“
ムーサ達の母ムネーモシュネーよ、
おのがもとへと我らを誘え”
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――――サバイバーズ・ギルト。
戦争や災害、事故、事件などから奇跡的に生還した人が陥る精神的疾患のひとつ。
周りの人々が亡くなったのに、自分は助かったという罪悪感。
この時、助かった自分は選ばれた存在なのだと、特別視をして自己の精神を守る人もいれば、
助かった以上、自分は特別でなければならないという強迫観念に囚われる人もいる。
彼も、そんな子供だった。
『―――みんなを助ける、正義の味方になる』
記憶の中で見つけたのは、どこにでもいるような普通の少年。
正体は異常者。ただし善人寄り。原因はサバイバーズギルト。
………良く言えばお人好し。将来の夢は正義の味方。
見ているだけでイラつくほどの、凝り固まった理想主義者だ。
『判っていた筈だ。明確な悪がいなければ君の望みは叶わない。正義の味方には倒すべき悪が必要だ』
『誰かを救うというのはね、他の誰かを救わないっていうことなんだよ。
正義の味方が救えるのは、味方した人間だけだ』
―――正義の味方。
万人の平和と幸福を望んでおきながら、誰より悪の存在を必要とするモノ。
―――正義の味方。
全てを救うことなど出来ず、救える数は有限で、倒すべき敵を救うことは出来ないモノ。
………“みんなを助ける正義の味方”。そんなものは空想のお伽噺だ。
全てを救うことなどできないから、結局は誰かが犠牲になる。
―――そしてこの少年は、どうやらそれが我慢できぬらしい。
“あの地獄から唯一人救われた者として、この身は誰かの為にならなければならない”と。
少年はずっと、そんな強迫観念に突き動かされて生きているのだ。
それが苦痛だと思う事も、破綻していると気付く間もなく。
『俺は、置き去りにしてきた物の為にも、自分を曲げる事なんて出来ない』
『その道が。今までの自分が、間違ってなかったって信じている』
『たとえ俺が間違えていても、この理想だけは―――決して』
『決して、間違いなんかじゃないんだから……!』
……ほとほと呆れて嫌になるが。
いっそここまで愚かしいと、一周回って可愛く見えてくるのだから困ったものだ。
―――だから。
―――だから、やめろ。
『それで……誰も泣かずに済むのなら』
…やめろ。やめろ、やめろ!
記憶越しに見ただけで、私は本能で理解した。
“それ”は真っ当なモノではないと。その手を取れば待つのは破滅だけであると。
手を伸ばすな、やめろ、その先は――――地獄なんだぞ……!
『―――契約しよう。我が死後を預ける。その報酬を、ここに貰い受けたい』
――――“守護者”。世界と契約して英雄となった者は、死後その代償としてこれに成る。
別名、霊長の抑止力。人類の自滅を防ぐための安全装置。
人類が滅ぶ要因が発生した際に呼び出され、これを速やかに取り除くカウンターガーディアン。
それが、あの少年が辿り着いた、理想の、末路。
かつて少年だった彼の風貌は、いつしか面影程度しか残らないほど変化した。
鋭く逆立った白髪。浅黒い肌の武人。
翻る赤い外套を纏うのは、鍛えられた鋼の肉体。
………眉間に皺を寄せる顰め面は、何故だか見ているだけで腹が立った。
守護者は、人間が世界を滅ぼしかける度にその後始末に使われる。
滅びの場にいる者を救うのではなく、全て殺すことでその他の人類全てを救う反英雄。
なってしまったが最後、永遠に人間のために働き続けさせられる、世界の奴隷だ。
『守護者は人間を守る者ではない。アレはただの掃除屋だ。オレが望んでいた英雄などでは断じてない』
人類全体を守るために、一部の人間を切り捨てる事で滅びを回避する。
それが、みんなを助けたいと願った少年の、成れの果てというべき未来だった。
―――その、切り捨てられる人々をこそ助けたいと。
こぼれ落ちる弱き人々を、掬い上げてやりたいと、そう、願っていたはずなのに。
………かつて助けられた、自分のように。
『終わる事などなかった。争いはどこにいっても目に付いた。キリがなかった。
何も争いのない世界なんてものを夢見ていた訳じゃない。
ただオレは、せめて自分が知りうるかぎりの世界では、誰にも涙して欲しくなかっただけなのにな』
『殺して、殺して、殺し尽くした。己の理想を貫くために多くを殺し、
命なぞどうでもよくなるぐらい殺して、殺した数の数千倍もの人間を救った』
『そんなことを何度繰り返したか……分からないんだ』
―――なんだこれは。馬鹿げている。悪い夢を見せられている。
この男には救いがない。
死ですら安息に為り得ない。
この正義の味方は、永遠に―――――報われない。
『そうだ……オレは英雄になどなるべきではなかった』
…………往々にして。夢とは現実の前に脆く、儚く、破れるもの。
―――みんなを助ける正義の味方。
なんという事はない。
あの少年の理想もまた、より現実に合致する形へと歪んでいったのだ。
―――「より多くの人を救う、正義の味方」へと。
体は剣で出来ている。
“I am the bone of my sword”
ただの一度も敗走はなく、ただの一度も理解されない。
“Unknown to Death.Nor known to Life”
―――その体は、きっと剣で。
“■■■―――unlimited blade works.”
……私が観たのは、あいつのものではない記憶だった。
あいつの魂に刻まれただけの、他人が歩いた人生だ。
それでも、紛れもなく―――この男は、あいつなんだ。
…………あいつが辿り得る、可能性のひとつとして。
“――――、――――。”
………剣を
鍛つ、音が聞こえる。
あいつを手招きしているのか、来るなと警告しているのか。
ただ…私に言わせれば。
その音は、耳障り以外のなんでもなかった。
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――――………記憶の、最後。
戦いの果てに消えゆく男を呼び止める、赤い少女が目を惹いた。
『うん、わかってる。わたし、頑張るから。
アンタみたいに捻くれたヤツにならないように頑張るから。
きっと、あいつが自分を好きになれるように頑張るから……!』
………彼女の言葉が、一筋の希望に見えたから。
“――――その役目……この世界では私が担おう”
それが、彼の記憶を盗み見た自分の、果たすべき
義務であると。
西暦2002年。六百年を生きる悪しき吸血姫は、純朴な少女のように誓いをたてた。
<第三章-第54話 波乱の予兆・前夜祭>
麻帆良学園本校校舎の外れで、一様に困惑した表情を浮かべる二つの集団が睨み合っていた。
「ど、どうしてガンドルフィーニ先生達が超さんを?」
「それはこちらのセリフだよネギ君。どうして君が超鈴音を庇うんだ?」
超を追っていた“悪い魔法使い”と交戦したネギたち三人。
しかしその正体は―――魔法先生ガンドルフィーニと、魔法生徒の高音と愛衣だった。
ネギは自分の生徒を守ろうと防戦し、ガンドルフィーニは魔法使いの集会を盗視した危険人物を捕らえようと追撃する。
双方は互いの認識に齟齬を抱えたまま戦闘へ突入し、そこでようやく事態が発覚したのだ。
「成程、超君の担任教師は君だったのか…。
しかしその様子では、彼女について何も聞いていないんだね?」
「は、はあ…。何をですか?」
ガンドルフィーニの話によると、超は学園との協定により魔法を“ある程度まで”知る許可を得ているのだという。
そして同時に、許可された範囲以上に知ること、知ろうとする行為は違反となる。
超はそれを破る常習犯で、前回注意された際に「これ以上違反を行った場合は記憶消去もありうる」と言い含められていた。
「……待ってください。確かに超さんは何か違反をしたかもしれません。
でもだからって、僕の生徒を勝手に危険人物とか凶悪犯とか決めつけないでください!!」
「――――。」
ガンドルフィーニは僅かに呆気に取られ、高音と愛衣も気圧されて押し黙った。
超の担任教師であるネギの言い分には、確かにある程度の力がある。
だが何より彼らを黙らせたのは、先程までこの状況に困惑していた子供と思えない、ネギの毅然とした態度だった。
「彼女は僕の生徒です。僕に全て任せてください!!」
「………フム」
ガンドルフィーニが顎に手を当てて思案する。
後ろに控える高音は、その様子に驚いて目を剥いた。
「……わかった。今日の所は君を信頼しようネギ君。
しかし超君、次はないぞ。今回の件は全て学園に報告する。
今度なにかあったら我々は決して見逃さないし、ネギ君でも庇いきれないと覚えておきたまえ」
「………ハイ」
「では後は任せたよネギ君」
ネギに柔らかな笑みを残して、ガンドルフィーニは背中を向ける。
納得していない様子の高音がネギ達をひと睨みしたものの、それ以外は何もせずに大人しく去っていった。
「………ふう」
何とか場を収められた安堵で、ネギは肩を落として息を吐く。
それを合図に他の面々も一斉に緊張を霧散させた。
「ケッ。なんや、教師なんてどこ行ってもエラソーやな」
「まあ、それが仕事ですから」
「いやーホントに助かったヨ。ネギ坊主は私の命の恩人ネ!」
「そんな大げさですよ。でも超さん、危険人物って言われちゃうなんて一体何したんですか?」
「ふふふ。それはヒ・ミ・ツ、ネ♪」
「ダメですよ。僕、責任があるんですから」
「―――それよりネギ坊主、何か困っていることはないか?」
「えっ」
思い当たる節があってネギが体を硬直させると、超はそれを見逃さずに畳み掛ける。
彼女は片目でウィンクして愛想よく笑うと、得意げに提案した。
「恩に報いるためにネギ坊主の悩みを一つ解決してあげるヨ、この超鈴音の科学の力でネ♪」
あからさまに話を逸らされたが、ネギはあっさりこれに食いついた。
◇◇◇◇◇◇
(……今回は少し軽率が過ぎたナ。
イザという時は力ずくで逃げる算段だたが…ネギ坊主のお陰で穏便に済んだヨ♪)
ネギ達と別れ、超は麻帆大工学部の廊下を一人歩いていた。
口元に微かな笑みを浮かべ、自信に満ちた足取りで悠々と歩を進める。
(―――“計画”は実行直前だ。下手はもう打てないネ)
自戒して笑みを消し―――それでもいつもどおりの微笑を残して―――超は葉加瀬研究室のセキュリティドアを開いた。
「あ、超さんっ!!よかった、無事でなによりです!!」
「ナハハ、なに言ってるハカセ。あの程度ワタシにかかれば造作もないヨ♪
……というのは冗談で、かなり際どかったんだがネ」
無事に戻ってきた超の姿を確かめて、葉加瀬が破顔して駆け寄った。
そんな彼女を安心させようと、超は努めて冗談じみた軽口を叩く。
「そうでしたか。あ、それと…」
「ウム?」
「おっ、君が超さんか。お邪魔してるよ」
言い淀む葉加瀬を訝しむ超は、背後から近づく人影に直前まで気付かなかった。
「ここ、コーヒーしか置いてないのか?
余計なお世話かもしれないけど胃が荒れるぞ」
「………そーいうのは客人がするコトではないヨ、衛宮サン」
三人分の珈琲をお盆に載せて、衛宮士郎が顔を出した。
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資料に埋もれていた丸テーブルを引っ張り出し、三人は揃って椅子に腰掛けた。
「―――む」
「……ふわー」
「気に入って貰えて何よりだ」
士郎が煎れた珈琲を口にすると、超は顔色を変え、葉加瀬はふわりと相好を崩した。
それを見て士郎が得意げにニヤリと笑う。
(…何故か知らぬが悔しいヨ)
一体、自分達が適当に煎れるのと何が違うのか。
思考を巡らすも、珈琲に求める機能が「脳の覚醒」だけである彼女達では、士郎の立つ境地には到底辿り着けそうになかった。
時間があれば今度は、いま飲んでいる以上の味を出せる全自動コーヒーメーカーを開発してみようか―――そこまで考えて、超鈴音は苦笑した。
(何をバカなことを。私にはもう、そんな時間はない)
世界樹の大発光周期が今年に早まった時点で、その“事実”は確定していた。
「ん、どうした超さん」
「…なんでもないヨ。この味は私には出せないだろうと思っていただけネ」
カップに視線を落とす振りをして、超は士郎の顔を盗み見る。
(………エヴァンジェリンは、彼がここに来ていることなど知らぬだろうナ)
でなければ、
あの警告の意味がない。
となれば、衛宮士郎がここに来たのは一体どんな思惑か。
珈琲を口にしながら、超は半目で彼の観察を継続する。
「こんなにおいしいなら、今年の麻帆良祭で大繁盛じゃないですかー?」
「…あー、褒めてもらうのは嬉しいんだが、その期待には答えられそうもない。
学祭期間中は店を閉めようと思ってるんだ」
(――ほう?)
超の目が鋭く光る。無論、それを気取られるようなヘマはしない。
(世界樹大発光の対応に駆り出されるのかナ?だとすれば…彼も計画の障害となる可能性が増す)
「え、どうしてですか?」
「ちょっと麻帆良の外に遠出しなきゃならなくなってな。
長ければ一ヶ月…いや、夏休みに跨るようなら二ヶ月―――」
「ええっ!そんなにですか!」
士郎の言葉に驚く葉加瀬の隣で、
そのやり取りに興味が無い体を装う超は「ズズ…」と珈琲を呷っている。
(…ハッタリか?私の反応を試している?
いや、“計画”がバレていないのならそんな真似をする理由はない。
偶然か、それともやはり計画が漏れていて、学園の差し金で探りを入れに…)
「それに、麻帆良祭の来場者数が凄すぎて俺一人じゃ店を回しきれないんだ。
去年はそれを思い知らされたよ。知り合いはみんな学祭で忙しかったから応援も頼めなかったし。
まさか学祭一日目で店を閉めざるを得なかったなんて…今でも苦い記憶だよ。ははははは」
「…そ、そうですか」
背中を丸めて瘴気を発散する士郎。
居た堪れず、葉加瀬は哀愁漂う彼の背中をそっと撫でて励まし始める。
それを見る超は、自分が何とも言えない表情をしている自覚があった。
(………なんかバカらしくなってきたヨ)
自分が警戒している男が、敵地の真っ只中と言える場所で、自分の仲間に背中を晒して慰められている。
なんて呑気だ。敵意も毒気もあったものではない。
超が肩透かしを食らっていると、士郎が思い出したように顔を上げた。
「ああ、そういえば超さんに訊きたい事があったんだ」
(――――来たか)
「…ふむ。何かナ?」
内心で身構えながら、超は表面上柔らかく微笑んで士郎を見つめる。
何やら葉加瀬が焦っているが、そちらは今のところ無視する事にした。
そして直後、それが間違いだったと天才少女は突きつけられる。
「実はさっき、刀子さんに追いかけられてる聡美ちゃんを助けたんだけど……君達、いったい何をやらかしたんだ?」
超鈴音の優れた頭脳は、想定しない事態に対して僅か一瞬で再起動した。
そしてこの場にいるただ一人の同志に目を向ける。
とどのつまり―――「ハカセ、私それ聞いてないヨ」という視線であった。
「………ハカセ」
「ス、スミマセン超さん…念話も無線も傍受される危険を考えると使えなくて」
「私が戻ってすぐ話をすれば――」
「士郎さんが思ったより早く出てきて…あと珈琲が美味しくて……つい」
「ハカセェ……」
何のことはない、士郎は場に居合わせた当事者として事情を聞きたがっているだけだ。
超が密かに進める“計画”を嗅ぎつけたのでは、などという彼女の警戒は全くの見当違い。
勿論その原因は、葉加瀬が超に事情を伝えなかった事にある。
「……………スミマセンでした」
超にジト目で見つめられること数秒、顔を逸らし続けた葉加瀬は観念してその言葉を絞り出した。
コホンとわざとらしく咳払いすると、超は気を取り直して士郎に向き直る。
今その口から出せるのは、素っ気ない拒絶の言葉以外に無かった。
「工学部の研究内容に関わること故、部外者には話せないヨ」
「……ふーん。研究、ねえ」
含みのある士郎の様子を見て、超はそれで当然と思った。
そう、当然だ。こんな説明で納得できるハズがない。
そんな簡単な人間なら、事情が訊きたいと言ってこんな所まで押しかけるような真似はしないだろう。
或いは、“魔法先生に追われていた”生徒の言葉を信用していないかもしれない。
「…まあ、話したくない理由があるなら、無理に聞き出すつもりはないが」
そう、思っていたから。
「………辛い事とか、大変な事があったら、その時は必ず誰かに相談するんだぞ。
いくら頭が良くたって君達はまだ子供なんだ。いくらでも他人を頼っていい」
超鈴音は、衛宮士郎の言葉に目を丸くした。
その声色に、自分達を気遣う優しさを感じれば、尚のこと。
普段の鈍感ぶりに反して、士郎は妙な部分で鋭い面も持ち合わせている。
『ん、どうした超さん』
先ほど、超が―――「もう時間がない」と、僅かに気持ちを沈ませたのを察したように。
“話せない”理由ではなく、超にはきっと“話さない”理由があるのだろうと。
士郎はそれを察し、またそれは正しく、それでいて追求をしなかった。
それでいて、あろう事か、超や葉加瀬の心配までしている。
「―――ふふふっ」
面白可笑しくて、気づけば超は堪えきれずに笑っていた。
「いやいや…聞いていた通りの人みたいネ、衛宮サン」
「……? 聞いたって、誰に?」
その問いかけにすぐには答えず、超は朗々と言葉を続けた。
「―――綺麗事と正義の味方が大好きで、馬鹿が付くほどお人好し。
目を離したら世界中を飛び回って人助けでも始めそう―――エヴァンジェリンに聞いていたとおりネ」
その回答に、今度は士郎が目を丸くした。
「なんだ、エヴァと知り合いだったのか?」
「ウム。茶々丸の動力部に魔力が使われているのは知っているネ?
それに関連した魔法理論はすべてエヴァンジェリンから提供されたものなのヨ。
その報酬が、学園結界に影響されない機械の従者―――『絡繰茶々丸』というワケネ」
魔法と機械のハイブリッド技術。その研究開発のため、超はエヴァンジェリンに。
魔力封印の影響を受けない従者を手に入れるため、エヴァンジェリンは超に。
それぞれの利益のため、彼女らは過去に取引を交わしていたのだ。
「…話を戻すけれど、そんなお人好しだから心配されているのかもしれないネ?
私に――――『衛宮士郎に接触するな』なんて警告をしてくるなんて」
「………!?」
「……混乱するのは無理もない、私も何故そんなコトを言われたのか分からないからネ。
しかし彼女の機嫌を損ねるわけにもいかないから結構気を使ったヨ。
茶々丸のメンテナンスは全てハカセに任せて、私は可能な限り貴方を避け続けたんだかラ。
なので今回は不可抗力ヨ。ハカセの研究室に衛宮サンが来ているとは知らなかったんだからネ」
語る超の瞳を見て、あの女は嘘をついていないと士郎は感じた。
しかし、ならばどういうことなのか?
(エヴァのやつ……いったい何を………)
士郎もそうだが、エヴァンジェリンも大概お人好しだ。
そんな彼女がしたことなのだから、やむを得ない理由があるのは間違いない。
少なくともその思惑は、彼女個人の私利私欲など悪いことではないだろう。
だが、この時はただ、間が悪かった。
ただひとつ、この場で、確実だと言える事があるならば。
今朝の口論に隠された真意は何か?
超への不可解な警告の意味は何か?
――――小さくとも、生まれた確かな不信感。
エヴァンジェリンと士郎の諍いは、亀裂となって拡がっていくように見えた。
◇◇◇◇◇◇
いつもなら暗く静まり返っている筈の街中は、露店の明かりと街灯に照らされていて今なお明るい。
加えて、夜空に弾ける花火によって、街はその都度に光と盛り上がりを増していた。
―――今夜は、麻帆良祭の前夜祭。
世界樹周辺で打ち上げ花火が催されるだけの行事だが、麻帆良の生徒や住民達の人気は高い。
麻帆良の街は、足を止めて花火を見上げる人々、花火に乗じて乱痴気騒ぎに身を投じる人々によって埋め尽くされた。
前夜祭に沸く麻帆良学園―――その喧騒を見下ろす視線がある。
「そういえばネギ先生達はどうでしたか?」
「うむ、思てたより良い奴だたよ。気に入たネ」
その場所は麻帆良学園の遥か上空、地上4000m。
飛行船の気球上部に設置された甲板に立ち、言葉を交わす少女達。
それは超一味の一部のメンバー―――超鈴音。葉加瀬聡美。そして―――絡繰茶々丸。
地上より著しく気温の低い上空故に、彼女らは揃って工学部製の防寒コートを身につけていた。
「うまく仲間に引き込めれば、かなり使えるかもしれぬヨ。……む、茶々丸どうした?」
笑みを浮かべて今後の計画について話す超が、訝しんで仲間を呼ぶ。
茶々丸は無表情で―――最近表情豊かになった彼女らしくない―――明後日の方向へ視線を飛ばしていた。
「…いえ、大したコトではありません」
「ほう。創造主たる私達に隠し事とは、随分とAIが成長したネ」
「フフフ、そうでしょう!もーだいぶ人間らしい反応を返してくれるようになっちゃって、からかうのが楽しいんですよー♪」
「ハ、ハカセそれは―――!?」
慌てて葉加瀬の言葉を遮ろうとする茶々丸。
加速していく両手の動きは支離滅裂で、現在は残像によって千手観音が顕現していた。
その焦りようを見て葉加瀬は、一層ニヤニヤした顔で目の前のガイノイドを見つめて思う。
―――「何これ、この子可愛い」と。
「それで?なに深刻そうな顔で考え事しちゃってたの?大したことなくても聞くよー?」
しかしそんな本心はおくびにも出さず、葉加瀬は
開発者としての顔で茶々丸に優しく問いかける。
その様子を見て押し黙ると……茶々丸は、観念して静かに懸念を口にした。
「………その。マスターと、士郎さんが……ケンカしていないか、心配で」
「「――――。」」
茶々丸は超の『計画』に協力するため、学祭期間中はエヴァの下へ帰らない。そういう契約だ。
そのため今朝、しばらく戻れないからと、徹夜明けの朝帰りという慌ただしさでも帰宅したのだが……。
―――茶々丸は、今朝の異様な空気を思い出す。
エヴァンジェリンと士郎のやり取りが……何というか、ぎこちない。
春―――桜通りの吸血鬼事件―――の時ほど険悪ではない。
だが、茶々丸はこの一件に、その時以上に根の深い“何か”が二人の間にある気がした。
(ああ、思い出したら余計に不安が……ハラハラ)
二対の瞳が見守る中、茶々丸は無表情なままでその場をオロオロし始めた。
「見てください超さん…こんなに心優しい娘に育ってくれて…グスッ」
「フ…ハカセ。科学に魂を売った私達にそんな涙は似合わないネ」
「そ、そうでした」
目に熱いものを滲ませる葉加瀬に、超はそっとハンカチを手渡す。
生みの親二人は、愛娘の成長に胸をほっこりさせるのだった。
なお当の愛娘は、不安のあまり姿勢制御に異常をきたして珍妙な踊りを披露している。
「そういえば、さっきの士郎さんの話…本当なんでしょうか?」
「フム、真偽の程は明日以降になれば判るだろう。本当ならば好都合」
超鈴音は、不敵に笑って眼下の街を見下ろした。
「計画を実行するこの時に、学園側の
戦力が減ってくれるのだから……ネ」
◇◇◇◇◇◇
麻帆良近郊に居を構える、平屋建ての木造一軒家―――近衛近右衛門の屋敷。
そこでは家主が縁側に独り腰掛けながら、お猪口から小さな盃に酒を注いでクイッと呷った。
“―――ドーン…!ドドーン……ッ!!”
遠く聞こえる花火の音。次いでここまで聞こえてくる生徒達の歓声に、近右衛門は目を細めた。
多くの生徒が楽しみ、笑い、今年の祭りも大過なく終わって欲しい。
彼はそう願っているが、問題は山済みだ。
世界有数の学園都市である麻帆良学園の学園祭は何もかも桁が違う。
入場者数は三日間で約四十万人にも達するため、それだけで怪我人ゼロとはまず行かない。
また独特の気風を持つ麻帆良の市民と外部から来た人間との間に摩擦が起きることも多々あった。
何より、今年は世界樹の放つ極大魔力が関係者の頭を悩ませる。
「難儀なものじゃのう」
もう一口、酒を呷って月を見る。
そこでふと、彼はそれを思い出した。
(……二週間ほど前じゃったか)
―――師を尋ねるため、ちょうど学祭の時期から麻帆良を離れて魔法世界へ行く。
士郎から、それを伝えられたのは。
「………師。師か。ついぞ儂から、あの子へ魔法を教える事など無かったのう」
だが、それは当然だ。そうなるよう自分で仕向けた。
それがまさか魔法世界へ密航した上、あのジャック・ラカンに弟子入りするとは夢にさえ思わなかったが。
そして結果的に、近右衛門はそれでよかったと考えている。
自身の遠縁であり、娘婿の養子となった士郎に、近右衛門は自身の下で魔法を教えなかった。
わざわざ英国に送ってまで信頼できる相手に預けようとした事から判るように、彼に士郎に対する情が無かった訳ではない。
「…すまなんだ、切嗣。儂は……第二の魔術師殺しが生まれるのではないかと……」
“
魔術師殺し”。
戦争を憎み、戦火を拡大するあらゆるものを憎み、それらを殺すだけの事象に成り下がった一人の男。
―――衛宮切嗣。彼こそが衛宮士郎の実の父。
そして彼に魔法を教えたのが、何を隠そう、近右衛門だったのだ。
「士郎の正義感に…優しさに、どうしてもお主が見えてしまった。怖かったのじゃ、儂は」
隣に衛宮切嗣が座っているかのように続く独白。
その中で近右衛門は、かつてこの縁側で酒を酌み交わした夜を思い出した。
近右衛門にとって義息の詠春。弟子の切嗣。
彼らは少年期からの友人同士で、切嗣が近右衛門の弟子になって以降も繋がりを持っていたほどの仲だった。
しかしそれも、切嗣が“魔術師殺し”として名を馳せるほど疎遠になっていったのだが―――。
「アイリさんに感謝じゃのう。そうじゃろ切嗣」
そう言って、近右衛門は愉快げに口元を緩めた。
―――アイリスフィール・フォン・アインツベルン。
あの暴走列車がまさか、未来の伴侶に口説き落とされ、魔術師殺しという名のテロリストを引退するなど誰が想像できるものか。
近右衛門と、詠春と、切嗣。
この三人で集い、あれほど穏やかに酒が飲める未来があるなど、考えもしなかった。
「………このかはやめて、今度から士郎に見合いを持ってこようかのう」
切嗣でさえ恋人を得て変わったのだ、ならば同様に士郎を繋ぎ止める存在がいればよい。
なんという名案じゃ、と考えた所で―――近右衛門は“彼女”を思い出して急激に酔いが覚めた。
「ダメじゃ。エヴァの機嫌が悪くなる。
なんであそこまで気に入られてしもうたのかのう……うーむ。わからん」
二年前、魔法世界から帰ってきた士郎が彼女の下に身を寄せると聞いた時は、多少の不安はあったが下手な事にはならないだろうと楽観していた。
身の安全という意味では、エヴァンジェリンの身内というポジションはこれ以上ない安全地帯だったからだ。
無論、彼女を怒らせなければという条件付きではあるが。
「それが
魔法使いの従者にまでなった上、あんなにベタベタしておるとは……。
予測できんかったわい、この近右衛門を以てしても!」
カッ!と片目を見開いて
宣う老人。
のちに似たような事を本人の前で口走り、自身の後頭部が陥没することを彼は知らない。
「しかもあの二人、たまに立場が逆転して、互いが互いの保護者のように振舞う時があるから余計にわからんのじゃ。
なんなんじゃアレ?あの関係なんなの士郎。ワシ、お主の義祖父だけど困っちゃうよ?
まったく…恋人なのか姑なのか、いい歳したババアのくせにハッキリせんか!!」
飲み干した盃を勢いよく床に叩いて愚痴る近右衛門。どうやら相当酔っているようだ。
なんせ自分が黄泉への道を全力でひた走っている事におよそ気づいていないのだから。
「―――本当に、難儀なものじゃ」
「ああ。私も、貴様のその不愉快な口に相当難儀している所だ」
地の底から響いてくるようなドスの効いた声色に、老人の骨ばった体が硬直した。
「良い空だな。今日限りなのが勿体無いほどの月夜ではないか」
ぶわっと噴き出した汗を滴らせて、近右衛門は恐る恐る後ろを振り返る。
「喜べ。どうやら、今夜は死ぬには良い日だぞ?」
人形のように可愛らしい金髪の少女が、
紅い瞳を輝かせて彼を見ていた。
◇◇◇◇◇◇
本校校舎の屋上に続く階段を、ネギ、明日菜、木乃香の三人が上っていく。
彼らは歩きながら、明日菜が手に持つ“それ”を眺めて顔を寄せ合った。
「――で、超さんからこれ貰ったの?」
「は、はい。スケジュールが大変って言ったら…」
アスナの手に握られているものは、一見するとただ懐中時計にしか見えなかった。
しかし複雑怪奇に重なる基盤に加え、そこに魔法陣まで刻まれていれば、ネギをしてただの時計とは考えられない代物だ。
だが問題は―――。
「何の役に立つのよコレ?」
「さ、さあ…。超さんは後で説明してくれるって言ってましたけど」
「超さんの発明は怪しいからなー」
木乃香の台詞に苦笑いしながら懐中時計をポケットに仕舞い、ネギは屋上のドアを開けた。
「あー!来た来たネギくーーーん!!」
まき絵が喜色満面でネギを呼ぶ。
すると他のクラスメートも彼らに気づき、破顔して手招きした。
「こっちこっちー!早くしないと前夜祭始まっちゃうよー!」
屋上には簡易テーブルとイスが置かれ、お菓子やジュースが用意されている。
目当ては勿論、前夜祭だ。
本校の屋上ならば、世界樹周辺で上がる花火を存分に楽しむことができた。
「あ!世界樹ちょっと光ってる!」
「ウソッ、まだ前夜祭でしょー!?」
「わーっホントだー」
「どうやって光ってるんだろアレ」
「願いが叶うって案外ホントなのかもねー」
「あんたらちょっとは花火も見なさいよ」
「さーて全員揃ったかー!?」
「揃ってなくても時間だぁー!始めるぞ野郎どもーっ!!」
「―――確認取る意味ねえ」
「あと、野郎は先生だけです」
「あはは…」
朝倉とハルナの掛け声に千雨が呆れ、夕映が冷静に突っ込み、のどかが苦笑する。
しかしそんな声を意に介さず、裕奈が先陣を切って威勢よく杯を掲げた。
「コップは持ったか皆の衆!!では、いざっ!!」
「ネギ先生どうぞ御一緒に♪」
「あ、はい!」
「麻帆良祭の始まりだーーーーーーーっ!!」
「いえーーーーーい!!!」
世界樹が魔力で淡く発光し、大輪の花火が夜空を明るく照らし出した。
―――明日。麻帆良祭が開催されるその日を迎える。
<おまけ>
世界樹が魔力で淡く発光し、大輪の花火が夜空を明るく照らし出した。
明日、麻帆良祭が開催されるその日を迎える。
「麻帆良祭の始まりだーーーっ!!」
「いえーい!!」
――――しかし3−Aの催し物はまだ未完成だ!!
ネギ
「で、皆さん、今日の徹夜は何時から始めるんです?」
亜子
「イヤーーーっ!?」
史伽
「キャーっ!キャーッ!!」
まき絵
「ネギ君ソレ今はだめーーーっ!!」
柿崎
「アンタは鬼か!?このお子様め!!」
裕奈
「ちょっとくらい楽しんだってイイっしょー!?」
ハルナ
「ネギ君…君は正しい…だがっ……!
正しさが…人を救うとは限らない……ッ!!」
風香
「そうだそうだーー!!」
クラス中からブーイングを受けてなお、「あはは」と笑うネギ少年。
その様子を見て少女たちはようやく、彼の発言が冗談なのだと理解して笑い合った。
……しかし明日菜だけは、「あれ、ちょっと黒くなった…?」と冷や汗を流したという。
―――自分の使い魔が変態だったり、女性は意外と強かったり。
ネギ少年は間違いなく、世間に揉まれてちょっとずつ逞しくなっていた。
然もありなん。
〜補足・解説〜>ムーサ達の母ムネーモシュネーよ、おのがもとへと我らを誘え
この呪文は以前ネギが使用した、自分の記憶を他人に追体験させる魔法のもの。
逆パターン(他人の記憶を覗く)でも使えるのではと性能を捏造しました。
まあ【謎の人物】なら術式弄って転用くらいできるできる(安直
>サバイバーズ・ギルト
>助かった自分は選ばれた存在なのだと、ある種の特別視をして自己の精神を守る人
回収されるか分からない伏線。
>記憶
いったい誰の記憶なんだ…。(棒読み
>みんなを助ける正義の味方
>より多くの人を救う、正義の味方
この二者の間に存在する隔絶した差異と壁、それは“妥協”の二文字。
>目を惹いた
正しくは「目を引いた」。目を奪われるほどの鮮烈さを表現したかったので手を加えました。
そしてその“目を奪われるほどの鮮烈さ”は、記憶を覗いた謎の人物が“この記憶の元々の持ち主”が抱いていた感情に影響されたためです。
>彼女の言葉が、一筋の希望に見えた
記憶を覗いた謎の人物は「答えは得た」までちゃんと見ていると補足。
>彼の記憶を盗み見た
???
「こいつ、どうも偶に頭のネジがぶっ飛んでいるな…。
聞き出そうにも昔話の類にはあまり口を開かんし―――よし、頭の中を覗いてやるか」
>果たすべき
義務 この人も妙な所で律儀というか真面目ですよね。自分に対しては潔癖というか。
正当防衛で仕方なく人間を殺し続けたことにずっと罪悪感を持っていて「私は人並みの幸福を得るには人を殺しすぎた」と言うくらいに。そこは悪人になりきれないのが何とも。
そうして見ると何かアーチャーとそっくりに思えてきます。根はどうしようもなくお人好しなのに偽悪的というか。
はっ!?つまりこれは………衛宮士郎と彼女は…お似合いの相手ということか!?
なに、話が飛躍し過ぎ?否、断じて否!!
自分に似ていると思って見ていた相手が自分とは違う答えを出して、そのお陰で自分を肯定することができて救われたセイバーさんみたいな感じでイケるって!
>純朴な少女
純朴とは、かざりけがなく素直なこと。人情が厚くて素朴なこと。また、そのさま。
>高音は、その様子に驚いて目を剥いた
「先生!?何を迷うことがあるんです、このような危険人物は問答無用で捕らえるべきです!!」
という思いを必死に堪えていました。
なお、それを察していた愛衣はこのあと不機嫌になったお姉様にビクビクしていた。
>超の担任教師であるネギの言い分には、確かにある程度の力がある。
ネギ
「ウチのモンがはしゃぎ過ぎたんは認めますわ。
せやさかい、コイツにはワシの方からよう言って聞かせますんで、あんたがたもそれで勘弁しちゃあくれやせんかね?」
別の会話で例えるとこんな感じ。なぜか893臭。
>ネギはあっさりこれに食いついた。
ちょろい。まあ、大事な急用が入るかもしれないと考えずに目一杯予定を組み込んだカモも悪い(学園祭におけるネギのスケジュールを管理していたのはカモ+朝倉)。
しかし「世界樹付近での告白阻止」はある意味で学園の仕事なのだから、そう言って生徒たちに頭を下げて謝れば済む話であって、ネギは泣くほど追い詰められる必要はなかったと思うんだ。フォローや埋め合わせは必要でしょうけど。
やっぱりネギ自身も甘い。
>彼の記憶を盗み見た
>彼の顔を盗み見る
士郎
「最近盗み見られてばっかな気がする」
>警戒は全くの見当違い
「学園祭の時期に士郎が麻帆良を離れる」という情報を得られたという点では、葉加瀬と士郎の世間話を注視していたことは無駄ではなかった。
>おっ、君が超さんか。
>『衛宮士郎に接触するな』という警告
士郎が第一章の頃から葉加瀬を「聡美ちゃん」と呼んで親しげな様子を見せていたのに対し、葉加瀬と同じ茶々丸の開発者である超が士郎と何ら関わらなかったのはこのため。
つまり、士郎は超の存在や情報をほとんど知ら(されてい)なかった。
>根の深い“何か”
いったいどんな記憶が原因なんだ……。
>学園側の戦力が減ってくれるのだから
エヴァから脅されて今まで接触しなかったものの、超がこれ幸いと士郎を“計画”へスカウトしなかったのは、計画の全容を話した上で士郎が敵・味方のどちらになるかわからなかったから。
下手に敵を増やす危険性のある選択肢を取るよりも、士郎に何も話さないまま、彼には大人しく麻帆良を離れてもらった方がよいと判断した。
そういう意味でも、前述したとおり、士郎が麻帆良を離れることを知れたのは大きかった。
>麻帆良の市民と外部から来た人間との間に摩擦が起きる
外部の人間は麻帆良という土地の気風を掴みきれないと思うんです。
教師はともかく学生や住人は、とことんノリは良いし悪ふざけもするけど、決定的に悪いことはしないし、してはいけない最低ラインを正しく見極める倫理観を持ってます。
その独特の価値観と距離感を理解せず、彼らのノリの良さを見た外部の人間が軽率な行動をとって問題になる、という事件が必ず起きるのではと個人的に思いますね。
とはいえ、麻帆良祭に訪れる外部の人間は、この時期の麻帆良学園をテーマパークのように認識していると思うので、常識や良識ある大多数の人間ならそんな場所で問題は起こさないでしょう。
学園側も外部の人間への対応マニュアルなどを徹底的に整備していると思いますし、そのお陰で四十万人も受け入れて大きな問題が起きていないんだと思います。
「それでも多少の問題は起きるんじゃよ…はあ」という学園長のお悩み。
>身の安全〜エヴァンジェリンの身内〜これ以上ない安全地帯
ただし「身の安全(物理)」。犯罪者のレッテルを貼られているエヴァの下に身を寄せる以上、その線で恨みを買う危険性など、政治的な安全はマイナスとも言える可能性アリ。
しかしこの小説では衛宮家と近衛家は遠戚であるため、士郎は学園長の縁者であり、士郎本人に対してそれほど悪感情は持たれなかった。むしろ当時は「なぜエヴァンジェリンなんかの所に?」「学園長は何を考えておられるのか」といった困惑の声が多かった。
尚その後、士郎に現在寄せられている信用・信頼は本人の人柄によって得たものである。
逆に好かれ過ぎて、一部の魔法使いから「エヴァンジェリンの従者をしている事が唯一の汚点」とか言われて士郎が怒る所までが関東魔法協会本部のテンプレ。
>西暦2002年
>四十万人
>地上4000m
数字の表記がバラバラなのは、私の主観による見やすさ等を重視しているからです。
二○○二年は読みにくいし、四千メートルより4000mの方が高度が伝わりやすいかなと。
【次回予告】
衛宮士郎が不在の麻帆良。
裏で不穏な空気が漂う中、ネギと3−Aの学園祭が始まる!
次回、ネギま!―剣製の凱歌―
「第三章-第55話 麻帆良祭開催!/時計の針は動き出す(仮)」
最初に言っておく。
『ネギま!―剣製の凱歌―』にまほら武道会の出番は無い(何
第三章は次回がラストになります!
それでは次回!!