紅魔館へ向かう為、空を飛んでいたパープルハートとジョルノ。
そんな二人であったが、パープルハートは険しい顔をする。
パープルハート「ゴメン、ジョルくん。 下ろしても良いかしら?」
ジョルノ「ん? 構いませんけど」
ゆっくりとジョルノを下ろし、パープルハートは一息吐いた。
するとその時であった。
紫「お邪魔するわよ」
二人「!?」
突然、紫がスキマから出て来たのである。
―
GIOGIOvsDIO・その@―
パープルハート「どうしたの、ゆかりん?」
紫「ごめんねネプちゃん。 ジョルノ君とお話しがあるから、先に紅魔館へ向かってくれるかしら?」
パープルハート「でも……」
ジョルノ「行って下さい。 僕も追い付きますから」
パープルハート「………分かったわ」
こうしてパープルハートは、先に紅魔館へと向かった。
彼女が飛び去った事を確認したジョルノは、紫と顔を合わせる。
ジョルノ「それで、話というのは?」
紫「ジョルノ君、念のために調べてさせて貰ったわ。 アナタとDIOの関係を」
ジョルノ「…………」
紫「アナタ自身の口から確認したいの……その……」
ジョルノ「僕とDIOが、“実の親子というのは本当か”ですね?」
紫「え……ええ……」
ジョルノ「事実です」
紫「!?」
本人の口から知らされた紫は、驚きを隠せなかった。
ニャル彦が甦らせた邪神と、それを倒す少年が親子など、誰が信じ得られるのか。
紫「そう……気を付けてね」
ジョルノ「勿論……あっ、ついでに頼んでも良いでしょうか?」
紫「え?」
果たして、ジョルノが紫に頼んだ事とは!?
パープルハートは一足早く、紅魔館に着いた。
パープルハート「!?」
しかし彼女は、そこで思いがけない光景を目にした。
DIO「ほう、貴様が女神の……確かネプテューヌだったな。 いや、今はパープルハートと呼ぶべきかな?」
腕を組み、余裕の表情を見せるDIO。
その周囲には、紅魔館の住人達が倒れていたのだ。
レミリア達の実力は、彼女が良く知っていた。
だから、一人の男相手に敗れるとは思えなかったのだ。
DIO「くくく……しかし、女神の血というのは、このDIOも口にした事がないからな……いい機会だ。 その血を吸わせて貰うぞ」
一歩ずつ歩んでくるDIO。
パープルハートは震えが止まらなかった。
顔を合わせただけで、背筋が凍りついたのだ。
恐怖で胃の内容物が吐き出されるような感覚に陥ったが、まさにその時であった。
ドガァと、レミリアが『スピア・ザ・グングニル』で屋敷の時計台を破壊したのだ。
パープルハート「!?」
DIO「ん? 何だ、あらぬ方向へと撃ちおって。 断末魔……最後の雄叫びを上げようとするか? 無意味な事を」
パープルハート「(レミリア……どうしてあんな事を!? 一体、何がしたかったの!?)」
そんな中、レミリア本人は、
レミリア「(わ、私の……出来る……事は……ここまでよ………お願い………これを………皆に………伝えて……ヤツの……能力の正体……を……)」
このメッセージが伝わる事を信じ、その場で倒れたのだった。
レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレット、パチュリー・ノーレッジ、小悪魔、十六夜咲夜、紅美鈴……
再起不能!
拳を強く握り締め、パープルハートは叫んだ。
パープルハート「ネクストフォーム、解放!」
その瞬間、パープルハートは更なる形態『ネクストフォーム』へと姿を変えた。
DIO「ほう、面白い能力だな」
パープルハート「女神の力、見せてあげるわ!」
DIO「良いだろう!」
遂に、邪悪の帝王と女神の戦いが始まった。
パープルハートは豪快に剣を振るったが、まさにその時であった。
DIO「『
世界』!!」
突如としてDIOの体から、人型のスタンドが出現したのだ。
三角形のマスクを被ったような顔に、背中にパイプの様なものを付けた逞し肉体。
そして時計のマークが付いた拳が特徴的なスタンド。
タロットカードの21番目で、“完成”や“支配”を意味する。
これがDIOのスタンド、名を『
世界』!
『
世界』は拳で弾き、もう片方の拳を突き出したのである。
パープルハート「!!」
それを見たパープルハートも、すぐさま後ろへと跳んだ。
パープルハート「(接近型のスタンドは、長くても射程距離は2メートル辺り。 それなら、距離をとって戦えば――)」
しかし、その時であった。
DIO「無駄だ」
パープルハート「なっ!?」
なんと『
世界』は、パープルハートの近くまで移動していた。
その距離、約5メートル!
DIO「言い忘れたが、我が『
世界』の射程距離は、最大で10メートルだ」
ザ・ワールド「無駄ぁ!」
放たれた拳を避け、パープルハートは空中へと飛び上がった。
パープルハート「(接近型のスタンドなのに、射程距離が10メートル!? 反則過ぎでしょ!?)」
DIO「ふん、逃がすか!」
だがその瞬間、DIOも空へと飛び上がった。
パープルハート「(嘘っ!? 空まで飛べるのアイツ!?)」
驚きを隠せなかったが、彼女はある事を思い出す。
それは、レミリアが取った“時計台を破壊”という行動であった。
パープルハート「(そういえば、レミリアはどうしてあんな事を? 何かのメッセージを伝えたかったというの? まさか、あの状況の中で、DIOの能力を見抜いたというの?)」
考えれば、一つ疑問が浮かんだ。
時を操れる咲夜がいたのにも拘らず、何故レミリア達は敗れたのか。
パープルハート「(時計台を破壊する事で何を伝えたかったの? 時計台を破壊する……時計台を破壊……時計を壊す……時間を止める――え!?)」
この瞬間、パープルハートは一つの答えに辿りついた。
パープルハート「まさか……まさかDIOの能力は、時間を!? 時を止める!? 止まった時の中を動ける能力なの!?」
驚きを隠せなかったパープルハート。
しかし、これなら合点がいったのである。
(回想)
咲夜が時を止め、DIOの周囲にナイフを投げ飛ばす。
そして彼女が時を動かそうとした瞬間、まさにその時であった。
咲夜「!?」
突然、体が動かなくなったのだ。
DIO「5秒か……大した女だ。 時を止められるだけでなく、そこまで動けるとはな……」
そう言ってDIOは、ナイフの包囲陣をゆっくりと避けていく。
DIO「どんな気分だ? 動きたくても、動けない気分というのは?」
咲夜「くっ……」
DIO「しかし、時を支配する事に関しては、このDIOの方が上だったな」
そう言うと、『
世界』が拳の連打を叩き込んだ。
ザ・ワールド「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」
その凄まじい破壊力と速度は、咲夜の肉体にダメージを与えた。
DIO「ククク……コレが『
世界』だ」
そのままレミリア、フラン、パチュリー、小悪魔、美鈴を倒したのである。
そして時が動き出し、彼女達は吹き飛ばされたのだった。
コレが、紅魔館の面々が倒された真相である。
レミリアのメッセージが伝わったが、パープルハートは恐怖を憶えてしまう。
まさか、咲夜と同じ能力を持つ者がいるとは思わなかったのだろう。
パープルハート「時を止める能力……ヤバいわ! この男、ヤバ過ぎる!!」
しかし、DIOの姿がいつの間にか消え、
パープルハート「え――!?」
ドガァと、背中を殴られたのである。
凄まじい衝撃を背中に受け、パープルハートはそのまま地面へと墜落してしまった。
パープルハート「ぐっ……な……なんて……パワー……なの………」
地面には大きなクレーターが出来るほどのダメージを負うが、パープルハートはすぐさま立ち上がった。
DIO「ふん、鬼ごっこは終わりか?」
パープルハート「そうね……だから、ここでアナタを倒すわ!」
刀を構え、地を駆けていき、
パープルハート「この一刀! 受け止められるなら、受けてみなさい!!」
DIO「良いだろう、来るがいい!」
パープルハート「ハァァァァァァ! 『次元一閃』!!」
次元をも斬り裂く一閃が、DIOへと放たれたのだった。
ネクストフォーム限定の必殺技『次元一閃』。
今この技が、DIOを捉えようとした。
パープルハート「(捉えた! この距離なら!!)」
勝利を確信したパープルハートであったが、まさにその時であった。
DIO「
WRYYYY! 貧弱貧弱ぅ!!」
バシィと、DIOは白刃取りで受け止めたのだ。
それも片手で!
パープルハート「そ、そんな……」
驚きを隠せなかったパープルハートであったが、この一瞬に隙が出来てしまった。
DIO「その一瞬が命取りよ!!」
拳を構えた『
世界』が、凄まじい連打を叩き込んだのだ。
ザ・ワールド「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」
防御する暇も無く、パープルハートは吹き飛ばされてしまった。
パープルハート「ぐっ……」
切り札のネクストフォームでも太刀打ちできなかった事に、強いショックを受けてしまう。
遂に彼女の眼前まで歩み寄ったDIO。
DIO「さて、そろそろ終わりにするか」
この瞬間、パープルハートは実感した。
仮に他の女神達が駆けつけてくれても、この男には勝てる気がしないと――。
DIO「さらばだ、女神よ」
『
世界』の拳が放たれた。
パープルハート「(ノワール……ブラン……ベール……ぷるるん……そしてネプギア……ごめんなさい)」
目の前の邪悪に敗れ、遂に死を覚悟したパープルハート。
しかし、その時であった。
「『ゴールド・エクスペリエンス』!!」
別の拳が、『
世界』の拳とぶつかったのだ。
DIO「むっ!」
コレを見たDIOは、咄嗟に後ろへと跳んだ。
パープルハートが隣りを見ると、
ジョルノ「やれやれ、どうやら間に合ったようだ」
爽やかな黄金の風と共に、ジョルノ・ジョバァーナが参上したのだった。
パープルハートを庇うように、彼女に背を向けるジョルノ。
そんな彼は、真っ向からDIOを睨む。
DIO「貴様が、ジョルノ・ジョバァーナか。 ニャル彦とかいう男から聞いていたが、実際に会えるとはな」
ジョルノ「僕は……こういう時が来るのを、待っていた様な気がする」
するとDIOは、自身の首筋を見せる。
DIO「このジョナサンの肉体の……『星の痣』が、見えない糸で貴様の存在を教えてくれた」
背中にある首の付け根に、星の形をした痣があった。
それを見たジョルノも、自身の首筋を見せる。
彼の首筋にも、星の形の痣があった。
DIO「やはりな……不思議だったのだ。 貴様は、このDIOに近いようでもあり、遠いようでもある。 その疑問が、確信へと変わった」
ジョルノ「それは、僕とアンタが……実の親子であることだろ?」
DIO「フン、やはり気付いたか」
パープルハート「!?」
このやり取りを聞いたパープルハートは、驚きを隠せなかった。
まさかDIOとジョルノが、実の親子だとは思わないだろう。
しかし、あの時のジョルノの反応を見れば、その疑問も解消される。
ジョルノ「ポルナレフさんやスピードワゴン財団、そして空条承太郎さんから聞いていたが……思ってた通りの“邪悪そのもの”だな」
DIO「ポルナレフに承太郎か……随分と懐かしい名前が出て来たな……やはりジョースターと関わっていたか……まあいい」
邪悪な笑みを見せ、DIOはジョルノを睨みつける。
DIO「スタンドのパワーを更に上げるには、息子である貴様の血が有効かもしれんなぁ……」
ジョルノ「やってみろ。 僕も全力で叩き潰す」
その瞬間、『ゴールド・E』が攻撃をしよとした。
しかしそれよりも速く、『
世界』が足へ目掛けて蹴りを放った。
足に一撃を喰らった『ゴールド・E』。
その反動は、本体であるジョルノにも跳ね返った。
ジョルノ「ぐっ!」
DIO「ノロいノロい。 パワーもスピードも、『
世界』の方が上だったようだな」
ジョルノ「僕の『ゴールド・E』と同じ接近パワー型のスタンドか。 遠くまではいけないが、パワーとスピードに秀でている」
DIO「貴様のスタンドがどんなものかをちょいと試してみたかったが、試す必要はなかったようだな」
ジョルノ「試すというのは、こういう
撫でるだけの事か? 確かに大したもんだよ、ズボンが破けたけどな」
明らかに挑発であったが、それを聞いたDIOは呆れたような顔をする。
DIO「承太郎もそうだったが、やはり貴様もジョースターの血統だな。 どうしてジョースターというのは、こうも負けず嫌いが多いのだ」
そして肩をくすめ、余裕のある笑みを見せた。
DIO「ハァ! 下らん挑発に乗ってやって、もう少しばかり試してやるか!!」
ザ・ワールド「フン! フン!」
『
世界』が拳を放つが、『ゴールド・E』がそれを防ぐ。
そして『ゴールド・E』が拳を放つが、『
世界』の顔を掠っただけである。
勿論、その反動でDIOの顔にも傷が出来た。
ゴールド・E「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァァ!!」
ザ・ワールド「フン! フン!」
目で追うことのできないスピードで、二人のスタンドが拳をぶつけ合う。
DIO「フン、
突きの速さ比べか」
顔の傷に手を添えたDIO。
そして手を離した瞬間、顔の傷は綺麗に治ったのである。
ゴールド・E「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄……」
ザ・ワールド「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄……」
凄まじいスピードで放たれた、拳と拳のぶつかり合い。
GIOGIOとDIO……次元を越えた親子のぶつかり合いが始まったのだった。
TO BE CONTINUED...