ついに始まってしまった。学生の地獄、期末テスト。この俺も悶えていた。
遠市さんの自宅を訪ねさせてもらってから二週間が経過している。
遠市さんの右目の違和感は完全に払拭されていないそうだが少し治まったそうだ。
迷惑はかけたくない、と豪語して自分で何とかするよ、と決意して俺を帰らせた。突然気が変わったのだろうか?
「どうだった蝉島?」
「エ? ナンノハナシ」
「口調からして危ないな、というかなぜロボット口調?」
すげーなえたー。
「まっ俺はそこそこ出来たかな」
嫌味か? そうならテストを取り替えよう。
「赤点だけは避けてくれよ」
「お前が言うと説得力があるな・・・・・・珍しく」
将錯は一瞬顔を歪ませて、そしてすぐにいつもの顔に元通り。
「まぁいいや、確かにお前の言う通りだ」
そりゃそうだろ事実だからな。
将錯はため息をひとつ溢して、椅子から立ち上がった。
「なぁ蝉島?」
「なんだよ急に立ち上がって」
「・・・・・・やっぱいいや」
珍しいな将錯が俺に対して言いごもったのは。そんな大きな悩みなのだろうか?
「俺・・・・・・帰るわ着いてくんなよ」
何も言い返せなかった。
「きく一緒にかえろっ♪」
将錯と入れ違いに入室してきたのは謎のボケをかます、俺の幼馴染みの明夏だった。今日はとりわけ機嫌が好調のようだ。
明夏は俺の席に歩み寄ってくる、突然ドンと机を叩く。
「菊は女性に対して一途だよね?」
「何当たり前のことを」
突然すぎて一瞬戸惑ったが返答する。
「それならいいけど、帰ろ♪」
少し首をかしげ微笑みながら尋ねてくる明夏はとても愛らしかった。
そして俺の腕を掴んで自分の腕と絡めてくる。積極的だな今日の明夏は。
「早く帰ろ菊」
「わかったから腕を放してくれ」
結局、俺の腕を両手で掴んだまま校門を抜けた。
しばらく歩いていると急に明夏が腕を放し後ずさる。
「この変態! 突然腕を絡めてきて!」
「お前だろ絡めてきたの!」
声を荒げて主張する明夏。こんな理不尽なことあるかー!
「私だってもう十七歳の女の子なんだよ昔とは違う」
興奮冷めやらぬ明夏は俺をそしりまくり目尻を上げ激怒する。
「そうかそうかじゃあもうこれっきりだな、お前とは。じゃあな」
無理に抵抗せず奇抜な策で対抗する。これが対明夏の効果抜群ギミック。押して駄目なら引いてみろだ。
「はぁ悲しくないの?」
「悲しいも何も人のことを罵る人間はいない方が嬉しいです」
歯をくいしばり怪訝そうな明夏、俺の勝ちだ。
「わかりましたよ一緒に居れば良いんでしょ」
開き直ったように平然と俺の隣に並び歩き始める。
結局、明夏は明夏なのだ。
遠市 成さんにファミレスに呼び出され、ただいま待機中。
普段なら自宅で優雅に過ごしている時間なのだが先輩に呼び出されては引くが失せる。しかも遠市先輩は三年生の間ではかなり人気のある美少女だ。その人に呼び出されたら行かない訳がない。
「ごめん、待った?」
「そこまでは待ってませんよ」
思っていることと違う台詞が口から溢れる。
「用件はねー」
この人の一挙手一投足はこんなにも可愛いのだろうか? これも眼帯効果というやつか。
「あなたって蝉島君と仲が良かったわよね」
「まぁそうですけど」
「それなら学園祭に面白いことしない?」
「何ですか面白いことって?」
インタレスティングだったか、多分蝉島に関わることだろう。
「内容はゴニョゴニョって言うことをやるんだけど・・・・・・手伝ってくれない?」
耳打ち時の吐息が俺の感性にいちいち触れる。
「ねぇ良いでしょ?」
やたらと顔が近くてとても気恥ずかしいのだが。
「良いですから顔が近いです」
「ありがとう、じゃあね」
てくてくと小走りでファレスを出ていく遠市さん。やっぱりかわいい。
それにしても蝉島の驚く顔って一回も拝見したことがなかったな。
部隊の編成と言い仕事を擦り付けないでいただきたいのだが。そんな嘆きも天には届かず、刻一刻時間だけが過ぎていく。
「進んでる?」
「少しは手伝ってください」
「今はだめだよ、モチベーション上げてるんだから」
紅茶とお菓子を咀嚼して何がモチベーションだ。
「第四部隊も準備できたって、プラス」
「ありがとう紅」
「ついに革命の時が来たわ。実行は二日後の奏巧高校学園祭の日だ!」
「「「おー!」」」
日本に危機が迫っていることを知るのは誰ぞや? 革命とは一体なんなのか? 数多くの疑問が残るなか風雲急を告げていた。