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俺の片目は戦争兵器 盗人VS煩悩
作者:青木   2016/04/02(土) 17:08公開   ID:aD/bcO1hwWA
 何百台の戦車が丘から草原に降りてくる。こっちは俺ただ一人。    
 眼帯を外し兵器と化した右目を露にする。     
 「戦車だろうがなんだろうが、死に物狂いで戦ってやるよ」     
 勝算が薄いことはわかっていた。でも部隊での俺が最後の要なんだ。と自分に言い聞かせビームを発射する。     
 一台ずつ破壊しても砲撃が俺に向かって飛び交う。     
 破壊してもしつくせぬ量の戦車。どんどん近づいてくる。     
 ついに俺の正面に砲撃が・・・・・・もう駄目だ。     
 「うわぁ!」      
 なんだ夢か。妙な夢を見るもんだな俺も。     
 起き上がろうとするが妙に体が重い。薪を背負ってるみたいだ。    
 カーテンの隙間から入る日差しは晴天を物語っている。     
 「いい天気だし布団も干そっかな」      
 ダメだ。うまく立ち上がれずに床へ後ろに倒れる。     
 「いちゃい!」      
 この場所にあってはならない奇声が聴こえたぞ。     
 後ろからおぞましい視線を感じたが振り向かず布団に戻る。     
 きっとこれは夢だろう、と思い自分の頬をつねる。     
 「え〜また寝るのーつまんなーい」     
 待てよ? これは嫌な予感がするぞ。     
 俺は布団で丸くなり閉じこもる。       
 「起きろよ朝だぞ」      
 あーもう。     
 「うるさいなぁー!」      
 「やっと起きましたかー」    
 低い位置で結んだ長いツインテールを垂らした赤色の髪。     
 紅の瞳。     
 整った顔立ち。     
 ある意味美少女と言えるだろう。      
 パジャマ服で夜の間ずっと寝ていたのだろうか。     
 右目には眼帯。これで俺を含めて三人目。     
  「ごめんなさい勝手に入ってきちゃて」     
 「いいよいいよ事故だよね」      
 「お邪魔しましたー」     
 謎の少女は正座の体勢から立ち上がり玄関の方へ向かう。     
 「ありがとうございました」      
 「いえいえこちらこそって・・・・・・待てや」     
 俺は肩を掴み無理矢理押しとどめる。      
 「乱暴しないでください」    
 「取ったもの出せや」     
 暴れ回る少女(泥棒)を逃がさないように両肩を掴む。     
 少女は足を滑らせて後ろに倒れる。フローリングなので滑りやすいのだろう。  
 その隙に俺は少女の両手首をがっしり掴みその場にしゃがませる。   
 「取ったものを出せ!」     
 俺はきつく言い放つ。    
 「取ったものは・・・・・・ええと・・・・・・あなたのハートです」 
 少し怒りメーターが貯まる。     
 「そういうのいいから正直に出せ」      
 「女の子相手に出せだなんて変態ですか! のろけですか! 女たらしですか!」 
 また少しメーターにポイントが貯まる。      
 「盗人だろ?」     
 「確かに盗塁はしましたけど盗塁王だって取りましたし」     
 ついに怒りメーターが頂点達した。      
 「ポケットの中を拝見させてくれ」    
 「さわらないでください!」       
 涙目になって抵抗する少女。可愛いがそんな煩悩には負けん。    
 「ポケット全部広げますから触るのだけはやめてください」    
 そう言って立ち上がり少女はズボンのポケットと胸ポケットを裏返し始める。   
 「これでどうですか」     
 「背中に入れたりしてるかも知れないなぁ」     
 いかん。思ってもないことが口から。      
 「わかりました」     
 少女は身を翻し腰の裏に垂れているパジャマの裾を掴む。    
 ヤバイ。このままではまた変態扱いされてしまう。     
 「ごめん、つい失言してしまった」     
 もう遅かった。少女はありのままの背中を俺に向けさせる。     
 「もういいですよね、私が無罪ということがわかりましたよね」    
 斜めからでもひどく顔を火照らせているのがわかる。目線もこっちを向けないらしい。
 「もう帰ってくれ」     
 俺は少女から視線を反らして言い放つ。     
 俺まで顔が火照ってきた。    
 「お邪魔・・・・・・しました」      
 少女は足早に玄関から出ていった。       
 「なんなんだよ一体」      
 「可愛いけどな眼帯が邪魔だな」      
 何を考えてるんだ俺は。     
                 
 私の名前は那山 紅(なやま くれない)中学二年生。    
 突然、眼帯がなり響く。とてもビックリした。きっと上司からの電話だろう。
 電柱の影に隠れてひそひそと会話する。ばれないようにするのは当然のことだ。
 『うまくいった?』     
 『ただいま任務を遂行いたしました』      
 『そうよかったわ。怪しまれないように気をつけて戻って来てね』
 『了解』     
 これで少し肩の荷を下ろせる。そう思うと気が晴れる。    
 それにしてもあの変態、次あったら復讐してやる。     
 やはり裏で何か進んでいるがまだ誰も気づいていない。     
 歴史上にも残るかもしれない悲劇が刻々と近づいているのに。

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