「――なんだと?」
そんな声と共に、険しい目つきで睨まれる。
正面に座る彼女の視線に射抜かれながら、それを気にすることもなく士郎は食卓に並ぶブリの切り身に箸を入れた。
(……うん。丁度いい塩加減だ)
「おい。人が話している最中に出来栄えを確かめるな」
「あれ、分かるか」
「一口食べて満足そうに頷いていればな」
呆れたように言うエヴァンジェリンの口の端が、苦笑によって歪んでいる。
しかし茶々丸と共にこの家の家事全般を担っている自負を持つ士郎に、この類の嫌味では全く効果が無かったが。
それが解っているからであろう。
エヴァンジェリンはその顔を真剣な表情に変え、低い声で本題へと切り込んだ。
「こちらは真面目に話をしているんだ。のらりくらりと躱すのはよせ。
―――魔法世界に行くなど、一体どういう了見だ?」
青い瞳が、凍るほど冷たい視線を発散した。
気温が数度下がった空気が、緊張と共に二人の間に張り詰める。
そうなれば、氷の視線で射抜かれた方も、もはや逃げようとは思わなかった。
「………“魔法世界の崩壊まで最短で九年”。本当かどうか確かめる必要があるだろ」
「それをするのがお前である必要は無い。
お前から報告を受けたじじいや近衛詠春が調査を進めている」
士郎の言い分を間髪入れず一蹴し、エヴァンジェリンは続ける。
「その崩壊とやらが本当だとして、
魔法世界がどうなろうと私には関係ない。
どうにかしてやる義理も義務も勿論ない―――そして我が従者よ。それは
お前も同じなハズだが?」
士郎は、言葉の意味が解らなかった。
「――そんな訳ないだろ。向こうには友達が、師匠だって居るんだぞ。
それに、魔法世界の総人口は十二億人だ、それを見捨てるなんて―――」
「成程、友人とやらはそうだろう。だが、だったら何故お前は、十二億人全員を背負おうとしている?
無関係である事と見捨てる事は、語る道理が全く異なる別のものだ。
士郎。お前、自分がどれだけオカシイか、本当に分かっていないのか」
「…エヴァ。お前……さっきから何が言いたい」
語気を強めて言う士郎を見るエヴァンジェリンの双眸が、氷点下になっていた。
「……一人救えば次は十人、そして百人か。よく言ったものだな。
人の
理想には果てが無い―――ああ、まったく。そのとおりだ」
湧き上がる怒りと吐き気を胸の奥に押し込めて、少女はその可憐な顔を不敵な笑みで塗り潰した。
彼女は今、悪の魔法使いとして、自らの従者に悪態で以て吐き捨てる。
「貴様は最初の願いを忘れているぞ、衛宮士郎。
足元も見えていない今の貴様では誰を救うことも出来はせん。
よしんば何かを拾えても……決定的に、大事な何かを取り零しているだろうさ」
一連の台詞は、忠告と呼ぶにはあまりに感情が込められていた。
そこに隠された意図も意味も測りきれず、士郎は何も言えぬまま押し黙るしかなかった。
―――そうだ。言いたい事は山ほどあった。
けれどもそれらは、どう足掻いても、実際に士郎の口を突いて出ることはなかった。
エヴァンジェリンの言うとおり調査は進んでいる。
しかし、近右衛門は本国に複数のコネクションを持つが、麻帆良は所詮外様に過ぎない。
詠春に至っては、魔法使いと対立してきた組織の長であり、彼個人が持つ魔法世界での人脈も二十年以上前に築いたかつてのものだ。
彼らに任せて何もしないという選択が出来るほど、信頼できる繋がりかという疑問がある。
―――そう、反論したい筈なのに、士郎の裡の何かがそれを押し止めていた。
衛宮士郎はまだ気づかない。
十二億人もの人々を救おうとする。その苦難に対したった一人で立ち向かおうとする。
それが愚行であると知らず、疑問を抱かず、その歪さに気づかせようとする不器用な少女の瞳に気づかない。
かつての無力感と諦念から得た、忘れざるべき教訓を、士郎はこのとき失っていた。
そんな彼を見て不機嫌そうに鼻を鳴らし、エヴァンジェリンは無言で箸を取る。
「………魔法世界。行くなら好きにするがいい。
私は別に、反対などとは言っていない」
突き放すような台詞の後、彼女は静かに朝食を始めた。
その対面で何も言うことが出来ない男を、完全に居ないものとして扱いながら。
◇◇◇◇◇◇
「――あれ?」
「どうしました?刹那さん」
刹那がふと足を止め、周囲を見渡して首を傾げる。
この日は既に学園祭の前日で、学園中に人が溢れ返っているのに―――この広場の一帯だけ、何故か人影が全く無い。
「おや、ネギ君」
異様な空間を訝しむ二人―――刹那とネギにかけられた、
嗄れた声。
彼らは自然と、それが聞こえてきた方へ視線を向ける。
「―――待っとったぞ」
広場の上から二人を見下ろしているのは、ここ麻帆良学園の学園長、近衛近右衛門。
そして彼を中心に、二十人に満たない謎の集団が居並んでいた。
<第三章-第53話 麻帆良祭前日…なのに問題だらけ。>
3−Aクラスが作る学園祭の催し物、お化け屋敷は完成する見通しすら見えていない。
この時点で麻帆良祭まで残り二日。間に合わないのは明らかだった。
始業前の早朝時間。各授業間の休憩時間。昼休み。許された午後九時までの放課後居残り。
それらを目一杯
注ぎ込んでも、足りない。
一部の急進派が授業時間中に極秘で内職を進めるも、教師に見つかり危うくクラス全体が準備活動の停止処分を受ける事態にすらなりかけた。
追い詰められた三十一人の少女達―――注釈、一部除く―――は団結し、結束。
禁じられた最後の手段に手を染めることをクラス委員長に進言する。
遊びと騒ぎと祭り事に命を懸ける人種であった彼女らの提案は、その熱意と現状の苦しさもあってクラスの総意として可決された。
そう、「学校への泊まり込み」である。
文句を言う生徒も何だかんだキャッキャウフフ楽しんで作業していたのと反対に、「クラス委員長ともあろう私がこんな校則違反を…」と頭を抱える約一名の少女が居たりしたが、本人も必要な苦労と割り切って受け入れた。
むしろ彼女の内心を占める割合は、教師一年目の子供先生まで手伝いに駆り出した事に対する申し訳なさの方が勝っていた。
具体的にはネギに泣いて謝った。
ネギという援軍に喜びの声を上げるクラスメート達を泣きながら黙らせて仕事した。
そうして一夜明け、早朝。
太陽は昇っていないが白む空。
明らんでいく空を眺め、隈の浮かぶ目を細めて清々しく微笑む少女たち。
――――素晴らしいほどの、完徹であった。
・
・
・
・
口々に疲労や愚痴を零しながら寮への帰路に就く3−A一同。
彼女達は早朝のうちに一時解散し、各々の用事を済ませてから再び登校する運びとなった。
このように多数の生徒が「朝に下校する」光景は言うまでもなく異常だが、しかし麻帆良の住民達には慣れたもの。
何故なら泊まり込みを決行したのは3−Aクラスだけでなく、また彼女たち以外の世代もやらかしている恒例暴挙だったからだ。
それはつまり、教師陣や学園側もその実情を把握しているという事なのだが、泊まり込みの禁止という校則は十分に認知されているだけで守られる気配がほとんど無い。
教師による夜間の校舎巡回という対処法も、生徒たち渾身の隠密活動―――各クラス連携して構築された警戒網、第六感の鋭敏化、効率的な姿の隠し方、気配の消し方、暗闇で且つ音を立てない作業方法などなど―――によって無力化される始末。
麻帆良の子供達が、本人の知らないうちに常人離れしていく一例である。
閑話休題。
――――学園祭まで、残り一日。
3−Aのお化け屋敷『HORROR HOUSE』は何とか、本日の徹夜を前提に完成する見通しを見せたのだった。
「あら、おはようございますネギ先生。早いですね」
「おはようございます、しずな先生」
それぞれ自分が所属する部活動に顔を出しに行く明日菜、木乃香、刹那と、職員室に向かうネギの四人。
彼らの前に出勤してきたしずなが通りかかり、ネギ達を見て笑顔で話しかけた。
「丁度良かったわ、学園長先生がお呼びよ」
「え。あ、はい。じゃあ校舎に戻らないと…」
「いいえ、校長室ではなくて世界樹前広場に来て欲しいって。
できれば桜咲さんにも来てほしいそうよ」
「「………?」」
去っていくしずなの言葉に、ネギと刹那は顔を見合わせる。
こうして明日菜、木乃香と別れた二人は、世界樹前広場へ向かい―――学園長と謎の集団に遭遇した。
◇◇◇◇◇◇
「やあ、ネギ君」
「よっ」
広場に居並ぶ集団は、知らない顔ばかりという訳ではなかった。
声をかけてきたのはタカミチと小太郎。
また、ネギの同僚である中等部教師・瀬流彦と、ネギの生徒・明石裕奈の父親である明石教授の二人もネギに近づいてくるのが見える。
それ以外の顔ぶれは……修道服を着た少女と女性、二人のシスター。
さらに聖ウルスラ女子高、本校女子中等部、芸大付属中学の女子生徒が一人ずつ。
加えて、小太りで細目の男性、眼鏡をかけた短髪の黒人男性に、サングラスにスキンヘッドという出で立ちの大柄な男性。
他にも、野太刀を抱えた長髪の女性、濃い髭を生やし煙草を咥えたサングラスの男性がいる。
そしてその中央で、彼らを従えるように近右衛門が悠然と立っていた。
「あ、あのー……学園長先生。この人達は……?」
「うむ。ネギ君には紹介がまだじゃったの。
ここに集まっとるのは、この麻帆良学園都市に点在する小・中・高・大学に常時勤務する
“魔法先生”……及び“魔法生徒”達じゃよ。全員ではないがの」
「え―――ええぇっ!?」
ネギは驚きの声をあげた。
目の前に並ぶ顔ぶれの中には彼が一般人だと思っていた者もおり、隣で刹那も驚いている。
「こ、この学園にこんなに魔法使いがいたなんて…」
「私も今初めて知った方が何人か…」
「えっ?もしかして刹那さんは、この学園に魔法使いがたくさんいるって知ってたんですか!?」
「あっ」
うっかり独り言を漏らしてしまった刹那だが、むしろ今の反応こそが決定的だった事に気づいて余計に焦る。
近右衛門の隣に立つ女教師―――刹那の剣の指導役でもある葛葉刀子は、その様子を見て頭が痛そうにこめかみを押さえた。
「い、いえ、その…私は警備員もしてますから…」
「警備員?」
慌てて釈明する刹那の言葉に首を傾げるネギを見て、近右衛門が口を挟んだ。
「魔法関連の問題からこの学園を守るスペシャリスト達のことじゃよ。
多くの魔法先生は勿論、実力を認められた一部の魔法生徒が学園のために力を奮っておる。
ネギ君の周りで言えば刹那君に龍宮君、エヴァンジェリンや士郎も警備員の一員じゃのう。
ネギ君はまだ子供なので任せておらんが」
「で、でもそれなら、生徒の刹那さんも参加してるのに…」
なお、一番の新入りは犬上小太郎である。
彼もネギとほとんど歳の変わらない子供だが、その実力と実戦経験の豊富さ、そして“ある事情”により麻帆良の警備に参加することを認められた。
そしてその事情というのが……。
「実はここだけの話なんじゃが、警備員やっとると給料がもらえる上に、生徒の場合は成績にちょっとだけ色をつけてあげとるんじゃよ。これナイショじゃぞ」
「――え」
ネギが隣の刹那を見る。
刹那は気まずそうにしてサッとネギから顔を逸らした。
「まあまあ、そう目くじらを立てんでくれ。
“警備員”はの、刹那君や小太郎君のような身寄りのない子に、その見返りという名目で学費や生活費を援助しておるような側面もあるんじゃよ。
すると警備員の仕事で勉強する時間がとれぬこともままあるでのう、成績におまけしてあげるのはそういうことじゃ」
文句を言い辛い理由を並べられて押し黙るネギを、近右衛門は自慢の髭を手で梳きながらニヤリと笑って見る。
「警備員の仕事といえば以前は西の陰陽師が五月蝿かったが、
ネギ君が西の長に友好の密書を届けてくれて以降はだいぶ静かになってのう。
いやぁよかったよかった、お手柄じゃぞ。ふぉっふぉっふぉ」
「え…あ、ありがとうございます!」
(あ、誤魔化された)
(誤魔化しよったな)
(学園長……)
上から刹那、小太郎、タカミチの心の声であった。
「やあネギ君」
「いやー、黙っててゴメンね」
「あ、明石教授…に、瀬流彦先生も魔法先生……?」
明石は温和な顔で笑い、瀬流彦は頭を掻いて謝りながらネギに声をかけた。
「修学旅行では協力できなくてすまなかった。学園長から生徒の警護を命じられていてね」
「僕もだけど、瀬流彦先生はあまり戦闘向きではないからね。
あと、ゆーなは魔法の事は知らないんだ。その辺りよろしく頼むよネギ君」
「は、はい」
「さて…これで全員揃ったワケじゃし。そろそろ本題に入ってもよいかのう?」
近右衛門が口を開く、ただそれだけで驚くほど即座に場の空気が引き締まった。
強引に聴かせる威圧ではなく、従えさせるような強烈なカリスマでもなく。
自然と耳を傾けさせるような…周囲を惹きつける何かを含んだ声。
明石と瀬流彦は元の位置に戻り、ネギと刹那も慌てて佇まいを正す。
―――が、それも道理。
「今日わざわざ皆に集まってもらったのは他でもない。
今この学園に問題が起きておる―――解決のため、諸君らの力を貸してほしい」
――――近衛近右衛門。それは麻帆良学園で最強の魔法使いを意味する名だ。
好々爺然としてお道化た普段の様子は微塵も無く。
代わりに、その実力と威厳の片鱗が、此処に確かに存在した。
・
・
・
・
―――近右衛門曰く。
生徒達に世界樹と呼ばれ親しまれる巨大な樹、その正体は強大な魔力を秘めた『神木・
蟠桃』と言う魔法の樹である。
その魔力は二十二年に一度の周期で極大に達し、世界樹を中心とした六ヶ所の地点に魔力溜まりを形成する。
ここ『世界樹前広場』も、その魔力溜まりの一つであるという。
「この膨大な魔力が人の心に作用する。お金が欲しいとかギャルのパンティおくれとか、そういう即物的な願いが叶うことはないが―――こと“告白”に関する限り、その成就率は120%!!まさに呪い級の威力じゃよ!!」
「……はあ」
「んなアホな…」
「まさか世界樹伝説が迷信ではなかったとは…」
ネギ、小太郎、刹那は「信じられない」と呆気に取られた。
学祭最終日に世界樹で好きな人に告白すると恋が実る―――そんな“噂”が、噂ではなく事実だと言われれば当然だろう。
周囲にも彼らと同様の反応を示す魔法生徒や、思案げに俯く魔法先生がいたが、大多数は大きな反応を見せず近右衛門の話に集中している。
「本当なら来年のハズだったんじゃが…異常気象の影響か一年早まってしまったことが急遽分かっての。
それで今日の緊急招集と相成ったワケじゃ」
「でも、恋人になれるならいいんじゃないですか?」
「どっちにしろくだらん」
ネギと小太郎の発言は他意のないものだったが、周囲が僅かに反応した。
それは苦笑、呆れ、中には眉を顰める者さえ居たが、ほとんどの魔法使いは静観している。
それを一瞥して頷くと、近右衛門はネギを諭すように口を開いた。
「とんでもないぞいネギ君。言ったじゃろう、これは人の心に作用する“呪い”じゃと。
人の心を永久に操ってしまうなど魔法使いの本義に反する。好きでもない奴と恋人になってしまうなど嫌じゃろ?
じゃがこの噂、生徒の間でかなり広まってしまっておる」
「はい。麻帆良スポーツ新聞やネットを通してかなり浸透しています」
「本気で信じている子は少ないでしょうが、あやかって実行したがる人は少なくないでしょうね」
事前に調べた資料に目配せして、葛葉刀子と明石教授が近右衛門の言葉を補完する。
「そういうことじゃ。マジでマズイのは最終日じゃが、今からでも影響は出始める。
生徒には悪いが、明日から三日間、この六ヶ所で告白が起きないようにしてほしい。
まずはさっき言ったシフトでパトロールにあたってくれ。告白阻止の方法は各自に任せるが、魔法の…」
「校長先生」
「む?」
刹那と同じ本校中等部の制服を着た生徒―――佐倉
愛衣が虚空を見つめ、確信を持って口にした。
「誰かに見られてます」
「なに?」
愛衣の報告と同時、濃い髭を蓄えたサングラスの男性教師―――
神多羅木が腕を上げて指を鳴らす。
“パチンッ―――ボヒュッ!!”
空気を切り裂く音が鳴る。
直後、目を凝らしたネギの瞳が、神多羅木が放った鋭い
真空の刃の姿を捉えた。
「おおっ!!」
「オモロい無詠唱呪文やなー」
カマイタチは、
滞空してこの集会を盗視していた飛行カメラを真っ二つに切り裂いた。
破片をバラ撒いて落下してゆくそれをサングラス越しに確かめると、神多羅木は紫煙を吐いて口を開く。
「魔法の力は感じなかった……機械だな」
「生徒か、やるなー。人払いの結界を抜いてくるとは」
「ウチの生徒達は侮れないですからねー」
神多羅木の言葉に、小太りで細目の男性―――弐集院と明石は、気楽な様子で視線が消えた方向を眺めている。
そんな彼らの傍を抜け、聖ウルスラ女子高の生徒―――高音・D・グッドマンが近右衛門に近づいた。
「追います」
「深追いはせんでいいよ。こんなことが出来る生徒は限られとる」
「ハイ」
これ以上ここに集まる理由はなく、頃合と判断し、近右衛門は改めて声を張り上げた。
「さて、たかが告白と思うなかれ!事は生徒達の青春に関わる重大な問題じゃ!
但し魔法の使用にあたってはくれぐれも慎重に!よろしく頼むぞ、以上解散!!」
「ハイ!!」
「了解!!」
宣言と共に、魔法先生と魔法生徒が各々各自に動き出す。
同時に人払いの結界が解除されて、一般生徒がぞろぞろと広場に流れ込んできた。
「ああ、ネギ君」
「ハ、ハイ?」
一気に人混みに埋もれる中、ネギ一人だけが近右衛門に呼び止められる。
彼はいつもどおり気をよく笑うと、何の気なしにネギの心を抉る言葉を吐いた。
「ネギ君も告白されたりせんようにな?ふぉっふぉっふぉ」
心当たりがあり過ぎて呻いたネギの顔を、小太郎が不思議そうに眺めていた。
◇◇◇◇◇◇
「あやー、偵察機破壊!気づかれました!」
「流石ネ。対魔法使いステルスは完璧と思てたのに」
麻帆良学園都市中心街の一角で、怪しげなコートを着た二人組が囁き合う。
その顔はフードの影に隠れていて窺えない。
唯一、彼らの素性を推察できよう情報は、コートの背中に記された「工学部」の文字だけであった。
「ムッ――マズい、追っ手がかかたヨ!」
「ええっ!どうしましょー、記憶消されるかもー!?」
事前に打合せしていたのか、予め内心で決めていたのか。
思考するそぶりも見せず、二人のうち片方だけが立ち上がった。
「………はココに隠れてるネ、私が囮になる」
「だ、大丈夫ですかー?」
自分を気遣う仲間の声を背に受け少女は跳躍する。
そのまま建物の屋根から屋根へと飛び移り、自身に注目が集まるよう派手に麻帆良を駆けていった。
◇◇◇◇◇◇
登校前に明日菜達と落ち合うため、ネギ、刹那、小太郎の三人は横に並んで美術室を目指していた。
「へー、アスナって美術部なんか。
動きが素人やから武術は齧ってへんて判ってたけど…なんであんな動き出来んねん」
「ア、アハハ。でも驚いたなー。
世界樹もそうだけど、この学園にあんなに魔法使いがいたなんて」
学園祭の影響で辺りはすっかり露店だらけだ。
今では野菜や果物まで屋台で売られ、麻帆良の街並みと合わせて外国の市場のような様相を呈している。
「でもアイツら、
戦ったら大したコトないやつらばっかやで。やっぱ西洋魔術師はアカンなー」
「もー、すぐそっちに持っていくんだから」
「戦うのが好きなんですね」
「まーな。今回はさして面白くない仕事やろーけど、報酬分は働くで」
菓子を買い食いしながら話す小太郎の言葉に相づちを打ちながら、一行は賑わう市場を歩いていく。
「………なあ兄貴。魔法先生の仕事入ったらスケジュール………ヤバイんじゃ」
「!!!」
往来の真ん中で停止するネギ。
彼はカモの言葉に顔を青くして、震える手で懐から手帳を取り出した。
「どーしたネギ、なに止まっとん…何やそれ?――うげっ」
「ど、どうしました?」
開いたページに書かれているのは、スケジュール表。
ネギの学祭三日間は昨日の時点で、二十人以上との予定でギチギチに詰まっていた。
そこへ更に、魔法使いの仕事が追加されるのだ。
「こ、これは大変ですねー…」
「こんなのもう無理だよ…」
「こりゃマジでお手上げかもな」
涙するネギの肩ごしに手帳を覗くと、刹那とカモも盛大に顔を引きつらせた。
「しかも女との約束ばっかかいな。見損なうでホンマ」
「ちっ違うよ!僕は先生として皆の活動を見…」
“ガシャアンッッッ!!”
「うわっ!?」
「何や?」
真横から聞こえたけたたましい破壊音。
驚きながらそちらへ顔を向けた三人は、その惨状に目を丸くした。
「や、屋台が崩れた!?」
「先生、危険です!」
「手抜きで建てたか?なんや落ちてきたんとちゃうやろな」
驚くネギを守るように刹那が彼の前に立ち、小太郎は崩れた屋台の上方へ視線を向けた。
屋根が崩壊した屋台からはパラパラと木屑が散り、周囲に砂埃が充満する。
それが収まって視界が開けた時―――三人は再び驚愕に包まれた。
真っ二つに割れた屋根の上から、一人の少女がネギ達の前に転がり落ちる。
屋根の崩壊は、
彼女が落ちてきた事が原因だった。
「だ、大丈夫ですか――って、あなたは…!」
「ネ、ネギ坊主……」
ぺたんと地面に座り込んで、荒れた息を必死に整えて言葉を紡ごうとしている少女。
彼女の顔は、ネギのよく知るものであった。
「丁度良かった、助けてくれないカ」
テストは必ず全教科満点を取る天才で、中学生ながら大学工学部に研究室を持つ「麻帆良の最強頭脳」。
中国武術を嗜み東洋医術に精通する「完璧超人」。
そしてここ麻帆良で屈指の中華料理屋台、『超包子』を経営するオーナーでもある―――彼女は。
「私、悪い魔法使いに追われてるネ」
ネギの担当クラス3−Aの、出席番号19番――――
超鈴音はそう言ってネギを見上げた。
◇◇◇◇◇◇
焦りを隠せないその声色は、まるで悲鳴のようだった。
「っ!! レーダーに感アリ!? そんな、超さんに釣られたんじゃ…」
そう呟く彼女の仲間が派手に動き回って敵の目を引き、その隙に様子を伺ったのち安全な場所まで撤退する。
屋根の上で身を隠していた少女は、その策が不発に終わった不測の事態に直面した。
「――おりゃっ!」
一秒に満たない逡巡の後。
即時退避を選択した少女は、何の躊躇なく屋根の上から身を投げた。
魔法使いでもなく、超人的な身体能力も持たない彼女にとって、それは自殺以外の何ものでもない。
しかし、実際にそう言われれば彼女は鼻で嗤うだろう。
何故なら彼女には、彼女が最も信頼し、
また人並み以上に扱うことの出来る力―――『科学力』という最上の味方がいるのだから……!
“ボシュッ!!ガルルルルルル……ッ!!”
腰のベルトから発せられた発射音。
射出されたアームが屋根の縁を確かに掴むと、それと繋がるワイヤーが収納筒から勢いよく流れ出ながらブレーキをかけ、少女の体が落下する速度を著しく減じさせた。
―――ロケット・アンカー。彼女が開発した装備の一つ。
コンクリートの地面に着地した少女が腰の制御盤を操作すると、ワイヤーはすぐさま収納されてただのベルトの姿へ戻った。
「はぁっ…!う、上手くいった…追っ手の反応は…!?」
普段運動をしない彼女はこれだけで体力を消耗し、息を上げてしまっていた。
だがゆっくりしている時間は無い、懐から取り出したノート大のレーダーに目を通す。
画面に映る追跡者の反応は――――彼女自身を示すそれとほぼ重なっていた。
「っ!!」
目を剥いて、少女は口元を慌てて押さえる。
視線で周囲を窺い耳を
欹て、必死に呼吸と気配を押し殺した。
「………葛葉。仕事熱心なのは結構だが、なぜ俺を巻き込む」
「人手は多い方が良いでしょう。
急な事で世界樹が問題になった今、これ以上の厄介事は御免です」
屋根の上―――直前まで少女が隠れていた場所の近くを、二人の魔法先生が彷徨いている。
(あれはさっきの集会に居た……神多羅木…先生と、葛葉刀子先生……!)
―――マズイ。どちらも武闘派だ。
少女の頬を冷や汗が流れていく。
これが明石や弐集院、瀬流彦ならばまだ望みがあった。
戦闘力という点でも、話し合いが通じる相手だという意味でも。
しかし――――葛葉刀子。アレは駄目だ。
厳格な性格と激しい気性。敵対したら一番相手にしたくないタイプの剣士だった。
例え確証がなくとも、少女が学園との協定に反した行動を取った容疑者である限り、よほど筋の通った言い訳をして無関係だと思わせなければ、「事情を聴くため」と言って学園まで連行されてしまうだろう。
「………〜〜っ!!」
下手を打てば、記憶を消される。
目をきつく閉じて、その恐怖と緊張を少女は必死に押し込めた。
「学園長は深追いするなと仰っていたがな」
「そんな事は解っています。学園に戻るついでに様子見に来ただけですから」
「何か痕跡が残っていれば儲け物、というワケか。…追跡魔法もこの辺りが限界のようだ」
「そうですか…では、あとはガンドルフィーニ先生達ですね。
魔法生徒が二人も付いていますし、取り逃がすことは無いでしょう」
「個人的にはグッドマンに期待だな。
何せあの齢で人型の使い魔を二十体近く操る逸材だ」
(!! 人型を二十体…!? 超さん……!)
囮となった仲間を思い、少女の不安が大きくなる。
しかしそれも、追跡者の新たな動きによって思考の外に追いやられた。
(え――こ、こっちに来る―――!?)
「では私は、最後にこの周辺を探ってから戻ります」
「仕事熱心もほどほどにしておかないと保たんぞ。俺は持ち場に帰らせてもらうからな」
「はい、ご協力ありがとうございました」
黒いスーツの人影が屋根を跳んで離れていく。
そして残された女性の足が、少女が息を潜める路地に向いた。
少女は焦る。
まさか―――そのまま
真下に降りてくるつもりか、と。
(こ、この場所が割れたという事は、ステルス迷彩は見破られてしまう可能性が高いです!
隠れる場所もありません、私の足じゃ走っても逃げ切れ…いや走ったら音が出てバレ…いえそれ以前にもう間に合わ―――)
―――たんっ―――スタッ…。
屋根を蹴った葛葉刀子は、野太刀を持ったまま真下の路地にしゃがみ込むように着地した。
“…ワイワイ…ガヤガヤ…”
その狭い路地から大通りを眺めれば、学祭前で賑わった生徒達の姿と喧騒が窺える。
(……なにかの気配が残っているような気もしますが……)
「いえ、気の所為ですね。近くに人が多いからでしょう…まだまだ精進しなければ」
そう独りごちて、葛葉刀子はそのまま裏路地へと消えていった。
◇◇◇◇◇◇
“――――ボボボボボッ!!!”
『魔法の射手』が命中し、高音の放った“影法師”が吹き飛ばされた。
―――影法師。人の形を持った影。
街中の影という影から滲み出るそれは、白い仮面と黒いマントを纏う全身黒尽くめの怪人の姿をしている。
その正体は実体化した影の精霊。
“影”に実体を与え自在に操作し武器とする『操影術』の応用であり、影を使い魔として使役する高等精霊術だ。
空を駆ける二十一体の影法師は、偵察機によって先程の集会を覗いていた人物を今も自動追尾している。
しかしそのうち四体が“補導対象”に接近した途端に反応を失い、十三体が近づくこともできず何者かの放った魔法で消滅した。
思わぬ出来事に、追撃する魔法使い――――高音と愛衣に衝撃が走る。
《そんな、『
魔法の射手』!? 敵に魔法使いがいます!》
《十七体の使い魔が一瞬で……中々の手練です》
予想外の事態に浮き足立つ愛衣と、容易く使い魔を倒されたことで警戒する高音。
二人は正反対の反応を示しながら、同じ相手へ報告と共に念話を繋いだ。
《ふーむ…要注意生徒の補導だけかと思いきや……これは》
その相手とは、彼女たち二人の監督役である魔法先生、ガンドルフィーニ。
彼は敢えて念話を通さず、ある懸念を口にした。
「天才・超鈴音に魔法使いの仲間がいたのか? まさか“
闇の福音”じゃないだろうな」
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。そして超鈴音。
片や魔法界に悪名を轟かせる元賞金首と、片や
関東魔法協会としての麻帆良学園における問題児。
極一部の関係者にしか知らされていないが――――この二人には、とある接点がある。
それを知ることを許されているガンドルフィーニは、努めて冷静を保って歩を進めた。
◇◇◇◇◇◇
先ほど葛葉刀子が降り立った場所から、角を一つ曲がっただけの路地。
そこに、魔法使いから逃げ惑っていた少女が、背後から男に抱き着かれて捕まっている姿があった。
「〜〜っ!!んん〜〜!!」
口は塞がれ、しっかりと腰に腕を回されて身動きすら許されない。
息苦しさで顔は赤くなり、涙目になって抵抗するが―――前触れ無く拘束が緩んだ。
「……刀子さん…行ったか?よし、もういいぞ」
「ぷはっ!!」
体の自由を察すると、少女はバタバタと手を振り乱して背後の男から距離を取る。
そのまま逃げなかったのは、酸素不足と直前までの出来事で心身ともに限界を迎え、逃げるに逃げられなかっただけだ。
……しかし、振り返った先にあった顔を見て、彼女は目を丸くした。
「――し、士郎さん!?」
「…あー、すまん。怖がらせるつもりはなかったんだが」
なんか、追いかけられてるみたいだったから―――と続ける士郎。
彼は涙目で怯える葉加瀬を見て、申し訳なさそうに頬を掻いて立っていた。
「で、いったい何をしたんだ聡美ちゃん」
「え、ええとー、これはですねー……?」
優しく問い掛ける形でありながら、咎めるように顔を寄せてくる衛宮士郎。
葉加瀬聡美は、思考と目をぐるぐる回しながら必死で言い訳を考えた。
<おまけ>
“――――ボボボボボッ!!!”
ネギの放った『魔法の射手』が命中し、超を付け狙う影法師が消し飛んだ。
―――影法師。人の形を持った影。
絶え間なく襲い来るそれは、白い仮面と黒いマントを纏う全身黒尽くめの怪人の姿をしていた。
その正体は実体化した影の精霊、そしてそれを使役する精霊術による使い魔だ。
空から降下して超に迫った十七体の影法師は、
そのうち四体を刹那と小太郎によって倒され、残りは彼らに近づく事も出来ずネギの魔法で全滅した。
超
「おおっ!祭りの花火に紛れて、街中で堂々と魔法を撃つ!さすがネギ先生ネ!」
ネギ
「えーと、超さん?いつまで僕の背中に乗ってるんです?」
超
「ウム、意外と良い乗り心地」
ネギ
「あのー…。ていうか何で僕が魔法使いだって知って…?」
十三体の使い魔を一撃で倒したネギ。
その背中には、足を抉いたと言い張って強引に彼の背中に飛び乗った超がいた。
超
「もしや魔法を使っているのかナ?飛んだり跳ねたりしている割には揺れが小さい、そのうえ衝撃もほとんど無い。
イヤーとても快適ヨ。こんな乗り心地のマシン開発したいネー」
影法師からの追撃を躱し続け動き回るネギに乗って、挫いた筈の足首をプラプラ揺らす元気な超。
その様子にネギは戸惑い、刹那と小太郎が胡乱な視線を向けていた。
〜補足・解説〜>食卓に並ぶブリの切り身
この時の衛宮邸……げふんげふん。
マクダウェル家の献立は五穀米、金平ごぼう、出汁巻き卵、キュウリの漬物、ブリの切り身、ほうれん草と豆腐の味噌汁、茶碗蒸し、牛乳です。
そしてこの日(=エヴァと士郎がケンカした日)が麻帆良祭の何日前か、というタイムテーブルは正確に設定しておりません。おおよそ麻帆良祭の一週間程度前くらいでしょうか。
>貴様は最初の願いを忘れているぞ
家族を目の前で失ったこの小説の士郎の願いは「大切な誰かを守る」こと。
しかし成長して力をつけた今の彼は「もっと多くの人の力になりたい」と思い始めている。
それ自体は悪いことではないが、そのために足元が疎かになってきたことを、士郎のトラウマに触れぬよう気を使って諌めようと奮戦したのが、素直になれない口下手な悪の魔法使いなのであった。
>かつての無力感と諦念から得た、忘れざるべき教訓
ぶっちゃけ、今の士郎は過去編の出来事を全否定。
ここ数年で強くなってきて調子に乗り始めてると言えば分かりやすいですかね?
誰か過去編ヒロインを連れてきてー!
でも作者的には真名さんを推挙する(何。
真名編(第三章-第37話)で彼女の過去が語られ、士郎に似た人の破滅までを見ている彼女なら、初心を忘れている士郎を正すには適任ではないかと。衛宮士郎が初心を忘れると碌な事にならない、というのはアニメ『Fate/stay night[UBW]』で証明されている…!(汗)
しかし超の『計画』が実行直前のため、彼女に肩入れしている真名は、学園サイドトップである学園長の身内というポジションにいる士郎と距離を置いているという状況なのであった!くそっ、これが世界の修正力か!?
>反対などと言っていない
言葉の裏や態度では思いっきり反対の意を示しているが、直接的には口にしていない。
だから好きにしろもう知らん、ふんっ!というツン。デレは無い。
>彼女は静かに食事を始める。
チャチャゼロ
「御主人。アノ険悪ナ空気ノ中デ、ヨク美味ソーニ飯ガ食エルナ」
エヴァ
「………士郎が作った食事が勿体無いだろう」
デレは無いと言ったな、あれは嘘だ。
>その対面で何も言うことが出来ない男を、完全に居ないものとして扱いながら。
な、なんか士郎がダメ男に見える…!
>麻帆良祭前日…なのに問題だらけ。
3−Aのお化け屋敷は完成しないし、世界樹の発光周期が一年早まって厄介事と仕事は増えるし、誰かさん達(匿名希望)が不穏な動きを見せるし―――という各所での暗雲っぷりである。
大丈夫か麻帆良学園。
>三十一人の少女達―――注釈、一部除く
エヴァ
「毎年毎年学祭準備などやってられるか…十五年目の大ベテランだぞ私は…ぶつぶつ」
千雨
「徹夜とかフザけんな眠みーよチクショウ」
さよ
「わー♪今夜は朝まで皆さんと一緒ですーやったー♪」
>完徹
徹夜…夜を徹する。夜遅くまで起きていること。
完徹…完全な徹夜。朝まで一睡もせず起きていること。
>恒例暴挙
こ、恒例…?暴挙って何だっけ……。
>校則は十分に認知されているだけで守られる気配がほとんど無い
ダメじゃん!認知してるのに!守らなきゃダメじゃん!!
教師陣が報われない…こんな暴挙が許されていいのか…っ!恒例暴挙……!
>明石裕奈の父親である明石教授
原作と違い、この小説世界では明石教授とネギはいつの間にやら既に知古。
改変したのには大した理由はありません。
たぶんネギは、麻帆良で教授と裕奈が親子デートしてる時にでも会ったんじゃないですか?(適当
>この学園にこんなに魔法使いがいたなんて…
実際はどれくらい居るんでしょうね。単行本で(直接的な描写を)見る限り百人くらいでしょうけど、明石教授やナツメグのような裏方の存在を考えると数百人居てもおかしくない?
>刹那の剣の指導役でもある葛葉刀子
本来の師匠は青山師範なる女史ですが、麻帆良では刀子先生から時折指導を受けているらしいです。
>その様子を見て頭が痛そうにこめかみを押さえた。
教え子である刹那のちょろさに頭を抱えた刀子先生であった。
まあ、弟子が師匠に似るのは仕方ないことですね(何。
>警備員
エヴァに『投稿地獄の呪い』をかけた時に、ナギが「麻帆良のじじいが警備員欲しがってたんだよな」と呟いてた所から着想を得た本作独自の設定です……ってのは後付けの理由だったりする(笑)
>以前は西の陰陽師が五月蝿かったが、ネギ君が西の長に友好の密書を届けてくれて以降はだいぶ静かになった
という理由で今の麻帆良はかなり平和になってます。
千草の反乱を有効利用して詠春さんがバリバリ仕事をしている模様。
>警備員やっとると給料がもらえる
近右衛門
「先生の場合、書類上はただの残業扱いじゃの。教師って残業代出るのか知らんけど(作者の声)」
明石
「このお金は裕奈の将来のために貯めておこう」
ガンドルフィーニ
「娘の教育費として積み立てよう」
弐集院
「娘に美味しいお土産でも買って帰ろう」
刀子
「ふふふ、将来の結婚資金として貯金して…」
士郎
「なんか使い時が来なさそうな気がす―――って鼻の前で2m近い太刀がフルスイングされたっ!?」
シャークティ
「はあ…。今のはあなたが悪いですよ士郎君、女性に対する気遣いが足りていません」
瀬流彦
「まあ、結婚に縁が無さそーなのはシャークティ先生も同じ…って投擲用の細剣が僕の前髪を掠っていった!?」
神多羅木
(若い奴らは怖いもの知らずだな…)
タカミチ
(ハハハ…)
>生徒の場合は成績にちょっとだけ色をつけてあげとる
ネギ
「ああっ!?本当だ僕が書いた通知表よりちょっと成績上がってる!(保管していた刹那の二年生三学期の成績を見ながら)
い、いつの間に……!?」
近右衛門
「――ふ。その程度の改竄、このぬらりひょんには容易い…」
ネギ
「はっ!?学園長いつの間に背後に…ってもう居ない!!」
近右衛門
「残像じゃ…」
>強引に聴かせる威圧ではなく〜自然と耳を傾けさせるような
言い換えると年の功。おじいちゃんおばあちゃんの言葉って人生の重みがあるよね。
>麻帆良学園で最強の魔法使い
タカミチより強いという事実に、魔法世界編を読んでから戦慄したものです(震え声
なお現時点でウチの士郎とタカミチはだいたい互角。
つまりこの小説において近右衛門は士郎より強いってことだ。なんですかこのジジイ!?
>魔法の力は感じなかった……機械だな
これが使い魔や魔法の類での監視だったら「外部の魔法使いが麻帆良に侵入して諜報活動をしている危険性」が出てくる訳ですが、機械(カメラ)だったからその線は薄いという判断なのかなと、原作を読んで推測しています。
ただ、弐集院先生の「生徒か、やるなー」という台詞については、「麻帆大工学部の研究者の誰かがやったという線は考えないの?」とも思いましたが、魔法使いと協定を結んで真面目に魔法を科学的に研究している人物より、その協定を破る常習犯の生徒(約一名)にまず疑いがかかるのは当たり前ですね。
>弐集院と明石は、気楽な様子で
>そんな彼らの傍を〜高音・D・グッドマンが
生真面目な高音はこの時、「弐集院先生も明石教授も何を呑気な…」と思いながら、学園長に「追います」と断りを入れました。
>ネギ坊主
超のネギに対する呼び方が「ネギ老師(先生)」だったり「ネギ坊主」だったりするのは原作準拠によるもの。ただし今回より後は「ネギ坊主」で統一されている…はず。
計画発動に伴い堂々とネギに接触するようになって猫かぶりをやめたのか、ただ単に原作サイドで設定が固まっていなかっただけなのかはわかりません。
過去には千鶴が夏美を呼び捨てにしていたりするしな!>単行本8巻
>ロケット・アンカー
或いはワイヤーアンカー。ロボットアームやアンカーが先端に付いたワイヤーを射出して物体に固定し、そこを基点にしてワイヤーで使用者の体を支えたり移動、運動を補助する装置。
上手く説明できないので、詳しいことはたぶん『○撃の巨人』を読めばわかる?(オイ
>彼女はこれだけで体力を消耗し、息を上げてしまっていた
研究者って体力勝負な所もあると思うので、葉加瀬に体力が無い訳じゃないんですよ。
葉加瀬には「筋肉がない」ので「運動する」と消耗度が大きいんです。
>明石や弐集院、瀬流彦ならばまだ望みがあった。
それでも一般人より遥かに強いので、葉加瀬が戦っても勝ち目はない。
彼女の意図は、上記三名のような穏健派が相手なら、話し合いや口八丁で切り抜けられる可能性が“まだ”あるだろうという話です。
>いったい何をしたんだ
>咎めるように顔を寄せてくる
この時の士郎の考えは、「取り敢えず助けたけど事情はしっかり聞かないとな。刀子さんが理由もなく追い掛け回すとは思えないし」という感じ。
>二十一体の使い魔〜今も自動追尾している
>十七体の影法師〜ネギの魔法で全滅した
高音の放った使い魔は全部で二十一体。そのうちネギ達に襲いかかったのは十七体までだったので「ネギ達の認識では全滅」という表現になっているだけです。
なので高音サイドでは「十七体やられた」としか言っておりません。残りの影法師はその後も超を追尾中です。
次回、ネギま!―剣製の凱歌―
『第三章-第54話 前夜祭/波乱の予兆(仮)』
それでは次回!