幻想郷の中心部となる『博麗神社』。
その巫女である博麗霊夢は……、
霊夢「ハァ、暇ね」
縁側にて、お茶を飲みながら和んでいた。
しかし、その時であった。
「「キャァァァァ!」」
霊夢「――って、えぇぇぇ!?」
突然裂け目から、複数の男女が降って来たのだった。
―幻想郷へようこそ!―
裂け目から落ちた零児達であったが、
零児「おっと!」
小牟「ほいっと!」
承太郎「――っと!」
十六夜「ほいっと!」
クラウス「フン!」
零児、小牟、承太郎、十六夜、クラウスは上手く着地し、
クラウス「レオナルド君、大丈夫かね?」
レオ「あ、ハイ」
ソニック「ウキ」
レオナルドとソニックはクラウスに抱えられていた。
ザップ「んが!」
プルルート「ヒャッ!」
美野里「うわっ!」
四季「いった!」
夜桜「いっつ!」
叢雲「ぐっ!」
雪泉「きゃっ!」
千鶴「きゃん!」
ザップを下敷きに、他の女性陣が落ちてしまった。
承太郎「やれやれだぜ。 ここは神社か?」
零児「そのようだな」
小牟「さっきの裂け目、一体誰の仕業じゃ!?」
霊夢「ちょっと! 私を無視して話しを進めるな!!」
そう言って霊夢の叫びが響いたのだった。
魔法の森にある一軒の建物。
その名は『霧雨魔法店』。
この建物の外で、主の霧雨魔理紗は……、
魔理紗「よし、やるぞ!」
興味半分で行った召喚魔法を試したのだが、
魔理紗「あれ、失敗か?」
ガシャァンと、何かが家の中に落ちたような音が聞こえた。
魔理紗「な、何だ!?」
驚いた魔理紗であったが、すぐさまドアを開けると、
ダンテ「――ふぅ〜……、とんでもないトコに落とされたもんだ」
赤いコートの男……ダンテが苦笑交じりにそう言った。
ゆっくりと腰を下ろすと、ダンテは辺りを見渡す。
ダンテ「………」
その後に、彼は魔理紗に尋ねたのだった。
ダンテ「なあ、お嬢ちゃん」
魔理紗「な、何だ?」
ダンテ「俺の名はダンテだ。 お嬢ちゃんの名前は?」
魔理紗「き、霧雨魔理紗だ」
ダンテ「OK、魔理紗。 ここは魔理紗の家か?」
魔理紗「そ、そうだぜ」
ダンテ「そうか……家の中を散らかして悪いな」
魔理紗「いや、下から散らかってるから、気にしてないぜ」
ダンテ「そいつは良かった。 んで、ここはどこなんだ?」
魔理紗「え? 幻想郷だけど」
ダンテ「ゲンソウキョウ? 初めて聞いたな。 どんなとこなんだ?」
首を傾げたダンテに、魔理紗が分かりやすく説明したのだった。
幻想郷……それは、現実世界で忘れ去られたものが『幻想入り』する世界。
この世界は人間と妖怪が共存して生きている。
人間は妖怪を恐れ、妖怪は人間に退治される。
そんな幻想郷の中心となっているのが、代々から存在する博麗神社。
この神社の巫女が管理する『博麗大結界』が消えた時、幻想郷は崩壊するとも言われている。
魔理紗から幻想郷の話しを聞いたダンテは、
ダンテ「成程な……つまり俺は、魔理紗の召喚魔法で幻想入りしたって事か」
それをすんなりと受け入れた。
魔理紗「いや、受け入れるのが早くね?」
ダンテ「考えても面白くないからな」
そう言うと彼は、不敵な笑みを見せたのだった。
その頃、博麗神社では……、
霊夢「成程、話しは大体分かったわ」
零児達の話しを聞き、霊夢は溜息を吐いてしまう。
話しを聞く限り、幻想郷には『八雲紫』という女性の妖怪がいる。
彼女の能力は『境界を操る程度の能力』で、あらゆるモノを『スキマ』と呼ばれる裂け目に出し入れする事が出来るのである。
つまり零児達は、紫によって幻想郷に呼ばれてしまったのだった。
霊夢「紫がアナタ達を招いたって事は、今回の異変が普通じゃないって事ね」
零児「異変? 詳しく教えてくれないか?」
霊夢「ええ、良いわ」
そう言って霊夢は、今回の異変について説明する。
今回の異変は、特殊と呼んでもおかしくないものであった。
吸血鬼の『レミリア・スカーレット』が主を務める館『紅魔館』に、何人かが入っているというものであった。
更に次の日には、迷いの竹林にある屋敷『永遠亭』や、そして地下にある『旧都』でも不審な出来事が起きているのである。
零児「成程な……俺達が招かれたのは、この異変の解決を手伝えって事か……」
雪泉「どうやら、そのようですね」
プルルート「どうするのぉ〜?」
十六夜「やるしかねぇな」
クラウス「これも、何かの縁かもしれない」
承太郎「ああ、やろうぜ」
こうして零児達は、霊夢と供に異変解決に乗り出したのだった。
同時刻、幻想郷の地獄にて……、
??「……ここは……もしや地獄か?」
オールバックの銀髪に青いコートを羽織った男が、辺りを見渡しながら呟いた。
彼の名は『バージル』。
ダンテの双子の兄であるが、家族の死をキッカケに悪魔として生きる道を選んだ。
バージル「(あの時……ムンドゥスに敗れた俺は……ヤツの傀儡にされ、そしてダンテに敗れて死んだ……)」
己が死んだ経緯を思い返しながら、彼はその足を進めたのだった。
バージル「(川が流れている……という事は、ここが“三途の川”という事か)」
辺りを見渡すバージルであったが、偶然見かけた木の陰で、
??「Zz〜……Zz〜……」
長身で赤い髪、そして和装姿の少女がぐっすり寝ていた。
バージル「(………無視したいところだが、聞きたい事があるしな)」
最初は無視しようと思ったバージルであったが、今の状況と疑問を解決するため、彼女の方へと歩み寄った。
??「Zz〜……Zz〜……」
バージル「おい、起きろ」
??「Zz〜……Zz〜……」
声をかけるバージルであったが、少女は一向に目を覚まさない。
バージル「面倒だが、踏みつけるか……」
そう言って足を片方上げ、そのままドスンと少女の顔面を踏みつけた。
??「んが!」
これにより、少女はようやく起きたのだった。
??「ぐおぉ〜……な、何するんだい!?」
バージル「貴様が起きんから、そのマヌケ面を踏んでやっただけだ」
??「ハッキリ言うのは良い事だけど、少しは加減しておくれ!」
バージル「だったら寝るな」
抗議する少女であったが、バージルは軽い返答だけであしらう。
バージル「それより女、貴様に聞きたい事がある」
??「人に尋ねる時は、まず自分から名乗るのが礼儀じゃないのかい?」
バージル「……バージルだ。 貴様の名は?」
小町「アタイは小町、小野塚小町。 ここの死神さ」
バージル「……死神が亡者に踏まれて起きるか……世の末だな」
小町「わ、悪かったね」
バージル「話しを戻すが、ここは三途の川か?」
小町「そうだよ」
バージル「そうか……なら、閻魔がいるのか?」
小町「ん? 閻魔さまに会いたいのかい? なら来なよ、案内するから」
バージル「そうさせて貰おう」
こうしてバージルは、小町に閻魔の元へと案内された。
そんな中、彼は心の中で呟いたのだった。
バージル「(
弟の影響か……俺も甘くなったものだ」
幻想郷の冥府にある施設『是非曲直庁』。
そこに、一人の少女がデスクワークに勤しんでいた。
彼女の名は『四季映姫・ヤマザナドゥ』。
この幻想郷の閻魔を務めている。
小町「映姫様ぁ〜、今お時間ありますかぁ〜?」
映姫「ん? 小町、どうしましたか?」
小町「映姫様にお会いしたい人がいるようです」
映姫「私にですか? では、すぐに呼んでください」
小町「はいな。 お許しがでたよ、入って来な」
映姫の許しを得て、バージルが入って来た。
バージル「俺の名はバージル。 色々と聞きたい事がある」
映姫「四季映姫・ヤマザナドゥです。 それで、私に聞きたい事とは?」
バージル「この世界は、一体何処何だ? 俺は本来は、この世界の亡者ではない」
それを聞いた映姫と小町は、驚いたような顔をした。
映姫「その話は、本当ですか?」
バージル「ああ。 俺の住んでる世界とは、少し違う様な気がする。 ここはどこなんだ?」
それを聞いた映姫は、幻想郷について説明した。
全てを聞き終えたバージルは、納得したように首を縦に振った。
バージル「成程……自分が死んだ事は確信していたが、異世界の地獄に落ちるとはな。 笑えん冗談だ」
映姫「では……私もバージルさんに聞いても良いですか?」
バージル「何だ?」
映姫「アナタは、どのような経緯で無くなったんですか?」
それを聞いたバージルは、魔帝ムンドゥスの事や『新羅』の事を伏せる形で答えた。
バージル「両親の仇を討とうとしたが、敵に返り討ちにされて殺された。 その後、そいつの傀儡にされ、袂を分かった弟と殺し合って死んだ」
それを聞いた二人は、再び驚愕するしかなかった。
一度殺したバージルを自身の傀儡にする……死者を操る事が出来る術師がいるとは考えられなかったのだ。
バージル「どちらにせよ、俺も真っ当な生き方をしていない。 地獄に落とすなり、何なり好きにしろ」
映姫「というと?」
バージル「何者にも屈せぬ、絶対的な力を欲して生きて来たからな。 どちらにせよ、後戻りの無い生き方をしたのは確かだ」
その目と言葉に、嘘も偽りも無い。
しかし映姫は、少し考えると、
映姫「分かりました。 ですが、イキナリ地獄行きというワケにも行きません」
バージル「どういう意味だ?」
映姫「バージルさん、アナタに頼みたい事があるのです」
バージル「頼みたい事?」
そう言うと、現在起きている異変の内容を説明した。
それを聞いたバージルは、半分呆れたような顔をする。
バージル「亡者を異変解決に行かせるとは、閻魔も人使いが荒いな」
映姫「否定はしません。 それに、この異変を解決できれば、アナタの罪も軽減できるはずです」
バージル「俺は自分の生き方に後悔はない。 無論、罪の軽減にも興味も無い。 それでも力を貸せというなら、それまでなら力を貸してやる」
映姫「あ、ありがとうございます! ところでバージルさん、何か得意な武器はありますか?」
バージル「ん? 剣術の心得なら親父に叩きこまれているし、刀剣なら日本刀が使いやすいが……それがどうした?」
映姫「いえ、流石に丸腰で戦いに行くワケにはいきませんので」
バージル「成程な」
父の形見でもある愛刀の『
閻魔刀』は、もう自身の手にはない。
バージル「(閻魔刀があれば良かったが、贅沢は言えんな)」
そう思いながらも、苦笑せざる負えなかった。
小町「でしたら、アタイが『香霖堂』まで案内しますよ」
映姫「そうして下さい」
バージル「貴様の場合、さぼる口実が出来ただけだろ?」
小町「人聞きの悪い事言うなよ」
バージル「ほう……俺に顔を踏まれるまで、ぐっすり寝てた奴の台詞とは思えんな」
小町「ギクッ!」
それを聞いた映姫の目は、部下の不祥事を知った上司の顔をとなった。
映姫「こぉ〜〜〜まぁ〜〜〜ちぃ〜〜〜〜!」
小町「ひぃ〜〜〜!」
バージル「(こんなサボり魔が死神とはな。 文字通り、世の末だな)」
サボりがバレた小町は映姫の説教を喰らい、映姫も監視役という形で現世に向かう事にした。
因みに、説教は終わったのは約8時間後である。
続く...