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ネギま!―剣製の凱歌― 第三章-第55話 麻帆良祭開催!/時計の針は動き出す
作者:佐藤C   2015/12/13(日) 14:00公開   ID:1C5l.OagbSo



 ―――ゴォォォ………!


 麻帆良大学航空部の飛行機が、青空のキャンバスに白い線を描いて駆けていく。
 六月二十日の麻帆良の空は、飛行船が泳ぎ、風船、宣伝用バルーン、色取り取りの紙吹雪で満ちていた。

 学園街に繋がる麻帆良大橋は人と車でごった返し、その様子をMNN―――麻帆良ケーブルテレビ局が橋下の湖で船の上から撮影している。
 外部から押し寄せた数万人の来場客は現在、閉められた門の前で大群衆と化していた。

 時刻は午前十時前。
 出し物の準備を急ぐ中学生に、純粋に祭りを楽しむ幼年部の子供たち。
 学園関係者が慌ただしく動き回る中、彼らの真上で航空部のアクロバティック飛行が始まったと同時、学園都市全域にその放送が響き渡った。


《生徒の皆様、来場客の皆様、お待たせいたしました!
 只今より第七十八回、麻帆良祭を開催します!!》


 こうして、入場客が大挙して学園に流れ込んでから数十分後のこと………。


「はい。お茶でもどうぞ」
「ありがとうございます、先生」

 保健室で、養護教諭から手渡された二人分の緑茶を受け取る刹那。
 その隣ではネギが、カモミールに付き添われてベッドで横になっている。
 現在、ネギ達三人は保健室のご厄介になっていた。


「うーん…スミマセン刹那さん…三十分くらい寝ます…」
「ハイ。しっかり寝てくださいね」

 やはり十歳の子供に二日連続の完徹―――その甲斐あって無事、3−Aのお化け屋敷は完成した―――は負担だったのだろう。
 ふらつく様子を見せたネギは明日菜に仮眠を勧められ、時間が空いていた刹那に付き添われて保健室にやってきたのである。
 案の定、ネギは既にうつらうつらとしており、今にも眠ってしまいそうだ。

「時間が来たら起こしますから、安心して休んでください」
「はい……お願いします……」

 ………すー。
 ものの数分と経たないうちに、ネギは気持ちのいい寝息をたてて眠りに就いた。
 それを確かめると、刹那とカモミールも椅子に座って一息つく。

「やっぱ疲れてたんだなー兄貴」
「ネギ先生は普段しっかりしている分、余計に十歳の子供だという事を忘れてしまいますね…」
「ホントは使い魔の俺っちが注意しなきゃいけねーんだが、アスナの姐さんにゃ適わねーな。
 っと、徹夜明けなのは俺達も同じだ。少しばかり休もうぜ」

 カモと共に熱いお茶をズズ…と啜り、刹那もほうっと息をつくと肩の力が抜けていく。
 窓の外から聞こえる歓声も遠く、二人はネギの傍でゆったりとした時間を過ごした―――。







<第55話 麻帆良祭開催!/時計の針は動き出す>







「は……はち? 八時!? 夜の八時!?」

 その悲鳴はネギのもの。目覚めた彼が―――すっかり暗くなった―――保健室の時計を見て叫ぶ。
 その針が指し示す現在の時刻は………二十時。午後八時。
 ――――三十分どころではない。ネギの睡眠は九時間以上にも及んでいた。

「ね、寝過しちゃったーーーっ!?」
「むにゃ、やです…士郎さん…。こんな途中でやめちゃ…っ――はっ!?」
「じ、じゃあ…ギャルのパンティおく――はっ!?」

 ネギの悲鳴を聞きつけて、眠りこけていた刹那とカモミールも同時に飛び起きる。

「ど…どうしよう!? 今日はクラスの皆の所を回ったり魔法先生の仕事とか小太郎君と約束した格闘大会の予選とか予定一杯あったのに―――ぜ、全部すっぽかし!!?」
「すすすスミマセン私もすっかり寝てしまって!!」
「謝ってる場合じゃねーだろ!兄貴、のどか嬢ちゃんとの約束は!?」

「今日の午後四時!!」
「「えええええーーー!!」」

 その時、窓の外が急に明るくなる。
 三人が一斉に窓を見た直後、外から大きな音が響き渡った。
 正体は、麻帆良祭の夜を彩る花火。
 それは困惑し、狼狽する三人に、日が完全に沈んでいるという事実を改めて認識させた。

「と、とにかく待ち合わせ場所に――」
「しかし今行ってももう…」
「いや…あの嬢ちゃんのコトだ…………四時間ずっと待っててくれてるかもしれねえ…………」

 ………その様子がありありと想像できて、三人の顔から一気に血の気が引いた。

「も、申し訳ありません全て私の責任です!!」
「だからンなコト言ってる場合じゃねえだろって!!」
「と、とにかく待ち合わせ場所にーーー!!」

 喚くばかりの彼らは気付かない。
 ―――この時、ネギの懐で魔力が流動した。


『お礼にネギ坊主の悩みを一つだけ解決してあげるヨ。この超鈴音チャオリンシェンの科学の力でネ♪』

『で、これ貰ったの?』

『ハ、ハイ。スケジュールが大変だって言ったら…』



“―――チキチキチキチキチキチキ……!”


 チャオから借り受けた懐中時計。
 基盤の向こうの歯車と時針が急速に回りだし、充分な魔力を取り込んだそれが今、その性能を正しく発揮する――――。



“カチッ”



《―――ザザッ…只今より第七十八回、麻帆良祭を開催します!!》


「「「………え?」」」

 突如聞こえたその放送と歓声に、三人は再び停止した。

 ―――陽の光で明るい保健室。窓から見える外の景色は……青い空に白い雲。
 時計の針は、午前十時を指していた。





 ◇◇◇◇◇◇




「わぁー、スゴイや!!僕、こんなに大きな祭りだとは思ってませんでしたー!!」
「三日間の延べ入場者数は約四十万人。世界でも有数の学園都市の全校合同イベントですから。
 学祭期間中は昼夜を問わず乱痴気騒ぎのどんちゃん騒ぎというわけです」
「学園内は仮装OKだから歩いてるだけでも楽しいよん♪」

 人でごった返す街中を歩きながら、夕映、のどか、ハルナの三人が解説する。
 彼女達はチラシ配りのついでにネギを連れ出し、彼に麻帆良祭の様子を直に見せていた。

「この三日間に限り、麻帆良学園は学園祭という名の一大テーマパークの様相を呈します。
 バイタリティ溢れる学生達による技術と熱意を結集したイベントやアトラクションが学園各地で開かれ、噂を聞きつけた関東圏からの観光客は――」

「はーいそこの家族連れの皆さーん♪3−Aの“HORROR HOUSE”をぜひどーぞ♪」
「ハ、ハルナー…ゆえの説明が長いからってそれはー…」
「あ。僕まだウチのクラスのチラシ見てないんですよー。ちょっと見せてくれませんか?』
「あれ!? せんせーも聞いてない!?」
「ここ数年で各クラブの商業化が過激さを増した麻帆良祭は、現在では一日で二億六千万ものお金が動くと言われ…」

「いやー仮装パレードは年々派手になるわねえ」
「あの恐竜も仮装ですか!? 8…いや10mくらい高さあるんじゃ…」
「元々は国際化に対応した自立心の育成のため営利活動を許可したそうですが、現在では学園祭で数千万円を稼ぐサークルや学園長者と呼ばれる生徒も……どうしたのです、のどか? そんな哀れむような目で私を見て?」


 楽しげに学祭を見て回るネギ達四人。
 そんな彼らを物陰から見つめる、刹那とカモミールを伴った………ネギの視線があった。


「…あ、あれは僕!? どーいうこと!?」


 ―――保健室で起きた不可解な出来事ののち。
 心当たりがあるらしきカモミールに促され、三人は身を潜めるようにして学園街を訪れたのだ。

 そこにはカモミールの予想通り……“午前十時のネギ”がハルナ達と歩いている姿が見える。
 その様子を窺いながら、刹那が“午後八時のネギ”に言った。

「私も詳しくはないのですが……おそらくこの現象は、古今東西の魔法使いが実現できず、
 『魔法世界ムンドゥス・マギクス』でも不可能とされている……『時間跳躍術』ではないかと」

「まさかと思ったが…間違いねえ。俺達は“寝過ごした時間”から“戻って”きたんだ。
 兄貴、よく聞け。超から借りたその懐中時計が………原因に違いねえ。それは「タイムマシン」だったんだ…!」


「………………。」


「ええええええええええええええええ!? タイムマシーン!? 本当に!?」
「先生静かに!!」
「あっちの兄貴達に見つかったら色々とマズイんだぜ!?」

 数秒に及ぶ硬直の末、ネギが弾かれるようにはしゃぎだす。
 必死に押さえ込もうとする二人だがしかし、今のネギは興奮していて落ち着く様子が全く無い。

「ホ、ホントにタイムマシンなの!? スゴイや、僕、映画とかマンガで知ってるよ!!
 こんな小さいのがホントに!? ホントにタイムマシン!? 僕ね、僕ねえ………!!」


“恐竜時代に行きたいなー!ああ…っ”

(…コラ、兄貴)
(子供や……いや子供ですけど)

 年相応に目を輝かせるネギの脳裏に、密林の中で噴火する火山や「アンギャー」と吼える恐竜の勇姿が浮かんでは消えていく。
 一向に現実に戻ってこないネギを引き摺って、刹那とカモミールは一先ず“十時のネギ”達から離れたのだった。


「でも良かったー!これでのどかさんとの待ち合わせに間に合いそう!」

「しかしそのタイムマシン………怪しくはないですか?」

「ああ、いかに超が天才だろうとタイムマシンは超科学すぎる。
 ましてそんな貴重品を簡単に寄越すなんざ何か裏が…」

「もー、なに言ってるの二人とも。クラスメイトを疑っちゃダメだよ。
 それにこれがあればスケジュールも全部解決だし!ホントに良かったー♪超さんってイイ人だなー♪」

「…アホみたいに何をハシャいでいるんだ、ぼーや?」

「わひゃっ!? マ、師匠マスター!?」

 いつの間にかネギのすぐ背後に、怪訝な顔をしてエヴァンジェリンが立っていた。
 加えて―――普段は有り得ない事に、チャチャゼロを一緒に連れている。

「あ、師匠も仮装ですか? よく似合ってますよ!」

 今日のエヴァンジェリンはピンクの帽子を被り、同じピンクのフリルとリボンをあしらった、品の良い白い洋服を仕立てていた。
 彼女本来の容姿と合わさり、今のエヴァンジェリンはまさに可憐な西洋人形のようである。

「フン、ガキの世辞などいらん。それより面白そうなモノを持っているな?」
「妙ナ魔力ノ作動ヲ感ジルゼ?」

 二人の視線は揃って、ネギの持つ懐中時計タイムマシンに注がれていた。
 嫌な予感がしてネギはそれを慌てて隠す。

「いえ、これはその…」

「ほう、隠そうとするとは益々怪しい。
 ―――ど れ 、 よ こ せ。なあに悪いようにはせん…!」

「オ前ノモノハ御主人ノモノ。御主人ノモノハ御主人ノモノダ」

 一体どこのジャイアニズムか。
 だがこのタイムマシンは、過密スケジュールという宿業を背負いしネギに手を差し伸べた救世主なのである。
 刹那やカモにとっては怪しさ満載の代物でも、渡すわけにはいかない………!

「え、えーと……き、今日はチャチャゼロさんも一緒なんですね!」

「ん、ああ。世界樹の魔力が満ちている影響でな。
 解っていると思うが、我々魔法使いは大気に存在する魔力を従える事で魔法を使う。
 いくら私が魔力を封印されているとはいえ、これだけ濃密な魔力が周囲に満ちていれば、チャチャゼロ一人動かすくらい難しくないというワケだ」
「デ、ガキ。ソノ手ニ持ッテルノハ何ナンダ?」

 ごまかせない!!

「え…ええと……これはその……。
 …あっ、今日は茶々丸さんやシロウと一緒じゃないんですね!どうしたんですか?」

「――――。」

 エヴァンジェリンの雰囲気が一変した事に気づき、ネギの後ろに立つ刹那とカモミールが冷や汗を浮かべる。
 しかしネギは気づかない。
 言葉に詰まってしまった師匠を見てきょとんとしているだけである。

「………知りたいか」
「えっ」

 エヴァンジェリンがその一言を発した途端、周囲の温度が物理的に数℃低下する。
 そこに至ってネギもようやく、彼女の機嫌が下降していると気づいて後退った。

「選べ。知りたいか、知りたくないか。
 今ならまだ、貴様はどちらを選ぶこともできるぞ……?
 ぼーや……茶々丸と士郎が私を放って今どこで何をしているか、本当に知りたいか? んん?」

「え……ええと…あの、僕は……」

「フフフフフフフフ……」
「ケケケ…ケケケケ……」

 不気味な笑いが木霊する。
 ネギ達の周囲数メートルの範囲は既に、あらゆる人間が危険を感じて人混みという存在が消滅していた。
 なおチャチャゼロの笑い声は、面白がって便乗しているだけである。

 だがネギにそんな事が分かる筈もなく。
 目の前で笑う主従二人に、恐怖を催すことを禁じ得ない……!

「―――す、すいませーーーん!!」
「あっコラ待て!」

 ネギは逃げ出した!
 刹那とカモも追って駆け出す!!
 しかしエヴァンジェリンとチャチャゼロも追いかける!!

「なぜ逃げるーーー!!」
「ごめんなさいーー!来ないでくださーーい!!」

 エヴァンジェリンの魔力が回復しているとはいえ、それは量としてはほんの僅かだ。
 十歳児と変わらない身体能力しかない今の彼女がネギ達に追いつくことは不可能である。
 お陰でネギ達三人は、どうにかエヴァンジェリンを撒く事ができたのだった。




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「あ、危なかった……」

 三人は、息を切らせて人気のない路地裏に入り込んだ。
 エヴァンジェリンから隠れる狙いもあったが、それだけのためではない。

 今の彼らはただでさえ、時間旅行タイムトリップしてきた“異物”である。
 知り合いと顔を合わせようものなら、“この時間”にいる“本来の自分達”の行動と整合性が取れずに不都合が生じてしまうだろう。
 それらのトラブルを避けるために、またタイムマシンの事が露見しないように、可能な限り誰とも接触しないよう行動することが望ましいのだ。

「さて、これからどうしましょう?」
「……言っとくがな兄貴、コレはもう使うんじゃねえぞ」
「え、何で!?」

 使う気満々だったネギが抗議の声を上げるが、そんな彼を諭すようにカモミールが続ける。

「こんな怪しいモン危ねえだろ。そもそも使い方もわからねえんじゃ危険だぜ」
「そうです、超さんがどういうつもりでコレを渡したのかもわからないですし」
「うーん、そうだね………よし、超さんを探そう」

「「え!?」」

「確かに、説明書か何かがないと使えないですよね!!」

 再三の忠告に耳を貸さず、ネギがタイムマシンを使う気なのは明らかであった。
 だがカモミールや刹那も、超に話を聞くこと自体は吝かではない。

 思惑は異なるものの、こうして三人は超捜しを開始した。





 ◇◇◇◇◇◇




「ハァハァ…。ち、逃がしたか。何だったんだあの様子は」
「逃ゲタノハ御主人ニビビッタカラダゾ?
 ソレニシテモ何ヲ隠シテタンダローナー。次ニ会ッタラ斬ッチマウカー」

 ネギ達の姿が完全に人混みに消えた所で、エヴァンジェリンは諦めて足を止める。
 彼女が汗だくになって肩で息をしていると、そこへチャチャゼロが遅れて追いついた。

「御主人、最近色ンナ奴ニ逃ゲラレッパナシダナ」
「…煩い、黙れ」

 エヴァンジェリンはそれ以上何も言わず、憮然として元来た道へ踵を返す。
 そんな彼女の傍らを歩くのは、大人しく主人の後を追いかけるチャチャゼロのみ。
 いつもの………茶々丸も、士郎もいない。


(……気にすることもない。単に賞金首時代むかしに戻っただけだ)


 昔、彼女の傍にいたのは、人形ドールとして主人に仕えるチャチャゼロだけだった。
 麻帆良で過ごした時間より、そんな時代の方が遥かに長い筈なのに―――。

 麻帆良ここに来てから得た従者たちが居ないことが、エヴァンジェリンには酷く寒く感じられた。


“――――光に生きてみろ”


「…っ」


 十五年前に生き別れた男の顔が唐突に思い浮かんで、エヴァンジェリンは渋面で歯噛みする。

 彼女の魔力を封印し、それまでの柵も因縁も強引に断ち切って、彼女に―――仮初であっても、得られる筈のない平穏を与えた赤髪の魔法使い。
 一度、普通の女子中学生として生きてみろ。卒業する頃に封印を解きに来てやると。
 そう言い残して十五年後いまも約束を果たさない“アレ”も……自分を置いて居なくなった裏切り者だ。
 あんな奴、思い出したくもない。

 ………その、筈だ。特に、今は。


(……これが)


「こんなものが、光だというのか。お前は」


 チャチャゼロは、その独白を聞かなかった事にした。





 ◇◇◇◇◇◇




 果ての見えない草原の丘に、墓標の群れが存在する。
 メルディアナ魔法学校を擁するウェールズ山中の村、そこからほど近い場所に作られた―――見晴らしのよい村の集団墓所。
 日が暮れて橙色に染まる墓所の中、一人の少女と青年が、連れ立って墓石の前に佇んでいる。


 『Elena Cambell(1982〜1999)』


 ―――墓石に刻まれた名を、エレナ・キャンベル。
 吸血鬼に襲われ、生来病弱だった事も重なって命を落とした悲運の少女。

「お姉ちゃん。お兄ちゃ…シロウさんが来てくれたよ」

 その墓に語りかけた少女の名を、ラーラ・レティ・キャンベル。
 エレナの妹にあたり、今年メルディアナ魔法学校の最終学年に進級する、十二歳の見習い魔法使いだ。

 背中まで伸ばした長髪は姉と同じ金。
 しかし姉と違ってクセのないストレートな髪質をしている。
 人懐こい印象を与えるブラウンの瞳は今、普段の彼女では見られない憂いの色を帯びていた。

 そんな彼女、ラーラの背後から青年が歩み出る。
 彼は持参した花束をそっと墓前に供えると、腰を下ろししゃがみこんで、墓石をじっと見つめて言った。

「………お久しぶりです。エレナさん」

 やっとその言葉を絞り出した青年―――衛宮士郎は、眉間に皺を寄せ、心痛な面持ちで目を閉じて手を合わせる。
 合掌という文化に馴染みがないラーラも、兄と慕う青年に倣って同じように祈りを捧げた。


 ウェールズの異界門ゲートを通って魔法世界ムンドゥス・マギクスへ向かう前の、墓参りだった。

 そんな二人を遠くから見つめる、翡翠の視線を感じながら。




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 Side 士郎


 おそらく、ラーラちゃんは気づいてない。俺達を…いや。

 俺を睨む、猫の妖精ケット・シーの存在を。

 名を、ディアナ。

 灰色の毛に翠の瞳を持つ妖精猫。
 かつて魔法使いの使い魔として、エレナさんの護衛役をしていた妖精だ。


 ――――、一年前を思い出す。


 魔法世界から戻り、麻帆良での生活に慣れ始めた夏の頃。
 会わせる顔が無いと逃げ続けてきた俺は、ラーラちゃんから手紙を貰ってようやく、エレナさんの最初の墓参りに訪れる事ができた。

 ――――翡翠の視線は、今と変わらず俺を刺し貫いていた。




 ・
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《……フン。無駄に息災のようだなニワトリ頭》

『…確かに、アタマは赤いが。お前いつも俺に辛辣だな』


 警戒されていたのだろうが、初対面の時なんかこいつに顔面を引っ掻かれたもんな。
 それ以降だってどうにも……今だって、好かれてはいないと判る程度には刺々しい。


《気に食わぬのだから仕方あるまい》

『なんでさ。俺、お前に何かしたか?』


 何か至らない点があったなら謝ろう―――そう軽く考えていた俺とは反対に。
 この猫の妖精は、そこで数瞬言葉に詰まったようだった。


《………エレナは、お前に会うのをいつも楽しみにしていた》


 数秒かけて選んだ言葉は、俺が望んだ答えじゃなかった。


《本からふと顔を上げてはお前を思い出し、窓の外を眺めてはお前が来ないかと視線を飛ばすいじらしさよ。
 エレナにとってお前は、間違いなく唯一無二の存在であった》


 ただ、何の変哲もない事柄の癖に―――“あの人”の事を話しているというだけで、俺の心が重くなる。


《―――だが、お前はそうではない。お前はエレナを騙し、弄んでいた》


 そして。
 その台詞は、心が沈んでいようと一瞬で頭に血が上るものだった。


『…なに?』


 大人気なく猫に食ってかかろうとする俺は、しかしこちらを嘲笑する妖精猫の次の台詞に停止した。


《何が違う。お前がエレナを訪ねる様子はまるで義務のようだ。
 儂には、見舞いの来ない患者の話し相手になってやる医者のようにしか見えなかった》


 ―――――、それ、は。

 ………否定、できない。
 “頼まれたから”――――少なくとも、最初はそうだったから。

 メルディアナの校長先生から、病気がちで療養のために来た女の子が寂しくしているから、話し相手になってやってくれって。

 でも、話し相手がいるってだけで救われるって、俺だって知ってたんだ。
 だから通い続けた。
 家族が死んで、詠春とうさんに引き取られてからずっと――――

 ―――木乃香が、俺にそうしてくれたように。
 嫌々ながらも、それに付き合ってくれた刹那のように。
 俺も、あいつらみたいにしてやれたらって――――。


《お前がコーンフィールドを許せなかったのは、エレナを殺されたからではない》


 ――――ああ、そうか。


《守ると約束した相手を死なせた、自分自身への怒り故だ。
 何と滑稽な。仇を討った所で、未熟な己への八つ当たりを無理やり外へ吐き出しただけであろう。
 それで身も心も傷ついたというのなら、もはや救いようも無い》


 自分を救ってくれた人の、真似をしていただけか、俺は。
 自分も、その人みたいになれたらって、そう―――そう、思って。

 救ってくれた人達のようになりたくて、その次は“守ってみせる”なんて分不相応な安請け合いをして。
 その約束が守れなかったら、その原因を恨んで命すら奪ってしまった。


《失せろ愚物が。その汚らわしい面を二度とその娘の墓石はかいしに映すでない》


 ―――はは。本当だ。本当に愚かだ。
 衛宮士郎は―――――救いようのない馬鹿だった。


《………と、言いたい所だが……。
 貴様のような屑であろうと、その顔を見れなければエレナが悲しむ。
 腹立たしいことこの上ないが……》


 逃げるな。
 目を逸らすな。
 決して忘れるな。

 後ろの墓石が俺の罪。眼前の妖精が俺の罰。
 衛宮士郎。お前が、死ぬまで。


《そのつら、二度と儂に見せるな。……汚らわしい》


 この翠の視線が、俺の心を刺し続ける。





 Side end



 ◇◇◇◇◇◇




『じ、じゃあコレはやっぱりタイムマシンなんですか!?』

『そうネ。懐中時計型航時機タイムマシン「カシオペア」。
 使用者とそれに密着した同行者を時間跳躍させる驚異の超科学アイテムヨ♪
 説明書を渡しておくネ、好きなだけ使うといいヨ』

『あ、ありがとうございます!!
 じゃあすみません、僕この後も予定がありますのでこれで!!』

『うむ、楽しんでくるといいネ♪』


 ようやく見つけた超とそんなやり取りを交わし、正式に『カシオペア』を借り受けたネギ。
 彼はそれを存分に用いて地獄の日程を消化していった。

 超と会った後の午後は、のどかとのデートだけに費やした。
 再び時間を逆行して真名と共に魔法先生の仕事―――世界樹周辺のパトロールと告白阻止に努める。
 また逆行して小太郎と格闘大会の予選に出場し、見事本戦への進出を決めた……等々、予想はしていたが怒涛のスケジュールであった。

 そうしてネギの長い一日が終わり―――現在の時刻は、夜。
 世界樹周辺では中夜祭と称し、花火が打ち上げられていた。

「ネギせんせー!!」
「一日目お疲れ様でーーす!!」

 3−Aは工学部前のスターブックスコーヒーを貸し切り、本日の打ち上げ会を開いている。
 そしてネギはいつもどおり、騒ぎはしゃぐ少女達の波に呆気なく埋没した。

「それ飲めー!食えー!歌えー!」
「ネギ君も手伝ってくれたお陰でお化け屋敷は大盛況だったよー!!」
「ホラ見てこれ売り上げだよ!」
「少年ドラキュラの仮装よかったよ!いやーアレでかなりお客つかまえたね!」
「…は、はあ?」

(カモ君…僕そんな仮装したっけ?)
(いゃあ…?)

「ネギ先生…今日は最高の時間を過ごさせていただきましたわ♪」
「今日は新体操部きてくれてありがとねー♪私カワイかったー?」

 お化け屋敷で今日の接客を担当していた生徒の次は、委員長やまき絵からも声をかけられる。
 しかし当のネギには全く身に覚えがない。
 彼は困惑しきりだが、その後も続々と生徒が近寄ってきて同じような事が続く。

「いやーネギ君、格闘大会だけじゃなく生徒達を回るのも忘れてないなんて。流石だね、教師の鑑だよ」
「パトロールもしとるのによーやるわ」
「あ、あはは……」

 打ち上げには3−Aの前担任であるタカミチと、ネギの友人兼千鶴・夏美・あやかの同室―――もとい居候―――である小太郎も参加していた。
 そう、彼らと共に魔法先生の仕事や格闘大会に出ていたネギに、生徒の様子を見に行く時間は無かった筈なのだ。
 自分でも訳が分からないが、ネギは曖昧に笑ってその場を誤魔化した。


「あのー…どれもこれも身に覚えがないんですけど…?」
「……あー、こりゃやっぱり。兄貴、兄貴」

 カモミールはネギに耳打ちし、彼を人気の少ないテラス席に移動させる。
 そして周囲に目配せすると、顔を近づけてこそこそと密談を始めた。

「兄貴、今日こなしたスケジュールは超捜しとのどか嬢ちゃんとのデート、あとは魔法先生の仕事と格闘大会……だけだよな? 他の予定はまだ消化してねーだろ?」
「う、うん。これから航時機タイムマシンで戻って―――あ」

 得心がいって声を上げるネギにカモミールが頷く。

「ああ。きっと兄貴はこれから・・・・クラスのみんなと学園祭を過ごすことになってんだ。
 さっき声をかけてきた生徒のトコはみんな回らなきゃいけねーだろうし、一日目の打ち上げはしばらくお預けだな」
「そうだねー、まだまだ予定が山積みだったんだね。あはは」


 ―――そんな、笑うネギを遠くから見つめる視線が一つ。

 昼間、ネギが席を外している間に、カモミールと共に超と会話した―――刹那が、その表情を曇らせている。
 彼女はネギを見つめながら、超鈴音と交わしたやり取りを思い出していた。




 ・
 ・
 ・




『フフ、楽しんでいるようで何よりネ。過去への旅…いかがカナ?
 体験してもらうのが一番と思い保健室のお茶に眠り薬を入れさせてもらったヨ。
 悪かたネせつなサン、達人でも気づかない無味無臭の特別製ネ』

『な…っ!』

超鈴音チャオリンシェン………お前いったい何者だ?
 タイムマシンなんてモンは如何な天才だろうとフツーの人間にどうこう出来るもんじゃねえ。そうだろ?』
『貴様…何が目的だ。ネギ先生の信頼を裏切るようなら私の剣が黙っていないぞ』

『フ…言うネ、せつなサン。よろしい、ならば教えようアルベール!
 ある時はナゾの中国人発明家!クラスの便利屋!マッドサイエンティスト!
 またある時は学園NO.1天才美少女!そしてまたある時は人気屋台「超包子チャオパオズ」のオーナー!
 ―――その正体は!!なんと火星から来た宇宙人ネ!!』

『ふざけるなーーーっ!?』

『ナハハハ。まあ、信頼は約束できないが…安心するネ。
 “航時機カシオペア”は本当に、ネギ坊主に学祭を楽しんでもらうためだけに渡したヨ』


『ネギ坊主は血のつながった私の大切な人ネ。私がヒドイことするハズないヨ♪』

『―――な…』
『何だって………?』


『…クスッ、火星人ウソつかないネ!安心するといいヨ♪』




 ・
 ・
 ・




(超鈴音……ネギ先生と血がつながっているだと? どういうことだ………)


 そんな刹那の不安も、学園祭が進むほどに薄れていく事となる。
 少なくとも―――決定的な疑念が生まれる、二日目の時点までは。


 しかし、この日。ネギがカシオペアの使い方を知った時。
 或いは、超がネギにカシオペアを与えた瞬間ときに、間違いなく。


 ――――――運命は始まった。


 運命はぐるまが噛み合って。航時機カシオペアは、時計は時を刻み出す。







<おまけ>

 麻帆良祭の盛況ぶりに混雑する学園都市。
 そのメインストリートから少し外れた場所で、バニーガールのコスプレをした高等部の女子生徒が、客引きのために看板を掲げて街頭に立っている。
 すると、明らかにガラの悪そうな男達がそっと彼女に近づいた。

外部から来たチンピラ
「へっへ、嬢ちゃん。そんな格好で客引きなんて誘ってんだろ?
 お望み通り…スケベしようや……」

麻帆良女子
「――い、いやっ!離してください!
 バニーコスをした無抵抗な私を、そこの人気のない路地裏に誘い込んでイタズラする気なんですね!?
 うすいほんソリッドブックみたいに!うすいほんソリッドブックみたいに!!」

 チンピラ数人に腕を掴まれ、非力な女子高生は無理やり連れて行かれようとしている!
 しかし!!そんな暴挙を許すほど麻帆良の正義は死んでいないッ!!

デスメガネ
「ちょっと待った!僕はここ麻帆良学園で教師をしている高畑だ!」
ヒゲグラ
「同じく神多羅木!」
御御足
「葛葉!生徒への乱暴は許しません!!」

 生徒を守るのはいつだって、先生の役目なのだから――――!!

デスメガネ
「無音拳ッ!!」
ヒゲグラ
「無詠唱カマイタチ!!」
御御足
「はあっ!百烈桜華斬―――――!!」

チンピラ’s
「ぎゃああああーーー!?」

麻帆良女子
「キャーっ!先生達カッコEーーっ!」

ぬらりひょん
「学祭中の麻帆良学園の平和はこうして守られておるのじゃ!!」

木乃香
「ほえー」
明日菜
「さすが高畑先生……////」
ハルナ
「まじかー。ウチの学校の教師どんだけー」
のどか
「スス、スゴイですー…!」
夕映
(魔法使いの戦いとは凄まじいのですね…!)

 ―――――――ツッコミが不在であった。


 なお、その頃のツッコミ組は。

ネギ
「うーんうーん…やめてよアーニャ…ネカネお姉ちゃんまで…。
 え、弟子1’号…?ネカネ師匠…?スプリングフィールド道場ってなに…うーん」
刹那
「ぁん…むにゃ…ダメです、そんなところ見ちゃ…。
 恥ずかしいです…だめですってばあ…士郎さん…っ」
カモミール
「…これはカモチャのぶん!これはカャモズのぶん!これはカモ津飯のぶん!
 これはカモッコロのぶん!そしてこれが……カモモンのぶんだーーーーーッ!!……ぐぅ」

 保健室で、揃ってヘンな夢を見ていた。



<おまけ2>

 ―――チャチャゼロは、その独白を聞かなかった事にした。

 何故なら、人形の身である彼女では、主人にかけるべき言葉を見つけられない。

 だから―――悪口と軽口だけを口にして、それ以外は何も言わず傍に寄り添う。
 麻帆良に来るより前までずっと、そうして主人を孤独から守ってきたように。

 それが、人形の従者ミニステル・パルウラムの契約。

(……ケケケ)

 茶々丸は機械人形ガイノイドとはいえ自我がある。士郎に至っては人間だ。
 自分の都合を優先する時があるのは当然のことである。
 エヴァンジェリンの契約魔法により擬似魂魄を与えられただけの、ただの人形であるチャチャゼロとは根本的に違うのだ。

(早ク戻ッテ来イヤ、テメーラ)

 学園結界の所為で“役立たず”となっていた筈の人形の従者は、
 後輩たちに後を任せてもう安心―――という訳には、まだまだいかないようである。

 チャチャゼロはテクテクと、エヴァンジェリンの後を追って歩き出した。





<キャラクター設定>
 ※以前と設定が若干違っているぞ!わかるかな?(何

ラーラ・レティ・キャンベル(Lara Lettie Cambell)
 亡きエレナ・キャンベルの、歳の離れた妹。英国編時点で八歳、本編こと2003年で十二歳。
 姉と違いクセのない金髪を背中まで伸ばした長髪で、ブラウンの瞳を持つ英国人。
 天真爛漫で健気、可憐な少女。お婆ちゃんっ子。後ろ姿がエヴァにクリソツ。
 姉が存命の頃より士郎と顔を合わせる機会があり、彼をお兄ちゃんと呼び慕う。
 現在は魔法使いを目指してメルディアナ魔法学校へ入学し、かつて姉が療養のため住んでいた屋敷へ祖母と共に住み込んでウェールズで暮らしている。
 毎年バレンタインデーには祖母直伝のチョコクッキーを士郎に送っているらしい。

ディアナ(Deanna)
 灰色の毛並みと翠色の瞳を持つ雌猫。オコジョ妖精と並んで由緒正しい“猫の妖精ケット・シー”。
 かつてエレナ・キャンベルの飼い猫として密かに彼女を護衛していた。
 現在はエレナの墓を守るついでに周辺の墓所すべてを守護している。本人曰く「墓守犬グリムチャーチの真似事」。
 サイラスの代からキャンベル家を見守ってきたディアナにとって、エレナとラーラは愛孫に等しく、彼女たちに近づく悪い虫(士郎)が嫌い。



〜補足・解説〜

>MNN―――麻帆良ケーブルテレビ局
 すごく今更なんですけど、「MNN」って「麻帆良・ニュース・ネットワーク」とかそんな感じ?

>第七十八回、麻帆良祭を開催します!!
 二億が動く市場である行事にしてはあっさりした挨拶な気もしますが、「これはあくまで学園祭なんだ」って姿勢を貫いているのだと考えると納得。モノホンのテーマパークの開園挨拶じゃないですからね。

>使い魔の俺っちが注意しなきゃ
 カモもネギの疲労に気づいて忠告はしたものの、明日菜のように休息を勧めるという具体的なフォローにまでは至りませんでした(=原作と同様)。

>ネギを引き摺って、刹那とカモミールは
 オコジョを頭に乗せたセーラー服(コスプレ)の女子中学生が、スーツ姿の十歳児をズルズル引きずっていく異様な光景。
 でも学祭中なので誰も細かいこと(?)は気にしないのであった。
 しかし…士郎に対してもこれくらい遠慮のない態度が取れるようになってほしいなぁ>刹那

>ジャイアニズム
 Wikpediaにページが存在していてワロタ。マジかよ…。
 ジャイアンの影響力は三次元にまで波及していたのか。

>私の魔力が封印されているとはいえ〜チャチャゼロ一人動かすくらい難しくない
 魔法薬を用いれば封印時でも魔法が使えるのも、似たような理屈ですかね。
 なんか学園結界って意外と抜け道が多い気が…。

>不気味な笑い
>チャチャゼロは面白がって便乗しているだけ
 普段はほぼ動けないので出歩けるだけでも楽しくて仕方ないのに、そこへネギ(格好の獲物)が近づいてくるものだからついからかってしまったチャチャゼロさんであった。

>茶々丸と士郎が今どこで何をしているか
 茶々丸:大事なご主人様を放って生みの親の下で暗躍中
 士郎:大事な御主人を放ったらかしにして異世界へ人捜し(現在は昔の女の墓参り)
エヴァ
「はん、別にイイんだ……。どうせ私は魔法使いのくせに魔力を封印されて、従者がいなければ時間どおりに朝起きるコトもごはんを食べるコトもできない、ダメな主人だからな……」
千雨
「メンタルよえぇぇえええ!!」

>三人は超捜しを開始した
 超を捜してる間って、カモ随伴でネギと刹那がデートしてるようなモンですよねアレ(原作を見ながら)
 刹那とのどか…一日で二人とデートかよネギェ…!(ギリィッ

>こんなものが、光だというのか
 暖かさと楽しさを知ってしまえば、虚しさと寂しさが襲いくる。
 昔は孤高で冷徹だったキャラや、改心した悪役キャラ等の、ある意味でテンプレ的な心情です。
 しかし元はただの村娘で、家族の暖かさも善悪も正しく知っていたエヴァが、生きていくため悪になり孤独になるしかなかったことを考えるとツラいっすね……。

>草原の丘に、墓標の群れ
 生活圏(村の中)に墓所を置きたくないでしょうし、かといって風が吹き晒す丘のど真ん中に作ったらすぐに風化してしまう。
 だから「村の外だけどちょっと歩くと着ける場所」みたいな所に墓があるだろうな、っていう作者個人の推測だけで完結した描写です(苦笑)
 ほら、日本でも村外れの田んぼの中によく墓所があるでしょ?(田舎者の感覚)

>そんな二人を遠くから見つめる、翡翠の視線
>二度と儂にその面を見せるな
 見たくもない顔だけど、墓守りなので仕事(エレナの墓、またその参拝者の監視)はする。
 妥協案として、士郎が来たら遠くから睨みつけるスタイルに落ち着いた。

>この視線が、俺の心を刺し続ける。
 ………楽しい学園祭編の最初の話に、どうしてこんなどシリアスな描写が突っ込んであるんだ…?

>ネギを遠くから見つめる視線
>表情を曇らせている
 せっちゃんは数歩下がって慎ましげに控えている姿がよく似合うと思う(ズレる論点)
 あといじめたい。苛めたくなる。

>おまけ
 夕映だけ台詞が(心の声)なのは、一般人のハルナがいるため「魔法」というワードを口にできなかったからです。

>ヘンな夢
 ネギが見たのは、「もし前日に超を助けずカシオペアを入手できないまま保健室で寝過ごしたら」という“イフ”のBAD ENDを経験して道場送りになった夢です。
 カモミールはきっとZ戦士の夢でしょう(笑)
 ああ刹那?きっと海に遊びに行く時に木乃香たちに勧められて大胆な水着を着たら士郎にガン見されておへそを必死に隠している夢でしょうねぇ>そんなところ見ちゃ
 あとは随分と早朝鍛錬に熱が入っている夢を見てるみたいですねぇ>嫌です〜こんな途中でやめちゃ
 ……………、なにか?

>人形の身である彼女では、かけてやれる言葉が見つからなかった
 この時チャチャゼロは、伝えたいことを正しく言葉で表現できなかった。
 何を言っても、どうもしっくり来ない予感があったから、ただ傍にいることにしたのです。

>ミニステル・パルウラム
 「minister paruulam」。ミニステル・パルウーラム。意訳すると「人形の従者」。

>ディアナ
>灰色の毛並み
>ケット・シー
 一説には、ケットシーはすべて黒猫だと言われています。
 しかしこの小説ではそんな事はなく(笑)、多種多様なネコが妖精をやっております。
 その誕生は、カモみたいに生まれながら妖精として生を受けているのかもしれませんし、百年生きると猫又になるのかもしれないし、九つの命を持っているかもしれませんね、フフフ。

墓守犬グリムチャーチ
 チャーチ・グリム。直訳すると「教会の妖精」、教会の墓所を守る妖精である(グリムとは、人間と関わりを持ち、人間に好意的な妖精を意味する名称)。
 その中でも有名なのが『ブラックドッグ』。黒妖犬。ヘルハウンド。
 外観は黒い大型犬で、その眼は常に赤く光っている。この犬を目にした者は死ぬという“死の先触れ”として恐れられるが、「こいつを見たら死ぬ」と言うよりも「死期が近いものにはこれが見える」という表現の方がおそらく正しい。
 墓荒らしには容赦しないが、神父や子供に対しては温和な存在である。



【次回予告】

 『第三章、束の間の日常編』はこれにて終了です。
 束の間にしては長かったぁ…(遠い目

 そして魔法世界へ旅立った士郎サイドがメインとなる次章では、遂に!
 あの銀髪碧眼エルフ耳女魔法騎士が再登場します!

 次回より『第四章、衛宮士郎激闘編』
 第56話 アイテルム・ムンドゥス・マギクス(仮)

 …以前、彼女は第五章で再登場すると言ったな。あれは嘘だ(※ただの予定変更です)。

 それでは次回!!

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