今まで悔しかったことがある。という方がほとんどだろう。
しかし、それを改悔して明日へ前進する。それを繰り返して人は強くなる。
だが、悔しさと怒りは近くて遠い関係にある。
なぜなら悔しさは別の感情と混合するが怒りは混合しないからだ。
俺は今、怒りが頂点に達している。
思考することがままならない。ただ怒りを表すことしかできない。
「どうする蝉島?」
「どうするも何も対抗できるのかこんな・・・・・・おびただしい軍隊によ!」
「怒ってても何も始まらないぞ、考えることが第一優先だろ!」
将錯も語気が荒くなる。
俺たちは謎の軍隊に包囲されたまま数十分が経過している。
「そろそろ移動を始めようか」
軍の一人を合図に俺達は従い、大勢での移動が開始した。
軍人は銃を携えているので歯向かうことが不可能に近い。
そして、成り行きに任せていると街の中心部に来ていることに気がつく。
目の前にはオフィスビルが屹立していた。
「一人ずつ順番に入れ」
軍の一人が促していく、見上げると空は曇天だった。
まるで俺たちの未来を表しているかのようだった。
一人ずつ階段で地下に降りていく、そこには小難しそうな機械が鎮座していた。
「私だ。通してもらおう」
堅牢そうな扉が開く、そして長々と薄暗い通路が続き。
「お前たちにはこれからここで暮らしてもらう」
そこはいくつもの部屋が用意してあり通路の奥には商店まで準備してある。
「今からここでの暮らしについての説明をする」
一人の男がホワイトボードを持ってくる。
「まず、あなたたちには国民として切磋琢磨し働いてもらいます。そして働いて稼いだ。この通貨のシムで日用品や食料は各自でそこの商店や地下二、三階の市場で購入していただきます。これだけです」
通貨はとても鉄ではなくプラスチックで作られており、ここでしか使えないので完全に外出を禁止されている。
「そこの少年、着いてこい」
俺、一人だけ指名され軍の一人に着いていくと予想だにしていなかった役割を担うこととなった。
「お前には国民兵の総統をやってもらうたいがいいかな?」
突然、すぎる足谷の発言に唖然する俺。
それを見ていた苦琉島が近寄ってくる。
「成果をあげれば私と、結婚する、権利を与えるよ」
結婚する、という言葉をやたら強調して俺を誘惑する。
「どうだいやらないかい?」
謎の部屋につれてこられたと思ったら、滑稽なことを考えているものだな。
「てか・・・・・・やれ」
笑顔で語りかけてくる苦琉島に俺は従うしかなかった。だって殺されるかも知れないからなぁ。
そんなこんなで真新しい生活が始まる。
「初日の仕事は兵器の製造だ」
国民と呼ばれている俺たちは常に監視されているという反乱ができないよう巧妙にしてあり、未来の技術が憎い。
男性は力仕事。女性は食材の管理や生産と聞かされている。
俺は淡々と、作業を行う。
「蝉島君こちらへ」
監視役の一人が俺を誘う。男に蝉島君と言われるのは小学校低学年以来だよ。
そんな無関係なことを考えながら男の所へ駆けつける。
「なんでしょうか?」
ここで国民は最底辺の扱いだ。
上から順に、猫、幹部、指令官、軍、国民総統、国民で俺は一応一般国民よりは立場では上に値する。
なぜ猫が一番、偉いのか気が気でない。
「あの美女三人についてだが」
「遠市さんや明夏、未琴は今、どうしてますか?」
俺は態度を急変させ、問いてみる。
「あの三人は今、幹部として働いてもらっているよ。まぁ反乱はできないように洗脳しているがね」
「あいつらに会わせてください」
俺は頭を下げて、懇願する。
「傲慢だぞ国民総統の分際で」
「すいませんでした」
監視役の男は定位置に戻っていく。
やっぱりそうだよな。
俺は悟った。早急にこの境遇を打破しなければと。