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東方大激戦 第8話:半人半霊の半人前
作者:亀鳥虎龍   2015/08/11(火) 22:36公開   ID:nLcsKa.6eNA
 幻想郷の冥府にある施設『是非曲直庁』。

そこに属する閻魔の『四季映姫・ナマザナドゥ』は、現世に彷徨う霊の様子がおかしいという情報を聞かされる。

映姫「小町、小町はいますか?」

小町「はい、何でしょうか?」

映姫「すぐに白玉楼に向かって下さい。 嫌な予感がします」

小町「へ? 分かりました」

こうして、小町は白玉楼へと向かったのだった。








―半人半霊の半人前―







 白玉楼に入った小町であったが、まさにその時であった。

小町「!?」

屋敷から奇妙な黒いオーラが溢れ出ていて、

小町「やばい! コイツは映姫様に伝えないと――」

気付いた時には黒いオーラを被ってしまい、現在に至る。









小町「というワケなんだ」

小町の話を聞いたジョルノ達は、ゴクリと唾を飲んだ。

ブラン「黒いオーラ」

ベール「それが事件に関わるのでしょうか?」

ジョルノ「話から見て、間違いないでしょう。 小町さん、手を貸してはくれないでしょうか?」

ジョルノがそう言うと、小町は驚いた顔をする。

小町「おや、どういう吹きまわしだい? 仮にも自分達を殺そうとした相手に対して」

ジョルノ「今は猫の手も借りたい――というよりは、死神の手も借りたいところなんです。 ダメでしょうか?」

それを聞いた小町は、深くため息をすると、

小町「分かったよ。 アンタなら、任せられそうだしね」

そう言ってジョルノの頼みを呑んだ。

それには他の四人も同意であった。

ジョルノには何処か、人を惹き付ける爽やかさがある。

雪泉は感じる。

彼には人を動かすリーダーとしての素質がある事を。

ベールとブランは驚く。

彼には信仰シェアを集められる程の魅力がある事を。

そして魔理紗は気付いた。

彼には種族問わずに相手を受け入れるカリスマ性がある事を。

ジョルノ「さあ、いこうか!」

こうして彼等は、石段を登ったのであった。








 石段を登りきると、そこには大きな屋敷があった。

ジョルノ「ここが……白玉楼」

雪泉「ご立派なお屋敷ですね」

ブラン「だけど、普通じゃないわ」

そう言って彼等は、屋敷の方を見る。

そこからは、凄まじいほどの邪気が感じ取られ、

ジョルノ「いきますよ?」

ジョルノの確認に、四人はコクリと頷く。

門の前まで来たが、まさにその時であった。

??「どうやら、ここまで辿りついたようですね」

セミロングの銀髪に黒いリボン、腰と背中に刀を差した少女が現れた。

その横には、人霊のようなものが浮かんでいた。

コレを見て、誰もがこう思った。

ジョルノ「(銀時がここにいたら……)」

雪泉「(あまりの恐怖で……)」

ブラン「(泡を吹いてしまって)」

ベール「(失神しそうですわね……)」

全くその通りである。








 腰の刀を抜き、少女は強く握る。

妖夢「私の名は、魂魄妖夢。 主の命令で、ここを通すワケにはいかない」

ジョルノ「成程、その使命感は立派だ」

雪泉「しかし、ここは通らせて貰いますよ」

ベール「そう言う事ですわ」

ブラン「悪いけど、アナタを倒させて貰うわ」

魔理紗「いくぜ!」

ジョルノはスタンドを出し、雪泉は忍び転身、ブランとベールは女神化、小町は大鎌を構え、そして魔理紗はミニ八卦炉を構えた。

それを見た妖夢はこう言った。

妖夢「先に言っておきます。 我が剣に、斬れぬものなど―――あんまりない!!」

それを聞いて、ジョルノと魔理紗と小町以外がズッコケそうになり、

ホワイトハート「あんまりないのかよ!!」

思わずホワイトハートがツッコんでしまった。









 地を蹴り妖夢は高速で剣を振るった。

それを見たホワートハートが、斧でそれを防ぐ。

ホワイトハート「はっ! 軽いぜ!!」

そのままグリーンハートの槍が放たれるが、妖夢は背中の長刀を抜いて防いだ。

グリーンハート「早い!」

妖夢「いいえ、アナタが半人前の私より遅いだけです」

魔理紗「どいてろ、二人とも!」

すると、ミニ八卦炉を持った手を真っ直ぐに伸ばした魔理紗が、

魔理紗「いくぜ! 恋符『マスタースパーク』!!」

お得意の必殺技を放った。

グリーンハート「ちょ、ちょっと!」

ホワイトハート「やるなら最初から言え!」

二人は真っ先に避け、マスタースパークは妖夢へと向かっていく。

妖夢「遅い!」

だが妖夢は刀で弾き、その軌道を変えたのだった。









 妖夢の剣捌きに誰もが驚きを隠せなかった。

グリーンハート「あの方……ご自分を半人前と仰ってましたが……」

ホワイトハート「アイツ、何処が半人前だよ!?」

雪泉「あの剣捌きにあの動き、剣士として見事ですね」

妖夢「簡単には通しません」

剣を構え、強い目で見る妖夢。

雪泉「………」

その目を見た雪泉は、何処か自分と面影が重なった。

雪泉「皆さん、ここは私一人に任せて貰えませんか?」

グリーンハート「え? 何を言ってるんですか!?」

ホワイトハート「そうだぜ雪泉! 全員で戦った方が余裕だろう!」

魔理紗「見て分かるだろ! 今の妖夢は、一人で勝てないぜ!!」

小町「無駄死にするつもりかい!?」

一人戦うと言った雪泉に、魔理紗達は猛反対するが、

ジョルノ「ホントに、良いんですね?」

雪泉「勿論です」

ジョルノ「分かりました。 では、お願いします!」

そう言ってジョルノは、彼女に全てを託したのだった。









 妖夢の前に立つ雪泉の背後で、魔理紗達は不安の声を漏らした。

魔理紗「ホントにいいのかよ、ジョルノ?」

ジョルノ「彼女の『覚悟』は本物です。 ここで止めに入るのは、流石に『侮辱』に値するでしょ?」

ホワイトハート「別に、侮辱のつもりじゃ……」

ジョルノ「正論は時として、相手を怒らせる『暴言』にもなる。 分かるでしょ、この意味が」

グリーンハート「ええ……ですが……」

ジョルノ「仲間を信じるのも、大切じゃあないですか?」

ジョルノの言葉に、魔理紗達はその場で黙りこむ。

そして雪泉の背を見ながら、ジョルノは心の中で呟いた。

ジョルノ「(任せましたよ、雪泉)」









 扇子を構え、雪泉は妖夢を真っ直ぐ見る。

雪泉「一つ、宜しいですか?」

妖夢「ん?」

雪泉「アナタは何のために、その剣を振るうのですか?」

その問いに妖夢は、当然の様に答えた。

妖夢「主である西行寺幽々子様を護るため……そして、祖父の教えに従う為です」

雪泉「教え?」

妖夢「私は師であった祖父の『魂魄妖忌』から、剣術の指南を受けました。 しかし、その祖父も突然失踪。 孫の私はおろか、主である幽々子様でさえ、その理由を聞かされいません」

雪泉「アナタは、お爺様から何かを学んだのですか?」

妖夢「祖父は言いました。 “真実は眼では見えない、耳では聞こえない、真実は斬って知るもの”だと。 全ては斬らなければ始まらない。 剣が真実に導いてくれるはず……そう確信しています」

魔理紗「だけど、やってる事は霊夢曰く「辻斬り魔」だけどな」

ホワイトハート「確かに……何でもかんでも斬ればいいモンじゃねぇぞ……」

グリーンハート「色々とツッコミどころがあり過ぎますが」

ジョルノ「………」

流石に魔理紗の台詞に、殆どが引きつってしまう。

妖夢「しかし、何故そのような質問を?」

逆に問われた雪泉も、応じるように答えたのだった。

雪泉「私も亡くなった祖父から、忍の技を教わりました。 祖父の黒影は正義感が強く、善だけ――心の優しき人々が暮らせる世界を望み、それを実行しました。 ですが、それが裏目に出てしまい、善と悪両陣の忍達から追われる身となりました」

妖夢「ま、待って下さい! 正義感の強い方が、追われる側の身!? アナタのお爺様は、何も悪い事はしていないのに!?」

誰もがそう思うが、ジョルノと小町はその意味を知っていた。

小町「そうでもないのさ。 過剰な正義ってのは、一度暴走すると歯止めが利かなくなるもんなのさ。 あたいも彼岸で、それが原因で死んだ亡者を何度も見て来てるから分かるさ」

ジョルノ「人は正義の為なら、時として残酷に徹する事が出来る。 戦争だって、互いが“自分達が正義”と思うからこそ起きる」

小町「でも、それはもはや正義ではないのさ」

ジョルノ「それは己が“悪”である事に気付いていない……」

ジョルノ&小町「「“最もドス黒い悪”だ」」

この言葉は、彼岸で出会った亡者の中にそういった人物を見て来た小町、そして“吐き気の催す邪悪”を知っているジョルノだからこそ口にできた事だ。

それを聞いた魔理紗達は、ゴクリと息をのんだ。

雪泉「そして私もまた、祖父の悲願を達成しようと、その“歪な正義”に憑り付かれました」

妖夢「!?」

雪泉「私も多くの人々との交流で、悪の必要性を知りました。 善だけでは、目の前の命も護れない。 時には悪も必要になることを」

目付きが変わり、それを見た妖夢も警戒する。

雪泉「妖夢さん。 アナタも何処かで、妖忌さんの教えの意味を間違えているはずです! アナタはそれを正しいと考え、私はそれを否定する! どちら『真実』が正しいか、その剣で示して下さい!!」

妖夢「私が……お爺様の教えを間違えている……良いでしょう! この勝負、受けて立ちます!!」

雪泉「死塾月閃女学館・雪泉! 鎮魂の海に沈みます!!」

妖夢「半人半霊の庭師・魂魄妖夢! この剣に斬れぬものなどあんまりない!」

この瞬間、二人の少女がぶつかり合った。

因みにジョルノが、こんな事を呟いた。

ジョルノ「庭師? 彼女って、侍じゃないんですか?」

魔理紗「私もたまに忘れるけど、妖夢の本業は庭師だぜ」

グリーンハート「に、庭師に苦戦されるわたくし達って……」

ホワイトハート「何だか、自信が無くなったぜ……」









 背中の長刀『楼観剣』を鞘から抜き、妖夢は凄まじい剣技を放つ。

それを見た雪泉は、術で強化した扇子で攻撃を防ぐ。

距離を取った妖夢は、腰の短刀『白楼剣』を鞘から抜く。

咄嗟に雪泉も、術を発動させた。

雪泉「秘伝忍法・黒氷!」

放たれた氷の弾丸は、妖夢へと向かっていく。

妖夢「甘い!」

しかし妖夢は、容易く斬り刻んだ。

妖夢「このまま、斬り伏せる!」

雪泉「なら、樹氷扇!」

日本舞踊の舞の如き動き。

それは見る者を虜にするものであった。

グリーハート「綺麗ですわ」

ホワートハート「しかも和服だと、かなり品性を感じるぜ」

魔理紗「弾幕勝負なら、かなり美しいと感じるぜ」

激しい攻防戦が繰り広げられるが、妖夢の方が圧倒し、

妖夢「はぁ!」

雪泉「くっ!」

雪泉はそのまま、弾き飛ばされてしまった。









 妖夢の方が圧倒的に強く、雪泉もボロボロになっていた。

妖夢「アナタの技、お見事というべきです。 しかし、それも終わりです!」

二刀を構え、ゆっくりと歩んでくる妖夢。

雪泉「…………」

一度目を閉じ、何かを考える雪泉。

すると彼女は印を組み、宙に巨大な白い蜘蛛が召喚される。

雪泉「いきます、雪蜘蛛!」

雪蜘蛛から放たれた氷の竜巻が、雪泉を包み込んだ。

妖夢「無駄な足掻きを!」

竜巻が晴れた瞬間、その場にいる者達が、驚きを隠せなかった。

少し伸びた水色の髪にマゼンタの瞳、そして閉じた扇子から変化した氷の剣。

これが雪泉の更なる覚醒形態『氷王』である。

妖夢「まさか、そんな切札があったなんて!?」

雪泉「いきますよ、妖夢さん。 これで、決着をつけます!」

妖夢「……良いでしょう。 私の全てを出します!」

雪泉「いざ!」

妖夢「尋常に!」

雪泉&妖夢「勝負!!」

妖夢「奥義『西行春風斬』!!」

雪泉「組曲『氷王〜朧〜』!」

二人の刃がぶつかり、二人はすれ違うと同時に背を向ける。









 暫く立っていた二人であったが、雪泉の体が斬れる。

雪泉「ぐっ!」

痛みに耐えながらも、雪泉は倒れそうな体を支える。

妖夢の体も斬れるが、彼女は膝を着いてしまった。

妖夢「お見事です……私の……負けの様ですね」

そう言って妖夢は、そのまま仰向けに倒れたのだった。

元の姿に戻り、雪泉は妖夢へと近づく。

妖夢「一つ、聞いても良いですか?」

雪泉「何でしょう?」

妖夢「私が、何処で間違えたと思ったんですか?」

雪泉「アナタは「真実は斬れば分かる」と言っていました。 しかし、斬っただけで真実が分かるとは限りません。 戦いの中で得たもの、そして会話の中で得たものこそ、本当の“真実”だと私は思います」

妖夢「それも……そう……です……ね……」

魂魄妖夢……









 凄まじい戦いの後、雪泉はその場で倒れそうになる。

雪泉「あ――」

しかし、ジョルノが彼女の体を支えた。

ジョルノ「大丈夫ですか?」

雪泉「あ、ありがとうございます」

ゆっくりと膝を着き、雪泉は一息吐くのであった。

グリーンハート「それにしても、過ぎ戦いでしたね」

ホワイトハート「ある意味、スゲェもんだったぜ」

暫くは雪泉は戦えないと感じ取り、

ジョルノ「皆さんは、ここで雪泉の治療と妖夢の監視をお願いします」

魔理紗「え? ジョルノはどうすんだよ?」

ジョルノ「挨拶しに行って来ます、屋敷の主に」

雪泉「一人でですか!? それなら全員で――」

ジョルノ「雪泉は傷が癒えていない。 妖夢が襲って来ないとは限らない。 監視と看護が必要ですよ」

雪泉「うっ……」

ジョルノ「そういうこと、この先は任せて下さい」

門を開き、中へと入ろうとするジョルノ。

グリーンハート「気を付けてくださいね」

魔理紗「任せたぜ!」

ジョルノ「勿論」

そう言ってジョルノは、門を潜ったのだった。


TO BE CONTINUED...

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■作者からのメッセージ
 次回、ジョルノVS幽々子です!

『生命』を操る能力VS『死』を操る能力の対決です!
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