
 薬剤の注入が終わると、ゆっくりと門が下がっていく。
 それとともに、隆也の第六感に訴えかける警鐘がふくれあがっていく。
 久々に味わう緊張感と共に、隆也は門が下がりきるのを待つのであった。

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