「ありました! この洞窟の深部から魔法の使用反応がします」
『全く、今回も先を越されることになるとはな。しかし、獲物はこちらで刈り取るのだ!』
「はい! パワードスーツ部隊、魔導師部隊合わせて1000名! 既に配置についています。
後は中将の突撃命令を待つのみとなっております」
『よし、では行け。ただし、奴らは罠を仕掛けるのが上手い、慎重に進め!』
「はっ、了解いたしました!」
魔導師500にパワードスーツ500、どちらも大隊規模で動かすという前例のない試みをレジアスは行っていた。
実際今までスカリエッティには散々コケにされた怒りもある、”おか”の面子にかけてもう負けられないのだ。
この大部隊を投入したのは面子もあるが、
スカリエッティによって被害にあってきた民衆からの声が無視できないレベルになってきたからでもある。
彼の肩書はテロリストであり、実際に町を攻撃するような真似もしている。
彼にとってそれは試作品のテストにすぎず、また、ガジェット達にはレリックの探索を命じているのみであったが、
人が住んでいる地域でそれを行う以上、何らかの被害は毎回出ていた。
握りつぶすことも不可能ではなかったが、
8年前に縁を切ってからはむしろ早くこの世からいなくなって欲しいというのがレジアスの本音である。
今回はアキトに乗っかる形ではあるものの、
スカリエッティ確保の際は身柄は管理局地上本部預かりとすると盟約を取り決めてもいた。
後は結果を出すのみではあるのだが……。
「奴が居なくなってからだな……背中が妙に涼しく感じるのは……」
地上本部ビルの窓から遠くを見るように眼を細めたレジアスは、しかし、次の瞬間にはまだ目つきを険しくしていた。
彼としては今の状況はどちらにしろあまり良いものではなかった、”うみ”との摩擦問題もそうだが、連盟との関係もある。
それになにより、最近評議会の命令が錯乱気味に感じるのも気になっていた。
今の空気が、管理局の崩壊を思わせるような危うさを秘めているのをレジアスは感じ始めていた……。
「突入する前に言っておく、奴らのアジトには恐らくAMFが仕込まれているだろう。
以前ですら魔導師達には不利になっていた、今回はどうなるかわからんぞ?」
「大丈夫や、ようはより大規模な魔法なら問題ないんやろ?」
「ええ、それはそうですがはやてさんは調整が効きにくいですし、巻き込まないでくださいね」
「うわひっど……、リイン〜、リニスがいじめる〜」
「あああぁあ、主の悪口は許しませんよ」
「何どもってるんです?」
「いえ、なんというか、主とのスキンシップは久しぶりですので……」
『リインフォースさんはうぶですね♪』
はやてがわざとリインフォースに抱きついて面白がっているのにリインフォースはかなり動揺しているようだ。
既にユニゾンしているキューエルシュランクは自分の原型であるはずのリインフォースに微笑ましい様な声をかける。
とはいえ、そんな事が出来るのは余裕のある証拠というべきか。
すずかはいつの間にか俺の隣まで来て、同じように眺めている面白がっているというより微笑ましいものを見ているという感じだ。
「この調子なら皆さん問題ないと思います。それに私がアリアでサポートしますから」
「よろしく頼む」
全員の準備が整うのを待ち、ジャンプでマーキングしてあるポイントへと飛び込む。
マーキングポイントに敵がいない事は演算ユニットの能力で把握しているが、その周囲5mも離れればそうはいかない。
博打要素が強い事は否定できないが、スカリエッティとはいい加減縁を切りたいというのが本音だった。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……やね」
『できれば、スカリエッティさんだけぱっと捕まえられればいいんですけど』
「いや、恐らくは北辰衆が動いているなら出てくるはずだ……奴が……」
「マスターの宿敵ですか?」
「まあ、そんなところかもしれないな。今はもう忘れたつもりだったんだが……」
廊下状になった通路を進む、どうやらスカリエッティも随分演算ユニットを研究したらしい。
俺ではこの内部の構造を完全に把握するのは難しそうだ、ぼんやりとしか周辺を感じる事が出来ない。
それでも、どうにか相手の向かう先はある程度分かるので迷う事はないが、
マーキングをしていなければここにジャンプしてくることは不可能だっただろう。
「外部で戦闘音を確認、どうやら管理局が突入を開始したようです」
「そうか、リインフォースはそのまま外部の監視を続けてくれ、すずか、先行は任せてもいいか?」
『はい、アキトさんこそ、後詰め頑張ってください』
「了解だ」
パワードスーツを着て戦闘上AMFがほとんど関係ないすずかが先頭に立ち、
その後をはやてとリニス、リインフォースと俺の順で進む。
このアジト全域にAMFが張り巡らされているのは間違いないが、あまりそれ以外を感じない。
前回のアジトは多数の罠を仕掛けられていたが、今回は割とトントン拍子に進んでいった。
実際逃げ支度に忙しいのか、物が散乱している部屋をよく見かけた。
「今回は撤収を優先しているようだな……」
『このままじゃ、接触する前に逃げられてしまうかもしれないですね、少し先行してみましょうか?』
「いや、ただでさえ人数が少ないんだ、これ以上分散するのもまずいだろう。俺達も急ぐから先導を頼む」
『わかりました』
アジトの階層をどんどん下へと進んでいくと、構造的に一番広い部屋に出た。
恐らくはここがこのアジトの中心部だろう……。
ここにも人がいないという事は本格的にもう脱出した後なのか?
しかし、そうして気を抜いた瞬間、鈴のような音と共に強烈な殺気を感じ取った俺は、思わず視線を上にあげた。
「クククッ、久しいな復讐人……いや、今や我らの方が復讐人か……」
「やはり……北辰!!」
「我らは理想のため外道に落ちた人外、ただ死ぬことも許されぬ」
「ふん……スカリエッティがお前を生き返らせたという事か」
「さてな……」
「だが出てきたという事はただで通す気なんかないんだろうな……」
「ふふ、我らと一指し、舞ってもらおう」
やはり足止めが目的か……しかし、北辰衆に北辰、装置なしでボソンジャンプできるようになったのは知っているが……。
本当にそれだけなのか?
それだけなら、正面から立ちふさがりはしないだろう……ならば、まだ奥の手があるとみていい。
様子見が必要だな……。
「最初は……」
『私が行きます』
「な……」
『先ずは戦力分析が必要なんですよね、ならアリアと人外の体力を持つ私が適任ですよ』
「……しかし」
『全員でかかるのはそれからでも遅くありません……大丈夫怪我なんてしませんから♪』
「……わかった、頼む」
言い終わると同時に、すずかは北辰たちに向けて複数の小型ミサイルを発射した。
正直、今のこのスーツはかなり武装過多になっている。
おおよそここにいる敵と渡り合うには必要なものだと判断し俺が追加武装をするように忠告したのだ。
マルチロックする32発のミサイルは個々は15cmほどの長さしかない。
それでも、5km圏内なら追尾して爆発するというかなりの性能の小型ミサイルだ。
それらは狙い過たず32発とも北辰と北辰衆に命中する。
一瞬視界が煙に巻かれるが、無傷であろうことは察せられた。
ジャンプで逃げる事もしないという事はつまり……。
「我らの守りの事、忘れたとは言わさぬ」
「体内に仕込んでいたのか……スカリエッティも無茶な改造を……」
そう、携帯型ディストーションフィールド(DF)発生装置。
かつては胸に装着していたあの装置を体内に埋め込まれているということなのだろう。
実際、バリアはミサイルの爆風すら通していない。
最も物理攻撃を完全に防げるわけではないはずだから、連続で使えばいずれ破れるかもしれない。
最も、ジャンプと併用されればそうもいかないが。
「まずいな……思ったよりも厄介そうだ……」
「ならとりあえずウチの出番やろ」
「ん?」
「大丈夫、そうそうひどい事にはならへんて」
そう言って俺達の前に立ったはやては北辰衆に向かい呪文を唱え始める。
俺は、奴らのボソンジャンプを警戒していた。
どこからどうやって襲ってくるのか、それすらわからない。
しかし、奴らはニヤニヤするばかりで特に動こうとはしないようだ……。
「何を余裕くれとるんか知らんけど、うちかて伊達にアキトさんの家に入り浸ってへんよ」
「ほう、貴様はこの防御を抜く方法があるというのか?」
「ある!
求めに応じ、集え、蒼天の星! 光と共に降り注げ! アークライトシャワー!!」
「何をと思えば光の雨か、光学兵器ではこの防御を抜くことはできん」
「それはどうやろうな?」
中空から降り注ぐ光の雨は、確かに、北辰達には届いていない。
しかし、DFに張り付くようにして光を放ち続けている。
そしてほんの数秒でDFは光に包まれ内部が見えなくなってしまった。
そう、つまりは外部と完全に遮断されてしまったという事だ。
「さて、スカリエッティ追いかけよか、こんなん相手にしとってもきりないしね」
「なるほど、DFが解除されれば攻撃を受ける、解除されなければ外界に対し何もできないというわけか」
「そういうことやね」
「……すまないが、皆で先に行っていてくれるか?」
「……どういうことなん?」
ボソンジャンプの光がそこかしこに起こる。
どうやら甘かったらしい、つまりはバリアを維持したまま中身だけ跳んで見せたという事なのだろう。
俺は奴らの進行方向に立ちふさがりジャンプの兆候を監視しようとする。
いくら遺跡の知覚を邪魔する何かがあるにしてもジャンプできる以上何がしか周囲を探る方法はあるはずだ。
「全く、甘いな復讐人よ。貴様はこれだけの素晴らしき力を全く使いこなせていないではないか」
「何が言いたい?」
「クククッ」
「ッ!?」
「主危ない!」
「何!?」
「ギャァァァァァァア!!!?」
いきなりリインフォースに突き飛ばされたはやては戸惑っていたが、
何もない空間が突然歪んだかと思うとリインフォースの腕を肩ごとねじ切るように吸い込んで消滅させた。
リインフォースの腕からは血がどくどくと飛び出し、このままでは失血死するのではないかとすら思われた。
俺は咄嗟にリインフォースを幽体の状態にして肉体の損傷をキャンセルさせた。
もっとも、彼女が再び体を取り戻すには数日を要するだろうが……。
「そうか……ジャンプを空間限定で……」
「その通りよ、何も全てを跳ばすことはあるまい、何を跳ばすも自由なら、相手をバラバラに跳ばす方が楽だと何故思わん?」
「貴様! まさか貴様も……」
「そう、我もまた演算装置を取り込みその力を手に入れた」
「くっ……」
なるほど、確かにスカリエッティが安心して逃げ出すわけだ。
このままでは俺達が全滅してしまいかねない。
やはり皆には先行してもらうしかないな。
俺は先ほどよりも集中力を増して周辺の把握に勤める、どうやらもう周辺に20個のジャンプトラップが敷かれているようだ。
俺はそれらを無効化しつつ、はやて達を急かす。
「急げ、悪いが今のお前たちは足手まといだ」
「うっ、うん……」
『わかりました、ですが……無事でいてくださいね』
「私は……別に肉体に損傷を受けても……」
「時間がないと言っただろう?」
「わかりました」
リニスが少し嫌々をするように粘ったが俺にとっては今はできるだけ先行していてほしいのが事実だ。
実際今こいつらの相手をするのは厳しいと言わざるを得ないが、恐らく奴が逃げるのは更に凄まじいものを研究するため。
このままでは、それをみすみす許してしまう事になりかねない。
「クククッ、しかし、相手はなにも我だけではない事を忘れていないか?」
「北辰衆、な」
「何が言いたい?」
「奴らのジャンプ能力はおおよそ把握した、もうジャンプはできん」
「!?」
「忘れていないか、遺跡と融合してからもう10年、俺の方が圧倒的に経験が多いのだと言う事を」
「なるほどな……」
北辰衆はジャンプを封じられ今やただのチンピラに毛が生えたようなのに過ぎなくなった。
DFは厄介だが、それとてやり方次第でなんとかなるレベルの話だ。
もちろん、北辰自身は俺と同等の能力を持つことになる以上、やり方を覚えればそれを解除してくるだろう。
だが、それでもはやて達を追いかけるのは無理のはずだ。
「だがこれで納得行った、演算ユニットの試算にもやがかかったようになっていたのは、お前が妨害していたんだな北辰」
「その通り、奇襲には奇襲、昔から人のやる事はどこも同じよな」
「ふっ……ならばどちらがより上手く操るか、勝負してみるか?」
「ククッ、正面からはまだ分が悪い、だが、我ら7人と闘いながらどこまでその力を使い続けられるかな?」
「勝負だ!」
北辰はああいったが、体術においてはまだ北辰に叶わない事は事実だ。
アレからずいぶん鍛えたつもりではあるが、やはり外道を名乗るだけあって修練の仕方も普通じゃないのだろう。
やはり、北辰衆とは動きが段違いだ。
だが、それは同時に北辰衆は組みしやすいという事でもある。
今は互いに演算ユニットの能力はほぼ無力化しているのだから、当然先に動いたほうが有利となる。
「貴様!?」
「一人!」
「グフッ!?」
「二人!」
俺は隠し持っていた黒塗りの刃を抜き放ちもう片方の手にはサブマシンガンを構えて突進する。
一人目は刃を俺に向けたものの、サブマシンガンの掃射を前に動きを止めたのでそのまま黒塗りの刃をつきさす。
そして、刃を突き立てたところへやってきた二人目にサブマシンガンを至近距離からたたき込む。
あっという間に2人は動かなくなった。
「貴様らに対する容赦を俺は知らん、かかってくるなら死ぬ覚悟をしてくるんだな」
「ほほう、こやつらが怯えるとは、流石と言わねばなるまい。だが、我も同じと思ってはいまいな」
「いや、お前がそんな奴なら苦労はしなかったさ」
北辰衆は委縮したのかすぐには動けずにいる。
俺はどこか懐かしい、そして狂おしい思いをだんだんと思いだしてきていた。
10年、長いようで短い間、それだけの間俺の心は平穏だったと言っていい。
しかし、今の俺はいつの間にかあの頃に立ち返っている。
そう、目の前の男を殺すためにひたすら牙を磨き続けた日々に……。
「さあ、決着をつけよう北辰」
「ククッ、よくほざく口だ。ならばその口力づくで塞いでくれようか」
「できるものならな!」
演算装置を駆使して状況を把握しつつ相手のボソンジャンプをキャンセルして、気配を読みつつ、刀と錫杖を打ち合わせる。
普通なら頭のおかしくなるような情報の氾濫が起こるが、俺は慣れでなんとかしていく、
しかし、北辰も難なく付いてくるあたりまともじゃない。
北辰は錫杖から仕込んでいた刃を抜きだし俺につきつけようとするが、サブマシンガンで防ぐ。
互いに限界以上に素早く、それでいて冷徹に周囲を読みながら戦う。
「貴様ももう人間とは呼べぬな、我らと同じ外道よ!」
「ふん、今さら何を言う、復讐に生きたときから俺は人間を捨てている!」
「フフッ、多少は心の弱さを鎧う術を知ったようだな。だが」
北辰は例のジャンプ球を俺の周囲に大量に作り始める俺はそれと片っぱしからキャンセルする。
しかし、ひとつ消すのが遅れたところから、クナイが飛び出してきた。
俺は咄嗟に手にした黒塗りの刀でクナイをはじく。別の場所で北辰衆が投げたクナイを北辰が飛ばしたのだ。
しかし、次の瞬間には北辰が刃を繰り出している、俺はサブマシンガンを盾変わりにはじくが、
更に鞘の部分で攻撃をしてきたため慌てて飛び退く羽目になった。
「しかし、一人になったのは失敗だったな」
「お前らの相手は俺一人で十分だ」
「その大言命で償ってもらう事となろう」
俺はニヤリと口元をゆがめる、実際俺はこいつらに勝てなくてもいい、最悪足止めさえできれば何とかなるのだ。
もちろんこんな奴らを野放しにするつもりはないが、対応策が今は多くない、挑発に乗ってくれた事に少し安堵していた。
「しかし、わたしらだけで追撃ってちょっと辛いかもしれんな……」
「大丈夫ですよ、すずかさんも強いですし、私もそれなりに自信があります。
はやてさんは少し広範囲魔法に頼りすぎるきらいがあるのが心配ですけど」
「うわひっどいな〜うちかて好きで大雑把な魔法つかってるんやないんよ。相性の問題やし仕方無いやん」
『相性って聞くと性格とかを想像してしまいますね』
『そうでもないですよ、料理とか掃除とかマイスターはやて上手いですし、最近は出来てないですけど』
「すずかちゃんもキューちゃんも……みんな私の事大雑把やとおもってるん? 寂しいわ〜」
軽口を叩きながら4人は進む、しかし、心中はかなり複雑だった。
実際問題としてあの攻撃、バリアジャケット等全く効果がなかった。
リインフォースは最強クラスの防御性能をもっているはずなのにだ。
それに、六課結成して初めて重傷者を出してしまった。
もしも、今4人があの場に残っていたら皆体に穴を開けられていた可能性は高い。
下手をすると全滅していてもおかしくない。
アキトが残ったのは足手まといだという事も事実なのだろうが、彼女らが傷つくのを見ていられなかったというのもあるのだろう。
それを思うと自らの弱さというものを考えずにはいられない。
最も、三人にはそれなりにボソンジャンプの知識もあれば、対応策も考えていた。
しかし、アキトが全く使ったことのない、新しい使い方で攻めてきたのだ。
彼自身戸惑っていただろう、しかし、同じ力を持つ者として負けるわけにはいかないという思いもあるのかもしれない。
不安はあった、彼は7対1という状況にいるのだ、6人は今やただの格闘のできる人程度でしかないとしても。
一対一でしのぎを削っている時に割り込まれればどうなるかわからない。
しかし、それでも彼女らの目的はあくまでスカリエッティとその研究成果の確保である。
研究成果の方は破壊しても構わないし、スカリエッティもやむおえない場合は殺害許可も出ている。
だが、それも追いつかない事にはどうしようもない。
『脱出口らしきものが見えてきました。先に構造を調べておいて正解でしたね』
「突入前のアレか、アキトさんもがんばっとったもんな。でも、正確じゃない言うてたけど」
『それは恐らくあの北辰という男が妨害していた区画だけでしょう、それよりどうやら追いつけそうです』
「戦闘準備ですね、はやてさんもよろしく」
「ええ、わかってます。ここで失敗したら何しに来たのかわからへんし」
『魔力を戦闘態勢に変更します。マイスターはやて、オールグリーンです!』
「いくでキューちゃん!」
『はい!』
そう言って気を引き締め直す三人、そして三人はすずか、はやて、リニスの順に脱出口へと飛び込む。
その先には、今にも動きだしそうな潜水艦と、そこに荷を積み込んでいるナンバーズ達、
そして作業状態を潜水艦の上から見下ろすスカリエッティがいた。
『見つけた!』
「声かけてる暇はない、一気に行くで」
「わかりました!」
4人は相手が気づく前に方をつけようとその場に飛び込む。
その場にいたナンバーズ4人を相手に戦闘を開始しようとした。
「おやおや、素早いねぇ……まだ荷物は70%も積み終わっていないのだが……」
「ここで会ったが百年目ってね……うちらは逃す気ないで」
『大人しく逮捕されるなら余計な怪我をしなくて済みますよ』
「悪いですが、私は許せそうにありません。プレシアをどこへやったのです!?」
「それは答えられないなぁ。研究が終ってないしねぇ」
「そんな研究、今すぐここで終わらせてあげます!」
「確かに残念だよ……ここに30%も研究成果を残していくことになるなんて」
『何をするつもりです!?』
「さあ、撤収する。もうここにあるものは捨てていくよ」
「了解しました」
「はい!」
「えっ、いいんですか?」
「ありゃりゃー、あの子どうすんのかね?」
そう一言づつ言ったかと思うとナンバーズは消滅するように消えた。
それはもう何が起こっているか、はやて達には明白に分かる。
そして1秒とたたない間に潜水艦ごとスカリエッティも消えた。
「まさか……あいつ等も使えるようになってたなんて……」
『予想外もいいところですね。早急に対策を練らないと』
「これ等の荷物のこともありますしね」
三人が人心地ついたという顔をしている。
確かに逃げられたが、戦闘となればまた重傷者や死者が出たかもしれない。
もちろん覚悟はしているが、それだけに終わると気が抜けるのも否めない所だ。
しかし、すぐに気を取り直すとリニスは道を取って返そうとする。
「……今はとにかくマスターの安否が心配です」
「いいや、そんな事は気にしなくてもいい」
「「「!?」」」
3人が振り返ってみると、脱出口の入り口付近にアキトが歩いてきていた。
足を引きずっているところを見ると怪我をしているようだが、確かに大きな怪我は見られない。
「アイツら、どうやらそっちが脱出した事を知ってもうここに用がないと思ったらしい。あっという間にいなくなったよ」
「そうですか……」
「だが戦闘は敗北に近いかな……相手がボソンジャンプをすることを前提とした戦闘訓練が必要になりそうだな」
「ですね、それも……あんなふうに体の一部だけを引きちぎるとか」
「ボソン砲も使ってきたな。爆弾でこそなかったが。
ただ、空間を引きちぎるあれは、逆ボソン砲とでも言ったほうがいいかもしれないな」
「ボソン砲?」
「爆弾などの殺傷物だけを目的地にジャンプさせる方法だ」
「!?」
「正直、無差別にあんな事をされれば次元世界全体が無政府状態になってしまうだろう」
「対応策は!?」
「これから考える、としか言えないな……」
それは暗澹たる未来を予測させる言葉であった。
正直、時間と空間を越えられるボソンジャンプというものには無限の可能性があるともいえる。
だが同時にそれを犯罪や殺戮の道具として使った場合、もう取り返しのつかないものとなる可能性も秘めている。
今回の事でそれぞれが暗黒面とも呼べるものに触れることとなり考え込まされている。
「ぅ……」
「「「「!?」」」」
誰もが重苦しい沈黙を作る中、突然荷物の一角から声がした。
全員の視線がそちらに向く、そこには麻袋に入れられていたらしい少女の顔がぽんと出ていた。
金色のはずの髪はほこりで煤けており、体も埃だらけだったが、元の肌の色は透き通るように白いだろうと思わせた。
そして何より目に付くのは、その瞳の色まるで血のような赤と、エメラルドを思わせる緑のオッドアイだった。
「ん」
麻袋から出て伸びをする少女、それは一瞬で重苦しい沈黙を破壊するだけの力を秘めていた……。