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俺の片目は戦争兵器 スピーチ
作者:青木   2016/06/26(日) 16:18公開   ID:aD/bcO1hwWA
 体が無造作に揺らされる。
 「蝉島君起きろ!」
 小さいが筋のとおった声で目覚める。
 上半身を起きあげると目の前には讃岐さんが俺の体を揺らしていた。
 「やっと起きたか蝉島君。盗人の極意やコツを伝授させたいから起こしちゃってごめん」
 まぁ別に構わないが。
 「じゃあ早速、基礎から」
 讃岐次郎の盗人講座が始まった。
 「盗人での一番はずせないポイントは『相手の目を盗むこと』だ。いわば野球の盗塁」
 なるほど言われてみれば。
 「感心している暇はないぞ蝉島くん」
 「すいません先生」
 軽く頭を下げ謝ると、讃岐さんは何か考えているように腕組をする。
 「盗みを遂行する際は偽名を使った方がいいから・・・・・・まぁSSでいいだろう」
 「SS?」
 「せみしまでSS」
 そういいことなら納得いく。
 なら讃岐さんは何て言う偽名なんだろうか?
 「俺はうどんで盗人うどんかー久しぶりだな」
 郷愁に浸り始めた讃岐さん。きっとどんな警備も潜り抜けたんだろうな。
 若い頃の讃岐さんの姿を想像してみると、想像だけでもカッコいい。
 「どうしたやっぱり眠いか?」
 俺の口から大きなあくびが出たことで眠そうに見えるらしい。
 「大丈夫ですよ、気にしないでください」
 「夜遅くまで会議してたからな眠くて当たり前だな」
 愁い顔でこちらを見つめてくる。
 「続き話すぞ。姿を見せないこれ鉄則!」
 そりゃそうだろうな。
 姿が映ってしまっては元も子もないからな。
 「そして、あとは混乱等は臆すること」
 「どういうことですか?」
 ふっ、と自慢げに笑ってから口を開く。
 「弱みを相手に握られたらそれで盗人は引退と言っても過言ではない。なぜならその時点でそれに特化した防犯や警備で備えてくるからなんだ。簡単に言えば攻略されたってこと。ゲームでも攻略方を学んでやればそれに従うだけなんだ。だから握られてはいけないんだ」
 そうまくし立て、俺の瞳をまっすぐに凝視してくる。
 俺はつい、緊張してしまい居直る。
 「今日は疲れただろうからこの辺にしておこう」
 それを言い残して自分の床に就いてしまった。
 讃岐さんの後ろ姿は何かを言っていたが、それが何かわからなかった。
 俺も体が疲労していたのか、すぐに眠りに落ちた。
                 
 いざ、こうして国民軍の皆を前にすると足がガクブルしてしまう。
俺は今、校庭に集まった国民軍を前に総統スピーチとやらを行わなければならないらしく、そのため足谷の隣で硬直状態。 
 「そんなに肩肘張らずに思ってることを述べればいいのよ」
 「は・・・・・・はい」
 そんなこと言われても全員体格ゴツくて背が高いし、はっきり言うなら物々しい。
 「スピーチお願いします」
 まとめ役が開始を宣言した瞬間、目の前に立った俺に視線が集まる。
 「えっと、まずは横浜占領。万歳!」
 ・・・・・・え?
 プレスレスラーみたいな体格をした本軍隊と、国民軍、まとめ役、諸々から白眼視され戸惑いと共に恐怖まで感じて俺の額から流れた汗が地面に滴り落ちる。
 足谷に視線で、助けてと送る。
 すると足谷が俺のそばまでマイクをひったくり、自分の口元に近づける。
 「蝉島君に手を出したら幹部の私が許さないから・・・・・・あとスピーチ初めてだから蝉島君は上手にできなくて当然でしょ」
 足谷さんの発言で校庭中が沈黙する。
 普段聴こえない小鳥のさえずりまでもが耳に届く。
 「ということで」
 俺にマイク強く押し付け返し、元の場所に戻っていく。
 後ろ姿を眺める。こうして改めて見ると美しい。
 肩まで垂らしたきれいな漆黒のストレートが俺をそそる。
 そして颯爽とした一挙手一投足が彼女をより一層魅力を引き立てる。
 「続けてください」
 まとめ役の一言で我に返る。
 「特に何もありません。次はきちんと勉強・・・・・・してきます」
 「ということで総統に拍手」
 なぜか拍手喝采を浴びている。
 スピーチを含む、目的などの表明も終わり国民軍は横浜へ向かう。
 「では一人ずつ並んでください」
 見たこともない人間がすっぽり入れる機械が何百台か用意されており一人ずつ中に入っては音を立てず消えていく。
 「あなたが最後ですよ総統」
 「その前にこの機械何ですか?」
 率直に尋ねてみた。
 「人間移動装置ですが?」
 「・・・・・・どこで○も○アじゃねーかよ! 著作権の侵害だよ!」
 唇を吹きながらそっぽを向く本軍の男性。
 「ごまかせると思ったか? どう見てもドアノブ付きでピンク色で違うのは形だけだろ!」
 この機械間近で眺めると円柱の形をしているのだ。しかも自動スライドドア。
 言ってしまえばドアノブは無駄な飾りに過ぎないのだ。
 「早く行った行った」
 背後に回り、背中を勢いよく押して機械に入れられる。
 一瞬だった。
 目を開けたら目の前は広大な海。
 「どこ、ここ?」
 「横浜ですよ総統」
 後ろから突然、答えが。心臓に悪いから背後から急にしゃべらないで。
 「ってほんとに着いたのかよ! すげーなあの機械!」
 大声を海に向かって放つ。
 潮風が気持ちいい。

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