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幻想伝説譚 第11話:『月』の賢者vs正体不明
作者:亀鳥虎龍   2016/01/15(金) 01:28公開   ID:EMVWN4iz2mQ
 迷いの竹林にある屋敷『永遠亭』。

ここの主は、この屋敷を診療所にして、患者の治療に携わっている。

十六夜「ここが永遠亭か」

霊夢「準備はいい?」

十六夜「おうよ!」

ネコミミヘッドホンを頭に着け、十六夜は気合い十分であった。

霊夢「まさか、そのまま行くつもり?」







―『月』の賢者vs正体不明コード・アウノウン







 中に入ると、二人は廊下をスタスタ歩いていく。

十六夜「何だよ、罠とかないのかよ? 凄ぇワクワクしたのに」

霊夢「何で罠を期待してんのよ?」

十六夜「こういう武家屋敷には、必ず罠が設置されてるのはお約束だろ?」

霊夢「いや、知らないから」

十六夜のトンデモ発言に、霊夢はツッコミを入れるしかなかった。

廊下を暫く進むと、誰かが立っていた。

??「やはり、アナタが来たようね」

赤と青の左右非対称の服に、赤十字の刺繍が入った青い帽子を被った女性。

三つ編みにされた銀髪が、彼女の色香を漂わせる。

彼女こそ、この異変の首謀者『八意永琳』である。








 永琳の姿を目にした十六夜は、サラッとこう言った。

十六夜「診療所にエロさ満開のナースとは、随分とベタだな。 いや、白衣もかなりのエロさを持つが……」

永琳「あの〜、人の服装を見ながらそう言うのはやめて欲しんだけど?」

十六夜「あ、悪ぃ。 霊夢と違って、スゲェ色気タップリの美女だったから」

霊夢「んだとコラァ!」

怒り任せで拳を放つ霊夢であったが、十六夜はヒョイッとかわした。

十六夜「さて、腋巫女は置いといて」

霊夢「誰が腋巫女――」

十六夜「アンタがこの異変の首謀者か? それとも、その側近か?」

永琳「前者が当たりと言っておくわ」

霊夢「無視すんなぁぁぁ!」

完全にスルーされた霊夢は、怒りが爆発するが、

十六夜「それで、アンタはどんなモノを見せてくれるんだ?」

何かを期待するかのように、先の戦いを楽しむ十六夜であった。








 早く戦いたいと、体が疼き始める。

新しいものを見つけた子供の様な、期待を込めた目。

今の十六夜は、そんな感じであった。

それに対し永琳は、不敵な笑みを見せた。

永琳「フフッ……楽しそうね。 それじゃ、期待に答えるとしましょう」

彼女がパチンと指を鳴らすと、屋敷内の空間が変わったのである。

十六夜「へぇ、こんな事もできるのか?」

永琳「驚かないのね?」

十六夜「この程度で驚くようじゃ、この先を進めねぇしな」

永琳「フフッ、それもそうね。 それじゃ……」

十六夜「いざ、尋常に……」

「「勝負!」」

遂に、激突が始まったのだった。

霊夢「何よこれ? 完璧に私、蚊帳の外じゃない?」

思わず不満を呟く霊夢であったが、

??「あら、別に良いじゃない?」

長い黒髪の少女が、霊夢の隣に現れた。

霊夢「輝夜じゃない、どうしたの?」

『永遠のお姫様』、蓬莱山輝夜である。

輝夜「面白そうな事をやってるから、アナタと見学よ」

霊夢「アンタね……」








 永琳は弾幕を放つが、十六夜はそれを難なく避ける。

そのまま懐へと飛び込むと、

十六夜「ソラァ!」

拳を真っ直ぐに突き出した。

しかし、永琳は咄嗟に後ろへと跳ぶ。

永琳「まさか、あの弾幕を容易く避けるなんて……」

十六夜「観察しとけば簡単だよ」

永琳「アナタの視力ってどうなってんの!?」

思わずツッコミを入れてしまう永琳。

十六夜「来いよ、月の賢者様。 もっと俺を楽しませろよ」

永琳「良いわ、コレはどうかしら?」

そう言って永琳は、スペルを発動させた。

永琳「蘇活『生命遊戯-ライフゲーム-』」

十六夜の周囲に弾を放つが、彼はそれも軽々避けたのである。

永琳「!?」

驚く永琳であったが、十六夜は楽しそうな顔をする。

十六夜「良いぜ良いぜ! 楽しくなってきたぜ!!」

永琳「本当に面白い子ね。 けど、私を倒さないと、この空間からは出られないわよ?」

それを聞いた十六夜は、拳を強く握り締める。

十六夜「それなら、この空間自体をば良いんだろ?」

永琳「え?」

地面に拳を打ちこんだ瞬間、空間に亀裂が入り、

永琳「まさか!?」

バリーンと、元の永遠亭の廊下へと戻ったのだった。








 十六夜の行動に、全員が驚きを隠せなかった。

輝夜「う、嘘でしょ!?」

霊夢「十六夜のあのデタラメさ……まさかアイツ、“天地を砕く恩恵”を持ってるっていうの!?」

天地を砕くというのは、文字通り奇跡に等しい能力なのである。

十六夜の強さは規格外を越えた、まさにデタラメさの持ち主なのだ。

奥歯を噛み締め、目の前の少年を強く睨む永琳。

永琳「良いわ……私のとっておきで、アナタを終わりにする!!」

そしてスペルを発動させ、無数の弾幕を放つ。

永琳「これで終わらせる! 『天網蜘網捕蝶てんもうちもうほちょうほう』!!」

同時に網目状のレーザーが、十六夜へと襲いかかる。

輝夜「マズイ! まさか永琳、あの子のを殺す気!?」

霊夢「なっ!? 十六夜、逃げて!!」

二人が驚く中、十六夜は拳を強く握り締め、

十六夜「しゃらくせぇぇぇ!」

その場で突き出したのである。

次の瞬間、レーザーはパリーンと割れるように消えたのであった。

永琳「ば、バカな!?」

切り札までも打ち破られ、永琳は驚愕するしかなかった。

そんな中で、霊夢と輝夜も驚きを隠せなかった。

輝夜「うそ……スペルを無力化……いえ、したわ!?」

霊夢「あり得ないわ! 天地を砕く恩恵を持っていながら、恩恵を砕く力を持ってるなんて! 過ぎるわ!!」

何故、霊夢は彼の能力を『矛盾』と言ったのか、その意味は簡単な事である。

“天地を砕く”という事は即ち『奇跡』に等しいものだが、十六夜はその『奇跡』をも破壊する力も有していたのだ。

能力というのは本来、正式な『出所』とその『効果』、そして『名称』の三つが存在する。

しかし十六夜の場合、この三拍子の詳細がなのである。

奇跡を起こす力を持っていながら、奇跡を破壊する力を持つ”という矛盾。

それ故に、彼の恩恵ギフトは『正体不明コード・アウノウン』と呼ばれているのである。

永琳「そ、そんな……」

月の頭脳ですら敵わなかった力。

こればかりは、永琳ですら挫折で膝が崩れてしまう。

すると彼女の体から、黒い“靄”のようなものが出現し、その場で消えたのだった。





永遠亭編――完。

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