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ネギま!―剣製の凱歌― 第四章-第56話 再訪/ムンドゥス・マギクス
作者:佐藤C   2016/01/31(日) 22:05公開   ID:3o.0QE91NZ6



 フェイト・アーウェルンクスは言った。

『魔法世界はいずれ滅ぶ。そしてそれは避け得ない、絶対の運命だ』

 アルビレオ・イマは、衛宮士郎の問いにこう答えた。

『……アーウェルンクスが言ったことは―――事実です。魔法世界は例えるなら氷の城。
 異界を構成する魔力が枯渇し、氷は解けて跡形もなく消え去ってしまうでしょう』

『ふむ…〈完全なる世界かれら〉の動向ですか。残念ながら今の私ではなんとも。
 なにしろここ十年ずっと引き籠っていましたからね』

『その点については私より、“向こう”にいるあなたの師匠の方が詳しいのではないでしょうか?』

 こうして、衛宮士郎は再び〈魔法世界ムンドゥス・マギクス〉の土を踏む事を決意する。
 養祖父・近右衛門を通じてメルディアナ魔法学校長にも話を通し、魔法世界への入国手続きを取った彼は、エレナ・キャンベルの墓参りを済ませた後に転移門ゲートをくぐった。

 滅ぼすことで魔法世界を救うと言ったフェイト・アーウェルンクスの真意、〈完全なる世界コズモ・エンテレケイア〉の真実を知るために。
 そしてその鍵を握る自らの師―――〈紅き翼アラルブラ〉の一人、〈千の刃の男〉ジャック・ラカンに会うために―――。

「いってらっしゃいお兄ちゃん!気をつけてね!
 あ、あのっ――これ!お弁当作ったの!よ…よかったら途中で食べてくだすっ、さい!!」

 ………なのだが。
 妹のような少女、ラーラ・L・キャンベルに見送られ、士郎は心暖まるような、気の抜けたよーな気持ちになるのだった。







<第56話 再訪/ムンドゥス・マギクス>







 ―――転移は一瞬で終了する。
 先程まで居たウェールズの景色―――見晴らしのよい草原の丘の頂上が、屋内の一面真っ白な大空間に変化していた。
 そこに浮遊する、直径三十メートルほどの無数の円盤だけが、その空間で床の役目を果たしている。その中で中央に座す、ストーンサークルだけがウェールズの面影を残していた。
 魔法使いは、一般人にその正体や魔法について知られてはならない。
 そのため魔法世界に繋がるゲート―――英国のウェールズゲートは「丘の頂上に存在するストーンサークル」に偽装して布設されていたのだ。

 ここは〈ゲートポート〉。
 電車ならば駅、船ならば港、飛行機ならば空港に相当し、ウェールズを入口とするなら出口と形容するべき場所。
 即ち、魔法世界へ到着したことを意味していた。

(ふう…。慣れないな、この感じ)

 共に転移してきた人々に紛れながら、士郎は目深にかぶったローブのフードをパサリと下ろして息を吐いた。
 ゲートの通行者は互いの素性を秘するように、支給されたローブで身なりと顔を隠して入国するのが常である。

(端から見たら、どこの邪教カルト集団だって感じだけどな)

 士郎は苦笑して、脱いだローブをクシャクシャに丸めると、それを近くのゴミ箱に突っ込んでから出口に向かって歩き出した。

(―――追跡魔法が掛けられたローブなんか着てられないっての)

 士郎は青山詠春―――現在は近衛詠春―――を養父に、ジャック・ラカンを師に持つ身だ。
 彼らは〈サムライマスター〉、〈千の刃の男〉。
 共にネギの父〈サウザンドマスター〉……英雄ナギ・スプリングフィールドの戦友にして盟友である。
 その下で育ち、教えを受けた士郎に対し、周囲の魔法使いが“英雄達の後継者”という一方的なイメージを持つことも少なくない。現状、士郎の身の上を知るのは極一部の者に限られてはいるのだが。
 特に、新旧両世界の魔法使いから“本国”と呼ばれるメセンブリーナ連合国―――その首脳陣『メガロメセンブリア元老院』は、彼を自分達の傘下に置きたいと考えていた。

 そして何を隠そう、士郎が現在いるこの国こそ……彼ら元老院のお膝元。
 魔法世界二大超大国の片割れ、メセンブリーナ連合の首都『メガロメセンブリア』なのである。
 彼らは今回、士郎が魔法世界へ入国すると知って何か企んでいたのだろう。
 ゲート通行者にローブを支給した、ウェールズの魔法使いに彼らの息がかかっていた者がいると思われた。

(この国に繋がるゲートしか使える伝手がないのは、やっぱり大変だな。
 本国に匹敵する勢力といえばヘラス……は、師匠に連れられて第三皇女様に一度会っただけだ。
 あとは………アリアドネーのセラスさんに頼むしかないかなあ)

 魔法世界で屈指の治安の良さを誇るという点では、メガロメセンブリアは良い都市である。
 だが元老院にどんな手出しをされるかわからない分、士郎にとって良い場所とは言えなかった。

「あのう、ちょっといいかしら」

 そろそろ別のゲートを使えるコネが欲しい。
 ゲートポートの出口へ歩きながらそう考えて唸る士郎を、華やかな声が呼び止めた。

「……ええと、なんですか?」

 ローブの件もあって、士郎は警戒しながら声の方へ振り返る。
 しかし―――気づけば拍子抜けして、互いの・・・顔を凝視した。

 ―――黒髪の美女が、士郎の顔を見つめて硬直している。


「あ――その、ごめんなさい。少し、知り合いに似ていた気がして…」

 そう口篭った女性は、どうやら本当に困惑していた。
 さきほど声を掛けてきた時の流麗さはなく、必死に己を取り繕っている様子が窺える。
 彼女が落ち着きを取り戻すのを士郎が待っていると、少ししてその女性は改めて口を開いた。

「ごめんなさい、少し取り乱してしまって。
 あの…少しいいかしら? さっきの事とは関係なしに訊きたいことがあるの」

 赤い眼鏡の奥に覗く瞳は藍。
 白い肌は白人のそれで、背中まで伸びた黒い長髪は毛先が軽く波打っている。
 カッターシャツとレディースパンツという服装の上に、真っ赤なロングコートを羽織った姿が印象的な女性だった。

「メガロメセンブリアの中心だと思うんだけれど、『クォックス通り』ってどの辺にあるのかしら」
「……あー。その、すいません。俺、この国の地理はそんなに詳しくなくて」
「ああ、そうなの。重ね重ねごめんなさいね、なんだか旅慣れているみたいだったから、つい。
 ありがとうね」

 そんなやり取りを交わして、女性はさっさとコートを翻して去っていった。

「…何だ、あの人…?」

 ―――あの女性は魔法使いではない。それが士郎の所感だった。
 それがどうして、ゲートを通って魔法世界に入国しているのか。

 魔力はある、だが未熟だ。使い方をあまり知らない・・・・・・・
 しかしそれより、あの場慣れ・・・した雰囲気と身のこなしは―――。

(まるで真名みたいだ。兵士というか…傭兵のような…)


近衛コノエ!!」


 ゲートポートに響いた大声が、思考に耽る士郎を引き戻した。

 人垣を割るほど張り上げられた声は、それでも鈴を鳴らしたような美しさを失わない。
 その声に心当たりを覚えて、士郎は自分を呼ぶ声の主の方を見た。


 ――――揺れる銀髪が輝いている。
 早歩きから小走りに変わるほど慌ててこちらに向かってくる少女は―――離れていた二年の間に大きく成長していた。
 銀髪のポニーテールに、深い青色の瞳。
 尖った耳と陶磁の肌を持つ亜人の美少女。


「……驚いた。まさかこんな所まで―――しかも、わざわざお前が迎えに来てくれるなんて」

 士郎の前で停止した彼女は、荒れた息を整えながらも彼の顔から決して視線を逸らさない。
 それをじっと見つめて、士郎は万感の思いで口を開いた。

「元気にしてたか、フィン?」

「…ふふ―――あははっ」

 士郎が破顔すると、動きを止めていたフィンレイ・チェンバレンも笑い出す。
 月のような銀髪を持っていながら、彼女は太陽のように顔を綻ばせて言った。

「本当に久しぶりだぁ……そのお人好しな顔」
「なんだよ、それは」

 再会した友人同士は、取り留めもなく笑い合うのだった。


「ところで近衛」
「うん?」

 そして……ひとしきり笑った後。

「さっき親しげに話していた女。あれは誰だ」

 にこやかに訊くフィンレイ。だが目は笑っていない。
 自分の肩をがっちり掴んで尋問してくる友達に、衛宮士郎は震えた。





 ◇◇◇◇◇◇




「ふう、アイアスがなければ即死だった」
「おい何ださっきの盾は!? 尋常ではない魔力だったぞ!?」

 フィンレイの視線から―――物理的な意味でも―――刺されそうになった士郎は、何とか彼女を宥めすかしてゲートポートを後にした。
 現在は彼女と共に、魔法飛行船へ乗り込むため空港へ向かっている。

 ちなみに二人の服装は、士郎が白いTシャツの上にフード付きの黒いコートを着て、ジーパンとスニーカーを履いた姿。
 フィンレイは赤いタイを結んだ白いブラウスの上に銀灰色のカーディガンを重ね、下は藍色チェック柄のミニスカートに黒いニーソックス、膝下まで隠れるブラウンのロングブーツを履いていた。

 なおフィンレイのミニスカートは「き…今日の服装を相談したら、お母様が絶対にコレだって言うから…」という理由で履いてきたとのこと。
 それがニーソと組み合わさって生み出す絶対領域と、柔らかく滑らかな瑞々しい太腿があまりに眩しい。
 手で上品に口元を隠してのほほんと笑う金髪碧眼の女性を思い出し、士郎が「お母さん、グッジョブです」―――と思ったかどうかは不明である。

「…尾行は、撒いたか?」
「ああ、お陰様でな。追跡魔法も外れたみたいだ」

 ニューヨークを思わせるビル群の真下で肩を並べて歩きながら、フィンレイは士郎にそっと顔を近づけて耳打ちした。

 ゲートポートを出た直後、わざわざ天下の往来で派手な痴話喧嘩―――という名の魔法戦闘―――を演じたのはこの為だ。
 元老院からの追っ手…というほどでもないが、ゲートポートにいた時点で何人かの視線と気配を感じ、また士郎は自身に掛けられた追跡魔法を感知していた。
 それから逃れるため、わざとフィンレイが士郎に突っかかり、派手な魔法で周囲の魔力マナを不自然に乱して追跡魔法を不能にしたのだ。

 ………という様に、フィンレイの不機嫌は演技だったハズなのだが。
 彼女が士郎に対して直径2m、長さ18mという特大の『氷槍弾雨ヤクラーティオー・グランディニス』を撃ち出した事については、決して、先の黒髪の美女の件で本当に不機嫌になっていたから……ではないと信じたい。
 士郎は、切実にそう信じたい。
 いま自分の隣を楽しそうに歩いている美少女が、そんなおっかない女だと思いたくなかった。

「なあ近衛」
「お、おう!なんでしょうか!?」

 そんな事を考えていた矢先に名前を呼ばれ、士郎がビクリと肩を震わせる。
 彼の内心など知らぬフィンレイはその様子を不思議そうに見つめた後、唐突に口にした。

「お前、元気ないな。どうした?」


 ――――――。


「……………、え?」


 硬直した士郎の顔に浮かんだのは、困惑。そして歪んだ口の端。
 その―――引き攣った笑みの歪さに、フィンレイは嫌悪から眉を顰めた。


「―――悪かった。的外れなことを言った」

「……おう」


 このあと、気を取り直して歩を進める二人から―――ほんの僅かな時間だけ、会話が失われる。
 その間、フィンレイ・チェンバレンは、かつて自分を助けた少年の闇を思い出していた。

(人が一番解らないのは自分のことだ、とは言うが…)

(自覚なしか。こいつは殊更ことさらそれが顕著だ。自分を誤魔化すのが上手うますぎると言うべきか…)

 傷を負ってなお歩き続けるには、傷の痛みに慣れるしかない。
 痛みを忘れ……血を流していることにさえ気づかぬまま生きるしかない。


“――――失せろ愚物が。二度とその顔をその娘の墓石に映すでない”


「………近衛」

「ん。なんだ」

「…いや。お前………丁度良い時に魔法世界こちらへ来たかもしれないな」

 言葉の真意を尋ねてくる士郎を適当にはぐらかし、フィンレイは自覚した。


 ―――自分は少し、浮かれているかもしれない。
 先ほどの科白、“魔法世界へ”ではなく―――。

 丁度良い時に“私の所へ”来た、などと考えて、少しだけ頬を緩めていた。


(ああ―――本当に、駄目な男に引っ掛かったものだ)


 ―――初めて会った時より、身長差は随分と広がった。
 ほとんど同じだった頭の位置は、今では士郎の肩くらいにフィンレイの頭がある。

 その肩と隣り合って歩くのがこうも楽しい。
 フィンレイ・チェンバレンは、気落ちしている自覚のない隣の男をどう励ましてやろうかと、楽し気に思案し始めた。





 ◇◇◇◇◇◇




「それにしても、メガロメセンブリアからアリアドネーへの直行便なんてあるのか。知らなかった」
「言いたい事は解るがな。二十年前の大戦で魔法世界が二分してもなお、アリアドネーは中立を保ち続けた。
 帝国もそうだろうが本国も、どっちつかずの我国を良く思っていなかっただろう」

 また、大戦を引き起こした黒幕の存在を暴いた英雄たち〈紅き翼アラルブラ〉に協力したのも、国家としてはアリアドネーが初であった。
 戦争は謎の秘密結社による悪意を以て引き起こされたもので、また彼らはそれを隠れ蓑にして世界を滅ぼす魔法を発動しようとしている。
 その事実を〈紅き翼〉から訴えられてもなお、連合と帝国はなかなか足並みを揃えることができなかった。
 対して時のアリアドネーは誰より早く〈紅き翼〉に合流し、精鋭騎士団を派遣して全力の支援を行ったという。

 これにより戦後、アリアドネーの国際的な発言力は著しく向上。
 数では二大超大国に及ばないものの、質では決して劣らぬ軍事力を持つことも証明された。
 こうして武装中立国アリアドネーは、毎年行われる終戦記念式典の警備を担当し、メセンブリーナ連合とヘラス帝国の仲介役を務めるまでに至ったのである。

「帝国人は気の良い連中だからな、そちらとは良好な関係を築くことができていると言えるだろう。
 だが連合はそうではない。表面上は友好的でも、裏では我国をどう思っているのやら…。
 あそこは何を言っても元老院が問題だ、伏魔殿もいい所だぞ。誰が何を考えているかさっぱりわからん」

「うん、それわかるぞ。すごくわかる」

 うんうんと頷く士郎。
 過去には高圧的なスカウトを受けたり、強引に勧誘されたり、お手紙を頂いたり。
 元老院とは濃ゆいお付き合いをさせていただいた経験を持つ彼は素直に納得した。

「そんな訳だから、連合が本国とアリアドネーを直接結んだことを意外に思うのも当然だろう。
 だが、アリアドネーは戦後数年で二大国に続く力を持つようになったのだ。学問も魔法も先進的で、連合資本を送り込める経済市場にもなりうる。ここまでメリットがあるのなら、と考えたのだろう。世論に戦後融和をアピールする必要もあったしな」

 大戦終結後、世界中の人々が“恒久平和”を求めた熱は、いっそ異常と言えるほどの高まりだった。
 しかしそれこそが、秘密結社〈完全なる世界〉の残した爪痕の深さを物語るものでもある。

 二十年前、魔法世界を二分するほどの大戦となった“大分烈戦争”。
 しかしその開戦に大した理由はなく、「些細な誤解と諍いにより始まった」と言われている。
 それを引き起こした黒幕こそ〈完全なる世界〉。
 彼らは停戦、和平の動きを悉く潰し、民衆や各国政府すら操って戦争をコントロールし続けた。
 即ちそれは、たったひとつの組織が望む目的のために、世界中の人々が「操られ」、「意味もなく」、果てのない殺し合いをさせられたという事だったのだ。

 それを知った人々が戦争を憎み、平和を叫んだのも当然のこと。
 ―――故に。

 ナギ・スプリングフィールド。
 青山詠春。
 アルビレオ・イマ。
 ゼクト。
 ジャック・ラカン。
 ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ。

 黒幕を暴き出し、世界を救った英雄達……〈紅き翼アラルブラ〉は、二十年経った今も人々から称えられている。


「―――とまあそのお陰で、我々もその恩恵に与れるというワケだな」
「民間用にこんな高速魔法艦が使われてるなんてな」

 士郎とフィンレイが乗り込んだこの飛行船は、よくある“鯨船”―――魔法世界で一般的な、鯨に似た形状の滑らかなフォルムとヒレのようなパーツを持つ細長い飛行艦―――らしい真っ白なふねだ。
 現在二人は個人席に座り、窓からメガロメセンブリアの街を眺めながら雑談している。

「民間用とは言うが、実態が二国間による国家プロジェクトだからな。粗悪品では国の顔に泥を塗る。
 公共事業として二国の技術者を盛大に集め開発させた高性能機体だ」

 小型の魔法飛行艇は高速で小回りが利くが積載量は小さく、大型の魔法飛行艦は人と物を大量に運べるが鈍重。
 それら二種類の魔法船の特徴を高い精度で融合・両立させたのが、メガロメセンブリアとアリアドネーを結ぶ二隻の姉妹艦―――白亜の〈アルヴィトル〉と黒檀の〈ヘルヴォル〉である。

「戦艦には劣るが飛行艇以上の積載量。飛行艇より劣るが戦艦より小回りが利き高速。
 単純だが良い船でな、新しい大型魔法船の走りになったと言われているよ」

 この艦の就航は、連合とアリアドネーの高い技術力を世界に知らしめた。
 以降、ヘラスでも同様の飛行船開発が進み、魔法世界は一気に飛行船開発が加速していく。
 その影響で世界中の交通・流通網が急速に発展し、現在では富裕層の間で世界一周旅行がブームになっているという。

「メガロとアリアドネーは12000kmほど離れているが、十二時間もあれば着くだろう」
「ということは時速…1000km? あれ、旧世界むこうの旅客機もそれくらいだったような…」
「――な、なにぃっ!?」

 このあと飛行船が離陸するまで、士郎は「こっちの方が凄いぞ」と息をまくフィンレイの熱弁を延々と聞かされる羽目になったのだった。




 ・
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「………そろそろ『夜の迷宮ノクティス・ラビリントゥス』の真上だな」

 “夜の迷宮ノクティス・ラビリントゥス”。
 古代の遺跡が入り組むように密集し、一度足を踏み入れると途端に迷い込んでしまうという天然の迷路。
 かつてここに〈完全なる世界〉の根城の一つがあり、そこに某国の要人が捕らえられていたという逸話も残る有名な遺跡群である。

 この飛行船―――アルヴィトルが飛ぶ航路はアリアドネーへの直行ルートだ。
 魔法災害の残る旧オスティアや連合の仮想敵国であるヘラスを避けて、それらと正反対の西へ向かって飛行している。
 連合西端の大都市フォエニクスの方向へ進んで海を越えれば、アリアドネーがあるシメリア亜大陸へ到着だ。

「…おい近衛、それはなんだ」

 座席に備え付けられた簡易テーブルで、士郎が何かの包みを開いている。
 可愛らしい赤いチェック柄の布から出てきたのは―――今朝ラーラから手渡された弁当箱であった。

「ウェールズの知り合いの女の子から貰ってさ。
 小腹が空いたし丁度いいかなって―――おい、なんだその顔」
「…別に。なんでもない」

 険しい表情のフィンレイを不思議に思いつつ、士郎は弁当箱を開けてそこに並べられた色とりどりのサンドイッチを眺めた。

(おお、イギリスのキュウリサンドイッチは久しぶりだな。
 卵はマヨネーズとの和え物じゃなくて目玉焼きにハムとレタスかー。ふむふむ)

(…くそ、学食や食堂で済ませていたから料理の経験は……。
 仕事一徹の生活がこのような所で祟るなど……くっ!)

 士郎が感心しながらサンドイッチを眺め、隣でフィンレイが拳を握って料理の勉強を始めようと決意した時だった。


“ゴォオオオンッッ!!!”


「っ!!?」
「フィン!!」

 激しい衝撃により大きく揺れる船体。
 突然の事態に混乱する耳を容赦なく突く鈍い轟音。
 士郎はフィンレイの腰に腕を回して引き寄せると、彼女を支えながら窓の外を一瞥した。

「なんだ……何かの…尾? ウロコ―――まさか!竜種だと!?」

《ハーッハッハッハ!!ご機嫌いかがかな紳士淑女の諸君!!》

 士郎が外の存在に驚愕していると、粗暴な野太い声が艦内を席巻した。
 彼の腕に収まったままのフィンレイがそれに反応し天井を見上げて叫ぶ。

「そんな、今のは艦内放送用の念話テレパシーチャンネル!?
 まさか艦長…いや艦長室が!?」

《この艦は俺たち〈常夜の竜ドラコニス・ノクトゥルヌム〉が制圧した!!いま俺の仲間が武器を持って全客室に向かっている!
 言っとくがこっちにゃ魔法使いマジックユーザーもいるからなぁ!!
 死にたくねえ奴は大人しくしてることをオススメするぜ!!》

《この船の積み荷、金目のものは全て俺達が頂く!!》


「……空賊か……!」

 絞り出した士郎の声は、焦燥に満ちていた。
 窓から窺い知れる、黒い鱗に覆われた尾を見れば、飛行艦アルヴィトルに覆い被さる竜の巨大さが理解できる。
 鯨船の上に乗れる程度のサイズとはいえ、成竜クラスの竜種であることは明らかだ。
 フィンレイも事態を把握して、士郎の腕の中で小さく震えている。


「………ふ、ふ―――ふふふふふ…。
 空賊とか巫山戯るなよ…アリアドネー行きの便が襲われたとあっては私も無関係ではいられないじゃないか…。
 乗客を保護して…賊を引っ捕えて…ああ鎮圧後に乗員に指示を出してアリアドネー騎士団と本国に報告を入れてもらって護送の用意をお願いしてあぁ乗客のケアもしなければなーあはは一気に仕事が山積みだ…」

 拳を固く握り、行き場のない怒りに打ち震えるフィンレイ・チェンバレン。
 しかしそれは衛宮士郎も同じだ。
 彼は今朝の、キャンベル家での出来事を思い出す。

『いってらっしゃいお兄ちゃん!気をつけてね!あ、あのっ――これ!』
『ん、これは…』
『お…お弁当作ったの!よかったら途中で食べてくだすっ、さい!!』

 朝早くに起きて、少女が衛宮士郎のために用意してくれたサンドイッチ。
 それを受け取った時の、あの嬉しそうな笑顔――――その果てが、先程の衝撃で―――見るも無残に床を散乱している。

「フ…フフ……。食べ物を粗末にする奴は……」

「よくも…近衛と一緒の旅行を台無しに……ふっ」


 意図せず共有するこの感情――――怒りと呼ばずに何と言う……!


「「――――――許さん」」


 期せずして、全身から怒気を発散した二人が客室のドアに向かって歩き出したのは全くの同時。
 この瞬間、空賊の未来は確定した。





 ◇◇◇◇◇◇



 アルヴィトルの艦長室は、空賊らによって完全に制圧されていた。
 操舵手やオペレーター等の人員は座席越しに刃物や長物の武器を向けられ、席に座ったままの艦長は周囲を数人の男に取り囲まれていた。

《親分!竜は今んトコちびどもの言うことをちゃんと聞いてるぜ!》
《お頭!左翼の客室は全て制圧したと報告が!》
《ボス!船を護衛してる魔法使い共は乗客を人質に取ったら大人しくなりやした!》

「よーし、引き続き竜とちびどもの面倒を見ておけ!乗客は全員一箇所にまとめて管理しておくんだ!
 護衛の魔法使い共は魔法発動体を奪ってから縄でふん縛っとけ!
 あとお前ら俺の呼び方を統一しやがれ!」

 魔法使いの仲間によって中継された念話が応酬される。
 でっぷりと腹が出た、しかし筋肉質で体格の良い黒髭の大男は、仲間たちに指示を出すと気疲れしたように息を吐く。
 それを見て、理知的な雰囲気の若い男と、猫背で飄々とした中年の男が彼に声を掛けた。

「このままいけば上手くいきそうですね、団長」
「…おう、そうだな。俺達みてえなコソ泥上がりが旅客船を襲う空賊なんざ、どうなることかと思ったが」

 リーダー格の大男は腕を組んで、数週間前の出来事を思い出した。


『おじちゃーん!怪我したトカゲ拾ったのー』
『すごく大きくて、あと羽根も生えてるんだよ!』
『その、勝手についてきちゃって…ごめんなさいおじさま。飼っていい?』
『アンギャー!!』
『んのわぁぁあああああああ!!?』


「……ウチのちびどもが、怪我した竜を手懐けて森から戻ってきた時は、そりゃあたまげましたねぇ」
「俺ぁアレで寿命が数年分は吹き飛んだと思うぜ、竜に吼えられなんぞしたらよ」

 何の因果か、彼らは数名の子供を保護して育てている。
 その子供達はある日、驚くべきことに竜を連れて帰ってきてしまったのだ。
 しがない盗賊団であった彼らは日々の暮らしに窮し始めており、その竜を利用することを思いつく。
 こうして彼らは、竜を用いて旅客飛行船を襲う空賊〈常闇の竜〉となったのだ。

「ですがこれで稼ぎが増えれば、食うに困ることも減るでしょう。子供たちがお腹を空かせることもなくなる…。
 ……本国騎士団にでも目をつけられない限りは」

 いずれ“竜を従えた空賊”という噂が広まった時、連合の精鋭部隊〈本国騎士団〉が動くか、そうでないか。
 この空賊の中で比較的頭の回る彼は、その点をひどく懸念していた。

「まあ、本国騎士団でさえ、仕事であっても相手にしたくないのが竜種ですからね。
 それを従えている以上、普通の旅客船や商船相手に失敗するなんてことは――」

 その言葉を遮るように、彼らが艦を襲撃した時と似た衝撃がアルヴィトルを襲う。
 直後、彼らの頭に念話のノイズが走り込んだ。

《おっ親分!竜が…竜が逃げちまったぞ!!》
「なっ…」
「なんだとぉおお!?」

 叫ぶ彼らは、慌てて艦長室から外を見る。
 そこには竜―――翼と前脚が一体化した飛竜ワイバーンが、その黒く巨大な翼を必死に羽ばたかせて艦から離れていく姿が見えた。
 ―――まるで、己を殺せる“何か”から逃げ出すように。

《とっ頭領!!》

「今度はなんだ!!」

《ま、魔法使いです!すげぇ美人です!!
 けどやたらおっかない女で、そいつが人質を奪いに来――ふひゅッ》

「ど、どうした!? 応答しろエイナル!エイナルーーーっ!!」

 リーダー格の大男が必死に呼びかける。
 だが途切れた念話の向こうから、返事が来ることはなかった。

「お、おいサバテ!何が起きてる!?」
「僕に訊かれても分かりませんよ!!くそっどうする…。
 たとえ人質を取り返せても竜がいない以上ここから逃げるのは無理…だったら…」

 顎に手を添えて思考を巡らせる、サバテと呼ばれた若い男。
 やがて、彼は覚悟を決めて己のリーダーを仰ぎ見た。

「団長、すぐにこの艦を不時着させましょう!それしかありません!」
「なっ!?」
「そんな、無茶を言うな!!」

 それを聞いたアルヴィトルの操舵手は、背中に今まで以上の汗をかき始めた自分を自覚した。
 艦は既に大森林の上空を飛んでいる、このまま森の木々の真上に不時着するのは危険を伴う。
 艦長が反対の言葉を口にするが、それはサバテの視線に一蹴された。

「……ち、結局今までどおり『夜の迷宮』に逃げ込むしかねえってか…!」

 空賊をやるなど力不足。分不相応。
 自分達は所詮、盗んだ後に隠れて逃げ回ることしか能がないコソ泥だ。
 リーダー格の大男…ウルバーノ・ロドリゲスは、その事実を現実という形で突きつけられた気分だった。
 ―――それでも彼は、仲間を守るため、必要な判断をする責任があると知っている。

「……トミー、全員に通達しろ」
「あ、アニキ…」

 ウルバーノに名を呼ばれた猫背気味の中年の男は、仲間全員に念話を飛ばしてリーダーの指示を伝える連絡係だ。
 そして同時に、互いにコソ泥に身をやつしたばかりの頃からの、古い付き合いであった。

「撤退だ!これよりこの艦を不時着させる!!金目の物を持てるだけ持って出入り口に集合しろ!!
 着陸後はすぐに森の中へ散り、とにかく東へ突っ走って『夜の迷宮』のアジトに逃げ込むんだ!!
 トミー、着陸のタイミングに合わせて、全員に衝撃に備えるよう―――」


『―――キュアノス・タイヴァス・ラズーァシュタイン』


 氷のように透き通った、冷たくも美しいおとが鳴る。
 艦長室に居る全員が、それを耳にして一斉に動きを止めた。

「…始動キーだ!!アニキ、扉の向こうに魔法使いが――」
風花フランス武装解除エクサルマティオー!!』

 瞬間、封鎖された艦長室の扉が分解されて花弁と散った。
 それは同時に吹き荒れた突風によって舞い上がり空賊の目を眩ませる。

「くそっ誰だ!いや、そうかテメェが…」

魔法の射手サギタ・マギカ戒めの風矢アエール・カプトゥーラエ!!」

 風で細めた目に映るのは、銀の長髪の魔法使い。
 彼女が放った拘束の矢によって縛られ、艦長室に居た空賊のほとんどが立ったまま行動を封じられる。
 その横を、一陣の赤い風が吹き抜けた。

 ―――ヒタリ。
 冷たい白刃がウルバーノの、黒い刃がサバテの首に押し当てられる。

「降伏しろ。…空の上で死ぬのが望みというなら、話は別だが」

 干将・莫耶を突きつけて、衛宮士郎が宣告する。
 それは事実上、この事件の終結を宣言していた。




 ・
 ・
 ・
 ・




 ハイジャックの発生から十数分後、空賊〈常夜の竜〉は全員が無力化された。
 その後、旅客飛行船アルヴィトルは都市フォエニクスで緊急着陸。
 艦長から連絡を受けていたフォエニクス駐在勤務の連合正規軍により、二十数人の空賊たちは捕縛・連行されていった。
 軍は今回の功労者である士郎・フィンレイに礼を言って敬礼したが―――なぜかその二人が落ち込んでいることに首を傾げるのだった。

(……ああ、弁当)
(近衛との旅行が…台無し…)

 ―――闘争の後には、空しさしか残らない。
 士郎とフィンレイはそんな真理を見た気がした。
 しかもこの後、事情聴取のため二人は更に数時間足止めを食い、気づけば日が沈み始めているのだった。

「いっそ今日はこの街で泊まるか? 急ぎの旅でもないし」
「―――!? おおおお泊まり!? そんなっ同衾なんて早い!?」
「なんでさ。どうした落ち着け」

 そんなやり取りがあったとか、なかったとか。





 ◇◇◇◇◇◇




「はい、みんなー。たっだいまー」

「げっ」
コヨミ、それは露骨」
「まあ気持ちは分からなくもないですが…」

「御苦労様でした」
「フン。ようやく戻ったか」

「ちょっと、優しく労ってくれるのが調シラベだけってどうなのよ。
 あと暦…久しぶりだからってずいぶん可愛がってほしいみたいね?」

「にゃあぁーー!? 違いますっ、ごめんなさい謝りますからぁ!!」
「とまあ、啼いてる子猫ちゃんは放っといて」
「鬼か貴様」
「よしよし、暦。大丈夫」
「うえーん、タマキぃー」

「それで、フェイト君はドコ? 一応、帰還報告を入れたいんだけど」

「………チッ。奥にいる」
「………ねえ、何でホムラの機嫌こんなに悪いの」
「その……旧世界ムンドゥス・ウェトゥスで拾ってきたキョウトの剣士と二人きりで何か話しているからでは…」
シオリ!!余計なことを言うな!!」
「あー、はいはい。カワイーイ嫉妬しちゃってるワケね。良いわねぇ若いって。
 私は恋も青春も一気に終わっちゃったから、あなた達が眩しくて仕方ないわー」

「―――随分賑やかだと思えば、君か」

「っ!!」
「フェ、フェイト様!!」
「騒がしくて申し訳ありませんっ」
「構わないよ。それより…」

「お帰り。御苦労だったね、“マカネ”」

「うん、ただいま―――只今戻りました、マイ・マスター。
 メガロの闇商人ブローカーよりくだんの魔法具…『鵬法璽エンノモス・アエストラフラーギス』、首尾良く手に入れて参りました」

 白い肌に、毛先が波打つ黒い長髪。
 赤い眼鏡の奥に蒼い瞳を覗かせる―――“鉄”と呼ばれた赤いコートの美女。
 彼女は白い髪の少年…フェイト・アーウェルンクスの足元で、艶美な笑顔を浮かべてかしずいた。

「万事オッケーよ♪」







<おまけ>

 士郎はエレナ・キャンベルの墓参りを済ませ、魔法世界へ繋がるゲートをくぐった。
 妹のような少女、ラーラに見送られ…ほっこりしたような、気の抜けたよーな気持ちになりながら。

ラーラ
「いってらっしゃいお兄ちゃん!気をつけてね!
 あ、あのっ――これ!お弁当作ったの!よ…よかったら途中で食べてくだすっ、さい!!」

 ―――その頃、麻帆良にいるもう一人の妹はというと。

木乃香
「………。」

木乃香
「なんや―――シロウを盗られた気がする!」

 ばーん!!(扉が勢いよく開け放たれる音)

刹那
「し、士郎さんが寝取られたと聞いて!?」
明日菜
士郎あのバカがまた性懲りもなく女の子を引っ掛けたと聞いて!」
カモミール
「ダンナがとんでもないものを盗んでいきましたそれは幼女の心ですって聞いて!」
ネギ
「シ、シロウ!僕はシロウを信じてるよ!?」
近右衛門
「もしや噂に聞いていた士郎のがーるふれんどの話かと思って祖父じいちゃんwktk!!」
木乃香
「ウチの独り言がいったいどこまで傍受されとるんか驚きを隠せない件!!
 でも精度は低かったわーそこはほんま安心したわー!
 それでシロウの風評被害が増えてるとかそんなん今はどーでもええわー!!」

エヴァ
「…いいのか?」
茶々丸
「確かな事は、士郎さんへロリコン疑惑がかけられているということですね」
エヴァ
「ロリ……まったくアイツめ、私に言ってくれればいつでも……ふふふ。
 エヴァンジェリン大勝利!希望の未来へレディ・ゴー!!」
茶々丸
「姉さん。マスターはもうダメかもしれません」
チャチャゼロ
「ケケケ。俺ハモウ諦メタゼ」

エヴァ
「幼女とかロリババアとか好き放題言われてきたが、それももはやどうでもいい!
 この戦い、私の勝利だ!!」
刹那
「わ、私だって似たような体型ですし!私にもチャンスはあります!」
エヴァ
「だが貴様はロリではない」
刹那
「く…っ!」
木乃香
「フッ。なにか勘違いしてへん?エヴァちゃん!
 女子中学生は世の中のフツーの男の人にとって………ロリや!!」
エヴァ
「だとしても、刹那より私の方がロリだッ!!」
木乃香
「――くぅっ!?」

明日菜
「ネギ、私もう疲れちゃった」
ネギ
「そーですね。スターブックスで何か飲みましょう」
近右衛門
「あ、ワシもワシもー」

しずな
「―――学園長は」
刀子
「仕事ですっ!!」
近右衛門
「ぬぅっ!?どこからか現れたしずな君と刀子君によって一瞬にしてワシが簀巻きに!?
 ネギ君助けてー!超助けてー!!」

ネギ&明日菜
(・ω・´)ゝ(・ω・´)ゝ
近右衛門
(つ;ω;)つ)))ズルズル…

 簀巻きにされた学園長が二人の美女に引き摺られていく光景は、哀愁を漂わせながらもシュールだったと、のちにネギ・スプリングフィールドは語ったという。


※これは本編とリンクしていないギャグ時空なので、本編と違ってエヴァと茶々丸が一緒に行動しています。
 そのため「―――その頃」という冒頭であるものの、イギリスや魔法世界との時差は全く考慮していません。
 純情可憐な刹那は「寝取られる」なんて言葉知りませんし、エヴァはここまで士郎に入れ込んでませんし、ネギと明日菜はぐうぜん近くで木乃香の声を耳にしただけであって、決して近右衛門は孫に盗聴器など仕掛けていないのです。
 あとこのおまけの冒頭の流れは某二次小説のオマージュです。パクリではありません(白目




<オリジナルキャラクター設定>

フィンレイ・チェンバレン(Finlay Chambelain)
 アリアドネー魔法騎士団に所属する女騎士。
 得意な魔法は風・水・氷属性。始動キーは「キュアノス・タイヴァス・ラズーァシュタイン」。
 士郎の数少ない友人で、「フィン」という愛称で呼ぶほどの親友。
 かつて第旧章・魔法世界編のヒロインだった(当時15歳)。
 原作開始時(2003年2月)では18歳、数えで19歳。気が強いながらも幼さを残した少女から、凛とした佇まいを持つ美少女へと成長した。
 瞳の色は鮮やかな青、肌は陶磁のような白で、尖った耳を持つ亜人。美しい銀の長髪を結わえ上げたポニーテールがトレードマーク。
 実家はアリアドネーの名門だが、お嬢様扱いされる事が大嫌い。また箱入り育ちゆえの世間知らずぶりが見られたが、それらのコンプレックスや欠点は今では解消されている。
 一人娘ゆえに、跡継ぎが欲しい父親が持ってくる縁談とお見合いに日々辟易しており、現在その悩みは騎士団の仕事に没頭することで逃避中。しかしいつまで逃げていられるかと不安になる度に士郎のことを思い出している…らしい。

マカネ/???
 士郎がゲートポートで出会った謎の美女の正体。本名はまだ秘密。
 本来、“鉄”の読ませ方で正しいのは『鉄(まがね)』だが、鉄を意味する『真金(まがね、まかね)』と混同してあえて変じている。鉄(まがね)は男性名なので、女性名らしく若干柔らかい印象に変えたかったという本音に目を瞑って頂けると嬉しいです。
 ネギや士郎と同じ旧世界出身で、二十代前半の女性。
 北欧系の白い肌に、毛先が波打つ黒い長髪を持ち、赤いフレームの眼鏡の奥には深い藍色の瞳が輝く。
 かつて中東でNGOとして活動していた過去を持ち、現在は秘密結社〈完全なる世界〉に戦闘員兼工作員として所属している。
 フェイト・アーウェルンクスの従者の一人であり、彼との契約で得たアーティファクトを用いて戦う。
 なお、フェイト従者ズ五人との人間関係は微妙。暦をいじめるのが好きなので彼女からは避けられており、お堅い焔とも折り合いが悪い。真面目な栞も軽い性格の鉄が少し苦手。しかし大人しい環や調とは比較的仲が良い。
 そんな人間関係ではあるが、いざ作戦行動をとると六人のチームワークは抜群であるという。

常夜の竜ドラコニス・ノクトゥルヌム
 今回、士郎とフィンの怒りを買った哀れな空賊。
 空賊と名乗っているが、独自の飛空艇は所持していない変わり種。自分達が乗り込んだ籠を飛竜に運ばせて空を移動し活動しており、普段は『夜の迷宮』〜フォエニクス間に広がる大森林を根城にしている。
 実は空賊としての活動は今回が初。引き取った子供たちが森で怪我した飛竜を偶然見つけて手懐けてしまい、それを盗みに利用することを思いついて実行に移した。〈常夜の竜〉という団名はその際に付けたもので、それ以前は組織名など無かった。
 空賊業に手を出す以前、名も無き盗賊団時代は必ず夜中に行動し、近隣の村々で暴力も交えて盗みを働き、追っ手が掛かったら『夜の迷宮』や大森林に逃げ込んでやり過ごすという方法で生き延びてきた。そのため彼らは、どれほど大所帯となっても、どれほど捕まらずに盗みを働いても、増長することはできず自分達のことをコソ泥と卑下し続けている。
 そんな彼らは元々、街の爪弾き者や乱暴者、コソ泥の寄せ集めであった。その中で面倒見の良いある男がいつの間にかリーダーとなり集団意識が芽生え、そのまま盗賊団へと形を変えたという経緯を持つ。
 そのためか、周辺の村や都市で食うに困るほど貧困に喘ぐ者を身内に引き入れたり、見捨てられずに捨て子を引き取って育てるなど結構お人好しな集団である。
 連合国の出身であるためメンバーは全員が人間ヒューマン。戦闘に秀でた魔法使いは二人のみだが、生活に便利な魔法、通信用魔法など、戦闘以外に役立つ魔法を使える者はさらに複数名存在する(ただし魔法世界の住民はほとんどが「火を起こす」など簡単な魔法を扱えるby公式)。
 56話の顛末後、大人たちは実刑判決を受けたが、子供たちは情状酌量により執行猶予が付き、孤児院や教会に引き取られて教育を受けるという。

団長:ウルバーノ・ロドリゲス(Urbano Rodriguez)
 身長は180cm代後半くらいの大男。黒い短髪と髭を生やしている。顎ヒゲと鼻の下のヒゲが繋がっていて粗野な印象を与えるが、本来の気性はおおらかで面倒見の良い好漢。
 でっぷりと腹が出ているが筋肉質で体格のよいマッチョデブ。つまり体質の問題であって、稼ぎが少なく食事も事欠く彼ら盗賊団において、団長である彼だけが贅沢して太ったとかそういうことではない。
 妻を早くに亡くし、紆余曲折を経てコソ泥に落ちぶれる。しかしその面倒見の良さが人望に繋がり、気づけば一人のコソ泥は、大所帯の盗賊団ボスになっていた。
 仕事が下手な訳ではないが、団は常時金欠。子供の面倒まで見るほどの大所帯ゆえ、いくら盗んで稼いでもお金が足りない。だが仲間をクビにしたり切り捨てたりはしない。
 そんな事情により、図らずも竜を手に入れた事で空賊稼業に手を出して稼ぎを増やそうと画策したのであった。

参謀役:ロベルト・サバテ(Roberto Sabate)
 身長170cm前半くらいの少年。二十歳直前くらいの年齢。
 元々は都市フォエニクスの大学に通う苦学生だったが、お金の工面が間に合わず学費未払いで退学となってしまった。奨学金を受けられるほど勉強は出来ない。
 その後は就職も上手くいかず生活に困り果て、なんやかんやあってウルバーノ率いる盗賊団に出会い、なんだかんだ彼らの頭脳的ポジションに収まった。高等教育を受けていたのは伊達じゃない…!

連絡役:トミー・レゲーロ(Tommy Regueiro)
 身長160cm代半ばの中年の男。少し猫背。
 ウルバーノとの付き合いが一番長い最古株の一人であり、ムードメーカー的な存在。
 団の中で数少ない魔法使いだが、攻撃や治癒は不得手で、団員同士を念話で繋ぐことで活躍している。念話とは本来、一方的に飛ばすことしかできない(送受信者の双方が念話を使える場合のみ、互いに情報を送りあって会話が可能になる)のだが、トミー曰く「我流で工夫してみた」という念話術式はそれを克服している。(仕組みは、トミーが念話を送る際、送った先の相手が返信するための通信経路パスも一緒に送信するというもの。当然、パスの維持や、相手が返信する際にもトミーの魔力を消費するので燃費は悪い。このためトミーは「連絡役」専門のポジションに就いて、それ以外で魔力を使わないようにしている)
 上記のように、本人は気づいていないが、魔法術式を開発する才能があるようだ。

チャロ&チャス(Charo & Chus)
 盗賊団に保護されている双子の姉妹。年齢は五〜六歳くらい。
 髪は赤毛で、チャロがベリーショート、チャスがショートボブ。なおチャロは僕っ娘である。
 大森林で傷ついた飛竜を見つけ、翼が生えたトカゲとかマジかっけー、という軽いノリで拾ってきた。
 ハイジャック事件後は、涙ながらに大人たちと別れるも、引き取られた孤児院でそこそこ幸せに暮らしながら、刑務所に入った盗賊団のメンバーと年に数回ほど面会しているという。

リラ・ユオン(Lila Yuon)
 盗賊団に保護されている十歳くらいの少女。先祖は地球出身だが、ファンタジー世界っぽい薄黄緑色の髪を肩甲骨の辺りまで伸ばしている。まあ純日本人であるまき絵の髪がピンク(ry なおサラサラツヤツヤのキューティクル美髪である。
 以前は裕福な家庭で暮らしていたが、父親が事業に失敗して貧困層へ転落。家の食い扶持を減らそうと要らぬ気を遣い、無断で家を出奔し孤児になった所を盗賊団に拾われたという過去を持つ。
 事件後は教会に引き取られてシスター見習いになった。

ふひゅッの人(Einar Niklander)
 本名、エイナル・ニコランダー。
 盗賊団こと、空賊団〈常夜の竜〉の一員。
 ハイジャック時は、捕らえた乗員乗客を展望室に集めて人質として管理していた。
 しかし人質奪還に現れたフィンレイに見惚れている間に彼女の接近を許し、駆けてくる彼女のミニスカからチラリズムする眩しいふとももに目を奪われているうちに身体を凍らされ、「ふひゅッ」ってなんかヘンな声が出た。
 その後は人質に代わって彼が縄でふん縛られた。気の強そうな美少女からぎゅっぎゅと縄で縛られて目覚めそうだったと取調室で供述し、彼の取り調べを担当していた女性捜査官から蔑みの目で見られてご褒美だった。

ゴットフリート・ヴィルフリート・カール=ハインツ・ベーレンブルッフ(Gottfried Wilfried Karl-Heinz Behrenbruch)
 フォエニクス‐メガロメセンブリア間に広がる大森林に棲息する野生の飛竜ワイバーン
 ある意味、今回のハイジャック事件の引き金になった元凶。
 森に棲む他の竜種と縄張り争いをするも決着がつかず、勝負がお預けになったあと森を彷徨っていた所、盗賊団の少女達と遭遇。彼女達が結構好みの容姿をしていたので、その後をほいほいついていったというのが真相。…ロリコン?
 ハイジャック事件時は、幼女にお願いされるがまま空賊を籠に載せて飛び、彼らを旅客飛行艦アルヴィトルに運び込む。しかしアルヴィトルの真上に陣取っている時に士郎からグラムを突きつけられて呆気なく逃走した。
(やべえアレまじヤベェ!!く、すまない少女たちよ…いずれ美しく成長した君たちと再会できる日を待っているぞ…!)とか考えながら必死で“竜殺し”から逃げた。ロリコンじゃなくて女好きだった。
 その後、引き分けになっていた相手と再び勝負するも、負けて縄張りが減ったらしい。
 野生の竜なので本来は名前など無い。名前はネタで作ったもの。



〜補足・解説〜

>養祖父
 養子に行った家の祖父のこと。
 今まで士郎から見た近右衛門をいちいち「義理の祖父」と書いていたのですが、もっと早くこの言葉を知りたかった……。
 こうやって語彙を深めるためにも本を読んだほうが良いのでしょうが、小説書く時間も中々取れないのにいつ本を読めって言うんだ(愚痴

>メルディアナ魔法学校長にも話を通し
 入国申請やゲート通行許可を取ってほしいという話は近右衛門に通し、校長に対しては「魔法世界に行くのであなたのお膝元ウェールズを通りますよ」という事前の根回しです。
 シマのボスには挨拶しておかねば(893?)。

>よかったら途中で食べてくだすっ、さい!!
 「うわーん噛んだー!!」とか内心では思ってる。ラーラちゃんマジ純真。
 しかしこの子英語で喋ってるんだけど、外国人が「噛む」ってどんな感じなんだろうか。

>ラーラ・L・キャンベル
 L=レティ。ミドルネームを略しただけ。
 ちなみに、何でラーラにはミドルネームがあるのにエレナにはないのかというと、ラーラを身篭っていた時に車に轢かれそうになった母ラティーシャがレティという女魔法使いに助けられ、その感謝と尊敬から彼女の名をミドルネームとしてラーラに名付けたから、という設定があるからです。

>浮遊する、直径三十メートルほどの無数の円盤
 なお、原作では浮いてません。建築構造学や力学全無視やろと言わんばかりの支えだけで成り立っている謎の魔法的構造物ですが、それを描写するのが面倒くさいんでフハハ、いっそ浮かしてやりました!(手抜き

>追跡魔法が掛けられたローブ
>元老院の差し金
 原作では麻帆良学園が、ネギ達の身の安全を目的に、彼らが魔法世界へ渡航する事実を情報統制していました。
 でも今回はそんなことはないので情報が漏れる漏れる。近右衛門曰く「士郎なら何とでもなるじゃろー。ふぉふぉふぉ」とのこと。そして今回の一件を士郎から愚痴で聞くことになる近右衛門は、ネギ達が渡航する際には万全の情報統制を行うことになる。

>ローブを支給したウェールズの魔法使いに彼らの息がかかっていた
 追跡魔法を掛けたローブを準備してウェールズゲートの配給品に仕込むことは事前にできても、それを衛宮士郎という個人に狙って渡す事は現場の人間でなければできない、というロジック。
 原作ではメルディアナ魔法学校長の秘書ドネットさんがネギ達に手渡してくれますが、この小説世界ではきっと今回の件を経た反省から原作どおりの流れに(ry
 メルディアナ校長の力が強いウェールズとはいえ、そこに自らの手駒を紛れ込ませるだけの権力と手腕が元老院にはある、という読者に向けたメタ的なアピールでもあります。

>メセンブリーナ連合国の首都『メガロメセンブリア』
 メガロメセンブリアのゲートポートは都市南端の湾内にあるとのこと。
 ゲートポート周辺の景色は「ニューヨークのマンハッタン島にも似る」と資料に記載されており、実際に目にした夕映は「マンハッタンというより香港」という感想を抱いていた。
 詳しく知りたい人は原作、『魔法先生ネギま!』単行本20巻を読もう!

>クォックス通り
 展開上、何か具体的な通り(ストリート)の名前が欲しくて作っちゃった系。
 元ネタは『オズのチクタク』(オズの魔法使いシリーズ)に登場するドラゴンの名前です。
 この通りは魔法骨董品アンティークを売る胡散臭い古物商や、非合法の強力なマジックアイテムを売る闇商人、詐欺紛いの占い師などが跋扈している、メガロメセンブリア屈指の怪しい場所。同時に、より深い裏社会への窓口にして入口……というオリジナル設定。
 都市開発に関わった複数の元老院議員の利権対立の煽りを受け、わざとビル群の影になって陽が当たらないようにさせられてしまった事が誕生のきっかけ。
 蛇足ですが、実はここでお蔵入りになったオリキャラが商売をしていたりする。

>「近衛コノエ!!」
 以前は「コノエ」と、たどたどしい発音だったフィンレイさん。
 二年も経てば日本語も上達する―――否。士郎の名を呼ぶために「近衛」だけ猛練習したというのが真相であった。
 なお、士郎が現在は「衛宮」を名乗っていると聞かされた時は「(゚д゚)」という顔になったらしい。

>親しげに話していた女
 謎の美女こと鉄がにこやかに話すので、遠くからその様子を見ていた(いつから見てた?)フィンレイは士郎と鉄が親しい間柄なのではと勘違いしたのでした。

>アイアスがなければ即死だった
>直径2m、長さ18mという特大の『氷槍弾雨』
 士郎「あ、これ俺の魔法障壁じゃ無理だわ…」と、アイアスを投影。
 街中なので躱すと後ろに被害が出るため回避不可、真正面から受け止めるしかありませんでした。

>何ださっきの盾は!?
 ロー・アイアスを知らないフィンレイにとっては、盾ではなく魔法障壁や防御魔法に見えたかもしれません。しかし宝具とは現代においての概念武装であるため、盾の宝具であるアイアスが内包する高密度の“概念”により、これを目にしたフィンレイはアイアスが盾だと直感的に理解したのです。

>今日の服装を相談したら、お母様が
 相談するほど服装に気を遣いオシャレをして、気合を入れてお前を迎えに来たんだぞ、ということを士郎にバラしてしまっていることに気づかないフィンレイであった。
 以下、相談時の会話内容。

「あ、あの、お母様、えと、その、ええと、実はですね?
 ……………こ、今度、近衛がこっちに戻ってくるという話がありまして」

「い、一応、総長からの命令というか任務というか仕事というかとにかくそうことで迎えに行くことになっているのですが、すると騎士団の制服で行くのが普通だと私も思うのですが、総長が私服でも構わないと仰っておりまして………その、だったら」

「………お、男の人が好むような…可愛らしい服を着ていった方がいいのでしょうか…?」

 なお、普段はミニスカなんぞ履かないフィンレイさんは勧められても凄く渋った。
 超迷った。
 でも最後は「シロウ君もきっと喜ぶわよぅ」という母親あくまの囁きに押し負けた。
 そして私服だったお陰で、元老院の尾行者からフィンがアリアドネーの騎士だと看破されず、彼女と一緒にいるだけでは士郎がアリアドネーに向かうことは推察できなかったという結果オーライである。その後二人に撒かれてしまい尾行者達は完全にお手上げとなったのだった。お母さんマジグッジョブ。

>士郎が、「お母さん、グッジョブです」―――と思ったかどうかは不明
 母親と既に知己かよ。まあ士郎もオトコノコなのでミニスカで喜ぶのは道理。
 あと士郎って意外と、過去編の頃からフィンレイに対してフツーに煩悩が働いてる気がする。
 まあ麻帆良で周りにいるのは中学生の幼馴染みや外見十歳児の御主人くらいなので、ロリコンでもなければ満たされない思い(笑)があるハズだよね……。
 刀子先生としずな先生は彼氏持ちです。シャークティ先生は修道女です。

>ゲートポートを出た直後〜痴話喧嘩という名の魔法戦闘
 何やってんだおまいら。
 そりゃ尾行者も裸足で逃げ出すわ。身の危険を感じるわ。そして尾行対象を見失う。
 …お前らは…間違っちゃいない……(ステラ

>士郎は自身に掛けられた追跡魔法を感知していた
士郎
「あははー、さっきのローブを着たのが原因かー。とんだ呪いのアイテムだったなー」
フィン
「もう、本当にお前は手のかかる奴だなー。うふふっ。
 ――――剣を抜け。一芝居打つぞ。ついでに尾行も撒く」
士郎
「そこは解呪してくれる流れを期待した俺が悪かったのだろうか」

 ―――術式が硬くて解呪は手こずりそう&成長したお前の実力を見てやる&そして私の成長(戦闘力)を見てくれbyフィンレイ

>そんなおっかない女だと思いたくなかった
 お前の周りにいる女はみんなそんなだよ。お前が気づいてないだけだよ。

>丁度良い時に“私の所へ”来た、などと考えて、少しだけ頬を緩めていた
 はい、「もう、私がついていないとダメなんだから…♪」系女子、フィンレイである。
 「これは私が立ち直らせてやるしかないな!」と張り切る乙女。庇護欲。母性本能。
 惚れた男が困った時には自分の所へ来るという優越感。そうだこいつは私のだ。
 駄目だフィン…このままどっぷりと士郎に(構うor尽くすことに)嵌まってしまいそうやフィン…(汗

>ほとんど同じだった頭の位置は、今では士郎の肩くらいにフィンレイの頭がある。
 二年で身長伸びたなあ士郎。まあ成長期なら数年で一気に身長が伸びることはありますからね。
 作者は身長差カップルに萌えることが可能です。その女性がロリババアならありがとうございます。

>人が一番解らないのは自分のことだ
 元ネタは『カードキャプター○くら』の名言。
 「人がいちばんわからないのは自分のことですわ。とくに『心』のことは」

>元老院が問題だ、伏魔殿もいい所だぞ。誰が何を考えているかさっぱりわからん
 何といっても議会なので、どの議員がイイ人でワルイ奴なのかがサッパリ判らない。
 リカードさんは現役軍人の頃は黒い疑惑があるものの、議員である現在はイイ人枠であることを信じたい。だがクルトてめーはダメだ。

>メガロメセンブリア元老院は、そんな彼を自分達の傘下に置きたいと考えていた
>高圧的なスカウトを受けたり、強引に勧誘されたり、お手紙を頂いたり
 原作でネギへの対応が異なっていたのと同様、「衛宮士郎を連合陣営に取り込もう」と考えて暗躍しているのは極一部の元老院議員。だがあまりに手応えがないので、現在はそれらの工作は下火になっている。だがまだ諦めてない。
 また彼らには士郎の実父・切嗣の件という切り札があるが、それは上手く使わないと諸刃の剣となるため現状では使うつもりはないらしい。

>連合と帝国はなかなか足並みを揃えることができなかった
 大戦末期には〈紅き翼〉の下に『連合・帝国・アリアドネー混成部隊』なるものが集結していましたが、しかし「連合の正規軍の説得は間に合わない」「帝国のタカミチ君と皇女様も同じだろう」というガトウの台詞があるので、今回このように描写しました。
 じゃあ前述の混成部隊の連合・帝国軍人って……命令違反で勝手に集まった脱走兵みたいな連中なのだろうか!?
 世界の危機なのに協力しない上層部なんかに従ってられねえ、好きにさせてもらうぜ!
 諸君、我々は今日から傭兵に鞍替えする!!(マ○ロスF風)って感じだとしたら熱いぜ。

>帝国人は気の良い連中
>連合はそうではない
 長命でおおらかなヘラス族など亜人種と、短命な人間種では、国家レベルの付き合いとなると根本的な考え方や価値観が合わない点が多そうです。文化や社会体系が違いすぎる。
 ただし個人同士の付き合いなら、リカード・セラス・テオドラ三人組を見る限り、人間も亜人も関係なさそうですけれど。
 他種族が生きる世界という設定のファンタジー作品って、こういう種族間の価値観・文化の違いとそれらがもたらす社会的影響等をしっかり書かないと薄っぺらくなりがちなので大変ですよね。うん他人事(笑)

>お手紙を頂いたり
 改訂前はこの描写がありましたが、改訂版では時系列的な問題があって面倒くさ…削りました。
 ネギが麻帆良に来る以前、木乃香たちが中学二年生の夏休みの頃にこの手紙が届いたことがあり、改訂前はそのエピソードがラーラの初登場回でもありました。この頃はラーラの髪はブラウンという設定で、後ろ姿がエヴァを彷彿とさせるなんて隠し設定も無かった。

>学問も魔法も先進的で、連合資本を送り込める経済市場にもなりうる
 経済のいろはも知らん男が書く、なんちゃって経済描写ですごめんなさい。
 魔法文化が盛んなヘラス帝国寄りの社会を持つアリアドネーと、地球から移り住んだ人間達の国家群であるメセンブリーナ連合では、それぞれの特色ある資本が互いの国内市場にとって魅力的な商品になるんじゃないかなって安易な考察である。
 要はお互いの資本のジャンルが被りにくいので、交流を始めても既成市場を荒らさず、新規市場の開拓だけが盛んになって好景気が狙えるんじゃねえかなと。

>世界を救った英雄達〈紅き翼〉
 すまない。タカミチを省いて六人の名前しか挙げなくて本当にすまない。
 アリカ王女の名台詞「こちらの兵はたったの7人、だが最強の7人じゃ」の七人にはタカミチも含まれているというのに…。
 でもここに、当時まだ少年で戦闘力がなく主に情報収集で活躍していた頃の彼を入れると場違い感が…。
 というか、タカミチを除いたメンバーの名前だけ並べると豪華すぎるんですけど!(笑)

>二国の技術者を盛大に集め開発させた高性能機体
>二種類の魔法船の特徴を高い精度で融合・両立させた
 真相をぶっちゃけると、戦時中に発展した魔法戦艦・軍艦の技術が民間に流用された結果というだけ。

>白亜のアルヴィトル
>黒檀のヘルヴォル
 本作オリジナル魔法飛行船その一と二。白亜と黒檀はそれぞれの船体のカラーリングです。
 原作に倣い魔法船にはヴァルキュリアの名前を付けました。
 元ネタは北欧神話に登場する戦女神ヴァルキュリアの一人、「ヘルヴォル・アルヴィトル」。
 ヘルヴォルは「軍勢の守り手」、アルヴィトルは「全知」「全知者」を意味する。

>「こっちの方が凄いぞ」と息をまくフィンレイの熱弁
 動力は魔力、イコール排気ガスなし、燃料代はゼロ。
 魔法により浮き上がるため離陸時の衝撃は皆無、着陸時の衝撃は軽微。
 乗客席や展望室、貨物倉庫のエリアには魔法による慣性制御と温度管理が徹底されているので航行時や加減速時も安全快適品質完璧。
 確かにこっち(魔法世界)の方が凄いですが、維持費や機長など専門職の人件費は高そうです。
 余談ですが、フィンレイが他のヒロインと張り合って「こっちの方が凄いぞ」と言って脱いだらエロい(何。
 士郎を自分の部屋に連れこんで床に押し倒し、膝を折って座り込み股で士郎の腹を抑えるマウントポジションをとった後で上半身の服を脱ぎ始めるってこれ薄い本じゃねえか!!誰かやれ!!

>シメリア亜大陸
 武装中立国アリアドネーが存在する場所。ヘラス帝国首都ヘラスがあるヘラス湖の東北東に位置する。ぶっちゃけ原作にこんな地名は出てこないオリジナル設定。
 魔法世界は火星を触媒にした異界であり、実在する火星の地理と共通する箇所が多い(全く同じではなく少なくない差異がある)ので、火星の地図を参考にしてネーミングしました。
 するとアリアドネーがある位置は火星の『シメリア高地』なる場所に相当するのですが、魔法世界のその場所は周囲が海(=高地じゃない)で、かつ土地の規模が微妙なので「半島か?大陸か?」と非常に迷いました。
 結果、「だったら亜大陸でいいじゃない!」という結論へ作者は逃げ込んだ。

>そろそろ『夜の迷宮』だな
 メガロメセンブリアとフォエニクスの間の、おおよそ中間地点辺りに夜の迷宮があります。
 この二都市を直線で結ぶと若干迷宮を逸れてしまうのですが、飛空艇が何らかの理由で不時着する場合に備えて海沿いを飛んでいたから夜の迷宮の真上を通っていた、という理由付けにしています(夜の迷宮はメガロ湾から細長く伸びた入江の最奥近くにある)。

>イギリスのキュウリサンドイッチ
 知らなかった…なんかWikipediaに項目があったんだけど…。
 それくらい有名で歴史がある食べ物らしいです。

>ハイジャック
 飛行機等を占拠して乗員乗客を人質に取り、何かしらの要求を行う人質篭城事件…のイメージが日本では強い。
 しかし本来、飛行機を襲って金品や積荷を奪う犯罪行為もハイジャックと呼称される。

>この瞬間、空賊の未来は確定した。
 この数十秒後、艦内各所で空賊の怒号と悲鳴、激しい魔法戦闘による衝撃と轟音がひっきりなしに響き渡り、乗員乗客はその間中震え上がっていたという。原因は主にブチ切れフィンレイ。

>ハーッハッハッハ!!
 ネギま!らしい三下悪役の科白を書くって意外とかなり難しかったです。
 私流のザコ悪役の口調で書き進めていたらウザ過ぎたので書き直しましたとも。グスン…。

>〈常夜の竜ドラコニス・ノクトゥルヌム
 ラテン語で「draconis Nocturnum」、「夜の竜」の意。

>「フ…フフ……。食べ物を粗末にする奴は―――許さん」
アルビレオ
「フフフ、若い頃の貴方と同じことを言っていますよ」
詠春
「いやー、はは。あの頃はまだ血の気が多かったですからね」
アルビレオ
「ええ、本当に丸くなったものです」

>竜が逃げやした!
 士郎のグラムがまたイイ仕事をしました(笑)
 なお、「竜の対処と人質の解放を同時にやらなければならない」「なら竜は俺(士郎)が」「では人質解放は私(フィン)が」という形で二手に分かれて行動していました。

>僕に訊かれても分かりませんよ!!くそっどうする…。
 やだ、私の書いた策士系やられ役がまたメッキ剥がれてる…。
 まあそこまでが彼らの役割なんですけど(無慈悲

>事情聴取のため二人は更に数時間足止めを食い
 アルヴィトルは連合・アリアドネーの国家事業による建造艦なので、それが襲われた今回の事件は本国にも詳細な報告が送られました。
 しかし「衛宮士郎=〈千の剣〉」ということを隠して事情聴取を受けたのですぐには元老院にバレませんでしたが、のちに報告書に目を通した一部の議員が感づくものの、その頃には事件から日にちが経っていて情報の鮮度が死んでいたというオチ。

>日付は六月二十四日……麻帆良祭が二日目に突入している頃
 6/22(金)の夜に渡英 → 6/23(土)の日中に英国・ウェールズに到着 → 6/24(日)の早朝に開いたゲートで魔法世界へ、という流れ。
 日本からイギリスまで十二時間ほど掛かるのと、ゲートが早朝にしか開かないという事でこうなりました。

>旧世界で拾ってきたキョウトの剣士
 そうです、あの狂戦士系京都美少女!
 ネギまでもう一人の神鳴流少女剣士!彼女です!!(名前は出さない)
 但し、この小説世界においてはむしろ、士郎に重傷を負わされたフェイトを彼女が拾って運んできたんですけどね(29話のおまけ参照)。

>メガロの闇商人より例の魔道具
 どうしてメガロメセンブリアで入手したのかというと、辺境のグラニクスやヘラス帝国より、メガロ(の裏社会)の方が質が良い物が手に入るからって事でどうかひとつ。

>『鵬法璽エンノモス・アエストラフラーギス
 原作に登場する封印級の魔導具。契約した者の言葉を絶対遵守させる。
 〈完全なる世界〉も二十年前の大戦時―――秘密結社としての規模が最盛期だった頃―――には所持していたが、組織壊滅時に失われていたため、今回とある利用目的で改めて入手したというオリジナル設定。
 非合法だがこんな便利なモノを今まで(完全なる世界壊滅から二十年)入手していなかったのかと言われると抗弁できない不良設定ですが、意地でも原作と繋がりを持たせるスタイルを貫いてみようと思う。これも二次創作(を書く側)の楽しみダヨネ。

>艶美な
 艶やかで美しいこと。つややかでなまめかしいこと。
 また、艶やかとは、華やかで美しいこと。

>おまけ
>幼女の心
 ラーラちゃんは十二歳の幼女です。そう書いた今回、私は違和感を覚えました。
 現実はともかく、二次元において十二歳って幼女なんだろうか。
 もしかして年増なんじゃなかろうか。ババアなんじゃなかろうかと。
 そう悩む私は、相当二次元に毒されているなあと自覚した今日この頃です。
 だって十二って小六だぜ!?小六女子って既に[自主規制]じゃないですか!!(変態

>噂に聞いていた士郎のがーるふれんど
 これはフィンレイの事なのですが、はたして近右衛門はどこからその情報を仕入れたのか。
 答え:ラカン→詠春→近右衛門



【次回予告】

 衛宮士郎が魔法世界を訪れていた頃。
 学園祭二日目を迎えた麻帆良学園の一角に、来場客が一際熱狂するイベントがあった。

 龍宮神社の敷地に作られた15m四方の特設ステージ。
 そこで参加者が一対一のトーナメント形式で武を競い合う格闘大会。
 その名を――――『まほら武道会』。


 次回、ネギま!―剣製の凱歌―
 「第四章-第57話 〜その頃、麻帆良では〜」


《続いて二回戦最終試合、桜咲選手対マクダウェル選手!
 この戦いで麻帆良学園最強ベスト4が決定します!!》

「―――本気で来い刹那。少し、お前を苛めたくなってきた」

 フィンレイが他ヒロインを出し抜きポイントを稼ぎまくるその裏側!
 士郎を巡る禁断のキャットファイトクルー!?(笑)
 それでは次回!


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