魔法の森の入口辺りにある雑貨店『香霖堂』。
その店主である『森近霖之助』は、暇を持て余していた。
すると、店内に三人の男女が入って来た。
霖之助「いらっしゃい」
映姫「失礼します」
霖之助「おや、閻魔様が来るなんて、珍しいですね? もしかして、そこに居る小町の監視ですか?」
映姫「分かるんですか?」
霖之助「小町が一人で尋ねるのは、8割がサボる為の時間つぶしですから」
映姫「まあ、監視は事実です。 もう一つは、買い物できました」
すると霖之助は、映姫の背後で店内を見渡すバージルを見る。
霖之助「彼は?」
映姫「外の世界の亡者なのですが、霊夢さんの元で例の異変を解決して貰おうと思いまして」
霖之助「成程」
映姫「バージルさん、こちらはこの店の主の森近霖之助さんです」
バージル「バージルだ」
霖之助「森近霖之助です。 何をお探しなんですか?」
それを聞くと、バージルは迷いなく返答した。
バージル「刀だ。 何でもいい、この店にある刀はあるか?」
―思わぬ再会―
刀を買いに来たと聞き、霖之助は顎に手を当てる。
霖之助「刀ですか……ありますけど、数はそんなに多くはないですよ?」
バージル「構わん。 ここにある分の刀、全部見せて欲しい」
霖之助「では、奥にありますので待ってて下さい」
そう言うと霖之助は、すぐさま店の奥へと向かった。
すると、何者かが扉を開けたのである。
魔理紗「香霖、いるか?」
普通の魔法使い、霧雨魔理紗が風呂敷を肩に乗せていた。
小町「霖之助なら、店の奥で品物を取りに行ってるよ」
魔理紗「そうなのか?」
ダンテ「残念だったな、魔理紗。 それとも、本人が来るまで待つか?」
小町「え!?」
映姫「なッ!?」
彼女の後に入って来たダンテに、小町と映姫は驚いてしまった。
ダンテ「ん? どうした――」
思わずダンテは二人に声を掛けようとするが、
バージル「!?」
ダンテ「!?」
そこで、死んだはずの兄と再会したのだった。
バージル「貴様……まさかダンテか!?」
ダンテ「バージル!?」
思わぬ再会をした二人に、魔理紗は疑問をぶつけた。
魔理紗「なあ、ダンテ……知り合いなのか?」
ダンテ「俺の兄貴さ、双子のな」
バージル「……バージルだ。 一応、元の世界では死んでる身だがな」
魔理紗「成程な、道理でダンテが年上に見えたワケだぜ」
二人の関係性に納得する魔理紗だが、映姫と小町も驚きを隠せなかった。
小町「(袂を分かった弟がいたとは聞いてましたけど、双子とは思いませんでした)」
映姫「(ええ。 ですが双子なら、顔が似ててもおかしくありません)」
そんな中、バージルは再会した弟の姿を見る。
その姿は、兄である自分以上に年季を重ねていた。
バージル「随分と雰囲気が変わったな。 昔は口数が多かったお前が、ここまで冷静沈着になるとはな」
ダンテ「俺だって、心身ともに成長するんだ。 そうなってもおかしくないだろ?」
バージル「それもそうか」
すると、霖之助が戻って来た。
霖之助「すみません、お待たせしました」
そう言うと、彼は細長い長方形の箱を横一列に並べた。
霖之助「この中に刀が入ってますので、開けてみてください」
それを聞いたバージルは、すぐさま箱の中を開けた。
中身はかなりの値打ちがする業物ばかり。
一度鞘を抜き、納められていた刃を眺めるバージル。
一本ずつ刀を確認する彼であるが、その時であった。
バージル「ん?」
左から一番端の刀を手に取ると、その刀からは凄まじい魔力を感じ取った。
バージル「コイツは……」
すると、刀を見た映姫が驚きを隠せなかった。
映姫「そ、その刀は!?」
ダンテ「何だ、知ってんのか?」
映姫「その刀は『
魔天狼』という名前で、伝説の魔剣士『スパーダ』が『暗黒王』と呼ばれる妖怪を封じた時に使われた刀です!」
バージル「スパーダの!?」
ダンテ「マジか!?」
それを聞いたダンテとバージルは、驚きを隠せなかった。
映姫「はい! ですが戦いが終わった後、スパーダは刀に封印術をかけ、先代の博麗の巫女に託したのです!」
小町「そんな凄い刀が、どうしてここに?」
映姫「そうですよ霖之助さん! その刀を何処で!? その刀は本来、博麗神社に保管されていた物なんです!!」
霖之助「じ、実はですね……」
思わず霖之助は、魔天狼を買い取った時の出来事を話しであった。
それは数日前の事である。
霊夢「霖之助さん、今いる?」
霖之助「ん? どうしたんだい?」
霊夢が一本の刀を彼に差し出したのである。
霖之助「この刀は?」
霊夢「神社裏の押し入れを整理してたら見つかってね。 コレ、買い取ってくれる?」
受け取った霖之助は、刀を引き抜こうとした。
霖之助「ん?」
しかし、刀はピクリともしなかった。
霖之助「この刀、何かの封印術が掛けられてるね。 けど、名前だけなら僕でも分かるよ」
霊夢「何て名前なの?」
霖之助「“魔天狼”という名だ。 所で良いのかい? 押し入れにあったという事は、先代が大切にしてたって事だよね?」
その問いに対し、霊夢は面倒臭いという顔をした。
霊夢「知らないわよ。 私の知った事じゃないわ」
こうして霖之助は、刀を買い取ったのだった。
現在の香霖堂にて、
映姫「何を考えているんですか! あの巫女はァァァァァ!!」
霖之助の話しを聞いた映姫は、怒りを爆発させたのだった。
そんな中でバージルは、鞘に納められた魔天狼を眺めると、
バージル「気に入った、コイツを貰う」
ジャキンと、刀を抜いたのである。
その刃は美しい妖しい輝きを魅せ、見た者を虜に出来るものであった。
しかし、映姫は驚きを隠せなかった。
映姫「そんな!? その刀はスパーダ様意外の者には絶対に解く事が出来ないはず!?」
ダンテ「封印が解けかかってたんじゃねぇのか?」
魔理紗「ダンテ、それは無理があり過ぎだろ?」
映姫「(魔理紗さんの言うとおりです。 あの刀の封印が、簡単に解けられる筈がない。 バージルさん、アナタは一体!?)」
こうしてバージルは、新たな愛刀を手に入れたのだった。
ダンテ「んじゃ、博麗神社に向かうか。 魔理紗、案内を頼む」
魔理紗「おうよ!」
香霖堂を後にし、ダンテ達は博麗神社へと向かった。
神社へと歩み寄ったダンテ達。
ダンテ「ここが博麗神社か」
バージル「………」
魔理紗「見ての通り、ボロ神社だろ?」
そんな中、ダンテは懐から財布を取り出した。
魔理紗「――って、何してんだ?」
ダンテ「何って、賽銭だよ。 神社じゃ、通行礼儀だろ?」
そう言うと、賽銭に小銭を入れた。
チャリンと賽銭箱に入ったが、神社は無反応であった。
魔理紗「あれ、おかしいな? 何時もの霊夢なら、賽銭の音で反応するはずなんだけどな」
小町「留守じゃないかい?」
首を傾げる魔理紗と小町であったが、バージルが空を見上げていた。
バージル「幻想郷の空は、赤い霧に包まれる事があるのか?」
魔理紗「へ?」
全員が顔を上げると、赤い霧に染まっていた。
魔理紗「これは、紅魔館の異変!? 霊夢の奴、レミリアの元へ行ったんだな!!」
映姫「どうやら、私が出来るのはここまでですね。 ではお二人とも、ここで失礼します。 行きますよ、小町」
小町「は、はいな!」
そう言うと、映姫と小町は地獄へと戻ったのだった。
魔理紗「こうしちゃいられねぇ! ダンテ、バージル! 私は先に行くぜ!!」
そう言うと魔理紗は、箒に跨って空を飛んだのだった。
ダンテ「……それじゃ、行くか」
バージル「……フン」
そして二人も、紅魔館へと向かったのだった。
その頃、霊夢達はというと、
霊夢「着いたわ」
零児「ここが紅魔館か……」
小牟「随分と紅いのぉ〜」
承太郎「やれやれだぜ」
十六夜「ヤハハハハ! 良い趣味してんじゃねぇか!!」
プルルート「うわぁ〜、真っ赤だぁ〜」
雪泉「目立ち過ぎですね」
紅魔館を目にした承太郎達は、第一印象を口に出した。
すると、その時であった。
??「来ると思っていましたよ」
そう言って、中国民族の様な服を着た女性が立っていた。
紅魔館の門番、
紅美鈴である。
霊夢「美鈴……今日は居眠りしてないようね」
美鈴「ば、バカにしないでください!!」
零児「その反応……いつもは居眠りしているのか?」
霊夢「それも、勤務時間中に」
美鈴「と、兎に角! ここを通りたければ、私を倒す事です!!」
そう言って構えをとる美鈴に、夜桜が籠手を着けた拳をぶつけ合わせながら前に出る。
夜桜「ではこの勝負、ワシが引き受けます!」
美鈴「では、参ります!」
夜桜と美鈴……二人の拳が、遂に交わろうとしていた。
次回へ続く...