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マブラヴ 転生者による歴史改変 49話
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2014/03/23(日) 18:22公開   ID:I3fJQ6sumZ2
 うむ、なんか凄い久しぶりな気がするが、ごきげんよう、皆さん。
 ただいま1997年の初夏、オリジナルハイヴ攻略戦の真っ最中だ。
 因果律の修正機能、本人(?)曰く、『次元干渉体』により『次元監視存在』へとその姿を変えた反応炉、戦略呼称を『あ号標的』と呼んでいるやつの代わり果てた姿に驚いたのも記憶に新しい。
 記憶に新しいつっても、時間にして数十分前の出来事なんだけどな。年を取ると時間がたつのが早く感じるね、ホント。なんだか一月以上前の出来事のように感じる。
 で、だ。そいつのいるせいで、反応炉が鎮座まします大広間は、現在時空間的に非常に不安定な状態になっている。
 原因は、おそらく新種のG元素の影響だろう。時空間に干渉する、確かにG元素の持つ性質をうまく利用すれば、このような空間を構築することができるだろう。
 おそらく『次元干渉体』による因果律への干渉はそこから始まったのだろう。
 レシピを『あ号標的』に渡して生産させ、そしてそれにより自らが自由に干渉できる空間を構築する。
 予測だが、『あ号標的』がこんなリアルなおてぃむてぃむな姿になったのも、ここ数日の出来事だろう。
 でなければ、他のハイヴも同様になんらかの干渉を受けているはずだからだ。それがないと言うことは、つい最近変態が完了したと推察できる。
 使用したG元素の量も相当だろう。だが、奴らも知るまい、これこそがおれが予測していたベストな状態であるということを。
 予想外だったのではないか?
 ふっ、紳士に不可能はない。確かに脳内シミュレータではどうやっても現在の状況を予測は出来なかった。
 それは因果律の干渉という、世界の範疇外からの干渉を計算できなかったからだ。ちなみに今は違う。現実にサンプルの空間があるわけだからな。
 だが、脳内シミュレータではできなくても、自分の脳みそを使っての予測は立てられる。
 AL因果律、それを完遂するにはBETAはなくはならない要素である、との仮定の下ではあるが、とすれば干渉が起きうる可能性の高いのはいつか?
 そう、最後の砦であり、全ての悲劇の始まりの場所であるオリジナルハイヴ、そこの攻略戦。それに何らかの干渉が生じると予測を立てるのは難しくはない。
 自慢じゃないけど、おれの今生での頭脳明晰具合は、ちょっとしたもんですよ。
 知力限定で言えば、夕呼とためをはれるし。
 その割には夜のプロレスでは負けっ放しですね、って五月蠅いわい!
 こほん、失礼、取り乱した。
 そんなこんなで、全ては予定通り。
 まりもが敵さんに操られたのは予想GUYです、だったが、まあそれも想定の範囲内。
 ふふふ、『あ号標的』改め『次元監視存在』よ、ぶるぶる震えて命乞いの用意はいいか?
 これからが本当の因果律の反逆の本領発揮ですよ?
 などとおれが悦に浸っていると、外部から呼びかける声が。

 「ちょっと隆也、このアタシがわざわざ足を運んできたんだから、感謝の言葉くらいないの?」

 網膜ディスプレイに、もっふもふの夕呼の姿が映る。

 「ぷふっ、香月副司令、可愛いですね、いやいや、素敵ですよ」

 笑いを堪えながら褒めてやると、なぜか夕呼の不機嫌メーターが振り切れた。

 「うるさいわね!あんたが着せたんでしょうが!耐G強化装備って言って」

 「いや、そうなんだけどね、なんというか、理知的美人のゆうこりんが着ると、そのギャップがもうなんていうの?ぷっ、くすくす」

 「殺す!状況がどうとかの前に、まずはアンタを血祭りに上げてやるわ!」

 夕呼さん、本気で怒ってしまった。むぅ、しまった。今はシリアスにやらないといけないところだった。
 でもなあ、あの姿を見てしまうと…だめだ、腹が、腹筋が危険です。

 「すまない、ゆうこりん、悪いが映像モードをサウンドオンリーモードにしてくれ。腹が、腹が痛い…」

 「…後で覚えておきなさいよ、隆也」

 静かな怒り、それ故にその怒りの深さと恐ろしさを想像して、思わず身を固くしてしまう。
 直後、夕呼の操る撃震EXから送られてくる衛士映像がSOUND ONLYに変わっている。
 ちなみに先ほどの夕呼の映像は、おれの機体、つまりは撃震ULにしか送っていないので、周囲の人間はおれが何に笑っていたのか全く分かっていないだろう。
 下手したら、キチガイと思われたかも知れない。むむ、いかん、それは非常にいかんですな。
 わたくしめは、紳士。決してキチピーではないというのに、そんな誤解をされるとは。

 「あんた、相変わらず頭で訳の分からないことを考えているんじゃないでしょうね。そんなことより状況を説明しなさいよ、状況を」

 「おう、それじゃ、へたれ、三行で説明よろしく」

 「へ、え、おれ?、それより香月副司令がなんでこんなところに?指揮はどうなったんですか?」

 突然の夕呼の乱入に混乱していたらしく、取り乱したようすのヘタレ。こいつ、こんなだからヘタレなんだよ。

 「あー、お前に聞いたおれがバカだった。みちるたん、お願い」

 「だれがみちるたんですか」

 「それじゃ、みちるたんはぁはぁ、で」

 「もういいです」

 おや、どうしたんだろう?なぜか全てを諦めきった顔でみちるがため息をついた。

 「伊隅、どうやら逼迫しているみたいだから、簡単にね」

 「はい、ただいま『あ号標的』が自らを『次元監視存在』と名乗り、我々と交戦中です。交戦相手は、『次元監視存在』により操られた米ソの軌道降下部隊、そして、神宮司大尉です」

 「ふーん、なかなか面白い状況になっているじゃない。詳しい内容は戦術機に送っておいて」

 「了解」

 スマートな会話を交わす、師弟。ちなみにマブレンジャー達の教育には夕呼も噛んでいるので、師弟で間違っていない。

 「それで隆也、まりもの具合はどうなの?」

 秘匿回線、もっとも先ほどの冒頭の会話もだが基本AL部隊内の秘匿回線内でやり合っている。
 従って第十三戦術機甲大隊の面々はハブられている。
 ほら、一応おれたちってば、国連の最高機密のオルタネイティブ第四計画の関係者だし。…うん、自分で言ってて説得力のないことおびただしいな。
 でも事実は事実なんだよな。

 「うん、まあ何とかなりそうな程度には抑えられているな。最悪細胞レベルでの浸食を懸念したんだけど、今のところ存在レベルでの干渉で済んでいる」

 「存在レベルの干渉って、細胞レベルよりもたちが悪いじゃないのよ!」

 「いや、この空間ではそうでもないんだよな、これが」

 「空間?まさか、あなたが言っていた、世界の壁が薄くなる特殊な空間ってこと?」

 「ご名答。そして、ここで世界は一度終わり、新生する」

 「…なるほどね、そういうこと。わかったわ。それじゃ、口だけじゃないことを期待しているわよ」

 「ああ」

 おれは自分と夕呼以外が聞いても分からないような会話を終わらせる。事実、この部屋の現在の状況については、あらかじめこういう事があるかも知れないと、夕呼に説明していたから分かったのだ。
 でなければ、如何に夕呼が超時空因果律量子理論の専門家でもこれだけの短い会話で終わらせることはできない。
 いやあ、根回しってホント重要ですね。あれだ、ガンガンのし上がっていくベンチャー企業なら喧々諤々の会議なんだろうけど、ある程度落ち着いた大企業だと事前の根回しこそ命なのだよ。

 「それで、敵に回ったまりもの状況はどうなの?」

 「まあ、撃震EXが揃ったことで取り戻す算段は立った」

 「そう、それじゃ、任せたわよ。アタシは戦闘は専門外だから、隅っこで見ているわ」

 「をいをい、そのためのMOSであり、専用ソフト『T.R戦闘モード』じゃないか」

 「五月蠅いわね、そもそもアタシの役割はこいつの主機関の制御でしょ?」

 「むぅ、確かに。わかりましたよ、それじゃ、夕呼さんはあちらでごゆっくり見学なさっててくださいな」

 「ええ、そうさせてもらうわ」

 人が折角いやみったらしく言ったのに、全く答えていない様子。
 まったく、ふてぶてしい。誰に似たのやら?ん、なんで皆さんこちらを指さすんです?人を指さしちゃいけませんよ、めっ、ですよ。

 「さて、それではまりもんよ、そろそろ正気に戻ってもらおう。その前に押さえつけるのが先かな?」

 「無駄なことだ。今までの戦闘で彼我の力量差はほぼ互角。こちらが一方的に勝利することが不可能ならば、そちらが一方的な勝利を収めることも不可能」

 うつろな目と声でまりもが喋る。
 いい加減、そのしゃべりと目がカンに触る。そもそもおれの女に手を出したのがカンに触る。
 まりものムネとケツとあそこは、おれのもんだ。それを一時的にせよ取るとはいい加減、お兄さんも怒りは有頂天だよ!

 「ふっ、なにか勘違いしていないか?おれは確かに持てる力量は全て出した。だが、全力を出した覚えはない」

 「なにを世迷い言を」

 「二万三千」

 「?」

 「まりもんの淑女力は二万三千、それを気増幅機構で底上げして今では二百三十万の淑女力を誇る。確かに驚異的だ。一般成人男性が五〜十程度の紳士力だからして、その凄まじさは押して知るべしだな。ちなみに紳士力=淑女力だ」

 「なんか師匠が語り出したぞ」

 高速戦闘をこなしながら武が周りの人間に語りかける。
 すると他のマブレンジャー達も、戦闘をこなしながら注意をこちらに払うようになった。この辺りは長い付き合いなので気配で分かる。
 そもそもあいつらも並列思考を持つ者達なので、戦闘行為自体に問題はない。

 「しかし…」

 おれはここでためを作った。そう、この台詞を言うために今までおれは力を押さえた戦いをしていたと言っていい。

 「私の紳士力は五十三万です」

 「「「!?」」」

 衝撃が走る。そう、おれの素での紳士力は実に五十三万。まりも達が衛士方面に特化する代わりに、おれは個人の気力を、戦闘力を上げることを重点として鍛えてきた。
 その結果が五十三万。素でのまりもを遥かに上回る紳士力、それがこのおれ、立花隆也だ。

 「そしてこの撃震ULに積んであるのは気増幅機構が2機。それが意味することをおわかりかな?」

 そう、気増幅機構は己の気力を10倍に引き上げる。二機なら100倍だ。

 「今から気力増幅機構に火を入れる。さあ、楽しませてくれよ!」

 瞬間、おれは自分の力が数段階、いや、遥か高見に押し上げられるのを感じた。
 五千三百万の紳士力。その凄まじいまでの力を恐れるかのように、大広間が震える。

 「す、すごい、これが師匠の力…」

 みちるが恐れおののくように声を漏らす。

 「なんてプレッシャーだよ、反則過ぎるだろ!」

 「す、すごいわね、流石は師匠」

 「うう、ここまで凄いと逆に怖いよ」

 ヘタレが叫ぶ様に言うと、水月はおれの力に憧れるように声を漏らす。ちなみに遙はおれの雄々しさにおののいているようだ。

 「すげぇ、流石師匠、半端ねえな」

 「うん、確かに凄いね」

 武&純夏のいつもの漫才コンビも、いつもの掛け合いがでないほど感銘を受けているようだ。

 「相変わらず常識の埒外というかなんとうか、もう慣れたつもりでいたんだけどね」

 「諦めも肝心?」

 「流石師匠、お見事です。自らに枷をかしての戦闘、そしてそれでもなお決して負けないその力量、素晴らしい」

 「壬姫、こんなの初めてです」

 「そうだね。ぼくもこんなの初めてだよ。見てよ、あまりのプレッシャーに、鳥肌が立ってるよ」

 「あはは、ここまでくると笑うしかないよね」

 残る年少組ももはや驚くより他はないようだ。
 ふふふ、見たか聞いたか驚いたか、これが、これこそがおれの真の力。

 「さて、見せてもらおうか、因果律のあがきとやらを!」

 なんというか、ノリノリだった。
 いや、まあなんというか、自分でも悪のりが過ぎたと思っている。今では少しだけ、反省していることもないこともない。

 『まさか、それだけの力を隠していたというのか。だが、なぜだ。なぜわざわざ力を隠す必要がある』

 でっけえおてぃむてぃむが狼狽、イヤ、表現としてどうかと思うのだが、そうとしたか言えないのだ。
 それにしてもシュールだよな。狼狽するおてぃむてぃむ。うん、シュールすぎてなんか、なんもいえねー。

 「五千三百万もの紳士力。これは時空にすら影響する。それがこの不安定な空間でどう影響するか、わかるか?」

 「次元境界線の著しい減退、それにより多世界への干渉が容易になる。その反面、多世界からの影響も受けやすくなる」

 さっきから隅っこで様子を見ていた夕呼が口を開く。
 そう、その通りだ。

 「そして、それこそが、撃震ULに備わるある機関を動かす鍵となる。すなわち、超時空輪転機関」

 言ってからおれは深呼吸一つ、そのあと超時空輪転機関の起動スイッチを入れる。
 超時空輪転機関、機関内に多世界を召喚することにより、その世界間のエネルギー偏差により循環させたエネルギーを取り出す摩訶不思議機関。
 単純に言えば、世界A、B、Cを超時空輪転機関に召喚する。
 世界Aのエネルギー1は、世界Bのエネルギー10に相当する。そして世界Bのエネルギー10は、世界Cのエネルギー100に相当する。
 ここまではいいだろう。世界が違えばエネルギーの有り様というものも変わるのだから。
 だがここからが、超時空輪転機関の肝となる、超時空因果律量子理論が登場する。すなわち、世界Cのエネルギー100が世界Aでのエネルギー1000に相当するという現象。
 世界A>世界B>世界C>世界A、この物理学というか、数学を否定する式が成立する多元世界でのあり方。
 それを肯定することで生まれる超機関、超時空輪転機関。
 世界Aで作られた物語が世界Bを生み出し、世界Bで作られた物語が世界Cを生み出す。そして世界Cで生まれた物語が世界Aを生み出すのだ。
 永遠と循環する世界、己の尾を飲み干すウロボロスの蛇、卵が先か鶏が先かの答えのでない問答。
 それらを肯定した先に見いだされる、超時空因果律量子理論。そしてその神髄。

 「さあ、世界よ、宿れ」

 『あり得ない。あってはいけない。それは、世界を否定し、肯定し、破壊し、創造する、禁忌の技!』

 でっかいおてぃむてぃむが驚愕するのが気配で分かる。驚愕するおてぃむてぃむってどんなだよ、とか思うが、まあ、ここまで来るとさすがに慣れたな。
 そして動き出す。
 超時空輪転機関が。
 起動に必要なエネルギーがあまりにも大きすぎて、今まで機動ガ不可能だった超時空輪転機関。
 そこから得られるエネルギーは無限。そう、無限なのだ。
 そして今この時なったのは、おれの構想の始まりに過ぎない。
 なぜ撃震の名を冠するイレギュラーの数が3機なのか?
 そしてなぜその撃震シリーズには悉く超時空輪転機関が搭載されているのか。
 今、おれの持つ因果律への反逆が本当の意味で因果律に牙を剥く。

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