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俺の片目は戦争兵器 未琴のあり方
作者:青木   2016/05/08(日) 12:28公開   ID:aD/bcO1hwWA
 一時間の休憩をどう過ごすか。俺は考えあぐねていた。
 実際、学園祭と言えば部活、クラスによる出店ばかりで手当たり次第入店するくらいしかやることがない。
 ひとつ溜め息を漏らす。学園祭を付き合ってくれる人がいないからな。
 「どうしたの?」
 背後から突然声をかけられて、体が一瞬すくみあがる。
 俺は振り返った。目の前にいたのは庶民的お嬢様、未琴だった。
 「おどかすなよ、心臓に悪い」
 相変わらず庶民的な服装で、白いノースリーブの丈が短いワンピースで登場。
 「久しぶりです蝉島さん」
 ワンピースの生地が薄いのか水をかけたら肌が透けそうだ。
 「暇なら一緒に回りましょうよ」
 「お嬢様なのに護衛を付けないんだな未琴は」
 「そんなの付けてしまったら自由がありませんからね。さぁ行きましょう」
 未琴に腕を引っ張られやむを得ず未琴の巡回に付き合うことにした。
 いつでも艶やかで滑らかな未琴の金髪を眺めていると急に未琴が立ち止まる。
 「どこか行きたい場所はあります?」
 「お前に任せる」
 未琴が望み通りの場所に行ければそれで充分だ。
 「ならあそこに行きましょう」
 未琴が指差した方に目を凝らす。
 二人の仲を確かめる鎮座占い!と書いてある看板が。なんだそりゃ。
 「早く行きましょうよ」
 さっきより腕の引っ張る力を強め、強引に俺をつれていく。やめてください痛いです。
 そして看板の下に到着。
 館らしく作られた外見がよりいっそう雰囲気を増加させる。
 中に入ってみると、薄暗く整然と並べられた椅子や机が。
 「ご入館ありがとうございます。この度は説明をさせていただきます榊と申します。あそこにいらっしゃるのが鎮座占いの伝導師ことまいまい様です」
 占い師らしからぬ可愛らしい名前で隅に鎮座している人物がこちらを横目で伺いまた視線を元に戻す。
 「では奥の部屋に別れてお入りください」
 二つある部屋に別れて入る俺たち。
 ドアを開けた先には中央以外真っ暗な部屋が。部屋の中央にろうそくに囲まれた椅子が用意してあった。
 「椅子にお座りください」
 ドア越しに榊さんが順序を教えてくれる。
 俺は言われた通り椅子に腰かける。
 すると、ろうそくが一斉点火される。どういう仕掛けなのだろうか。
 「では、まいまいさんお願いします」
 「あなたたちの初めて出会った時間は?」
 「確か春休みのアルバイト中だったから・・・・・・昼間かな」
 未琴の声が壁越しに聞こえないようにしてあるらしい。
 「それぞれの存在を一から十の数字で表すとしたら?」
 「三かな」
 数字で表すって難しいな。
 「最後の質問です。自分が生まれかわった時にどんな動物、または職業で出会いたいですか?」
 「難しいこと聞くよねこの占い。えーと・・・・・・そのままの姿でもう一度出会いたいかな」
 「ありがとうございました。部屋から退室してください」
 俺が立ち上がったのと同時にろうそくが消火される。俺はドアノブを捻り部屋を出る。
 同時に隣の部屋から顔を少し火照らせた未琴が出てきた。
 俺たちの目の前で机に何かの用紙を置き椅子に腰かけているまいまいさんが。
 「あなたたちはお互いを大切に思う慕っていて仲も良く、これからもうまくやっていけるでしょうが、些細なことで片方が絶望するので気を付けましょう」
 「些細なことって?」
 「それは分かりません」
 まいまいさんの回答に未琴は唇を尖らせる。
 「行きましょう蝉島さん!」
 いきりたち俺の腕を引っ張る未琴。何がそんなに気にくわないのだろうか?
 「なんでそんなに怒ってるんだよ」
 「些細なことって何よ! わからないと対処できないじゃないの!」
 声を荒げる未琴。辺りの人もこちらをちら見し始める。
 好奇の目に耐えきれず俺はいきりたつ未琴を引っ張って体育館へ向かった。
 「なんで引っ張るんですか!」
 「一回落ち着け未琴」
 「何で些細なことで片方が絶望するのよ意味わかんない! あんな嘘ばかりの連中なんて」
 俺は未琴の口を押さえる。
 「あんなの気にするなよ。所詮は学生なんだから信じない方がいい」
 未琴は口を押さえている俺の手を掴み口を開放させる。
 「私は占い結果に怒ってるんじゃないのあの」
 「怒っている未琴なんて見たくないというか嫌いだ。未琴はいつでも笑顔でいてほしいのに俺の願望とは裏腹に逆上して・・・・・・残念だ」
 「え・・・・・・でも」
 「じゃあな」
 俺はその場から立ち去ろうと未琴に背を向け歩き出す。
 「ごめんなさい・・・・・・だから行かないで嫌いにだけはならないで」
 「冗談だよ未琴。俺がお前の事を嫌いになると思ったか」
 「なら♪」
 未琴は俺に歩み寄る。
 そして俺の腕に抱きつく。
 「こんなことしてもいいんだよね」
 「いや、そういう訳じゃ」
 「嫌いと好き以外なんてないはずだよ」
 全く女というのは難しい。もし、未琴が「ごめんなさい」と謝ってくれなかったら一生目も合わせられなくなってた。
 まぁこれでいつもの未琴に戻ったのならそれでいいか。
 「次どこいこうか?」
 目元が少し腫れている気がする。
 「ごめんな、もう時間だ。仕事場に戻るわ」
 唇を尖らせる未琴。そうしてくれるのと笑顔が一番可愛い。
俺は未琴と別れ、遠市さんと将錯のいる。教室へ向かう。
 また忙しくなりそうだ。

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