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幻想伝説譚 第2話:思わぬ再会
作者:亀鳥虎龍   2015/12/19(土) 21:55公開   ID:sBW/DnTGILc
 魔法の森の入口辺りにある雑貨店『香霖堂』。

その店主である『森近霖之助』は、暇を持て余していた。

すると、店内に三人の男女が入って来た。

霖之助「いらっしゃい」

映姫「失礼します」

霖之助「おや、閻魔様が来るなんて、珍しいですね? もしかして、そこに居る小町の監視ですか?」

映姫「分かるんですか?」

霖之助「小町が一人で尋ねるのは、8割がサボる為の時間つぶしですから」

映姫「まあ、監視は事実です。 もう一つは、買い物できました」

すると霖之助は、映姫の背後で店内を見渡すバージルを見る。

霖之助「彼は?」

映姫「外の世界の亡者なのですが、霊夢さんの元で例の異変を解決して貰おうと思いまして」

霖之助「成程」

映姫「バージルさん、こちらはこの店の主の森近霖之助さんです」

バージル「バージルだ」

霖之助「森近霖之助です。 何をお探しなんですか?」

それを聞くと、バージルは迷いなく返答した。

バージル「刀だ。 何でもいい、この店にある刀はあるか?」









―思わぬ再会―








 刀を買いに来たと聞き、霖之助は顎に手を当てる。

霖之助「刀ですか……ありますけど、数はそんなに多くはないですよ?」

バージル「構わん。 ここにある分の刀、全部見せて欲しい」

霖之助「では、奥にありますので待ってて下さい」

そう言うと霖之助は、すぐさま店の奥へと向かった。

すると、何者かが扉を開けたのである。

魔理紗「香霖、いるか?」

普通の魔法使い、霧雨魔理紗が風呂敷を肩に乗せていた。

小町「霖之助なら、店の奥で品物を取りに行ってるよ」

魔理紗「そうなのか?」

ダンテ「残念だったな、魔理紗。 それとも、本人が来るまで待つか?」

小町「え!?」

映姫「なッ!?」

彼女の後に入って来たダンテに、小町と映姫は驚いてしまった。

ダンテ「ん? どうした――」

思わずダンテは二人に声を掛けようとするが、

バージル「!?」

ダンテ「!?」

そこで、死んだはずの兄と再会したのだった。

バージル「貴様……まさかダンテか!?」

ダンテ「バージル!?」










 思わぬ再会をした二人に、魔理紗は疑問をぶつけた。

魔理紗「なあ、ダンテ……知り合いなのか?」

ダンテ「俺の兄貴さ、双子のな」

バージル「……バージルだ。 一応、元の世界では死んでる身だがな」

魔理紗「成程な、道理でダンテが年上に見えたワケだぜ」

二人の関係性に納得する魔理紗だが、映姫と小町も驚きを隠せなかった。

小町「(袂を分かった弟がいたとは聞いてましたけど、双子とは思いませんでした)」

映姫「(ええ。 ですが双子なら、顔が似ててもおかしくありません)」

そんな中、バージルは再会した弟の姿を見る。

その姿は、兄である自分以上に年季を重ねていた。

バージル「随分と雰囲気が変わったな。 昔は口数が多かったお前が、ここまで冷静沈着になるとはな」

ダンテ「俺だって、心身ともに成長するんだ。 そうなってもおかしくないだろ?」

バージル「それもそうか」

すると、霖之助が戻って来た。

霖之助「すみません、お待たせしました」

そう言うと、彼は細長い長方形の箱を横一列に並べた。

霖之助「この中に刀が入ってますので、開けてみてください」

それを聞いたバージルは、すぐさま箱の中を開けた。

中身はかなりの値打ちがする業物ばかり。

一度鞘を抜き、納められていた刃を眺めるバージル。

一本ずつ刀を確認する彼であるが、その時であった。

バージル「ん?」

左から一番端の刀を手に取ると、その刀からは凄まじい魔力を感じ取った。

バージル「コイツは……」

すると、刀を見た映姫が驚きを隠せなかった。

映姫「そ、その刀は!?」

ダンテ「何だ、知ってんのか?」

映姫「その刀は『魔天狼マテンロウ』という名前で、伝説の魔剣士『スパーダ』が『暗黒王』と呼ばれる妖怪を封じた時に使われた刀です!」

バージル「スパーダの!?」

ダンテ「マジか!?」

それを聞いたダンテとバージルは、驚きを隠せなかった。

映姫「はい! ですが戦いが終わった後、スパーダは刀に封印術をかけ、先代の博麗の巫女に託したのです!」

小町「そんな凄い刀が、どうしてここに?」

映姫「そうですよ霖之助さん! その刀を何処で!? その刀は本来、博麗神社に保管されていた物なんです!!」

霖之助「じ、実はですね……」

思わず霖之助は、魔天狼を買い取った時の出来事を話しであった。









 それは数日前の事である。

霊夢「霖之助さん、今いる?」

霖之助「ん? どうしたんだい?」

霊夢が一本の刀を彼に差し出したのである。

霖之助「この刀は?」

霊夢「神社裏の押し入れを整理してたら見つかってね。 コレ、買い取ってくれる?」

受け取った霖之助は、刀を引き抜こうとした。

霖之助「ん?」

しかし、刀はピクリともしなかった。

霖之助「この刀、何かの封印術が掛けられてるね。 けど、名前だけなら僕でも分かるよ」

霊夢「何て名前なの?」

霖之助「“魔天狼”という名だ。 所で良いのかい? 押し入れにあったという事は、先代が大切にしてたって事だよね?」

その問いに対し、霊夢は面倒臭いという顔をした。

霊夢「知らないわよ。 私の知った事じゃないわ」

こうして霖之助は、刀を買い取ったのだった。









 現在の香霖堂にて、

映姫「何を考えているんですか! あの巫女はァァァァァ!!」

霖之助の話しを聞いた映姫は、怒りを爆発させたのだった。

そんな中でバージルは、鞘に納められた魔天狼を眺めると、

バージル「気に入った、コイツを貰う」

ジャキンと、刀を抜いたのである。

その刃は美しい妖しい輝きを魅せ、見た者を虜に出来るものであった。

しかし、映姫は驚きを隠せなかった。

映姫「そんな!? その刀はスパーダ様意外の者には絶対に解く事が出来ないはず!?」

ダンテ「封印が解けかかってたんじゃねぇのか?」

魔理紗「ダンテ、それは無理があり過ぎだろ?」

映姫「(魔理紗さんの言うとおりです。 あの刀の封印が、簡単に解けられる筈がない。 バージルさん、アナタは一体!?)」

こうしてバージルは、新たな愛刀を手に入れたのだった。

ダンテ「んじゃ、博麗神社に向かうか。 魔理紗、案内を頼む」

魔理紗「おうよ!」

香霖堂を後にし、ダンテ達は博麗神社へと向かった。









 神社へと歩み寄ったダンテ達。

ダンテ「ここが博麗神社か」

バージル「………」

魔理紗「見ての通り、ボロ神社だろ?」

そんな中、ダンテは懐から財布を取り出した。

魔理紗「――って、何してんだ?」

ダンテ「何って、賽銭だよ。 神社じゃ、通行礼儀だろ?」

そう言うと、賽銭に小銭を入れた。

チャリンと賽銭箱に入ったが、神社は無反応であった。

魔理紗「あれ、おかしいな? 何時もの霊夢なら、賽銭の音で反応するはずなんだけどな」

小町「留守じゃないかい?」

首を傾げる魔理紗と小町であったが、バージルが空を見上げていた。

バージル「幻想郷の空は、赤い霧に包まれる事があるのか?」

魔理紗「へ?」

全員が顔を上げると、赤い霧に染まっていた。

魔理紗「これは、紅魔館の異変!? 霊夢の奴、レミリアの元へ行ったんだな!!」

映姫「どうやら、私が出来るのはここまでですね。 ではお二人とも、ここで失礼します。 行きますよ、小町」

小町「は、はいな!」

そう言うと、映姫と小町は地獄へと戻ったのだった。

魔理紗「こうしちゃいられねぇ! ダンテ、バージル! 私は先に行くぜ!!」

そう言うと魔理紗は、箒に跨って空を飛んだのだった。

ダンテ「……それじゃ、行くか」

バージル「……フン」

そして二人も、紅魔館へと向かったのだった。









 その頃、霊夢達はというと、

霊夢「着いたわ」

零児「ここが紅魔館か……」

小牟「随分と紅いのぉ〜」

承太郎「やれやれだぜ」

十六夜「ヤハハハハ! 良い趣味してんじゃねぇか!!」

プルルート「うわぁ〜、真っ赤だぁ〜」

雪泉「目立ち過ぎですね」

紅魔館を目にした承太郎達は、第一印象を口に出した。

すると、その時であった。

??「来ると思っていましたよ」

そう言って、中国民族の様な服を着た女性が立っていた。

紅魔館の門番、ホン美鈴メイリンである。

霊夢「美鈴……今日は居眠りしてないようね」

美鈴「ば、バカにしないでください!!」

零児「その反応……いつもは居眠りしているのか?」

霊夢「それも、勤務時間中に」

美鈴「と、兎に角! ここを通りたければ、私を倒す事です!!」

そう言って構えをとる美鈴に、夜桜が籠手を着けた拳をぶつけ合わせながら前に出る。

夜桜「ではこの勝負、ワシが引き受けます!」

美鈴「では、参ります!」

夜桜と美鈴……二人の拳が、遂に交わろうとしていた。




次回へ続く...

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■作者からのメッセージ
 イメージOP主題歌:世界は一つの世界(『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』より)

 イメージED主題歌:月灯りのカーテンコール(『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』より)
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