紅魔館の最上階。
主である『レミリア・スカーレット』は、とても不敵な笑みを見せる。
レミリア「やはり、アナタが来るか……霊夢」
椅子に堂々と座るその姿は、まさに玉座に腰を下ろす王の姿であった。
レミリア「だが、私の放った刺客達に勝てるかしら?」
―咲夜の世界―
敷地内を警戒しながら歩くが、人の気配は全く無かった。
四季「あれ、誰もいないじゃん? 何で?」
零児「分からん……だが、油断はするなよ」
遂に扉の前まで辿りつくが、何者かの気配は見当たらなかった。
叢「本当に、誰もいなかったな」
十六夜「んじゃ、このまま開けるぜ!」
ギィィと、扉をゆっくりと開けるが、
雪泉「いない……ですね?」
承太郎「………」
どうやらホールに入ったようで、警戒しながら室内を進む。
小牟「やっぱり、誰も居らんの?」
しかし、その時であった。
バタァンと突然、扉が閉まったのである。
全員「!?」
零児達は驚きながら扉の方を向くが、後ろから声をかけられたのである。
??「ようこそ、紅魔館へ」
振り返ると、そこには銀髪のメイドが立っていた。
咲夜「私は紅魔館のメイド長をしている、十六夜咲夜と申します」
そう言うと、咲夜は丁寧に頭を下げる。
零児「俺達は霊夢と供に、この館の異変を解決しに来た。 悪いが、退いてはくれんか?」
咲夜「主の敵にあたる者達を通せと? 答えは「NO」よ」
零児「だろうな」
すると、承太郎が前に出た。
承太郎「皆は先に行きな。 ここは俺がやる」
小牟「何を言ってるんじゃ! ワシ等も戦うぞ!」
承太郎「オメェ等は気付かなかったのか? 何時の間に扉が閉まったり、奴が目の前に現れたのかを」
小牟「うっ……」
承太郎の意見に一理あったが、彼一人に戦わせるわけにはいかなかった。
すると、ここで四季が前に出る。
四季「んじゃ、アタシが一緒に残ってあげるよ」
承太郎「何?」
四季「二人の方が、勝てる確率が高いっしょ?」
承太郎「やれやれ……そうだな」
零児「じゃあ、任せたぞ!」
そう言い残し、零児達は先へと進んだのだった。
先へ向かった零児達を追う気配を見せず、咲夜は承太郎と四季だけに目を向けた。
承太郎「追わねぇんだな?」
咲夜「全員で戦ったら面白くないでしょ? それに、お嬢様もこれくらいの余興は嫌いじゃないから」
するとその時であった。
無数のナイフが、二人に襲いかかって来たのだ。
だが、その時であった。
承太郎「
星の白金!」
逞しい肉体を持った武等闘士の虚像が、承太郎の体から出現し、
スタープラチナ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
凄まじい速さの連打で、全てのナイフを弾き落とした。
コレを見た四季も咲夜も驚いた。
四季「ちょっ!?
JOJO、何なのその守護霊みたいな奴!?」
咲夜「バカな!? それは一体!?」
承太郎「何ぃ!? まさか見えてるのか!?」
しかし、承太郎が二人の反応に驚きを隠せなかった。
四季「そ、それって何なの!?」
承太郎「……コイツは『
幽波紋』って言ってな、生命エネルギーが生み出すパワーの象徴だそうだ。 だが、本来は“同じスタンド使いしか見えない”ってのが本来のルールなんだが」
四季「もしかして……幻想郷に入った影響?」
承太郎「まあ、そうなるかもな」
四季「んじゃ、アタシもいくよ! 忍・転・身!!」
すると、巻物を開いた四季は、学生服からマント付きの露出度の高い忍服へと変わった。
四季「どう、
JOJO。 これが忍の能力だよ♪」
承太郎「やれやれ、騒がしい女だぜ」
普通の男性なら下心が出てしまうが、承太郎はため息交じりで呆れてしまう。
そんな中、咲夜は不敵な笑みを見せた。
咲夜「良いわね。 コレくらいの面白さが無ければ、パーティーは盛り上がらないわ」
手にナイフを持ち、彼女は二人を視界に捉えた。
咲夜「改めて十六夜咲夜、楽しませて貰うわよ?」
そんな中、承太郎はスタンドを発現させ、四季は両端に刃が付いた身の丈以上の大鎌を握る。
承太郎「空条承太郎だ」
四季「月閃女学館の四季、鎮魂の夢に沈むっきゃないね!」
そして承太郎と四季も、咲夜の姿を視界に捉えたのだった。
二人が構えると、咲夜もナイフを構える。
しかし、その時であった。
二人の頭上から、無数のナイフが降って来たのだ。
四季「ウソッ!?」
承太郎「避けるぞ!」
二人は咄嗟に後ろに跳び、ナイフの雨から脱出した。
ナイフはそのまま、地面へと突き刺さった。
四季「ど、どうして!? どうしてナイフが頭上に降って来たの!?」
驚きを隠せない四季であったが、承太郎はナイフの一本を手に取ると、
スタープラチナ「オラァ!」
『
星の白金』が咲夜へと投げ飛ばした。
だがナイフは彼女には刺さらず、そのまま壁に刺さった。
それどころか、咲夜は既に承太郎の背後に回っていた。
スタープラチナ「オラァ!」
『
星の白金』が拳を放つが、咲夜はそれをすぐさま避けた。
承太郎「間違いねぇ……テメェ、時を止めたな?」
咲夜「あら、あの短時間で気付くなんて流石ね。 正確には“時を操る”のが私の能力よ。 まあ、時を止めるのもその一つよ」
自身の能力を見抜いた承太郎に、咲夜は思わず感心を見せる。
咲夜「何時から私の能力に?」
承太郎「ナイフが頭上から降って来る事自体が怪しいだろ?」
咲夜「フフフ……そうね」
四季「そんな……時を止められたら、対処のしようがないじゃん!」
咲夜「そういう事、だから私には勝てない!」
そう言うと、咲夜は能力を発動させた。
咲夜「時よ止まれ!」
この瞬間、全ての時が止まった。
全ての時が止まり、咲夜だけがその中を歩きだす。
彼女の視界の先に居るのは、承太郎だった。
咲夜「空条承太郎、アナタは霊夢の次に危険な存在。 ここで、始末させて貰うわ」
ナイフを構え、そのまま承太郎を刺そうとする。
しかし、その時であった。
ピクッと、承太郎の手が動いたのである。
咲夜「なっ!?」
コレを見た咲夜は、思わず後ろへと退いた。
咲夜「動いた!? 今、承太郎の手が動いた!? どういうこと!?」
承太郎「…………」
しかし、承太郎は時が止まって動かない状態である。
咲夜「まさか、偶然? あり得ないわ……私だけの世界に……止まった時の世界に入れるワケがないわ!?」
疑心暗鬼になり、冷や汗が出てしまった咲夜。
咲夜「くっ! 時間切れね」
しかし時間切れとなり、時が動き始めた。
時が動き始めた瞬間、四季は違和感を覚えた。
四季「あれ? 何も起きてない……どして?」
彼女が首を傾げるが、咲夜に叫んだ。
咲夜「――たの、承太郎?」
承太郎「なに?」
咲夜「何をしたのかと聞いてるの! 空条承太郎!!」
承太郎「さあな。 何の事か分からねぇな」
表情を露わにしない承太郎に、咲夜は更に警戒を強める。
咲夜「良いわ……さっきのが偶然かどうか、この目で見極める! 時よ止まれェ!!」
そして咲夜は、再び時を止めたのだった。
止まった時の中で、咲夜は承太郎に接近する。
すると、承太郎の手は動き出した。
咲夜「フフフフ……フハハハハハ!」
だが咲夜は、思わず笑ってしまった。
そして自身の手に付いていた『あるモノ』を承太郎の手に近付けると、ガチッと承太郎の袖についていた物にくっ付いた。
咲夜「まさか私が、こんな子供騙しに引っ掛かるなんてね」
それはなんと、小さな磁石であった。
咲夜「さっきの攻撃の時に、私の手に磁石を付けたのね……。 そして私が近くに行けばいくほど、磁力で磁石同士が引き合う。 その引力で、私の前で手を動かしたように見える。 全く、本当に油断も隙もない男だわ」
ホルダーから抜いたナイフを投げると、
咲夜「でも、それはアナタの寿命がほんの少しだけ伸びたにすぎない。 これで、サヨナラよ!!」
そのままナイフは、承太郎の眼前でピタリと止まった。
咲夜「今度こそ終わりよ、空条承太郎」
背中を向け、四季の方へと向かおうとする。
だが、その時であった。
咲夜「!?」
突如として、咲夜の体に異変が起きたのだ。
咲夜「(ど……どういう事? か……体の動きが……に……鈍いわ……)」
ギギギと、体の動きが鈍くなったのだ。
奇妙な出来事を体験した咲夜であったが、この違和感の正体にすぐに気付いた。
咲夜「いや……これは……動きが……鈍くなったんじゃない! 動けない! そんな……体が全く動かない!?」
まるで金縛りのように、体が動かなくなったのである。
しかし周囲のモノは、未だに時が止まった状態。
つまり、誰かが時を止めた事になる。
その正体は、彼女の背後に立っていた。
??「咲夜!」
咲夜「!?」
??「5秒経過だぜ。 動ける時間はそこまでの様だな」
咲夜「(ま、まさかぁ!?)」
承太郎「俺が時を止めた……4秒の時点でな……そして脱出できた。 やれやれだぜ……」
それは何と、さっきまで動いていなかった承太郎であった。
承太郎「これから! オメェをやるのに、1秒も掛からねぇぜ!!」
咲夜「そ、そんなバカなぁ〜!?」
これが『
星の白金』の真の能力。
それは凄まじいスピードと圧倒的パワー、驚異的な精密動作に加え、光を越える事で発動できる“時間停止”である。
時を止め返され、動きを封じられた咲夜。
咲夜「(と、時を止めたですって!? まさか磁石は……動けるフリをする為ではなく、動けないフリをして私を誘う為のフェイク!?)」
承太郎「どんな気分だ? 動きたくても動けねぇって気分はよ?」
スタープラチナ「オラァ!」
『
星の白金』が左に回って、咲夜の顔を思いっきり殴りつける。
承太郎「時は動きだす」
時が動き始めると同時に、咲夜は大きく吹っ飛んでしまう。
咲夜「うぐぅ!」
四季「え!? どうなってんの?!」
そのまま倒れた咲夜であったが、既に承太郎が待ちかまえていた。
咲夜「くっ!」
承太郎「このままオメェをブチのめすのは簡単な事だ。 だが女のオメェを嬲って始末するってやり方は、俺自身の後味のねぇもんを残す。 今から立ち上がるのに何秒かかる?」
咲夜「え?」
承太郎「立ちあがった瞬間、『
星の白金』をテメェにブチかます! 掛かって来な!!」
咲夜「なっ!?」
承太郎「スペルカード勝負のルール風に言うなら、「来な! どっちが先に、スペルを宣言できるか勝負しようぜ!!」ってヤツだぜ」
その言葉に咲夜は、この上ない屈辱を味わった。
咲夜「(くっ……味な真似を! だが承太郎、アナタは最大の思い違いを犯した。 “後味の無いものを残す”など、私には全く存在しない! あるのは、たった一つだけ! “主の為に仕え、主の為に尽くす”……それだけよ、それだけが私の存在意義だ!)」
徐々に立ち上がっていく咲夜であったが、
咲夜「(それ以外の……それ以外の事など……)」
まさにその時であった。
咲夜「どうでもいいのよォォォォ!!」
予めナイフで切った掌の傷口から出血を、承太郎の顔へと飛ばした。
承太郎「ぐっ!」
これにより承太郎は、視界を封じられてしまう。
咲夜「どう? この血の目潰しは!! この勝負、貰ったァァァ!!」
そのままナイフを振るおうとする咲夜であるが、
四季「アタシを忘れちゃ困るよ!」
割り込んできた四季が、ナイフを鎌で弾いたのだ。
咲夜「ぐっ! しまっ――」
承太郎「オラァ!」
そして承太郎が、拳による一撃を咲夜へと放った。
ドガァと拳は咲夜の顔面に命中し、
承太郎「ブチかますぜぇ!」
スタープラチナ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ……」
『
星の白金』の拳の連打が、超スピードで放たれたのだった。
スタープラチナ「オラオラオラオラオラオラオラオラ……オラァ!」
咲夜「キャァァァァァ!」
ドガァと、トドメと一撃と供に咲夜は壁に吹っ飛んだのだった。
見事に壁にめり込んだ咲夜。
四季「時を操る能力か……ある意味で、怖い相手だったなぁ〜」
承太郎「そうだな……。 それと四季」
四季「ん?」
承太郎「ありがとうよ、おかげで助かったぜ」
四季「へへぇ〜、まあね♪」
承太郎「さて、行くか」
四季「うん」
こうして二人は、零児達の元へと向かった。
十六夜咲夜――
再起不能!