1988年のエジプト・カイロにて……、
DIO『どうだ! この血の目潰しは!!』
自身のスタンド『
世界』を発現させ、凄まじい上段蹴りを放つDIO。
承太郎『オォォォラァァァ!』
視界を封じられながらも、承太郎は『
星の白金』の拳を叩きこむ。
ドガァと、二人の一撃がぶつかり合う。
拳にダメージを負った承太郎であったが、『ザ・ワールド』は蹴りを放った足から亀裂が入った。
DIO『なっ!?』
亀裂は足から全身へと入り、本体であるDIOにもその反動を受ける。
DIO『グガァァァァ! なぁぁぁぁにぃぃぃぃ!?』
己の敗北に、DIOは驚愕するしかなかった。
DIO『バカなッ!? こ……このDIOが……このDIOがァァァ!?』
そして最後、その体は右半身が吹き飛ぶと同時に倒れた。
承太郎『テメェの敗因は、たった一つだぜ……DIO………たった一つのシンプルな答えだ………「テメェは俺を怒らせた」』
激しい死闘の末、承太郎はDIOを葬った。
そのハズだった……。
―衝撃の真実―
承太郎は、驚きを隠せない状況であった。
倒したはずの敵が、目の前に現れた。
それも、更なる姿へと変わって。
アイリスハート「どうやら、JOJOくんの知り合いみたいだけど……痛い目に遭って貰うわよ!」
そう言うと、アイリスハートが真っ向から突進する。
蛇腹剣を振るうが、DIOは軽い動作だけで避けると、
DIO「『ザ・ワールド・オーバーヘブン』!」
自身のスタンドを発現させたのだった。
承太郎「ザ・ワールド……オーバーヘブンだと!?」
初めて聞いた名前に、承太郎は驚愕する。
DIOのスタンド『
世界』の配色は、基本的に金色である。
だが目の前の『
世界』は、なんと白金色であった。
『ザ・ワールド』が拳で、アイリスハートを殴りつける。
ザ・ワールド「フン!」
アイリスハート「!!」
咄嗟に腕を交差させ、拳を防いだアイリスハートであったが、
プルルート「ほえっ!?」
元の姿に戻ってしまったのである。
驚きを隠せないプルルートであったが、
DIO「フン……女神の力も、大した事はなかったな」
『ザ・ワールド』の拳が、プルルートへと襲いかかった。
だが、咄嗟にクラウスが前に出る。
クラウス「ブレングリード流血闘術・117式『
絶対不破血十字盾』!」
巨大な十字架の盾を出現させ、『ザ・ワールド』の拳を防ぐが、
DIO「それが、ブレングリード流血闘術か……。 だがっ! 『ザ・ワールド』の前では、全くの無意味だ!」
バリィーンと、盾がガラスのように砕けたのだった。
クラウス「何っ!?」
DIO「貧弱貧弱ぅ!」
今度はDIOが突進してくるが、今度は承太郎が駆けだした。
承太郎「『スタープラチナ』!」
スタープラチナ「オラッ!」
拳による一撃は、DIOの頭部へと命中する。
DIO「!?」
いくらDIOでも、頭を攻撃されたら一溜まりもない。
殴られた頭に手を添えたDIO。
まさにその時だった。
DIO「フハハハハハ!」
頭部の傷は綺麗に消え、何もなかったかのように立ちあがったのだった。
全員が、驚きを隠せなかった。
『スタープラチナ』の一撃を喰らったにも関わらず、DIOは平然としていたのだ。
承太郎「(『スタープラチナ』の拳は、確かにヤツの頭を砕いた。 こいつは……吸血鬼の再生能力でもなければ、『
世界』の時間停止でもねぇ!)」
DIO「フン。 『
基本世界』では、承太郎が
私を倒したと聞いているが……甘っちょろいぞぉ!」
ザ・ワールド「無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」
『ザ・ワールド』の凄まじい連打が、承太郎達を吹き飛ばした。
承太郎「ぐぅ!」
クラウス「くっ!」
プルルート「きゃぁ!」
雪泉「承太郎さん! プルルートさん! クラウスさん!」
零児「バカな!? 三人が押し負けただと!?」
霊夢「何なのアイツ!?」
DIO「無駄無駄無駄! 貴様等の攻撃など、我が『真実』の前では『上書き』されるだけにすぎん!」
驚愕する零児達であったが、DIOは一枚のカードを取りだす。
タロットの最後の一枚『世界』のカードである。
DIO「さあ、『
世界』のカードよ! 奴等の持つタロットを引きよせるのだ!」
カードが光ると同時に、零児達の集めたタロットが、
全員「なっ!?」
DIOが持つ『世界』へと集まったのだった。
零児「しまった!」
十六夜「タロットが!」
雪泉「DIOの手に!!」
DIO「礼を言うぞ。 お前達がタロットを集めてくれたおかげで、このDIOは更に! 新たな高みへと到達するだろう!」
勝利を掴み取ったかのように、DIOは天高く笑う。
DIO「では、お別れだ。 お前達には、ここで消えて貰う」
パチンと指を鳴らした瞬間、零児達の周囲から黒い『モヤ』が出現したのだ。
霊夢「な、何なのアレ!?」
零児「分からんが、アレに触れたらまずいぞ!」
『モヤ』が近付き、まさに絶体絶命。
誰もが死を覚悟したが、まさにその時であった。
承太郎「!?」
突然、承太郎の懐が光り始めたのだ。
思わず懐から取り出すと、
承太郎「コレは!?」
DIO「何っ!?」
光っていたのは、タロットの『星』のカードであった。
それを見たDIOも、奪い取ったタロットを見る。
DIO「ない!? カードが一枚足りん!?」
そしてカードに導かれるように、彼等はその場から消えたのだった。
逃げられたDIOは、小さく呟いた。
DIO「空条承太郎……やはりこの世界でも、ヤツは最大の障害の様だな」
零児達はいつの間にか、地霊殿の室内にいた。
霊夢「ここは、地霊殿の門前?」
零児「承太郎の持っていた『星』のカードが、俺達を救ってくれたのか!?」
承太郎「………」
驚きを隠せなかった一行であったが、一番の不安が残っていた。
それは勿論、DIOの能力である。
雪泉「それにしても、プルルートさんの変身が簡単に解けるなんて……」
プルルート「でもあたしぃ〜、変身してからぁ〜、そんなに経ってないんだよぉ〜?」
クラウス「私の時もそうだった。 今まで破られる事も無かったブレングリード流血闘術の盾が、拳の一撃で砕かれた」
クラウスやプルルートですら不安を募らせ、誰もが拳を握りしめてしまう。
零児「承太郎、お前さんの意見を聞こう」
その言葉に承太郎は、一度考え込むと、
承太郎「一旦、亀龍一號に戻ろう。 他の皆と合流して、話し合うべきだ」
彼の意見に賛同し、一行は亀龍一號へと戻った。
亀龍一號にて……、
ジョセフ「そこじゃぁ!」
夜桜「うわっ!」
ジョセフと夜桜が、組み手を行っていた。
元々は、夜桜が暇を持て余す為に修行をしていたのだが、
ジョセフ(ワシも暇じゃから、少し付き合おうかのぉ)
そう言って、ジョセフが修行相手になったのである。
そんな光景を、一行は観戦していた。
ザップ「なあ、ポルナレフ。 夜桜とジョースターさん、どっちが勝つと思う?」
ポルナレフ「そうだなぁ〜……。 夜桜は拳による接近が主だからなぁ、ジョースターさんが有利じゃねぇか?」
四季「アタシ的には夜桜ちんと言いたいけど、どうみてもジョセフさんだね」
小牟「そうじゃな。 ジョセフは年長者じゃし、戦いには一番慣れておるしの」
そう言いながら彼等は、ジョセフが勝つと予想する。
DIOを目覚めさせた『石仮面』を生み出した存在、『柱の男』と激突したという過去を持つジョセフ。
彼のスタンド『
隠者の紫』は本来、戦闘向きのスタンドではない。
主な能力はカメラによる念写や、相手の考えをテレビ画面に映すことである。
しかし若い頃に身に付けた仙道術『波紋』と、コレまでの戦いの年季でカバーしてるのだ。
ジョセフが突き出した腕から『ハーミットパープル』を伸ばすが、夜桜はそれを避け、
夜桜「はぁぁぁぁぁ!」
そのまま懐へと跳び込む。
夜桜「そこじゃぁ!」
そして、ジョセフへと拳を放った。
ジョセフの懐に飛び込んだ夜桜。
これには、全員が驚きを隠せない。
アヴドゥル「おお! これは!?」
魔理紗「これは決まったぞ!」
誰もがそう思い、夜桜の拳がジョセフの体に接触した瞬間だった。
バチィと、電流のような感覚が彼女を襲った。
夜桜「キャァァ!」
これにより夜桜はふっ飛ばされ、ジョセフは安堵した顔をする。
ジョセフ「ふう、危なかった」
魔理紗「へ? 今のって、どうやったんだよ!?」
思わず魔理紗は困惑するが、花京院がすぐに気付いた。
花京院「体に巻き付けた『ハーミットパープル』に、波紋を電流の様に流したんですね?」
それを聞いたジョセフは、襟元を少し伸ばすと、
ジョセフ「流石は花京院、良く分かったのぉ」
電線の如く、波紋が流し込まれた『ハーミットパープル』が体に巻かれていた。
ジョセフ「接近戦に持ち込まれると厄介じゃったからの、保険を掛けておいたんじゃよ」
夜桜「さ、流石です。 見事にやられました」
ジョセフ「じゃが、お前さんも中々良い線までいったぞ」
こうして、勝負はジョセフの勝利となった。
すると、承太郎達が戻って来た。
ジョセフ「お、帰ってきおった」
美野里「皆、お帰り!」
零児「ああ、ただいま……」
暗い表情を見せる承太郎達に、ジョセフ達は首を傾げた。
叢「どうした?」
承太郎「実は……」
そして承太郎は、皆に地下での出来事を放した。
状況を知ったジョセフ達は、驚きを隠せなかった。
ジョセフ「何ぃ!? それは本当か!?」
花京院「み、見間違いじゃあないのかい!?」
承太郎「俺も最初はそう思った。 だが、間違いなくアイツはDIOだった」
アヴドゥル「そんな……」
ポルナレフ「マジかよ……」
ジョースター一行メンバーは、奥歯を噛み締める。
宿敵のDIOが、新たな敵として現れたのだ。
アヴドゥル「しかし、なぜDIOが!?」
誰もが疑問に思うが、まさにその時であった。
??「やはり、此処まで辿りついたのね」
そう言ってスキマから、紫が姿を現したのだ。
霊夢「紫?」
ダンテ「どうしたんだ? 随分と顔色が悪いみたいだが」
承太郎「……何か知ってるのか?」
紫「ええ……」
その問いに頷き、紫は衝撃の事実を伝えたのだった。
世界とは、一つとは限らない。
全ての基準となる『基本世界』を中心に、あらゆる数の『並行世界』が存在する。
紫は気分転換に、その並行世界の一つを観光していた。
辺りを見渡す彼女であったが、
??「ほう、見かけない顔だな」
紫「!?」
そこで『ヤツ』と出会ってしまった!
紫はその姿を見た瞬間、恐怖してしまった。
全身が痙攣し、胃液が逆流するような感覚。
恐怖が精神を支配し、彼女は「殺される」と感じた。
しかし『ヤツ』は、子供をあやすかのように優しく言った。
??「怖がる必要はないのだよ。 友達になろう」
紫「!?」
その言葉に彼女は、『ヤツ』の虜になってしまった。
これが、並行世界のDIOとの出会いであった。
紫から衝撃に事実を聞いた一行は、言葉が出なかった。
承太郎「並行世界の……DIOか」
紫「その世界では、DIOがジョースター一行を返り討ちにし、思うがままに世界を支配していたの」
この時承太郎は、DIOの言葉を思い出す。
DIO( 『
基本世界』では、承太郎が
私を倒したと聞いているが……)
承太郎「(あれは、そういう意味だったのか)」
紫「私はDIOのカリスマに惹かれてしまい、ヤツの言いなりになってしまった。 ヤツは暗黒王の封印を解くとスタンド『ザ・ワールド・オーバーヘブン』で、自身の部下に引き入れたのよ」
霊夢「暗黒王を!?」
零児「つまりこの異変は、最初からヤツの掌の上だったという事か」
紫「私は……私は自分を呪ったわ! あんな奴の言葉に耳を傾け、この世界に招いた自分自身を! 屈辱だった、許せなかった!」
奥歯を噛み締め、自身の行動を悔いる紫。
そんな彼女に、承太郎はこんな質問をした。
承太郎「何か、ヤツを倒す方法はないのか?」
紫「能力については分からない。 けど、倒せる方法が一つだけあるわ」
承太郎「本当か?」
紫「まず、コレを手に取って」
そう言うと紫は、一丁の拳銃を承太郎に投げ渡す。
承太郎がそれを受け取ると、彼女は再び同じ型の拳銃を手に取る。
紫「その銃は、私が最初に来た並行世界のものよ。 そしてこれが、その隣の世界の銃」
承太郎「何のつもりだ?」
紫「これを同時に投げるのよ!」
承太郎「!? オラァ!」
二人は拳銃を同時に投げ、二つの銃はぶつかった瞬間、バァーンと消滅したのだった。
二丁の銃が消滅した瞬間、全員が驚きを隠せなかった。
紫「このように、『この世界のもの』と『違う世界のもの』がぶつかると、その場で消滅してしまうの。 ヤツはこの事を全く知らない」
そんな中、ジョセフはこんな事を言った。
ジョセフ「ちょ、ちょっと待った! もしもじゃぞ!? もしもワシの目の前に、『50年も前の若い頃のワシ』が現れたら、さっきみたいに消滅するのか?」
紫「アナタの場合は“時代”が50年も違うだけであって、あくまで“同じ世界”の同一人物。 だから、消滅の心配はないわ」
成程という顔をしながら、ジョセフはすぐさま納得する。
紫「だけど、DIOは違うわ! あの男は『並行世界』の住人! 承太郎君の住んでる世界を『基本世界』として、その世界のDIOは倒されていると聞いてるわ! その亡骸をぶつければ、ヤツも能力を使う暇も無く、消滅する事が出来るはず!」
期待をする様な顔になった紫であったが、承太郎は首を横に振りながら答えた。
承太郎「DIOの亡骸は、朝日に晒して塵にした。 もう、何処にも残っちゃいねぇハズだ」
それを聞いた紫は、希望を失った顔をしてしまう。
紫「そう……。 でも、必ずヤツを倒す方法は見つかるわ! アナタ達なら、必ずDIOを倒せると信じてるわ!」
そう言って紫は、スキマの中へと消えた。
紫がその場を去った後、全員が沈黙になってしまった。
その中で、最初に第一声を上げた魔理紗。
魔理紗「今更だけど、えらくぶっ飛んだ話しになったよなぁ」
ザップ「そうだな」
レオ「じゃあ皆、紫さんの案に賛成で良いねですね」
零児「だが、問題はDIOの能力だ」
すると、十六夜がこんな事をクラウスに聞いた。
十六夜「なあ、クラウス。 アンタのあの『十字架』は、DIOの一撃で砕かれた。 間違いねぇな?」
クラウス「ああ。 あの技はブレグリード流血闘術の中でも、絶対硬度を誇る『盾』でもある。 今まで砕かれる事はなかった」
十六夜「という事は……」
承太郎「どうした?」
深く考えた後、十六夜はある結論に辿りついた。
十六夜「あの時の……DIOの言葉が引っ掛かってよ。 ホラ、『真実』がどうってヤツだ」
DIO(貴様等の攻撃など、我が『真実』の前では『上書き』されるだけにすぎん!)
十六夜「これは俺の勘だけど……DIOの能力は、
『真実』を『上書き』するんじゃねぇか?」
雪泉「どういう意味ですか?」
十六夜「DIOの能力を受けたものは、アイツの望んだ『真実』に必ず到達――つまり『上書き』されるんじゃねぇか? 例えば
『簡単に割れるガラスコップ』に“絶対に割れない”という『真実』を『上書き』することで、そのコップは『簡単には割れないガラスコップ』になる――と考えれば」
ダンテ「成程、という事は……」
十六夜「ああ。 さっきの戦いも、
“俺達の攻撃が通用しない”という『真実』を『上書き』したんじゃねぇか?」
それを聞いた一行は、驚きを隠せなかった。
ポルナレフ「何だよそりゃ!? それが本当なら、倒しようがねぇじゃねぇか!」
ジョセフ「じゃが、ここで諦めるつもりはない!」
小牟「そうじゃ! 必ず倒す方法が見つかるはずじゃ!」
霊夢「そうね、必ずヤツを倒して見せるわ!」
承太郎「やれやれ、ちょいと疲れる旅になったぜ」
こうして再び、一行の心が団結したのだった。
TO BE CONTINUED...