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Fate/ZERO―イレギュラーズ― 第64話:相対戦=第三戦その2=
作者:蓬莱   2015/04/30(木) 23:35公開   ID:.dsW6wyhJEM
―――とある鬼の子の夢を視た。

その鬼の子は物心ついた時から親兄弟がいない天涯孤独の身だった。
しかも、当時の国は内乱の真っただ中であり、そんな過酷な環境で誰にも頼る術のない幼い鬼の子が生き残るには、戦場で朽ち果てた屍から身包みを剥ぎながら細々と生を繋ぎ、剥ぎ取った刀を手に襲い掛かる敵から自身の身を護るしかなかった。
―――ただ、生きる為に。
―――ただ、生き残るために。
―――鬼の子は否応なく強くならざるを得なかった。
無論、そんな人の道より外れた生き方をする鬼の子の姿を見た者達を介して、人々の間で“屍を喰らう鬼が出る”という噂が囁かれるようになるのも無理からぬ話だった。

「また、随分とカワイイ鬼がいたものですね」

そして、いつものように死体から身包みを剥いでいた鬼の子の前に、そう呟きながら自分の頭を優しく撫でる、一人の見知らぬ男が現れた。
男からは一切殺気は感じられなかったが、人一倍気配に敏感な鬼の子に気付かれる事無くすぐ傍まで近づけた時点で、男が只者ではない事は明らかだった。
故に、鬼の子は即座に男の手を乱暴に振り払い、これまでと同じく己の身を護る為に血糊のついた刀を抜いた。
そんな敵意をあらわにする鬼の子を前に、男も穏やかな口調で語りかけながら、腰に刺した自らの刀に手をかけ―――

「他人に怯え、自分を護る為だけに振るう剣なんてもう捨てちゃいなさい」

―――そのまま鬼の子にむかって自分の刀を軽く投げ渡した。
やがて、男は丸腰のまま背を向けると、投げ渡された刀に戸惑いながらも視線を逸らすことなく自分の背をまっすぐに見つめる鬼の子にむかって語りかけた。

“剣の本当の使い方をしりたきゃ付いてくるといい”
“敵を斬る為ではない…弱き己を斬る為に”
“己を護るのではない…己の魂を護る為に”

そして、そう語り聞かせる男の背には、いつの間にか、男について行くことを選んだ鬼の子が背負われていた。
それが鬼の子と男―――後に鬼の子に数多くの事を教えてくれた最愛の師である吉田松陽との初めての出会いだった。



第64話:相対戦=第三戦その2=



時を遡る事、ランサー陣営が相対戦第三戦の決戦場となるアインツベルン城へと向かわんとする少し前―――

「うん…いてて…あ〜どうなってんだ?」

相対戦第三戦にてランサーが再選を熱望する好敵手である銀時は、夢の中で洞爺湖仙人との対話を経てようやく目を覚ましていた。
とその直後、ベッドから身を起こした銀時はだんだんと意識が覚醒するにつれて、脳の奥にまで浸透し響くような軽い頭痛に襲われた。
ひとまず、銀時は中々治まらない頭痛を堪えながら、今の状況を知るために辺りを見渡した。

「…何、これ?」
「ん…銀時ぃ…駄目…」
「「「「「「「「…」」」」」」」」

そして、銀時はしばし夢心地のままに呆然とした後、少しでも理解した瞬間にSAN値直葬確定な周囲の惨状を前に思わずそう呟いてしまった。
柳洞寺を去った後、第一天の誘いで間桐邸に泊まる事になり、蓮達も誘って軽い酒宴を開いた事までは、銀時も確かに覚えていた。
恐らく、その後の記憶があやふやなのは、途中で酔いつぶれてしまって、第一天と共に一夜を明かしたのだろうが…。
―――空の一升瓶を抱えたまま、やけに色っぽい寝言を漏らしながら、下着姿で熟睡中の第一天。
―――そんな銀時と第一天の寝ていたベッドを取り囲みながらジッと凝視するように視線を向け、金魚そのものが生えたような不気味な植物の大群。
―――さらに不気味植物の口に咥えられた餌と思しき、銀魂ならモザイク即確定であろうあからさまに卑猥な形をした蟲。
もはや、たった一晩の内に何が起こったのか分からないが、一つだけ確かな事は有った。
“K点越えとか大気圏突破しなくて良かった…”―――最も恐れていた一夜の過ちだけは犯さなかった事を確認した銀時は、ひとまず、色々と思い出したくない黒歴史を繰り返さなかったことにそう心の底から安堵するのだった。

「けど、朝っぱらから―――違います―――え?」

とはいえ、銀時としても起きて早々、見た目が最悪な気色の悪い不気味植物(仮)に周りを取り囲まれるというのも気持ちのいいものではなかった。
実際、銀時も“これはねぇよ…”と未だに熟睡している第一天と不気味植物(仮)達しかいないはずの部屋で愚痴じみた独り言をぼやきかけた。
だが、そんな銀時の愚痴を遮るかのように不気味植物(仮)達の方から否定の言葉が割り込んできた。
これには、銀時も思わず“喋るの、こいつら!?”と心中で驚きかけたが、声の主は不気味植物(仮)達の奥からゆっくりとその姿を見せた。

「…もう夕方の六時過ぎですよ」
「…」

そこには、未だに朝だと思っている銀時に現在の時刻を告げつつ、何故か大きめの如雨露を持った少女―――バーサーカーのマスターである間桐桜が立っていた。
仮にも敵のサーヴァントである銀時の前に堂々と姿を見せた桜に対し、銀時は声にこそしなかったものの、思わず目を見開いて驚愕してしまった。
だが、銀時が驚いたのは、桜が自分の前に現れたからではなく、自分に視線を向ける桜の眼を見たからだった。
“これが子供の眼かよ…!?”―――普段から死んだ魚の眼をしている銀時でさえも思わずそう息を呑むほど、桜の眼はそれよりも遥かに深く淀み、目に入る一切の光全てを飲み込むような漆黒の泥に満ちた瞳だった。
もはや、これだけでも、目の前に居る桜が口にすることも憚られるような虐待を日夜受けていた事は想像に難くなかった。
とここで、ようやく、銀時は目の前に居る桜がジッと何かを待つように自分を見つめている事に気づき、少しでも気まずい空気を和ませようと桜に話しかけた。

「ところで、何、これ? 朝起きたら、何か動物なのか植物なのか分からない気色の悪い金魚モドキがいるんだけど…」
「うちで飼っているペット兼目覚まし時計の金魚草です。動物と植物の中間にあたる動植物という分類で大きいモノで三メートルになるそうです。そして、時間が来ると…」

恐る恐る、指さしながら周りにいる不気味植物(仮)について尋ねる銀時に対し、桜はチラリと不気味植物(仮)もとい金魚草(武蔵産)に目を受けながら銀時の問い掛けに答えた。
“ペット!? ペットなの、こいつら!?”―――もっとも、可愛いとは絶望的に程遠い金魚草をペットと言い切った桜の感性を前に、さすがの銀時も愕然とした表情を露わにしたまま、そう心中で驚愕するしかなかった。
一方、そんな銀時の驚きを尻目に、桜は淡々と金魚草について説明しながら、卑猥な蟲を咥えさせられた金魚草たちに目を向けた。
やがて、銀時と桜が見守る中、卑猥な蟲が金魚草の口内へと一斉に潜り込んだ瞬間―――

「おぎゃあああああああああああああああぁ!!」
「「「「「おんぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁ!!」」」」」」

―――近くにいた一匹の金魚草がカッと目を見開きながら、絶妙に気色の悪いだみ声で泣きだした。
それに続けて、他の金魚草も連鎖反応するかのように同じく目を見開きながら、間桐邸の隅々まで響き渡らせるように一斉にだみ声を上げて泣き出した。
もはや、SAN値を削り取るような光景を前に、桜は一切動ずることなく、ウンウンと心なしか満足げに頷きながら、余りに気色の悪さにドン引きした銀時にむかってこう告げた。

「…こうやって泣き声で寝ている人を気持ちよく起こすように調教してあります」
「いやいやいや…!! こんなモンで起こされたら、明らかに目覚め悪いから!! 悪趣味と悪意丸出しだしじゃねぇかー!! つうか、草なのに鳴くのかよ、こいつら!! てか、見た目と一緒で動きとか鳴き方まで不気味なんだけど!! 本当に何なの、こいつら!!」

“そもそも、ツッコミ役は眼鏡(しんぱち)の仕事だろうが…!!”―――余りの金魚草の気色悪さに対し、もはや過呼吸寸前のツッコミを入れた銀時はそう心中で普段はモブキャラ同然の眼鏡(しんぱち)のありがたさを改めて思い知った。
もっとも、当の桜はそんな銀時のツッコミに対しても動ずることなく、手にしていた如雨露で金魚草への水やりを勤しんでいたが。

「ったく、此処の家の連中はどういう子育てを…はっ!?」

とここで、桜のセメントメンタルぶりに悪態を吐こうとした銀時は金魚草の性で忘れていたが、ようやく自分の隣で下着姿の第一天がいる事を思い出した。
もはや、何も知らない者が傍目から見れば誰がどう見ても、銀時と第一天がヤる事をヤッた後にしか見えない状況だった。
如何に桜が幼いとはいえ、銀時にしてみれば、こんな状況を見られたら気まずい処の話ではなかった。
そして、滝のように冷や汗がふき出した銀時はまだ桜が第一天に気付いていない事を願いながら、金魚草たちに水やりをしている筈の桜へと恐る恐る目を向けた。

「…」
「「「「…」」」」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 俺は別に疾しいことなんて何も―――“銀時…もっと…”―――おぃいいいいい!!」

だが、銀時の願いもむなしく、水やりをしていたはずの桜は金魚草たちと共に銀時の隣で寝ている第一天へと無言で視線を向けていた。
この最悪の事態に動揺しながらも、銀時は必死になってこの場を切り抜けるために言い訳を口にしようとした。
だが、そんな銀時の必死の努力を嘲笑うかのように、金魚草の叫び声でも起きる様子のない第一天波は事後の余韻にしか聞こえない寝言を呟いてしまった。
“そんなこと言ったら…もうヤっちゃたにしか聞こえないじゃん、これ!!”―――そう心中で絶叫するしかない銀時は最悪な状況をより一層悪化させた第一天にむかって叫ぶも一向に目を覚ます気配はなかった。

「いや、これは違うから。いや、本当に違うからね…!! これはちょっとした大人の付き合いというか…」
「別に気にしていません」

それでも、何とか言い訳しようとする銀時に対し、桜はチラリと銀時に視線を向けた後、さして動ずる様子もなく、あっさりと何事もないかのように言い切った。
そもそも、バーサーカーによって臓硯が惨殺されるまで、桜は間桐家の魔術に馴染ませるために受けた教育の家庭である程度の知識を教え込まれていた。
その為、銀時と第一天が一緒のベッドにいるのを見ても、桜はこの人達もそういう事をしていたのだろうと思い、さして気に止めていなかったのだ。

「それと蓮さんからの連絡です。相対戦第三戦はアインツベルン城でランサーさんと一対一で決闘するそうです」
「…何かランサーのねぇちゃんには気を遣わせちまったなぁ」

とここで、桜はそんな銀時の心中など露知らず、蓮から頼まれた伝言―――相対戦第三戦の舞台と勝負内容を銀時に淡々と告げた。
とここで、ランサーの指定した相対戦第三戦の場所がアインツベルン城である事を知った銀時は、自分から勝手に出て行った手前、セイバー達の元へ中々戻れないでいた為、このランサーの心遣いに感謝の言葉を口にした。
しかし、そんな銀時を横目に見ていた桜は心底分からないといった様子でポツリと呟いた。

「馬鹿な人たち…こんな事をしたって、どうせ誰もバーサーカーに勝てる訳ないのに」
「この子…この齢で黒過ぎじゃね。将来、ヒロインなのに黒すぎてラスボスになっちゃたみたいな感じで」

そう呟いた桜の言葉には自分に死を齎してくれるバーサーカーに対する絶対の信頼と、それを阻まんとする銀時達への無理解が濃密に込められていた。
さすがの銀時も、この桜の抱える心の闇を垣間見て、目の前に居るのが年端もいかない少女であるにも関わらず、高杉に匹敵するほどの業の深さに心ならずも戦慄してしまった。
それと同時に、桜の持つラスボスキャラとしての片鱗もついでに垣間見た銀時は、将来、成長した桜が各方面で弄られはしないかと心の底から心配した。
主に某ディスリ系漫画を中心に…。
だが、そんな銀時の心配を余所に、桜は周りにいる金魚草達と共にジッと銀時を見定めながら確信した。
“あぁ、この人も遠坂さんや姉さんと一緒なんだ…”と。
結局のところ、六陣営会談ではアーチャー達と一緒にバーサーカーの願いを叶えると言っておきながら、銀時達も何も知らないまま、自分を救おうとしているのだ。
だからこそ、桜は言わねばならなかった―――何一つ分かっていない者達を否定すべく。

「あなた達は間違っています」

そして、桜は聞き分けのない子供を叱りつけるかのように、無意味な闘いに挑まんとする銀時にむかってそう言い切った。
なぜなら、間桐桜の抱く願望は自身の死であり、その願いを叶える為に聖杯を得んとするバーサーカーこそ桜にとっての救いの主なのだ。
むしろ、そんな桜からすれば、自分の願いを省みる事の無く、自分を救おうとする銀時達こそ間違っているのだ。

「あなた達は滑稽です」
「そうかよ」

桜は言った―――死ぬ事を願う自分を救わんとする銀時達の奮闘を無為だと。
銀時は頷いた。

「苛々します」
「そうかよ」

桜は言った―――頼んでも望んでもいないのに自分を救おうとする銀時達の無神経さが不愉快だと。
銀時は頷いた。

「鬱陶しいです」
「そうかよ」

桜は言った―――そんな事にさえ気付かない銀時達こそ、自分の願いを叶えてくれるバーサーカーの邪魔だと。
銀時は頷いた。

「あなた達は間違っています」

そして、桜は大きく息を吸い込んだ後、胸の内に積もりに積もった自身の本音を叩き付けるかのように見据えながらこう言い放った。

「いい加減、間違っていると気付いてください」

まるで駄々をこねる子供を諭すかのように断言した桜は、目の前にいる銀時を通して、六陣営のマスター及びサーヴァント、さらにかつて家族であった時臣や凛の事さえも含めて遍く全てを否定しつくした。
救いを求める生者を救う事は可能だろう。
だが、例え、如何なる聖者であろうとも、死者を救う事は生者である限り不可能だ。
そして、それと同様に、間桐桜のような者―――死者である事を望む生者を救える者などこの世の何処にも存在しないのも当然の道理なのだ。
そんな桜の本心そのものを露わにした言葉に対し、銀時は真っ向から否定されても憤る事も哀しむ事もなく、桜の言葉をただ受け止めるしかなかった。

「そうかよ」

そう桜の言葉に一切反論することなくただ頷いた銀時は、これまで倉庫街や六陣営会談での桜の雰囲気から薄々感じていたが、こうして間近で真正面から桜と向き合えた事でようやく確信する事ができた。
―――例え、どれだけ説得の言葉を口にしても、固く閉ざされた桜の心を開かせることはできない。
―――例え、どれだけ救いの手を伸ばしたとしても、桜の手を掴みとる事はできない。
―――事実、こうして間近に対面しながらも、銀時と桜の間には決して超える事のできない隔たりが立ち塞がっているのだ。
―――それほどまでに、坂田銀時と間桐桜の在り方は互いに理解できても、互いに相容れる事ができないほど余りに違い過ぎていた。
だからこそ、この桜との対話に於いて、銀時は意志を強く保たねば自身の心を容易く圧し折りそうな桜の言葉をただ受け止めるしかなかった。
もはや、桜を救うのは自分の役目ではない事を悟ったが故に。

「なぁ、一つ聞いてもいいか、死にたがりのお嬢ちゃん」
「…何ですか?」

そして、その上で、銀時は、これまで一切の感情を見せる事無く、ただ己の死を願い続ける桜にむかって問いかけた。
一応、桜としてはこのまま立ち去っても良かったのだが、散々一方的に相手を否定し続けた手前、“一つぐらいならば”と軽い気持ちで、銀時の問い掛けに応じる事にした。
後に、何が有っても絶対に避けるべきだった銀時の問い掛けを応じてしまった自分の迂闊さを激しく後悔することなることも知らずに。

「お前、―――かよ?」
「え…?」

次の瞬間、銀時と顔を合わせてから、ずっと人形のようにほぼ無表情を保っていた桜の顔に初めて感情が露わになった表情が浮かんだ。
これまで隠し通してきた自身の本心を他者に見抜かれたかのような驚愕の表情を。
やがて、動く事はおろか呼吸さえも忘れたかのようにその場に立ちつくした後、辛うじて機を持ち直した桜は自分の心を暴かんとする銀時を忌むべき仇敵であるかのようにキッと睨み付けた。

「…っ!!」

だが、結局、桜は銀時から顔を背けると、一切後ろを振り返る事無く、部屋を飛び出していった。
もっとも、銀時もある程度はこの展開を予想していたのか、さして動ずることもなく、部屋から立ち去った桜の後姿をただ黙って見送っただけだった。
結局、最期まで銀時の問い掛けに答えること無かった桜であったが、たとえ死んだ魚のような眼を持つ銀時であっても、まるで一刻でも早く逃げるかのような桜の態度を見れば一目瞭然だった。

“だからこそ、ここに来たんだよな、バーサーカー…”
「まったく、お前と言うヤツは…」

故に、銀時はそんな桜であるからこそ、本来なら召喚されるはずのないバーサーカーが召喚された真の理由を確信するに至った。
それと同時に、バーサーカーの願いを叶える事こそが桜の願いを叶える事に繋がるのだという事も含めて。
とその時、そんな事を考え込む銀時の背後から不器用な銀時のやり方を呆れたように呟く声が聞こえてきた。

「随分と無茶な荒療治を試したものだな、銀時」
「…」

そして、銀時はこれまで狸寝入りしていた声の主にむかって無言のまま振り返った。
そこには、いつの間にか眠り続けていた筈の第一天が、桜にとって辛辣な問いかけをした銀時をやや非難するような眼差しを向けていた。
実は、第一天もあの金魚草の目覚まし一斉コール(目覚め最悪)の時点で既に目を覚ましており、銀時と桜のやり取りを一部始終聞いていたのだ。
一応、第一天としては、本来なら起こりえない千載一遇の機会という事もあって、銀時ならば桜を説得できるのではないかと事の行方を見守る事にしたのだ。
もっとも、結果は第一天の期待とはほぼ遠い散々なものであり、今後、桜は自身にとっての鬼門である銀時を徹底して避けようとするだろう。

「まぁ、大丈夫じゃねぇか。少なくともあの様子なら」
「銀時…」

だが、そんな第一天の悲観的な考えとは裏腹に、当の銀時はさして気に止める様子もなく、身支度を初めながら、言葉を軽く返しただけだった。
これにはさすがの第一天も楽観的すぎる銀時の考えを見過ごせなかったのか苦言を呈そうとしたが、こちらをジッと見つめる銀時の顔を見てすぐに口を噤んだ。
“絶対に救けられる”―――まるで根拠や道理などを一切抜きにして問答無用で納得させるかのような笑みを浮べる銀時の表情がそう雄弁に語っていたのだから。
そして、銀時は、身支度を終えると、第四次聖杯戦争の行く末を決める相対戦第三戦の舞台となるアインツベルン城に向かわんとした。
この聖杯戦争に於いて銀時が最初に刃を交え、今も自分達より一足先にアインツベルン城にて自分との死闘を今か今かと待ち望んでいる筈の生粋の戦闘狂―――ランサーとの雌雄を決する為に!!

「そうか…ならば、私も立会人としてアインツベルン城まで行かねばならないな」
「え、あんたが立ち会うかよ!?」

一方、第一天もベッドから起き上がると、瞬時にサーヴァントとしての戦装束を身に纏いながら、相対戦第三戦の立会人として、アインツベルン城に向かう事を告げた。
これには、さすがの銀時も予想していなかったのか、第一天にむかって思わず声を上げて驚いた。
相対戦第一戦が“黄金の獣”ラインハルトで、第二戦が“水銀の蛇”メルクリウスと覇道連合の面子である以上、てっきり、銀時も出番的な意味も込めて、最終戦となる第三戦には“永遠の刹那”蓮が立会人になると予想していたのだ。
そんなメタい事を考えている銀時に対し、第一天は相変わらず女心というモノを分かっていない銀時に“まったく”といった様子でため息を漏らすと、銀時の眼前に人差し指を突き付けながらこう言い切った。

「当たり前だ。お前に救われた時から、私は何が有ろうとも、銀時と共について行くと決めたのだからな」

“…せめて、別れの時まで刹那でも長く銀時の傍に居たい”という自身の本心と定められた結末を銀時にひた隠しにしたまま。



そして、相対戦第三戦の開戦が目前に迫る中―――

「銀時…」

―――囚われの身となった衛宮切嗣が放った凶手もまた決戦の舞台へと赴かんとしていた。

   









※注意:この嘘予告には最新作“相州戦神館學園 万仙陣”の重大なネタバレが含まれています。
まだ、クリア済みでない方はご注意ください。





本当にOK?









後悔はしない?











おまけ嘘予告

「全人類の救済。それが私の願いだ」
「…」

一度踏み込めば、即座に脳を蕩かすような、部屋全体を埋め尽くすほどの薄桃色の霞の中で、漆黒のドレスを身に纏合った美女―――自身の召喚したサーヴァントであるアサシンを伴ったマスターの青年は特殊な術式で召喚したもう一体のサーヴァント―――赤く輝く瞳を向ける痩身の男にそう自身の願いを告げた。
大凡、真っ当な神経を持った者ならば失笑するような実現不可能な青年の願いに対し、痩身の男はへらりと薄ら笑いを浮かべながら、言葉を返した。

「お前が思うならそうなのだろうよ。お前の中ではな。好きにすればいいじゃないか。人間、良い夢を見れば良いだろう」
「…」
「貴様…」

そう告げた痩身の男は“愛い、愛い”と青年の願いを一切否定することなく肯定した。
だが、当の青年は痩身の男の言葉に肩を落として苦笑し、アサシンに至っては罵声を上げるのを押し留めながら忌々しげに痩身の男を睨み付けるだけだった。
何故なら、青年もアサシンもこの痩身の男に何を言ったところで理解しないし、どんな罵声や暴力も勝手に思い込んで自己完結するから届かないと分かっているからだ。
―――“愛い、愛い”
―――“なんだ…お前は俺に救われたいのだな、善哉善哉”
―――“まぁ、気楽に吸えよ。好きなだけ夢見て描け”
それはまさしく部屋に漂う薄桃色の霞―――超濃密な阿片香に酔い痴れながら、己の夢の中に閉じこもる中毒者の在り方そのものだった。
だが、それと同時に青年もアサシンも知る由はなかった―――

「あぁ…痴れた音色を奏でてくれよ」

―――この痩身の男もまた形は違えども、青年と同じく人類の救済を望んでいる事を。
そして、この痩身の男の存在に加え、青年の知る由もない数多くのイレギュラーがさらに多くの者達を巻き込みながら聖杯大戦を揺るがすことになることも…!!

あらゆる願いを叶える願望器“聖杯”を巡り、各々七騎のサーヴァントで以て、聖杯大戦に挑まんとする黒の陣営“ユグドミレニア一族”と赤の陣営“魔術協会”。
だが、それは各々の思惑により数多の勢力の介入しながら、無秩序に入り混じっていく混沌の坩堝の幕開けでもあった。

「ここからはR指定だぜ、坊や」
「まったく、随分と口の軽い男だな」
「あなた達はいったい―――!?」

両陣営より召喚されし、聖杯大戦の審判であるルーラーさえ把握できない二体のサーヴァント。
黒の陣営のマスター“カレウス”に招かれしは、伝説の悪魔“スパーダ”の血を継ぎ、数多の悪魔を屠りしデビルハンター“ダンテ”。
対する赤の陣営のマスター“獅子劫界離”に招かれしは、人間の集合的無意識“阿頼耶”に繋がり、夢を現実に紡ぎだす第二の盧生“柊 四四八”。


「HEY!! そこのちんけな若者たち!! おとなしくソレを渡すであーる!!」
「あのすまないが…どちら様で?」
「なななななっ、何と!! 一億年に一度、生まれるかどうかという奇跡の寵児、“イルミナティ”にこの人ありと言わしめた天才科学者にしてバーサーカーのサーヴァントであるドクター・ウェストを知らないとでも?」
「知るか、キチガ○」
「いくら何でも、さすがに初対面でそれはキツイよ、緋衣さん」

もはやこの世に在ってはならぬ筈の存在を追い、異国の地“トランシルヴァニア”へと訪れた石神静乃、緋衣南天、世良信明。
そんな静乃達の前に現れた、魔導と対極である筈の科学によって英霊と成ったバーサーカー“ドクター・ウェスト”を含めた五騎のサーヴァントで組織された秘密結社“イルミナティ”。


「じょうじ…」
「じょうじ―――!!」
「「「「「「「「「じょうじ―――!!」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「じょうじ―――!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

運命のいたずらによりサーヴァントとして現界し、“聖杯”を奪取すべく、ユグドミレニア城を目指しながら、爆発的に数を増やしていく、人類最悪の害虫“テラフォーマー”。


「君は…?」
『ねぇ…あなたは力が欲しい? 欲しいなら…くれてあげるわ!!』

そして、自我に目覚めた名もなきホムンクルスと謎の少女“アリス”が邂逅した時、新たな外典が紡がれる事になる―――!!


Fate/Apocrypha =時計仕掛けの神獣=、ここに開幕!!



「救ってやろう、おまえたち全て。ああ俺は、皆が幸せになればいいと願っている」




ただし、公開未定!!(ぉぃ
 


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