文化祭の出し物も無事に終わり、文化祭ラストイベントを残すだけとなった。
ラストイベントは実行委員や教員以外知らされておらず、毎年不確定行事なのだ。
「今日はありがとね二人とも私の私欲のために」
「そんなことありませんよ楽しかったですよ」
「それなら余計に成功ね」
いそいそと片付けをしている遠市さんを横目に俺は窓からグラウンドを覗く。
準備をしている様子は見受けられない。体育館で行うのだろうか。
「片付いた片付いた」
将錯は両腕を上げのびをする。
俺も全て片付いたのでまだ作業している遠市さんに歩み寄る。
険しい顔して儲けを計算しているようだった。
「手伝いますよ」
「もう終わるから大丈夫だよ」
あっさり断れれてしまった。
「かなり儲かったわよ」
にっこりして見せた遠市さん。表情からして期待できそうだ。
「140000円も儲けたわ、他の出し物と比べたら一位じゃないの私達」
お札を抱え嬉しそうに飛び跳ねる遠市さん。顔がとてもにこやかだ。
「でも三等分できませんよ?」
将錯に言われて俺はやっと気がついた、その通りだ。
「気にしないで二人に多く行き渡るように等分するから」
そんなこと断じて許可しないぞ! とわ思っても俺にそんな権限はない。
「先輩が多く貰ってくださいよ。俺たち少なくていいんで」
俺も将錯の意見に賛同し、こくりと頷く。
「でも・・・・・・私なんて特に何もやってないし」
「この儲けは全て先輩の人気があったからこそなんですよ。だから多くて当然です」
はっきりと言い切った将錯は一枚だけ引ったくり教室から出ていってしまった。
「怒らせちゃったかな」
目尻を下げ悲しそうな表情を浮かべる遠市さん。
「将錯は疲れると少し乱暴になるんですよ。ただそれだけですよ」
俺は必死に遠市さんに納得してもらおうとした。
「ううう〜どうして突然乱暴になるの〜」
もう泣きそうで顔を伏せて俺の体をぼんぼん叩き始める。
「大変だわーーーーー!」
突然、入り口から誰かの声がして、少し驚きながら俺はそちらを伺う。
「見てよこのイベント」
俺はつき出された用紙を読んでみた。
学園祭ラストイベント! ミス奏巧決定戦。なんだそりゃ?
「だいたいの概要は把握できるでしょ」
「まぁ一応」
「遠市さんに出てもらいたいの。お願い」
彼女は合掌し頭を下げ、懇願する。
「面白そうね、出場します」
予想外すぎた。ついさっきまで悲しそうにしてたのに開き直りが早すぎる。
「じゃあ、行ってくるね♪」
それはそれは嬉しそうに微笑んで。俺は手を振って見送った。
遠市さんは突然現れた女子生徒と退室してしまった。
「俺も退室するとしよう」
儲けを貰えないまま渋々退室することになった。
用紙を読んだかぎりはグラウンドで催すって記してあるけど。
俺はグラウンドにいざ出てみる。
中央には即席で設置したステージが用意してある。どうやらあのステージで開催するらしい。
ステージ前には早々から大勢の観客が。生徒は全員集まっているみたいだ。
「あと少しだけお待ちください」
「早くしてくれよ」
「美少女を拝見させてくれー」
「人類の秘宝を世界遺産を〜」
とか男たちの本音がただ漏れになっている。露骨過ぎるような。
「準備できましたオーケーです」
「では・・・・・第三回ミス奏巧! 開催でーす!」
会場は歓声で溢れる。俺も一番後ろの列で様子を眺める。
こうして、学園祭ラストイベント。ミス奏巧は始まった。
「では最初にエントリーナンバーい1番!」
まずは出場者の紹介だ。
「エントリーナンバー4番! 宗友 明夏!」
なんと明夏が出場しているらしい。予想外すぎて開いた口が戻らない。
「エントリーナンバー9番! この学園生徒ではございません久堂寺 未琴です」
黄色のドレス姿で入場だ。
次々と選手が暗幕からステージに入場してくる。
「エントリーナンバー14番! 遠市 成!」
どの選手にも歓声は上がったが遠市さんは少し違った。なんというか歓声が少し野太いのだ。
「では最後にエントリーナンバー16番! 苦琉島 蒼(くるじま あおい)!この高校のOBであり第二回の優勝者です」
会場はざわついたが、暗幕をくぐり抜けた瞬間それは沈黙に変わった。
この俺も圧倒された。
端正な顔立ち、私服からでもわかるスタイルのバランス、青い瞳、濃い青色の髪を背中まで垂らし。すべてに圧倒された。
「出場選手も全員揃ったところで校長の話をお聞きしましょう!」
司会が慣れた動作で進行させていく。
「司会も出場しちゃえばいいのにー」
そんなヤジは聞き流し、ステージに上がってきた校長に持っていたマイクを差し出す。それを受け取り校長はおもむろに口を開く。
「学園祭最後の宴といこうやー!」
たったその一言が校内に響きわたる。
「おーーーー!」
観客は拳をつくりそれを天に掲げた。俺もやってみた。
そして、学園祭ラストイベントのミス奏巧は盛大に開催した。