静雄とノワールの活躍により、彼等の乗っていた車は難を逃れた。
車から降りたジョルノ達四人は、襲ってきた車が崖下で燃えているのを確認する。
因みに亀は、ジョルノが抱えている。
ジョルノ「しかし、あの車は何だったでしょう。 敵のようでもあり、変質者のようでもあり……」
銀時「どっちみち、あの高さじゃ助かんねぇな」
ノワール「元はといえば、アナタが事の発端でしょうが」
しかし、彼等は知らなかった。
ここから先が、本当の地獄の始まりである事を!!
―第二十二話:地獄のカーチェイス・そのA―
崖下を眺めていた4人であったが、静雄がふとこう言った。
静雄「しかしあの車、何時の間に俺達の後ろに回ったんだ? 尾行された形跡は全く無かったのによ」
ノワール「確かに、不思議に感じるわね」
誰もが不思議に思ったその時であった。
???『ちっとも、ちっとも不思議じゃあないさぁ!!』
四人「!?」
突然の声に彼等は振り返ると、車のラジオから声が聞こえた。
???『スタンドだから………スタンドだから出来た事なんだよぉ!』
その言葉に、全員が背筋を凍らせた。
銀時「スタンドだと!? じゃあ、さっきの車の運転手が敵か!?」
ノワール「でも車は崖に落ちたのよ!?」
ジョルノ「いや、車自体がスタンドの可能性がある。 銀時と静雄が遭遇したという、刀にスタンドの能力が宿った『アヌビス神』のように」
静雄「ようはあの『刀』と同類って事か」
すると車の下から亀裂が入り、
ジョルノ「!? 皆、車から離れるんだ!!」
ドガァと車は爆発し、そこから例の車が出現した。
???「
運命の車輪……それが、我がスタンドの暗示!!」
そう言って運転手にして今回の敵『ズィー・ズィー』は、自身のスタンドの名を叫んだのだった。
運命の車輪が突進した瞬間、静雄が堂々と正面に立つ。
静雄「へっ! パワー比べがお望みか?」
拳を構え、何時でも戦える姿勢を見せるが、
ジョルノ「よせ! 敵の能力が分からない以上、迂闊に戦うな!!」
ジョルノが叫ぶが、既に遅かった。
運命の車輪の車体から何かが放たれ、ドガァと静雄の体に命中した。
静雄「何ィ!?」
ジョルノ「静雄!」
銀時「くそっ!」
ジョルノと銀時が助けに向かうも、二人にも攻撃が命中した。
ノワール「ジョルノぉ! 銀時ィ! 静雄ォ!」
銀時「何だ……コイツは!?」
ジョルノ「き、傷は浅いのに、抉られている!?」
静雄「ヤロォ〜……良いコントロールじゃあねぇか」
ノワール「皆、兎に角逃げるわよ!!」
敵の能力も分からない以上、今は逃げるしかなかった。
暫く走った四人は、目の前の岩場へと向かった。
銀時「へっ、流石に狭いとこまでは走れねぇな」
現れた
運命の車輪であったが、
ズィー・ズィー「こそこそ逃げ回るんじゃねぇよ! ゴキブリかテメェ等は!!」
なんと、岩と岩の隙間を無理矢理入って来たのだった。
銀時「
Oh No! 岩と岩の隙間を無理矢理入って来やがった!?」
静雄「例えるなら知恵の輪が出来なくて、癇癪を起こしたバカな怪力男って感じだぜ!」
ジョルノ「ノワール、亀を持って先にこの崖を登って下さい」
ノワール「えぇ、分かったわ!!」
ジョルノから亀を渡されたノワールは、女神化と同時に崖の上へと飛んだ。
銀時「っておいィィィィィ! ノワールだけズルくない!?」
ジョルノ「バカ言ってないで、早く行きますよ!」
そう言ってジョルノは既に崖を登っていき、
静雄「よっと」
彼に続くように、静雄も崖を登る。
銀時「ってオイぃぃぃぃ! 置いてかないでぇぇぇぇ!!」
勿論銀時も、後に続くのだった。
全員が崖の登り終え、下にいる
運命の車輪を見下ろす。
ズィー・ズィー「ヒャーハハハハ! そうだ、そのまま逃げ続けろ!! お前等にはもう道は無い! この先の道にも! 勝利へと道も! そして未来への道もな!!」
だが
運命の車輪は、タイヤにスパイク状の突起を出現させ、崖を登って来たのである。
銀時「
Oh My God! 崖を登って来やがったぞ!?」
ノワール「な、何でもありなのあの車!?」
ジョルノ「スタンドだから、出来るって感じの芸当ですね」
驚く一同であったが、静雄が彼等の前に立つ。
静雄「どうやら、マジで戦うしかねぇみてぇだな」
ノワール「どうする気なの」
静雄「ヤロウが登って来た瞬間、車を腹を見せる。 その瞬間を狙う」
ジョルノ「成程、確かに狙いどころはそこしかないな」
銀時「よっしゃ! 頼むぜ静雄!!」
そして崖を登り終えた
運命の車輪が、腹の部分を見せた。
勝負は一瞬。
静雄は拳を構え、そのまま突進した。
突進した静雄は、一気に勝負に出た。
静雄「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
しかし、ここでズィー・ズィーが叫んだ。
ズィー・ズィー「ヒャーハハハハ! 元気が良いねバーテンダー君、でも渋くないね!!」
窓から逞しい腕を出し、指摘するように指を指す。
ズィー・ズィー「よく見ろ! 自分達の体に、何か違和感を感じないか?」
静雄「!?」
その言葉に静雄はおろか、ジョルノと銀時も自分達の体を確認する。
ジョルノ「そういえば、さっきからガソリンの臭いが!?」
銀時「お、俺達の体だ! 俺達の体がガソリン臭ぇぞ!!」
ガソリンの臭いが染み付いている事に気付いた三人。
それも、さっきの攻撃を受けた傷からだ。
三人が異変に気付いたと知ったズィー・ズィーは、
運命の車輪の車体から先程の弾丸を飛ばした。
よく見るとそれは、粒状に飛ばされたガソリンだった。
ジョルノ「ガソリンを超高圧にして飛ばしたのか!?」
銀時「まさか、あの攻撃はダメージを負わせる為じゃなくて、俺等の体にガソリンをかける為だったのか!?」
気付いた時にはもう遅く、
ズィー・ズィー「そしてこの電気系統で、スパーク!!」
電線から放たれた火花が、静雄の体に着火した。
激しく燃える炎に包まれ、
静雄「ぐおぉぉぉぉぉぉ!」
静雄はその場で倒れてしまう。
ジョルノと銀時は助けに行きたいと考えるが、ガソリンが体にかかっている為、炎が燃え移る危険性がある。
かと言って、ノワールに行かせるワケにもいかない。
静雄「く……そぉ………」
徐々に体の力が抜け落ち、静雄はその場で力尽きた。
ジョルノ「そんな!?」
銀時「嘘……だろ!?」
ノワール「静雄ぉぉぉぉぉぉぉ!!」
その場にいた三人も、目の前の状況について行けなかった。
言葉の出ないジョルノ達。
そんな彼等を嘲笑うかのように、ズィー・ズィーは勝利を確信するかのように叫んだ。
ズィー・ズィー「勝ったぁ! 第2期『承』・完!!」
しかし、まさにその時であった。
静雄「ほう……それで、誰が俺の代わりにあの『ノミ蟲野郎』をブッ殺してくれるんだぁ?」
ズィー・ズィー「へっ!?」
炎が鎮火したと同時に、静雄がゆっくりと立ち上がった。
静雄「まさか……テメェのワケがねぇよなぁ?」
ズィー・ズィー「ま、まさか!? あの業火の中で生きてたのか!? どんな体してんだお前は!?」
全くピンピンしている静雄に、流石のズィー・ズィーも驚愕するしかなかった。
徐々に歩み寄る静雄。
これを見たズィー・ズィーは、咄嗟に
運命の車輪を走らせた。
ズィー・ズィー「だったら! 轢き殺してやらぁ!!」
真正面から静雄へと向かう
運命の車輪であったが、
静雄「オラァ!」
彼は両手だけで車体を受け止めた。
ズィー・ズィー「なっ!?」
しかも、これ以上は前には進まなかった。
静雄「おい、さっきはよくも人にガソリンをブチ撒けてくれたなぁ? ガソリンの撒かれたトコに火を付けたら燃えるのが分かっててやったんだよなぁ? 分かっててやったって事は殺す気だったんだよなぁ?」
ズィー・ズィー「へっ!?」
静雄「だったら……何をされても、文句はねぇよなぁぁぁぁぁ!!」
そのまま静雄は、
運命の車輪の車体をちゃぶ台返しの要領でひっくり返したのだった。
ひっくり返った
運命の車輪の上に乗った静雄は、
静雄「オォォォラァァァァ!」
驚異的なパワーとスピードによる拳の連打を叩き込んだ。
静雄「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ……」
ズィー・ズィー「ひぃ! つ、潰れるぅ!!」
この光景に蚊帳の外となった三人は、
銀時「アイツ、ホントに人間か?」
ノワール「炎でも死なない……というか、火傷も軽症で済んでるわよ!?」
ジョルノ「恐ろしいまでの回復力ですね」
因みに亀から出て来たポルナレフも、静雄の強さに驚きを隠せなかった。
ポルナレフ「(なんて強さだ!? パワーだけなら、
星の白金より上かもしれん!?)」
静雄「オラァ!!」
ドガァとトドメの一撃が決まり、ズィーズィーも恐れをなして車から脱出した。
その姿は、逞しい両腕とは真逆の貧弱な体格の男であった。
銀時「何だコイツ? ムキムキなのは腕だけか?」
ノワール「私達……こんなハッタリ男に襲われて立って事?」
コケにされたと感じた銀時とノワールは、フツフツと怒りが湧き出した。
ズィー・ズィー「ひぃ! 殺さないで、金で雇われただけなんですぅ!!」
命乞いをするズィー・ズィーであったが、静雄も怒りが収まらない状態であった。
静雄「テメェ……命乞いするくらいなら」
そして彼は拳を強く握り、
静雄「喧嘩ふっ掛けてんじゃあねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ドガァと渾身の一撃を放ったのだった。
ズィー・ズィー「あ〜れ〜〜〜〜」
殴り飛ばされたズィーズィーは、遥か彼方へと飛んで行ったのだった。
ズィーズィー……
再起不能。
TO BE CONTINUED