アンデットゾーンの中央部にある漆黒の塔。
その最上階にいる女神『デスハート』。
彼女の元に、7人の男女が現れる。
??「女神達はどうやら、異世界の民を仲間にしたようです」
デスハート「ほう、面白い。 ゲームは予想外が起こらんとおもしろくないからな」
7人の一人が報告すると、デスハートはそう言ってクスリと笑う。
デスハート「ついでだ。 女神達には申し訳ないが、全員退場して貰おうか」
この一言で、7人はその場から立ち去ったのだった。
―第四話:引かれ合う『能力』―
ラステイションのギルドにて、
ミスタ「ま、ざっとこんなもんだな」
ジョルノ達3人は、ノワールとユニと共に依頼達成の報告をしていた。
ノワール「材料探しだから、そんなには難しく無かったでしょ」
ラステイションに来て数日。
それだけの短期間で、3人はすぐに環境に適応した。
特にノワールが感心したのは、ジョルノの対応力、ミスタの射撃の腕、そしてフーゴの頭脳。
ミスタの射撃はユニも関心を持っていて、銃器を扱う彼女の指導をしてくれたりする。
本人曰く「人に教えんのは得意じゃねぇ」だそうだが、結構コーチらしい事をしている。
フーゴのデスクワークの速さはノワールですら脱帽し、細かい点にも気づいたりする。
そして驚いたのは、ジョルノの対応力だ。
出会った人達は、知らない内に彼の魅力に惹かれてしまう傾向があるようだ。
曰く「必要なのは信頼」である。
不思議な事に、彼と話していると『信頼』を持つ事が出来るのである。
漫画やゲームに出てくる組織のボスや国の長は、部下や民から信頼を勝ち取っている。
その一つとなるのが『カリスマ』である。
その人物の巨大な野望、または理想に惹かれてしまう強い『気持ち』。
ジョルノには、そんな人々の心を引き寄せるカリスマを持っているのである。
そんな彼の魅力には、ノワールも思わず惹かれそうになる。
女神の自分ですら惹かれそうになるこの不思議な気持ちに、彼女は思わず驚きを隠せなかった。
そんな彼等は、掲示板の前に立つ女性を見かける。
腰まで長い黒髪に黒く澄んだ瞳、そして光沢のある青い和装。
その姿は、女性のノワールですら虜になりそうな気持になった。
女性「……」
掲示板を見詰める女性に、ノワールは声を掛ける。
ノワール「あ、あの……」
女性「え、はい?」
ノワール「何か依頼でも?」
それを聞いた女性は、苦笑しながら答えた。
女性「ええ。 出来れば簡単なものをしようと思いまして……」
ノワール「(という事は、初心者かしら?)」
するとノワールは、一枚の依頼書に目をやる。
ノワール「これなんかどうかしら」
そう言って渡したのは、『スライヌ5体討伐』である。
女性「あ、いいですね」
ノワール「良かったら、一緒にどう?」
女性「え、良いんですか?」
ノワール「えぇ、構わないわ。 ジョルノ達は?」
ジョルノ「ん? 構いませんが」
ミスタ「俺も」
フーゴ「僕も良いですよ」
ユニ「わ、私も」
女性「有難うございます。私は
日音と申します」
こうして一行は、日音とともにスライヌ討伐へと向かった。
ジョルノ「?」
その中でジョルノは、何かの違和感を感じたのだった。
ノワール達の活躍もあって、スライヌ達は見事に討伐された。
その際にミスタから、
ミスタ「あれって、どっちかつうとクマじゃねぇか?」
という、スライヌに対するコメントがあった。
日音「皆さん。ご協力、有難うございました」
日音はそう言って頭を下げる。
ノワール「いいのよ、私達も良い腕鳴らしになったから。んじゃ、そろそろ帰るわよ」
ノワールもそう言って森を出ようとしたが、まさにその時であった。
ジョルノ「待って下さい、ノワール」
ジョルノがその場で呼び止めたのだ。
ノワール「どうしたのジョルノ?」
ジョルノ「実は……」
ノワール「ん?」
ジョルノ「敵が、この森にいる事が分かりました」
ノワール・ユニ「えええええええええええええええ!?」
ミスタ「何……だと!?」
フーゴ「ホントですかGIOGIO!?」
驚く仲間達に、ジョルノはコクリと頷いた。
ジョルノ「ああ、敵はかなり頭が切れる。街の中に溶け込み、何時でも僕等を殺せる機会を作っている」
それを聞いた『敵』も、動揺を隠せなかった。
敵「(ば、バカな!? 何時でも殺せるよう、殺気を消したつもりだぞ!? 一体、何処から私の正体に気付いた!?)」
困惑する『敵』とは対照的に、ジョルノは再び口を開いた。
ジョルノ「ですが安心して下さい。僕は既に、『敵』が誰なのかが見当が付いています」
ノワール「だったら、早く教えてよぉ〜!」
するとジョルノは、自身の右頬に指を軽く添えた。
ジョルノ「実はあの時、僕は『敵』の右頬に……テントウムシのマークを描いておきました。本人の気付かない内にね」
敵「(何だと!?)」
驚いた『敵』は、すぐさま自身の右頬に触れた。
だが、『敵』は気付いていなかった。
既にジョルノの罠に嵌った事に。
ユニ「ホントなのジョルノさん!?」
ジョルノ「嘘ですよ。でも“マヌケ”は見つかったようだ」
そう言って彼は、ある人物の方へと視線を向けた。
ジョルノ「そうでしょう………日音さん?」
日音「はっ!?」
声を掛けられた日音は、自分の右頬を触っていた。
4人「あっ!?」
これには他の4人も驚いた。
彼女の右頬には、テントウムシのマークは描かれていない。
見事に嵌められたと気づいた日音は、手を下に降ろす。
それと同時に、クスリと不気味に笑った。
雰囲気の変わった彼女の姿に、5人はすぐさま警戒を強めた。
ミスタ「ところでジョルノ。オメェ、何時からあの女が怪しいって思ったんだ?」
ジョルノ「初めて会った時――正確にはこの森まで歩いていた時からです」
ミスタ「へ?」
ジョルノ「最初は気のせいかと思っていたんですが、彼女が歩いている時だけ……
足音が消えていたんです。約4歩辺りから」
4人「な!?」
それを聞いた日音は、クスリと笑った。
日音「お見事。 まさか暗殺者の私が、こんな方法で正体を見破られるなんてね」
そう言って彼女は、右手の袖から鋭い鉤爪を取り出した。
日音「その通り。 私はデスハート様の忠実なる7人の処刑部隊『
七罪騎』の一人『色欲の日音』」
ジョルノ「七罪騎……」
ミスタ「悪の組織に出てくる『幹部クラス』ってところかよ」
ノワール「でもね、こっちは5人よ。 倒せるもんなら掛って来なさい!」
日音「フッ……」
ノワールの挑発に乗るかのように、日音の影から何かが出現した。
人型で長い尾と鋭い4つの鋏を持ったの黒い蠍の様な虚像。
日音「『
ブラッド・
スウェット・
アンド・
ティアーズ』!」
5人「!?」
この虚像を目にした5人は、驚きを隠せなかった。
ノワール「な、何なのその守護霊みたいな奴!?」
日音「知る必要はないわ。 貴方達はここで死ぬのだから」
日音がそう言った瞬間、虚像『B・S・&・T』はそのままノワールの元へと突進した。
ノワール「!? しまっ―――」
ノワールはすぐさま戦闘態勢に入ろうとしたが、体が思うように動けなかった。
しかし、まさにその時であった。
彼女の元へ走り出したジョルノから、人型の虚像が出現した。
ジョルノ「『
ゴールド・エクスペリエンス』!!」
テントウムシを模したその虚像は、そのまま『B・S・&・T』に攻撃を放った。
ゴールド・E「無駄ァ!」
放たれた拳は命中し、『B・S・&・T』が受けたダメージはそのまま日音へと伝わった。
日音「な!? このチカラ!? 貴様、私と同じ『
幽波紋使い』だと!?」
ジョルノ「どうやら、この世界でも『スタンド使い』と引かれ合ったようだな。 だが、悪いが倒させて貰うぜ」
幽波紋とは、人間の生命の奥底に眠る闘争心が生み出したパワー
像。
常にその人の“傍に現れる”という意味を持つ『Stand by me』から名付けられた。
一人一人その姿と能力は全く違う。
そしてジョルノのスタンドは、人間と同じ姿をした接近戦向きの“近距離パワーの人間型”のスタンド――名は『ゴールド・エクスペリエンス』。
能力は生命を操り、新たな生命へと生まれ変わらせる。
そのまま日音へと走り出したジョルノは、次の攻撃に入ろうとしていた。
まさにその時であった。
日音「させるか! 『ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ』!!」
すると『B・S・&・T』の鋏が、ジョルノの四肢を封じ、
ジョルノ「何!?」
そして彼の右肩に尾が突き刺し、そこから血を吸い始めた。
日音「どうだ? 『ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ』の尾に刺された者は、最後は皮と骨になって死ぬ。 さあ、恐怖を味わうと良い!!」
ノワール「ジョルノ!!」
普通なら絶体絶命の状況と考えるが、ジョルノはそんな様子を見せていなかった。
ジョルノ「恐怖? 生憎、そんなものは持ち合わせていなくてね。 僕の目先にあるのは、『希望』だけだ」
ゴールド・E「URYYYY!」
『ゴールド・E』が指で弾いた小石は、そのまま日音へと飛んで行く。
日音「フン、そんなもの――」
日音が弾き落とそうとするが、まさにその時であった。
小石は徐々に変化していき、ピラニアの姿へと変わった。
「シャァァァ!」
日音「!?」
驚いた日音は、咄嗟に右に避けた。
ブチリと右の耳たぶを食いちぎられたが、それ以外は全くの無傷であった。
しかし、これによってスタンドの拘束が解かれ、
ジョルノ「URYYYYYYYY!!」
ジョルノが再び接近してきた。
日音「しっ、しまっ―――」
『ゴールド・E』の拳が確実に命中し、日音は吹き飛ばされてしまう。
立ち上がった日音であったが、まさにその時であった。
彼女の視界に映るもの全てが、ゆっくりに見えていたのである。
日音「(な……何だこれは!?)」
驚く日音であったが、ジョルノが接近してきた。
日音「(マズイ! 早くかわさなければ――)」
『ゴールド・E』の拳が彼女の拳に密着してきたのである。
否、密着ではない。
メキメキメキと軋む音を立てながら、鋭い痛みがゆっくりと彼女を襲った。
日音「(な、何だこの痛みは!? い、今まで体験した事ない痛みだ!? こ、この男……私の体に何をした!?)」
ジョルノ「『ゴールド・エクスペリエンス』の能力は生命を操る。 この能力で殴られた者は、過剰な生命を与えられ、感覚が暴走する。 どんな気分だ? 鋭い痛みがゆっくりやって来るというのは?」
日音「(うぐぅ……ぐがあぁぁぁぁぁぁ!!)」
ジョルノ「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄……」
『ゴールド・E』の拳から放たれた
突きの連打は、反撃の隙を全く与えず、
ジョルノ「無駄ァ!!」
トドメの一撃により、日音を吹き飛ばした。
圧倒的な実力の差で、日音から勝利を奪い取ったジョルノ。
ミスタ「ジョルノ、大丈夫か?」
ジョルノ「ええ。 しかし、この世界にもスタンド使いがいたとは」
フーゴ「それと『七罪騎』というのも気になりますね」
ジョルノ「ノワール、何か知ってる情報は?」
ノワール「生憎、私もコイツの事については知らなかったわ」
ユニ「ところで、これからどうするの」
敵が送り込んだ新たな刺客。
困惑する部分が多いが、今はそんな暇はない。
ジョルノ「一旦教会に戻って、情報を整理する必要がありますね」
フーゴ「GIOGIO、日音はどうします?」
気絶している彼女を眺め、
ジョルノ「他にも知ってる情報を持っているかもしれない。 教会に連れ帰って、他の情報を吐かよう」
そのまま教会へと連れ帰ったのだった。
日音……
再起不能。
TO BE CONTINUED
〜ちょこっと、銀八先生〜
銀八「はい、この『超次元大戦』を読んでくれている読者の皆様にお詫びをしないといけません。 実はうちの作者が、インフルエンザで約4日間寝込んでしまい、この小説に全く手をつけていなかった事を、深くお詫び申し上げます。 この小説を読んでる皆さんも、インフルエンザや風邪には十分気を付けるように。 もしも体調管理を怠っていたら、罰として校庭を10周走りながら古今和歌集を読ませるからな!! 以上!!」
新八「いや、風邪引いてる人に校庭10周はキツ過ぎわ!! 思いっきり病人に鞭打ちすぎ!!」
アイリスハート「あら? 飴と鞭は使い分けるものじゃないの?」
新八「意味分かってんのかアンタはぁぁぁぁぁぁ!!」