幻想郷の冥府にある施設『是非曲直庁』。
そこに属する閻魔の『四季映姫・ナマザナドゥ』は、現世に彷徨う霊の様子がおかしいという情報を聞かされる。
映姫「小町、小町はいますか?」
小町「はい、何でしょうか?」
映姫「すぐに白玉楼に向かって下さい。 嫌な予感がします」
小町「へ? 分かりました」
こうして、小町は白玉楼へと向かったのだった。
―半人半霊の半人前―
白玉楼に入った小町であったが、まさにその時であった。
小町「!?」
屋敷から奇妙な黒いオーラが溢れ出ていて、
小町「やばい! コイツは映姫様に伝えないと――」
気付いた時には黒いオーラを被ってしまい、現在に至る。
小町「というワケなんだ」
小町の話を聞いたジョルノ達は、ゴクリと唾を飲んだ。
ブラン「黒いオーラ」
ベール「それが事件に関わるのでしょうか?」
ジョルノ「話から見て、間違いないでしょう。 小町さん、手を貸してはくれないでしょうか?」
ジョルノがそう言うと、小町は驚いた顔をする。
小町「おや、どういう吹きまわしだい? 仮にも自分達を殺そうとした相手に対して」
ジョルノ「今は猫の手も借りたい――というよりは、死神の手も借りたいところなんです。 ダメでしょうか?」
それを聞いた小町は、深くため息をすると、
小町「分かったよ。 アンタなら、任せられそうだしね」
そう言ってジョルノの頼みを呑んだ。
それには他の四人も同意であった。
ジョルノには何処か、人を惹き付ける爽やかさがある。
雪泉は感じる。
彼には人を動かすリーダーとしての素質がある事を。
ベールとブランは驚く。
彼には
信仰を集められる程の魅力がある事を。
そして魔理紗は気付いた。
彼には種族問わずに相手を受け入れるカリスマ性がある事を。
ジョルノ「さあ、いこうか!」
こうして彼等は、石段を登ったのであった。
石段を登りきると、そこには大きな屋敷があった。
ジョルノ「ここが……白玉楼」
雪泉「ご立派なお屋敷ですね」
ブラン「だけど、普通じゃないわ」
そう言って彼等は、屋敷の方を見る。
そこからは、凄まじいほどの邪気が感じ取られ、
ジョルノ「いきますよ?」
ジョルノの確認に、四人はコクリと頷く。
門の前まで来たが、まさにその時であった。
??「どうやら、ここまで辿りついたようですね」
セミロングの銀髪に黒いリボン、腰と背中に刀を差した少女が現れた。
その横には、人霊のようなものが浮かんでいた。
コレを見て、誰もがこう思った。
ジョルノ「(銀時がここにいたら……)」
雪泉「(あまりの恐怖で……)」
ブラン「(泡を吹いてしまって)」
ベール「(失神しそうですわね……)」
全くその通りである。
腰の刀を抜き、少女は強く握る。
妖夢「私の名は、魂魄妖夢。 主の命令で、ここを通すワケにはいかない」
ジョルノ「成程、その使命感は立派だ」
雪泉「しかし、ここは通らせて貰いますよ」
ベール「そう言う事ですわ」
ブラン「悪いけど、アナタを倒させて貰うわ」
魔理紗「いくぜ!」
ジョルノはスタンドを出し、雪泉は忍び転身、ブランとベールは女神化、小町は大鎌を構え、そして魔理紗はミニ八卦炉を構えた。
それを見た妖夢はこう言った。
妖夢「先に言っておきます。 我が剣に、斬れぬものなど―――あんまりない!!」
それを聞いて、ジョルノと魔理紗と小町以外がズッコケそうになり、
ホワイトハート「あんまりないのかよ!!」
思わずホワイトハートがツッコんでしまった。
地を蹴り妖夢は高速で剣を振るった。
それを見たホワートハートが、斧でそれを防ぐ。
ホワイトハート「はっ! 軽いぜ!!」
そのままグリーンハートの槍が放たれるが、妖夢は背中の長刀を抜いて防いだ。
グリーンハート「早い!」
妖夢「いいえ、アナタが半人前の私より遅いだけです」
魔理紗「どいてろ、二人とも!」
すると、ミニ八卦炉を持った手を真っ直ぐに伸ばした魔理紗が、
魔理紗「いくぜ! 恋符『マスタースパーク』!!」
お得意の必殺技を放った。
グリーンハート「ちょ、ちょっと!」
ホワイトハート「やるなら最初から言え!」
二人は真っ先に避け、マスタースパークは妖夢へと向かっていく。
妖夢「遅い!」
だが妖夢は刀で弾き、その軌道を変えたのだった。
妖夢の剣捌きに誰もが驚きを隠せなかった。
グリーンハート「あの方……ご自分を半人前と仰ってましたが……」
ホワイトハート「アイツ、何処が半人前だよ!?」
雪泉「あの剣捌きにあの動き、剣士として見事ですね」
妖夢「簡単には通しません」
剣を構え、強い目で見る妖夢。
雪泉「………」
その目を見た雪泉は、何処か自分と面影が重なった。
雪泉「皆さん、ここは私一人に任せて貰えませんか?」
グリーンハート「え? 何を言ってるんですか!?」
ホワイトハート「そうだぜ雪泉! 全員で戦った方が余裕だろう!」
魔理紗「見て分かるだろ! 今の妖夢は、一人で勝てないぜ!!」
小町「無駄死にするつもりかい!?」
一人戦うと言った雪泉に、魔理紗達は猛反対するが、
ジョルノ「ホントに、良いんですね?」
雪泉「勿論です」
ジョルノ「分かりました。 では、お願いします!」
そう言ってジョルノは、彼女に全てを託したのだった。
妖夢の前に立つ雪泉の背後で、魔理紗達は不安の声を漏らした。
魔理紗「ホントにいいのかよ、ジョルノ?」
ジョルノ「彼女の『覚悟』は本物です。 ここで止めに入るのは、流石に『侮辱』に値するでしょ?」
ホワイトハート「別に、侮辱のつもりじゃ……」
ジョルノ「正論は時として、相手を怒らせる『暴言』にもなる。 分かるでしょ、この意味が」
グリーンハート「ええ……ですが……」
ジョルノ「仲間を信じるのも、大切じゃあないですか?」
ジョルノの言葉に、魔理紗達はその場で黙りこむ。
そして雪泉の背を見ながら、ジョルノは心の中で呟いた。
ジョルノ「(任せましたよ、雪泉)」
扇子を構え、雪泉は妖夢を真っ直ぐ見る。
雪泉「一つ、宜しいですか?」
妖夢「ん?」
雪泉「アナタは何のために、その剣を振るうのですか?」
その問いに妖夢は、当然の様に答えた。
妖夢「主である西行寺幽々子様を護るため……そして、祖父の教えに従う為です」
雪泉「教え?」
妖夢「私は師であった祖父の『魂魄妖忌』から、剣術の指南を受けました。 しかし、その祖父も突然失踪。 孫の私はおろか、主である幽々子様でさえ、その理由を聞かされいません」
雪泉「アナタは、お爺様から何かを学んだのですか?」
妖夢「祖父は言いました。 “真実は眼では見えない、耳では聞こえない、真実は斬って知るもの”だと。 全ては斬らなければ始まらない。 剣が真実に導いてくれるはず……そう確信しています」
魔理紗「だけど、やってる事は霊夢曰く「辻斬り魔」だけどな」
ホワイトハート「確かに……何でもかんでも斬ればいいモンじゃねぇぞ……」
グリーンハート「色々とツッコミどころがあり過ぎますが」
ジョルノ「………」
流石に魔理紗の台詞に、殆どが引きつってしまう。
妖夢「しかし、何故そのような質問を?」
逆に問われた雪泉も、応じるように答えたのだった。
雪泉「私も亡くなった祖父から、忍の技を教わりました。 祖父の黒影は正義感が強く、善だけ――心の優しき人々が暮らせる世界を望み、それを実行しました。 ですが、それが裏目に出てしまい、善と悪両陣の忍達から追われる身となりました」
妖夢「ま、待って下さい! 正義感の強い方が、追われる側の身!? アナタのお爺様は、何も悪い事はしていないのに!?」
誰もがそう思うが、ジョルノと小町はその意味を知っていた。
小町「そうでもないのさ。 過剰な正義ってのは、一度暴走すると歯止めが利かなくなるもんなのさ。 あたいも彼岸で、それが原因で死んだ亡者を何度も見て来てるから分かるさ」
ジョルノ「人は正義の為なら、時として残酷に徹する事が出来る。 戦争だって、互いが“自分達が正義”と思うからこそ起きる」
小町「でも、それはもはや正義ではないのさ」
ジョルノ「それは己が“悪”である事に気付いていない……」
ジョルノ&小町「「“最もドス黒い悪”だ」」
この言葉は、彼岸で出会った亡者の中にそういった人物を見て来た小町、そして“吐き気の催す邪悪”を知っているジョルノだからこそ口にできた事だ。
それを聞いた魔理紗達は、ゴクリと息をのんだ。
雪泉「そして私もまた、祖父の悲願を達成しようと、その“歪な正義”に憑り付かれました」
妖夢「!?」
雪泉「私も多くの人々との交流で、悪の必要性を知りました。 善だけでは、目の前の命も護れない。 時には悪も必要になることを」
目付きが変わり、それを見た妖夢も警戒する。
雪泉「妖夢さん。 アナタも何処かで、妖忌さんの教えの意味を間違えているはずです! アナタはそれを正しいと考え、私はそれを否定する! どちら『真実』が正しいか、その剣で示して下さい!!」
妖夢「私が……お爺様の教えを間違えている……良いでしょう! この勝負、受けて立ちます!!」
雪泉「死塾月閃女学館・雪泉! 鎮魂の海に沈みます!!」
妖夢「半人半霊の庭師・魂魄妖夢! この剣に斬れぬものなどあんまりない!」
この瞬間、二人の少女がぶつかり合った。
因みにジョルノが、こんな事を呟いた。
ジョルノ「庭師? 彼女って、侍じゃないんですか?」
魔理紗「私もたまに忘れるけど、妖夢の本業は庭師だぜ」
グリーンハート「に、庭師に苦戦されるわたくし達って……」
ホワイトハート「何だか、自信が無くなったぜ……」
背中の長刀『楼観剣』を鞘から抜き、妖夢は凄まじい剣技を放つ。
それを見た雪泉は、術で強化した扇子で攻撃を防ぐ。
距離を取った妖夢は、腰の短刀『白楼剣』を鞘から抜く。
咄嗟に雪泉も、術を発動させた。
雪泉「秘伝忍法・黒氷!」
放たれた氷の弾丸は、妖夢へと向かっていく。
妖夢「甘い!」
しかし妖夢は、容易く斬り刻んだ。
妖夢「このまま、斬り伏せる!」
雪泉「なら、樹氷扇!」
日本舞踊の舞の如き動き。
それは見る者を虜にするものであった。
グリーハート「綺麗ですわ」
ホワートハート「しかも和服だと、かなり品性を感じるぜ」
魔理紗「弾幕勝負なら、かなり美しいと感じるぜ」
激しい攻防戦が繰り広げられるが、妖夢の方が圧倒し、
妖夢「はぁ!」
雪泉「くっ!」
雪泉はそのまま、弾き飛ばされてしまった。
妖夢の方が圧倒的に強く、雪泉もボロボロになっていた。
妖夢「アナタの技、お見事というべきです。 しかし、それも終わりです!」
二刀を構え、ゆっくりと歩んでくる妖夢。
雪泉「…………」
一度目を閉じ、何かを考える雪泉。
すると彼女は印を組み、宙に巨大な白い蜘蛛が召喚される。
雪泉「いきます、雪蜘蛛!」
雪蜘蛛から放たれた氷の竜巻が、雪泉を包み込んだ。
妖夢「無駄な足掻きを!」
竜巻が晴れた瞬間、その場にいる者達が、驚きを隠せなかった。
少し伸びた水色の髪にマゼンタの瞳、そして閉じた扇子から変化した氷の剣。
これが雪泉の更なる覚醒形態『氷王』である。
妖夢「まさか、そんな切札があったなんて!?」
雪泉「いきますよ、妖夢さん。 これで、決着をつけます!」
妖夢「……良いでしょう。 私の全てを出します!」
雪泉「いざ!」
妖夢「尋常に!」
雪泉&妖夢「勝負!!」
妖夢「奥義『西行春風斬』!!」
雪泉「組曲『氷王〜朧〜』!」
二人の刃がぶつかり、二人はすれ違うと同時に背を向ける。
暫く立っていた二人であったが、雪泉の体が斬れる。
雪泉「ぐっ!」
痛みに耐えながらも、雪泉は倒れそうな体を支える。
妖夢の体も斬れるが、彼女は膝を着いてしまった。
妖夢「お見事です……私の……負けの様ですね」
そう言って妖夢は、そのまま仰向けに倒れたのだった。
元の姿に戻り、雪泉は妖夢へと近づく。
妖夢「一つ、聞いても良いですか?」
雪泉「何でしょう?」
妖夢「私が、何処で間違えたと思ったんですか?」
雪泉「アナタは「真実は斬れば分かる」と言っていました。 しかし、斬っただけで真実が分かるとは限りません。 戦いの中で得たもの、そして会話の中で得たものこそ、本当の“真実”だと私は思います」
妖夢「それも……そう……です……ね……」
魂魄妖夢……
再起不能!
凄まじい戦いの後、雪泉はその場で倒れそうになる。
雪泉「あ――」
しかし、ジョルノが彼女の体を支えた。
ジョルノ「大丈夫ですか?」
雪泉「あ、ありがとうございます」
ゆっくりと膝を着き、雪泉は一息吐くのであった。
グリーンハート「それにしても、過ぎ戦いでしたね」
ホワイトハート「ある意味、スゲェもんだったぜ」
暫くは雪泉は戦えないと感じ取り、
ジョルノ「皆さんは、ここで雪泉の治療と妖夢の監視をお願いします」
魔理紗「え? ジョルノはどうすんだよ?」
ジョルノ「挨拶しに行って来ます、屋敷の主に」
雪泉「一人でですか!? それなら全員で――」
ジョルノ「雪泉は傷が癒えていない。 妖夢が襲って来ないとは限らない。 監視と看護が必要ですよ」
雪泉「うっ……」
ジョルノ「そういうこと、この先は任せて下さい」
門を開き、中へと入ろうとするジョルノ。
グリーンハート「気を付けてくださいね」
魔理紗「任せたぜ!」
ジョルノ「勿論」
そう言ってジョルノは、門を潜ったのだった。
TO BE CONTINUED...