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幻想伝説譚 第13話:拳の戦い
作者:亀鳥虎龍   2016/01/26(火) 13:53公開   ID:EMVWN4iz2mQ
 無事に亀龍一號を不時着させる事に成功した一行。

しかし、妖怪の山には、後5メートル先であった。

裏嶋「エンジンの修理に、少し時間がかかるわね」

零児「仕方ない、ここからは二手に分かれるか」

ジョセフ「それに関してじゃが、承太郎、霊夢、雪泉、十六夜、プルルート、ダンテ、クラウス、レオナルド君、そして零児君、この9人で地下に行って貰いたい」

小牟「成程、無駄な戦力を減らす為と亀龍一號の護衛じゃな?」

ジョセフ「そういう事じゃ」

すると、スキマから紫が現れた。

紫「それじゃ、私がスキマでお送りしますわ」

そう言われ、彼ら9人はスキマから地下へと向かったのだった。







―拳の戦い―







 紫のスキマによって、地下へと着いた一行。

承太郎「ここが、地下なのか?」

零児「何というか、繁華街になっていないか?」

地下とは思えない程、賑やかで明るい街。

霊夢「ここは『旧都』。 元々は地獄だったんだけど、今は切り離されしまったの」

雪泉「じ、地獄ですか!?」

十六夜「ヤハハハハ! 成程、怨霊達がうようよしてたわけだ」

承太郎「やれやれ、さっさと終わらせるぜ」

レオ「そうですね」

街中を歩く一行であるが、辺りは妖しい気配が無い。

暫くは、先を進む事にしたのだった。










 辺りを警戒しながら、彼等は先へと進む。

そして、一つの屋敷に辿りついた。

地底妖怪『古明地さとり』が住む、その名は『地霊殿』である。

霊夢「準備は良い?」

確認を取った霊夢に、全員がコクリと頷く。

そして、扉を変えた瞬間、

??「レディースアーンドジェントロメェン!」

何故か格闘大会のリングの上に、一人の少女がマイクを片手に叫んでいた。

??「遂にやって来たよ! 旧都主催の素手格闘大会!!」

地底の土蜘蛛『黒谷マヤメ』である。

マヤメ「司会は私、黒谷マヤメだよぉ!」

観客「ワーー!」

マヤメ「ルールは簡単! このマヤメちゃんが指名する選手が、9人の選手達と戦って貰います。 た・だ・し、武器の使用は一切禁止です!」

それを聞いた一同は、すぐに納得できた。

零児「成程、要はその9人を倒せって事か」

マヤメ「今回の選手はぁ〜〜……」

ジャーン!と、照明ライトがクラウスを照らした。

マヤメ「そこの、強面の紳士様でぇ〜す!」

クラウス「ん?」

零児「何!?」

これには、零児達は驚いてしまう。

十六夜か承太郎の二人なら分かる。

しかし、クラウスを指名するとは思わなかったのだ。

使命を受けたクラウスは、そのままリングへと上がる。

マヤメ「早速だけど、武器を仲間に預けてね」

クラウスは懐から、グローブと十字架のようなデザインのナックルガードを取り出し、

クラウス「すまないが、これを頼む」

レオ「は、はい」

そのままレオナルドに預けたのだった。









 袖をまくるクラウス。

そんな彼に、マヤメが叫んだのだった。

マヤメ「それじゃ、最初の選手の登場だよぉ!」

ドォンと、クラウスの倍もある巨体の妖怪が出現した。

マヤメ「最初の選手は、剛腕一撃でねじ伏せる『剛腕のマクロ』ぉぉぉ!」

マクロ「ハッ! 何処の馬の骨かは知らねぇが! 俺の剛腕で再起不能にしてやらぁ!」

この光景に、零児達もゾッとした。

零児「マズイ! 流石にコレはクラウスの方が不利だ!」

雪泉「相手が悪すぎます!」

十六夜「ちっ! やるしかねぇ!」

承太郎「やれやれだぜ」

状況次第では、クラウスを助ける。

全員がそう考えていた。

しかしレオナルドは、呆れながらこう言った。

レオ「いや、再起不能になるは相手の方ですよ」









 ドガガガガ――と、クラウスの凄まじい拳の連打が、

マクロ「ブベベベベベ!?」

マクロの巨体を撃ち抜き、そのままノックアウトしたのである。

クラウス「フン!」

最後に拳で自身の胸をトンと叩くと、

観客「わーーーーーー!」

今までにない歓声が響いた。

雪泉「こ、コレがクラウスさんの強さ!?」

プルルート「すご〜い!」

十六夜「ヤハハハ! 関節がオモシロオカシな方向に曲がってらぁ」

承太郎「骨格の接合部のみを狙った正確さと、合理性の割に偉く真っ直ぐな拳……やりやがるぜ」

紳士としての物腰からは想像つかない、圧倒的な強さ。

ザップが彼を『旦那』と呼ぶ事も、すぐに頷けたのである。

マヤメ「やるねお兄さん。 あれでも、ウチの看板選手なんだよ」

クラウス「む、それは申し訳ない。 しかし、コチラも急いでいたので――」

試合に勝利したクラウスは、すぐにリングから降りようとするが、

観客A「何だよ、もう終わりかよ!?」

観客B「まだ一戦目だろうが!」

観客C「早く始めてくれよ!」

コレを見て、観客達が騒ぎ出したのだ。

マヤメ「うわぁ〜……どうやらアンタ、観客達の心を虜にしたようだよ」

クラウス「しかし……」

マヤメ「戦いなよ。 観客はアンタの実力を見込んだんだ。 いや、寧ろ惚れたようだよ」

こうして、次の試合が始まったのだった。










 第二試合の光景を、一人の女性が眺める。

片手の盃をグイッと飲むと、彼女は楽しそうに笑った。

??「へぇ、中々やるじゃないか」

そう言いながら、クラウスの戦いぶりを眺める。

??「もしかすると、コイツは“当たり”だね」

果たして、彼女の目的は!?









 試合は遂に、最終の9戦目に突入。

コレまでクラウスは、全くの無傷。

観客A「スゲェ! スゲェよ!」

観客B「遂に9戦目に突入だぜ!?」

観客C「俺オケラだけど、此処に居て良かったぁ!」

それどころか、体力の疲労が全く感じられなかった。

プルルート「すっご〜い!」

雪泉「ここまで盛り上がるなんて……」

霊夢「クラウス本人も、結構ノリノリだしね」

女性陣はクラウスの強さに驚くが、

零児「遂に9戦目だ! 頑張れ、クラウス!」

十六夜「この試合で王者に輝けぇ!」

ダンテ「気合い入れていきな!」

承太郎「アンタの拳なら、必ず届くぜ!」

レオナルド意外の男性陣は、思いっきり盛り上がっていた。

霊夢「って、場の空気に呑まれてる!?」

雪泉「れ、零児さんと承太郎さんまで」

レオ「意外ですね」

十六夜とダンテどころか、真面目な零児や冷静な承太郎ですら盛り上がっていた。

霊夢「意外すぎるわ、承太郎と零児さんも盛り上がるなんて……」

零児「あ、いや……スマン。 クラウスの勇姿を見たら、思わず応援したくなってな」

承太郎「ちょいと、大人気なかったか……」

雪泉「いえ……男の方なら、こういうのを好むのは当然ですよ」

普段見せない一面に、雪泉は思わず笑ってしまう。

零児「スマンな。 武器による戦いは慣れているが、拳と拳のぶつかり合いは意外と熱く感じてな」

承太郎「言わば、相撲と同じだ。 特に土俵際の駆け引きは、手に汗握るもんでな」

霊夢「何で相撲で例えるのよ?」

雪泉「承太郎さん、意外と好角家なんですね」

すると、クラウスが9戦目の選手を倒していた。

十六夜「よっしゃぁ! やったぜ、クラウス!!」

ダンテ「コレで優勝は貰ったぜ!」

しかしその時であった。

ドゴォンと、何者かがクラウスの前に現れたのだ。

長い金髪に額に生えた、星マークの付いた赤い角。

その姿に、霊夢は驚きを隠せなかった。

霊夢「アイツは! 星熊勇儀!?」

『語られる怪力乱神』の二つ名の鬼、星熊勇儀である。









 場の空気が静寂になり、勇儀は気にせずに語りだす。

勇儀「観させて貰ったよ、旦那。 震えたよ、今までこんなに熱く感じた事はなかったよ」

ニィと笑い、手に持っていた盃をリングの外へと投げ捨てる。

そして拳を握り、叫んだのだった。

勇儀「アンタになら、本気で戦ってもよさそうだ!」

観客「わーーーー!」

コレを聞いた観客も、歓声の声を上げた。

クラウス「いや、私は……」

マヤメ「「いや、私は」じゃないよ! 受けて、受けなよ旦那! 勇儀が盃を捨てるって事は、アンタの実力を見込んだ証拠なんだ!」

するとその時だった。

勇儀「フン!」

クラウス「!?」

勇儀の放った一撃を、クラウスは咄嗟に防いだのである。

マヤメ「し、試合開始ぃ!」

拳による思い一撃、それをクラウスは拳でぶつける。

勇儀が盃を持って戦う事は、手加減をするという意味を込めている。

盃を捨てるという事は、相手にとって彼女が本気を出した証拠なのである。

果たして、クラウスは彼女に勝てるのだろうか!?









 勇儀の参戦に、霊夢も戸惑いを隠せなかった。

霊夢「マズッたわ。 まさか勇儀が現れるなんて、危険にも程がある」

雪泉「しかし、ほぼ互角の様な気がします」

霊夢「これが何時まで続くかが不安よ」

そんな中、零児と承太郎はクラウスの戦いを観察する。

承太郎「左手を防御一徹に、常に最短距離を撃ち抜く構えの右……素手の人間の戦い方じゃあねぇな」

零児「ああ。 あれはどちらかというと、盾と槍を武装した重装歩兵だ」

戦闘の中、勇儀も内心で思っていた。

勇儀「(本来素手の戦いに置いて、蹴り・掴み・投げ・極みは一切無し。 非合理にも程がある。 それでも打ち破れない、シンプルで手の内が見えてなお、突き崩せぬ鍛錬とは……)」

単純に見えて隙のない、戦い方を見せるクラウスに、

勇儀「いいねぇ、正気を疑うよ。 ますます正面から、かっ喰らいたくなってきた!」

真正面から拳を放ったのだった。

凄まじい拳の連打。

鬼の四天王の一人『力の勇義』の前では、流石のクラウスも手も足も出なかった。











 徐々に勇儀が優勢になりつつある。

コレを見た霊夢は、クラウスの敗北を感じた。

霊夢「ヤバいわ。 ひょっとすると、これは勇儀の勝ちね」

雪泉「そんな……」

誰もがそう思った。

人間が素手で、鬼に敵うワケが無い。

普通はそう思う。

しかし、霊夢達はクラウスを全く知らなかった。

その逆で、レオナルドだけは知っていた。

紳士という一面を持つ彼であるが、実は不器用な部分がる。

彼は集中している時の一発一発を調整できない。

しかし、「こう」と決めたルールで己を縛るの得意なのだ。

勇儀の剛力による猛攻を耐えきったクラウス。

まさにこの瞬間、彼の『構えフォームのスイッチ』が切り替わったのだった!

クラウスはを強く握り締め、それを見た勇儀が驚愕した。

勇儀「(!? なんてこった……こっち本命か!?)」

咄嗟に両腕を交差させ、クラウスが放った左拳の一撃を防いだ。

しかし、その反動で観客席へと吹っ飛んでしまった。

ドガァと、吹き飛ばされた勇儀であったが、

勇儀「ふ……フハハハハ! 参ったよ、降参だ」

十分に満足したような顔でそう言ったのだった。

それを聞いたマヤメは、慌てて叫んだ。

マヤメ「く、クラウス選手の勝利でーーーす!」

観客達「ワーーーーーーー!!」

歓声が響き渡り、霊夢達も驚きを隠せなかった。

霊夢「まさか、あの勇儀に勝つなんて……凄過ぎるわ」

こればかりは、霊夢もそう言うしかなかった。







TO BE CONTINUED...

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