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幻想伝説譚 第6話:魔剣スパーダ
作者:亀鳥虎龍   2015/12/25(金) 21:19公開   ID:M0V529Vebs6
 前回のあらすじ。

紅魔館の最上階にて、レミリアと激突した霊夢達。

しかし彼女は、新たな姿『スカーレットクイーン』へと変貌する。

圧倒的な強さを前に、魔理紗が恐怖で動けなくなってしまった。

放たれた槍が襲ってくるが、間一髪でダンテが救ってくれた。

しかし代償で、ダンテが魔槍に胸を刺されてしまった。









―魔剣スパーダ―








 目の前の状況に整理がつかない霊夢達。

仲間の一人が、目の前で殺されてしまった。

スカーレット「流石に、やり過ぎちゃったかしら?」

楽しそうに槍を生成したスカーレット。

そんな中、地面からヘル=プライドやヘル=ラストなどの低級悪魔が出現した。

零児「セブンヘルズだと!? まさか、紅魔館に集まる人影というのは!?」

スカーレット「そう、この子達の事よ。 さあ、お行きなさい」

ヘル=プライド「ウオォォォォ!」

ヘル=ラスト「シャァァァ!」

悪魔達が一斉に襲いかかるが、バージルが魔天狼を鞘から引き抜く。

バージル「こんな奴らで、俺が倒せるとでも?」

凄まじく、そして素早い剣戟が、悪魔達を細切れにする。









 零児と千鶴以外は驚きを隠せなかった。

数は約50体以上もいる悪魔達を、一本の日本刀で消滅させたのだ。

驚かない方がおかしい。

チャキンと、刃を鞘に納めたバージル。

そんな彼を見て、スカーレットはクスリと笑う。

スカーレト「素晴らしいわね。 アナタ、私の部下にならない?」

バージル「何?」

スカーレット「アナタと咲夜が組めば、最強のコンビになるんだけど?」

バージル「断る。 俺はそんなモノに興味はない」

スカーレット「あら残念」

肩をくすめ、残念という顔をするスカーレット。

すると、スキマから一人の女性が現れた。

金髪で日傘を手に持ち、上品な雰囲気を漂わせる。

彼女が零児達を幻想郷に招いた張本人『八雲紫』である。

紫「まさか、こんな事が」

スカーレット「まさか、アナタまで来るとはね」

紫「レミリア・スカーレット……異変の影響で、ここまで変貌するとは」

スカーレット「だから? 今度はアナタが相手をするの?」

余裕の笑みを見せるスカーレットであったが、まさにその時であった。

バージル「ハァ……何時まで寝てるつもりだ? いい加減に起きろ、ダンテ」

バージルが呆れた口調でそう言うと、槍で胸を刺されたダンテが、

ダンテ「いっつ〜……流石にコイツはキツイな」

そう言って、ゆっくりと槍を引き抜いたのだった。









 この光景を見た紫やスカーレット、そして霊夢達は驚きを隠せなかった。

心臓を刺されたはずの人間が、当たり前のように生きているのだ。

バージル「それで? 動けるのか?」

ダンテ「当たり前だろ」

リベリオンを手に取り、バージルの隣に立つ。

ダンテ「遊ぼうぜ、バージル。 ガキの頃みたいにな」

バージル「お前の様に、はしゃぐ趣味はないがな」

それを見たスカーレットは、鋭く二人を睨む。

スカーレット「良いわ、まずはアナタ達から――殺す!」

凄まじい魔力を解放するが、二人は不敵な笑みを見せる。

ダンテ「良いぜ、こっちもマジでやんなきゃな」

バージル「見せてやる、悪魔の力というものを」

その瞬間、二人の体を魔力の渦が包んだ。

渦が消えると同時に、スカーレットは目の前の光景に驚く。

バージル「たまには、お前の遊びに付き合ってやる。 今回だけだぞ」

バージルは左腕が鞘と一体化した青い魔人に

ダンテ「やるなら、マジな遊びにしようか」

ダンテは背に翼が生えた赤黒い魔人へと姿を変えた。

スカーレット「アナタ達……ホントに……何者なの!?」

その問いに双子の魔人は答えた。

ダンテ「人間だよ……半分はな」

バージル「もう半分は、悪魔だ」










 魔人の姿と化したダンテとバージル。

二人は地を駆け、スカーレットに接近した。

バージルが魔天狼による居合い斬りを放つが、スカーレットは咄嗟に飛び上がった。

しかし上空には、既にダンテが待ちかまえていた。

ダンテ「よう、待ってたぜ」

スカーレット「し、しまっ――」

ダンテ「兜割りヘルムブレイカー!」

豪快に振り下ろした一撃を受け、スカーレットはそのまま叩き落とされた。

ドガァと、地面へと落とされたスカーレット。

スカーレット「くそっ!」

ダンテ「どうした? もう終わりじゃないだろ?」

バージル「早く立て、本気を出していないんだろ?」

屈辱を得た気分を味わったスカーレットは、手の槍を更に巨大化させた。

スカーレット「なら、これはどうだ! 魔槍『スピア・ザ・ジャベリン』!!」

真っ直ぐに飛んだ槍であったが、ダンテはその場で構えを取る。

ダンテ「スティンガー!」

渾身の一撃による突きで、真っ向から迎え撃つ。

ガキィンとぶつかった瞬間、パキィンと魔槍が砕けたのである。









 最強の技を破られ、スカーレットは背筋を凍らせる。

スカーレット「そんな……」

ダンテ「諦めろ」

バージル「貴様の負けだ、大人しくこの霧を消せ」

しかしスカーレットは、鋭い眼光で睨み、

スカーレット「ふざけるなぁぁぁ!!」

魔槍を手に、真っ向から飛んでくるが、

バージル「……次元斬」

バージルの素早い居合いを喰らい、全身を斬り刻まれてしまった。

空間に干渉し、全てを切り裂く剣技。

抜刀の瞬間ですら、目にする事はない。

零児「……相変わらず、見事な抜刀術だな」

魔理紗「あ、あれって斬ったのか!? 刀を抜く瞬間、全然見えなかったんだけど!?」

霊夢「剣を主体に戦う奴等が、泣いて負ける姿が浮かぶわ」

圧倒的強さでスカーレットを再起不能にし、ダンテとバージルは元の姿に戻る。

その強さの前に、霊夢も魔理紗も引きつるしかなかった。









 ダンテとバージルの連携により、敗北に陥ったスカーレットであったが、

スカーレット「!?」

まさにその時であった。

スカーレット「アアァァァァアア!!」

全員「!?」

スカーレットの体が、徐々に変異し始めたのだ。

目は鋭く赤い眼光を放ち、耳は鋭くなり、全身が禍々しくなっていく。

その姿は、完全な怪物へと変わったのである。

スカーレット「ウオォォォォ!」

完全な怪物と化したスカーレットに、全員が驚きを隠せなかった。

パチェリー「嘘でしょ!? レミィが、怪物に!?」

親友の変貌ぶりに、パチェリーは恐怖を覚えてしまった。

紫「どうやら、レミリアは完全な怪物になったようね」

ザップ「どうすりゃいいんだ!?」

ゴクリと息を飲む紫は、バージルの持つ魔天狼に目を向ける。

紫「その魔天狼でも十分に対抗できるけど、それだけでは勝てる保証はないわ」

バージル「つまり、絶体絶命という奴か?」

呆れたバージルであるが、ダンテが一枚のスペルカードを手に取る。

ダンテ「いや、勝算はまだあるぜ」

紫「え?」

ダンテ「バージル、もう少し付き合って貰うぞ」

バージル「ふん、策はあるんだろうな?」

ダンテ「ああ」

そしてダンテは、スペルを発動させた。

ダンテ「いくぜ! 魔剣『スパーダ』!!」

カードが光ると同時に、一本の剣がダンテの手に握られた。

赤い宝石が埋め込まれ、肉塊のような姿の半月刀。

その剣を見たバージルは、驚愕の顔を見せた。

バージル「ダンテ、まさかその剣は!?」

これこそ伝説の魔剣士が、自身の名を与えた最強の武器『魔剣スパーダ』である。









 スパーダを肩に置き、余裕の表情を見せるダンテ。

バージル「まさか、あの『フォースエッジ』を完成させるとはな」

ダンテ「まあな。 後で使うか?」

バージル「ふん、気が向いたらな」

そう言って二人は、互いに剣を構える。

バージル「円陣幻影剣」

魔力で生成した『幻影剣』を自身の周囲に発動させるバージル。

ダンテ「オーバードライブ!」

ダンテはスパーダを振るうと、魔力の衝撃波を飛ばした。

スカーレットはそれを防ごうとするが、

バージル「エアトリック」

バージルが後ろに接近し、魔天狼の一閃で防御を崩されてしまう。

それにより、スカーレットは魔力の衝撃波を喰らい、

バージル「烈風幻影剣」

更にバージルから、自身を包囲するように出現した幻影剣を喰らってしまう。

ダンテ「ミリオンスタップ!」

さらにダンテが突進し、凄まじい連続突きが炸裂し、

ダンテ「ハイタイム!」

スカーレットを吹き飛ばすと、エボニーをバージルに投げ渡す。

受け取ったバージルも、何時でも撃てる体勢になる。

ダンテ「コイツでフィナーレだ、外すなよ?」

バージル「この俺が外すとでも?」

スカーレット「ウオォォォォ!」

突進してくるスカーレットに、二人は背中合わせで銃口を向け、

二人「JACK POT!」

そして、同時に引金を引いた。

赤と青の螺旋を描きながら、二つの弾丸はスカーレットを撃ち抜いた。

スカーレット「グギャァァァァァ!」

これによりスカーレットは倒れ、元のレミリアの姿へと戻ったのだった。









 レミリアが倒されたと同時に、バージルはエボニーをダンテに返した。

赤い霧が晴れ、空も元の青空に変わった。

十六夜「おっ! 終わったみてぇだな」

雪泉「そのようですね」

四季「なんか、すっごい爆発音が聞こえたけど!?」

承太郎「やれやれ、どうやら片付いたようだな」

そう言って十六夜達も駆けつけた。

一緒に駆けつけたのか、クラウスの背中にはフランが乗せられていた。

そんな中、紫は驚愕の顔になっていた。

ダンテ「ん、どうした?」

紫「どうして……」

ダンテ「ん?」

紫「どうしてアナタが、その剣を持ってるの!?」

驚愕の理由は、ダンテの持ってるスパーダであった。

霊夢「紫、何か知ってるの?」

紫「その剣は、伝説の魔剣士『スパーダ』が自身の名を与えた伝説の剣。 その名も『魔剣スパーダ』よ!」

零児「スパーダ伝説は、幻想郷でも有名なのか?」

紫「ええ。 嘗てスパーダは、幻想郷を『暗黒王』と呼ばれる邪悪なる者を倒した英雄よ。 その伝説も、お伽話になったけど」

それを聞いた零児と小牟、そして千鶴はダンテとバージルを見る。

零児「だそうだぞ、二人とも」

小牟「コイツは正直に話した方が得じゃぞ?」

千鶴「そうね。 もしかすると、アナタ達が来たのは運命かもしれないわね」

それを聞いた二人は、一度だけ黙るが、

ダンテ「正直に話すしかないか」

バージル「黙っても、いずれは知られるしな」

真実を告げるしかなかった。

紫「何か知ってるの!?」

ダンテ「知ってるの何も……」

バージル「魔剣士スパーダは……」

ダンテ&バージル「俺達兄弟の親父だ」

衝撃の事実を告げられ、

霊夢「えぇぇぇぇ!?」

魔理紗「ダ、ダンテとバージルが!?」

紫「うそっ!?」

霊夢と魔理紗、そして紫が驚きを隠せなかった。









 衝撃の事実を告げられた霊夢達。

ダンテ「それで? 何か質問はあるか?」

ダンテに問われ、思わず霊夢は口を開いた。

霊夢「じゃあ、どうして黙ってたの?」

ダンテ「いきなり「スパーダの息子」なんて言われて、信じる奴はいるか?」

霊夢「え、それは……」

ダンテ「信じないだろ? そう言う事だ」

魔理紗「じゃあ、あの姿は!?」

バージル「父親が悪魔で、母親は人間だからだ。 所謂、半人半魔。 だからあの姿になれた」

紫「じゃあ、アナタ達はどうやって幻想郷に!?」

ダンテ「……あ〜……俺の場合はアレだ。 魔理紗の召喚魔法に引っ掛かったらしくてな。 それが原因だ」

それを聞いた霊夢と紫は、ジト目で魔理紗を睨む。

霊夢「アンタは……また何かやらかそうとしたの?」

魔理紗「ま、まあ……ダンテとバージルのお陰で助かったから良いじゃねぇか。 アハハハハ……」

バージル「俺はダンテと違って、死んだ身でな。 偶然、魂がこの世界の彼岸に辿りついた」

零児「何!?」

小牟「それじゃ、ぬしは既に死んでおるのか!?」

バージル「……ああ」

二人とは面識のあった『新羅』のメンバーにとっては、この言葉は衝撃的な事であった。

バージル「その話は後にしろ」

零児「………分かった。 話す気になったら、その時に話してくれ」

バージル「………感謝する」

こうして、紅魔館の異変を解決したのだった。





紅魔館編――完!

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