俺の片目は戦争兵器 将錯の過去
作者:青木
2016/03/31(木) 13:56公開
ID:aD/bcO1hwWA
夜の出来事から二週間がたった。それ以来明夏ともよりを戻し。平凡な毎日を送っている。
ただひとつ厄介なことが・・・・・・。
「よーハーレム王子」
変な呼び名がついてしまったことだ。
「将錯! そのあだ名はやめてくれ」
「ほんとのことだからさー」
聞く耳持たず。
中学からの親友にさえこんなことを言われてしまったら、他の人にだって案の定言われている。
「まぁでもハーレムだろうとなかろうとお前が変態なのは知ってるさ」
将錯は親指を立たせて得意げに笑って、宣言する。
教室に誰もいなくてよかった。ってよくないよな。
「誰が変態だって!」
俺が否定を発した瞬間、将錯は鼻で笑った。こいつ許さん。
「落ち着け落ち着け」
怒りが高ぶってきたぞ。
「まぁまぁ蝉島、怒るなって」
冷静になるんだ俺。冷静だ冷静。
ようやく怒りを鎮めたところを見計らって、将錯は立ち上がる。
「久しぶりに俺と帰ろうぜ」
「え? あぁいいけど、なんでだ?」
俺は最近、遠市さん、明夏、未琴と一緒に登下校している。だからか将錯と下校するのは久しいことである。
「もう疲れたし帰るか」
将錯は俺と一緒に教室を出て帰路に着く。
二人並んで舗道を歩く。
時間は夕暮れ時。街を歩いているのは老若男女、ヘッドライトをつけ始めた乗用車、色々だ。
将錯は俺よりも背が高い。学歴だって素晴らしい。俺にとって将錯は自分よりかっこよく優しい人間だと思っている。
モテそうなのになぜか彼女を作ろうとしない。
「なぁ蝉島?」
俺は不意をつかれて体が一瞬、硬直する。
「なんで俺が中二病の女の子が好きか知りたいか」
「教えてくれるなら」
将錯は少し目を伏せる。何か悲しい記憶でも思い出しているのだろうか。
「俺が小学六年生の夏休みだった、俺は公園のベンチで座って昼寝をしていた、そして夕方六時ごろかなふと目が覚めたんだ」
「そしたら肩に頭を預けて隣で寝ていたと」
「さすがは変態ハーレム王子予測が早い」
誰が変態ハーレム王子だ。殴るぞ。
「俺の肩に頭を預けて寝ていたんだよ、その時俺は帰りたかったから起こしたんだよその中学生を」
その中学生って言われても一回も中学生とは言ってないよな?
「起こしたら俺の顔見てすごく驚いてさでその人眼帯しててさ見た目すごく可愛くてさ」
それで可愛くて中二病の女の子が好きになったと。
「その人、ベンチから立ち上がって人差し指と中指だけ少し広げて、左目を間に我が名はアイル、とか言ってたけど俺がアイルって何ですか、って言ったらすごい慌てて、はうはう、とか顔を赤くして走ってどっか行ったんだよ」
「それ以来、中二病が好きだと?」
「まぁそう言うことかな」
そして、また少し目を伏せる。
「家についたぞ蝉島」
「え? ああ」
「じゃあな蝉島」
俺は手を振って将錯の後ろ姿を見送る。
俺は将錯が少し悲しそうにしてたのが気になって仕方ない。
「気にしても仕方ないけどなぁ」
俺は溜め息一つ漏らした。
辺りはもう暗くなってきていた。俺はドアノブに手を掛ける。
「腹減ってきたな」
いつもの言葉を漏らして俺は自宅に上がった。
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