ミス奏巧は第一次予選が始まる。
一次予選は投票で上位八人が二回戦に出場できると言う。
一応俺にも投票権はあるのだが誰に投票するべきか?
「蝉島は誰に入れるんだ?」
背後から将錯が俺に話しかけてくる。
「まだ決めてないから将錯が入れたのに俺も入れるよ」
「まぁお前がそれで良いのなら構わないが」
少し不安げに言う将錯。なんでだ?
「俺は苦琉島さんに入れるぜ。あの美人に入れるのが妥当だろ」
確かにそれは肯定できる。
そして俺達は投票済ませ結果を待つだけとなった。
待合室で結果を待つ私を含む十六人。
まぁ見るからに私は一次突破ね。
「ねえ未琴ちゃん?」
「どうかしましたか」
宗友さんが話しかけてくる。
「ドレス暑くないの?」
「愚問ですよ。当たり前です」
牽制するように強い口調で答えると、宗友さんは微笑んだ。
「そんなに警戒することないよ」
とても優しく聴こえる。なぜだろうか?
「そう・・・・・・ですか」
愛想笑いを返すと、宗友さんは辺りを見回すと、こちらをじっーと見据える。
「何ですか?」
「何でもないわよ気にしないで」
笑顔で何でもないと言われても。
「投票結果を集計しました出場者はステージにお上がりください」
いざ!
気合いを入れてステージに上がった。
投票結果が決まったらしい。
司会者が進行させていく。あの四人は悠々突破だろう。
「一位は苦琉島 蒼なんと百票です! やはり前回優勝は手強いか」
「二位はこれは同率ですねー。宗友 明夏、久堂寺 未琴、遠市 成五十票です!」
あとの四人は一、二票のみで一次突破となった。
先の勝負も読めてしまうが、三人には逆転を期待しよう。
脱落者には肩をガックリ落とす者や、当たり前でしょと言わんばかりに爽やかな笑顔でステージを降りる者や、ホッとして顔が綻ぶ者までそれぞれミス奏巧に賭ける思いは異なるみたいだ。
残った八人はまたも待合室へ。
しかし、唐突だった。
街で広く響きわたる爆発音が! 俺を含め会場の全員が爆発音のあった方に体ごと向け、あわてふためく。
ぞろぞろと何かの集団が会場を囲う。
「お前らは包囲されている大人しく指示を聞け」
淡々と発声し始めたのは奏巧高校の校長兼理事長の足谷さんだ。ステージに上がる。
何がどうなっているのか理解不能。
「校舎には様々な兵器を設置し、街にもおびただしい数の兵器や爆破装置、兵隊が備わっている」
何が兵器だ! 俺は憤りが貯まっていく。
「この街にお前らの人権はない」
その一言はずば抜けて高らかに宣言して、ステージ上で悠然と語り始める足谷はクズに見えてきた。
「何が兵器だ、兵隊だ、爆破装置だ! 卑劣なことして何が楽しい? 独裁か・・・・・・ハハ・・・・・・バカだろあんた? この街のみ占領したところで界隈の街が、県が、国が、世界が助けてくれるというのに」
ついに憤りが頂点に達した俺は柄にもなく激怒しあきれたように嘲笑する。
「愚かだな。現代の兵器で助けられると? アホみたいな話だ。こっちは未来の兵器なんだよ、技術が月とすっぽん・・・・・・いやうんこと天使? 違うな例えが思い付かないけど、とにかく撃ち破ろうなんてへぼな真似はしない方がいい」
明夏や遠市さん、未琴が心配だ。俺の右目を使えば!
俺は足谷を見据え、隙を突き眼帯を外す。
足谷が不意にこちらに首を傾けた。
「蝉島くん、無駄なあがきだよ、その右目も私達の技術で製造したものだから今は使えないように制御してある。お前も無力だ」
待合室から一人ステージに上がってくあの青い髪は!
「プラス〜めんどくさいよ私」
苦琉島 蒼はグルだったか。
「あいつらは気絶させといたので紅に第三部隊に運ばせてるよ〜」
スマイルで凶悪な事を言いやがって! 死ね! 死ね! 死ね!
俺のいきりたった気持ちとは裏腹にクズどもの指示を受け止める。
俺たちはどこかへ誘導される。
なぜ、こうなった? 俺は必死に記憶を呼び起こしたが悔恨することしかできなかった。