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俺の片目は戦争兵器 幾千億の渇望
作者:青木   2016/06/22(水) 00:13公開   ID:aD/bcO1hwWA
 地下生活も二週間が経過した。
 それでも反乱の糸口は見つからないままだ。
 「蝉島君少し時間もらえるかな?」
 俺に話し掛けてきたのは、知的そうな楕円型の眼鏡にクールに決めたショートカットがお似合いの男性。垣 氷河(かき ひょうが)で同室で共に暮らしている。
 「いつもデスクに座り何を考えてるんだ?」
 「まぁねぇ、やっぱり元の生活に戻りたいから」
 率直に答える。
 すると、垣さんはフッと笑みをこぼす。
 「知識も無しに目的だけを語るなどおこがましい。まぁひとつだけ言えるなら国民総統の立場を使うんだな」
 少しだけ俺を見下しているような気がする。
 「しゃーないよなでも・・・・・・大切な場所や人を想うと焦るよな」
 背後から共感を呟いたのはこれまた同室の、讃岐 次郎さん。(さぬき じろう)
 無精髭を生やしたダンディなおじさんで、若い頃は有名な怪盗だったそうだが引退してひっそり暮らしていたと、本人が語ってくれた。
 俺を真っ直ぐ見つめてくる。讃岐さんからはオーラが漂っている。
 「なんなら盗人の極意を伝授してあげようか?」
 おどけたように笑いながら冗談を口走る。
 「虚言に過ぎないことを!」
 垣さんが讃岐さんの発言に激怒したが、讃岐さんは顔を見ただけで視線を戻す。
 どうやら垣さんは信じていないらしい。
 「就寝時間になったし俺は寝るかな」
 讃岐さんが布団に入ると、垣さんも渋々自分のベッドに向かう。
 俺はこれから会議があるので監視役が訪れるまで待機していなくてはならない。
 「ふぅ疲れた」
 つい溜め息がこぼれる。体は疲れを隠せないようだ。
 ジャリジャリと金属の接触し合う音を響かせながら、監視役の一人がやって来る。
 鍵で堅牢な扉を一回で開ける。
 「ついてこい国民総統」
 俺は椅子から立ち上がり、監視役の元へ歩み寄る。
 「行くぞ」
 従い着いていく、そして週に二回の軍事会議が行われる専用会議室に立ち入る。
 他のメンバーは全員揃っており、俺に視線が集まる。軽く頭を下げて席へと向かった。
 椅子に腰かけるとモニターの前に立っている足谷が目配せ合図を送る。
 「ではまず、軍の進行状況についてです」
 淡々と訳のわからない単語などを述べている。
 たたただモニターを眺める。
 「日本自衛隊は横浜から撤退し、ついに第一ポイントの横浜を占領し統治しました」
 「ついにやりましたねプラス」
 苦島が感嘆の声をあげる。
 「そこで横浜の探索を国民部隊と第六偵察部隊に任せようかと」
 えっ? なんだって?
 「構いませんよね蝉島さん?」
 足谷が分かりきったように尋ねてくる。
 「何をすればいいのでしょうか?」
 承諾するしかない。
 ここで反対したら命が危ない。
 「明日から早速、やっていただきますのでお願いしますね♪」
 陽気に言われても困るのだが。
 「第三地下部隊は順調に東京の国会議事堂へと進行しています」
 ヤバイ・・・・・・早くこいつらを始末しなくては世界がこいつらの持ち物になっちまうじゃねーかよ。
 俺は内心、恐怖と焦燥が混在していた。
 絶対に許さない。
                 
 会議が終了し、足谷さんが俺も元に歩み寄ってくる。
 「明日の午前四時に起床して一階にある、私の部屋へ来い。説明がある」
 「・・・・・・はい、わかりました」
 怒りを感じているが抑えこみ返事をして、命令を見込む。
 「それじゃあ」
 背を向け歩き出した、と思いきや立ち止まりこちらを振り向く。
 「期待してるよ蝉島くん」
 ニコリと笑いながらそれだけ言い残し、長髪を揺らしながら颯爽と会議室を退出していった。
 「お前も出るか?」
 監視役の言葉に頷くと、銃を抱えたまま俺の元へ。
 そして、俺は部屋に帰り眠りにふけた。
         
 戦況を伝え終え、自室へ向かって足早に歩く。
 階段を昇り角を曲がろうとしたときだった。
 「ねぇプラス本当に大丈夫なの?」
 待ち伏せていたように壁に持たれて紅が質問を投げかけてきた。
 「全都市爆発作戦のこと?」
 「そうそう、あれさー少し回りくどくない? だって設置するだけで三ヶ月だよ? もうちょっと手荒でも良くなかった?」
 それは私も迷った。日本を占領してから他国と戦争するのも悪い案ではない。しかしできるだけ被害者を出したくない、それだけなのだ。
 国境など存在しなくても文化が異なろうと人種が違かろうとひとつの国家でまとめられるはずだ。
 それが私の生物共存理論である。
 「どうしたのボッーと惚けて愛人でも思い出した」
 不敵な笑顔で小言発して。
 「もう私寝るからね〜ファーアおやすみー」
 大きなあくびをして部屋の方へ行ってしまった。
 意を決して、私は拳を握りしめる。
 私たちは悪ではない、今の世の中事態が本物の悪だ、と自分に言い聞かせて自室に向かった。

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