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青年冒険譚〜武人大国救済伝〜 第二話:好奇心に駆られた少年と運命を導く少女
作者:マスカレイド   2014/03/19(水) 13:20公開   ID:8YA7Hr6Ij6Y
真夏の、青草薫る冷涼な森の中は最高やなぁ……
ども、和泉アラタです。
森の奥のほうから不思議な気配を感じた僕は、
その正体を突き止めるべく、森へと踏み込んだのでした。
え?そんな簡単に森に入ったら危ないって?
なんのなんの、僕はこう見えて細太大小二本の木刀の扱いには慣れとるからな、
熊の1匹2匹はどうってことあらへんよ。

……それにしても、異常やな、いくら森の中とはいえ、
いくらなんでも、これは涼しすぎへん?仮にも夏真っ盛りやで。
そりゃ、蚊だらけの虫蒸し地獄よりはマシやけどさあ…

「ひ……ら……と……うに……」

!!!!!?今、歌みたいのが聞こえた……?

「……♪……♪」

こっちの……方角、やなあ……
さて、逃げられても困るわ……まずは様子見でもして……え?

「ひらひらと舞う、雪のように……木の葉のように……♪」

……女の子や。それも、小学生くらいの。
幼い外見に合わず、怜悧な目つきや、
滑らかなライトブルーの髪に思わず魅入ってまうような美しさを備えておる。
何より最大の特徴言うたら、その抱え込んどる大きなタマゴやな。
それに語りかけるように優しく歌う、不思議なふしぎな少女。
て、んなこといっとる場合やあらへん。しっかりと注意せなな。

「こらこら、子供がこんなところに一人でいたらあかんやろ、さらわれるで?」
「……!!」
な、何や何や?不思議そうな顔してこっち見て。

「ん……」
突然、このコが僕に卵を差し出してきよった。
とりあえず、受け取ってやるか。

「それにしても……なあ、これ、何のタマゴや?」
不思議な模様が描いてあるし、高三の僕で両手で抱えられるサイズや。

「そのまま……目を閉じて……」

へ?え、こう……?

――アラタがそう言って目を閉じたときであった……――――
!!!!、なんや、コレ!頭の中にたくさんのイメージがあふれかえるようや。
ドラゴンのようなイメージや四腕のトラ、
機械兵や人魚など、頭の中が不思議なイメージに覆い尽くされる。
さらにそれらの出来上がったイメージを組み替えたりで、
より多くの、何通りものイメージへと広がっていく……

……ピシ……!

!!!タマゴにヒビが入ったわ!!
あのコがどことなく嬉しそうに寄ってくる。
そのまま、タマゴは完全にヒビが入り……孵化を果たしたみたいや……

少女がT字型の覗き穴のある兜をかぶった騎士の上半身に、
機械的な下半身の、大斧を手にした紫色の人形を抱え、
「良かった……」
満足げな笑みを浮かべその人形に頬擦りをする……

て!!ちょっと待たんかい……!!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――
私は嬉しかった……『あのお方』に課せられた使命に成功したみたい……
あ、でもまだ駄目、本当のお仕事はこれからだもん。
まずは……
「って、ちょと待たんかい!!」
彼が私に勢いよく突っ込みを入れる。
「なんで卵から、僕のイメージがそのまま生まれてくんねん!?
てかそもそもなんで卵から人形が生まれてくんねん!!訳判らん!!」
そりゃそうだ……でも説明のしようがないから私はとりあえず一言、

「……そのうち、きっとわかるよ……ところで……名前は?」
「ん?ああ、僕、アラタ。和泉アラタやねん。よろしく。君は?」

目の前の男、和泉アラタは、そう言って私に手を差し出す。
でも、私はその手を握り返せない。だって……

―――――私には、名前が

         無 い ん だ も ん ……――――――

「つけて……」
気がついたら私は彼に言い放つ。
それにしても、間抜けそうな顔だなあ……
まあ、突然、こんなこと言われたら仕方ないか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
ふぇ!!?え、何?さすがに今のは訳わからんよ?
さっきまで子供らしからぬ神妙な顔してたお嬢ちゃんが、
突然きょとんとした表情で僕のことを見据えてきたからなんや思ったら、
『つけて』ってどゆこっちゃ?

「え、なあ、どういうこと?もう少し詳しく言ってくれへん?」

そういう僕に彼女はまた何かを思うような顔で口を開く。
「私……名前……無いの……だから、アラタ、つけて。ワタシ ノ ナマエ……」

…………「……アラタ……?」……!!あ、ごめんごめん。
つい放心状態になってもうたわ。
いきなり「名前が無い」なんて、急展開過ぎるやろ。
い、いや、んなことぁこの際どーでもえぇ。この子に会う名前考えてやらへんと。

髪が水色なのが綺麗やなあ……一言でいうなれば「蒼海の子」ってところか……

ん〜〜……あー……え〜〜〜……ウシ!!この際バシッと決めてまうわ。

「アレク!!!!それが今日からの君の名前や!」
「アレ……ク……?アレク……」
彼女が新しい自分の名前を復唱し続ける……
と、不意にあどけない笑顔を見せて元気よくうなずくモンやから、
ついドキっとしてもうたわ、ホンマかわええなあ〜……

あ゛……ちゃ、ちゃうで!!僕はロリコンやあらへんで!!年下派ではあるけどさ!!

「君、家どこ?僕が送ってってあげるで。」

そういう僕に対し、彼女は一言

「うん、アラタの部屋……」

・ ・ ・ ・ ・ ・

エェ゛―――――――――――――――――!!!!??

意味がわからん意味がわからん!!
うちにはすでに妹が……ってチガ――――――――――う!!!!
そういう問題や無い!!あかんやろ!!
てか、なんちゅう顔しとんねんこの子供!!
ぽかんとした顔して……!!てそらそうか、まだ子供やからな、
自分の発言について何も考えとらん訳やな。
それに、せっかく向こうから来てくれたんやし、この際頂いてまおう(キラ)

……て、だからなんでそういう発想にいたるんや!!?
アホカ!?僕はこんなにアホナンカ!!?

「まあ、ちょいまち。妹に頼んでみるわ。せやから妹の部屋『駄目……』」

ハァ―――――――――――――――――!?

「アラタの部屋にかくまっていて欲しいの……私のことは、
周りにばらしてもいいけど家に置いておくってことは、
なるべく知られないようにして……」

ん〜〜〜……しゃあないな。子供のことや、変な気はおこさへんやろ。

「分かった!!んじゃ、これからよろしくな、アレク。」
そういい、手を差し伸べる僕に、アレクは小さく微笑んで返す。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ん……よろしく、アラタ……」
アラタの笑顔も手も……スゴク暖かい……
もし彼が「本物」ならきっと『アノオカタノキボウ』になれるはず……

「アラタ……」
不思議そうな顔をする彼の腕に私はすりつき、口を開く。
「これから……なにがあっても……驚かないようにね……」
当然だろうけど、ますます不思議そうな顔をするアラタは、
呆れたような苦笑を浮かべ、
「まあ、せやな。森で独りの名前が無いチビ娘。
自分のイメージ通りにデザインされて卵から生まれてくる人形。
もはや何に驚くべきかがわからへんで。ん?どした??」

今の私、すごい心配そうな顔してたんだと思う。
どこと無く心配したように私に聞いてくるアラタを見れば分かるよ……

でも……ごめんなさい……私……あなたをマキコムコトニナッチャッタ……
――――――――――――――――――――――――――――――――――
午前0時――明かり消えた街、麻帆良学園都市。
その上空をおぞましい怪鳥(竜?)がシンボルである超巨大神木、
世界樹のふもとの山中へ急降下する。
「ありがとよシャンタクゥ……」
「ケェエエエ……」
その背から降りた二人の男が怪鳥、シャンタクの口に肉を投げ込む。
満足げに鳴いて喜びを示した怪鳥は、
時空がゆがんだような上空へと再び飛翔し消える……

二人の男は人相の悪い不敵な笑みを浮かべ……
「この辺にいるってのぁ、間違いねぇのなあ……」
「みてぇだぜぇ兄ちゃん。んじゃ、ひとまず寝ますか……」

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■作者からのメッセージ
連載で三話も進んだのはお恥ずかしながら初めてです。

さてさて、最早これから先どこまで続けられるかが楽しみ、という、
しょーも無い状況ですが、完結までいけるように頑張りたいと思います。

アレク、とは何なのか、卵から生まれた人形の正体、アラタの今後の人生、
それらはいづれ明らかになるであろう……
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