灼熱地獄と化したその地はリビングデッドや竜の牙から作られた竜牙兵等が闊歩している危険地帯。そんな中で3人の人間がその群れの中で暴れ回っていた。
「ふん、でりゃあ!」
「……ッ!!」
「えい、やぁ!」
その3人……衛宮 士郎は自分が使える魔術の投影で作った剣でリビングデッドを切り裂き、アサシンエミヤは近代兵器であるサブマシンガンで竜牙兵に向けて乱射し、野原しんのすけは衛宮 士郎が作ったアゾット剣で残った敵を倒していった。
投影とは本来は魔術などでの道具を使った作業における道具を増やすことに使うものなのだが、衛宮 士郎はそれに特化している他に魔術における属性が『剣』……つまり刃物に関しては完璧に近いものを作り上げる。(その代わりそれ以外はあまり良くないが)
「しかし、本当に冬木の街なんだな……あの時と同じみたいだ。それに……じいさんもサーヴァントになってたんだな」
アサシンエミヤ……その正体は衛宮 士郎をある事件から救い養子とし、そして『呪い』を託してしまった人物、魔術使いの暗殺者……その名は衛宮切嗣。魔術使いでありながら近代兵器や自分の根源を込めた特殊弾『起源弾』を使い30人以上の凄腕の魔術師を葬った男だ。
そしてこの年2004年の前の第四次聖杯戦争の参加者の一人……使役サーヴァントはセイバーのサーヴァント『アルトリア・ペンドラゴン』。かの星の聖剣の担い手の騎士王である。
「確かにな……記憶と魂はシロウと会った物だが、身体はどうやら別の世界の僕の物だね……これもしんのすけの影響かな?」
どうやら本来ならばこの衛宮切嗣……否、アサシンエミヤは別の平行世界───衛宮切嗣がアラヤの抑止力として、カウンターガーディアンとなる未来───の存在であったが何故か魂と記憶は完全にオリジナルだが身体だけ平行世界の物になっていた。本来なら有り得ない事にしんのすけのあまりにも強力な幸運のせいでは?と切嗣も考えていた。
「オラ褒められてる?ってマスターて呼んでないね」
「義理の息子に会えた要因になった人に名前で呼ばないのはね……士郎に合わせてくれてありがとう」
互いにこれまでのことを話し合いながら他の仲間に会うために移動をしていた。
士郎は第五次聖杯戦争の事で聖杯の元である『大聖杯』の解体が終えてからしばらく経ってから、今に至るまでの話をした。サーヴァントであり士郎に好意を抱いているメデューサや後輩の間桐桜、更に未来の自分との対話や義理の姉であるイリヤを殺した英雄王との決闘聖杯の中身により黒化した騎士王との思い出や別れなど……そしてこの世界にメデューサと共にいつの間にかいた事を話した。
最後はしんのすけの歩んだ人生の今日までのことを話した……士郎はあの時見たランサーがアルトリアであることに驚き、更にマーリンやモードレッド等の円卓関係者もいたことに絶句した。
切嗣はランサーのことを聞きぽつりと呟いた。「彼女に謝りたい」と。第四次聖杯戦争の時、セイバーのマスターとして誓約を結んだが、衛宮切嗣という人間はサーヴァントが心底憎かった。故にセイバーを無視した、話も目も顔も何も向けること無く令呪で三回命令を下す程度の存在としてでしか見てなかった。
あの災厄が起こり、災厄の生存者の衛宮士郎に『鞘』を託してから急速に死へと真っ直ぐに進む中で改めて考え深く後悔した。あの時ちゃんと話していればこんなことにならなかったのでは?彼女の事をもっと理解してやれたのではないのか?そんな後悔に潰されて士郎に『呪い』を残してしまった後、死に際に願ったのだ……また妻と娘と生きたい……そしてセイバーに、アルトリア・ペンドラゴンに謝りたい……と。
人間として壊れ、殺し、殺し続け、果てには自らの妻でさえ利用してその手で殺した男が最期に願った願いはあまりにも我儘で、それでいて虚しいものだった。
「だけどそれは叶わないなんて思ってないんだよね?だったら何時かは分からないけど、オラは叶うと思うゾ!切嗣のおじさんがサーヴァントになってるから、奥さんもその子供……イリヤちゃんもきっと会えるゾ!」
それでもとしんのすけは言った。『もしも』や『たら』『れば』等を見てきたしんのすけだからこそ言ったのだろうか?しんのすけが寝てる間に夢の中で見たしんのすけの生きた人生、それを理解した切嗣は笑った。可能性の塊が言うなら合ってるのだろうと思ったのだ。
暫くすると人影が見えてきてこちらに駆け寄ってきた。はぐれたメンバーが来たのだ。
「マスター!ああ……無事で良かった!」
ランサーのアルトリアが真っ先にしんのすけの元へ辿り着き、安堵の表情を浮かべた。少し涙目になっていたのを見て近くで見ていた士郎は「セイバーの時より柔らかくなったんだなぁ」と言った。
「アルトリアお姉さんも無事だったんだね?オラも無事だゾ!そういえばあのお兄ちゃん達は?」
「立花たちの事ですね?ちゃんといますよ?」
後からやって来たメンバーの中にあの時であった最後のマスター藤丸立花と服装が変化してるがマシュ・キリエライトの姿と見知らぬ女性の姿があった。
「やっと追いついた……二人とも生きてたんだね!」
「オラも頑張って動く骨やゾンビと戦ったゾ!」
「竜牙兵は戦った事があったから楽だな、キャスターが直接操ってるわけでもなかったし……それよりマシュからサーヴァントの気配がするんだけど」
立花からの話によればマシュは謎のサーヴァントと融合してデミ・サーヴァントと呼ばれる存在に変貌したという。クラスは
盾持兵という新たなエクストラクラスらしく巨大な黒く円卓にも見えなくもない盾をするが服装は全身のスタイルがハッキリする姿ではっきり言ってエロい。
「マシュ・キリエライト……シールダーとして皆さんの役に立てるように頑張ります!でも……ギルガメッシュ王からの視線が凄いです!」
確かにギルガメッシュの視線はさっきからマシュを見続けていた。何か凄いものを見た様な感じだった。
「なに、貴様の宝具を鑑定していたのだ……今は仮の宝具の様だが目覚めは遥かに遠し。せいぜい頑張ってみせろよ?」
色々と意味深な発言をしてギルガメッシュは笑いながら士郎の元へと来て、近くの瓦礫の中へと移動していった。しんのすけは立花と話をすることにした。
「立花の兄ちゃん、オジマンディアスの隣で震えてる人は誰なの?」
「あの人はオルガマリー・アムニスフィア、カルデアのトップだよ……マシュ、調子は大丈夫?」
「はい、先輩方のお陰で何とか宝具も使用可能になりました……調子も良好、しんちゃんも無事で良かったです」
「オラもマシュお姉ちゃんが無事でよかったゾ!」
暫く体を休めたメンバーは少し移動し、大橋へとたどり着いた。
「基本的には地形に変わりはないな……所長、ここら辺ですね?」
「ええ、マシュの盾を置けばカルデアとの通信が使える筈よ」
あれから落ち着いたオルガ所長は全体的な指揮を執ることとなっていた。第一に通信が可能とするためには龍脈──大地のエネルギーライン──を探してマシュの盾を設置する必要があった。何故だかそうするといいらしいのでここまで来たのだ。
設置すると同時に光のラインが盾から灯され、カルデアの様子が映されていた。
『あ、やっと繋がった!みんな生きてるね!あ、しんのすけ君は初めましてだね……僕はロマニ・アーキマン、カルデアの医療トップをやっているんだ!』
『みなさーん!しんのすけくんもいます!』とロマニの声が響き奥からしんのすけの家族の姿や負傷者を運んでいた為にレイシフトから外れたジャンヌの姿があった。
『しんのすけ!良かった……生きてるんだな!?俺たちは無事だ!ジャンヌちゃんが宝具を使ってくれたおかげで無事だったんだ』
『しんのすけ、こっちは私達が何とかするからしんのすけもやれる事をやりなさい!そして……絶対に生きて帰ってきて……!』
「分かった!けど一つ聞いていい?『所長さんの体は残ってる』?」
所長を見たしんのすけの一言にひろし達は固まった。なぜ理解してしているのか!?と言いたげだったがすぐに理解した。野原家は様々な戦いに巻き込まれた……特に戦国の世に飛んだ時から死に敏感になった。それで気づいたのだろう……オルガマリー・アムニスフィアは死んでいると。
「……やはり分かってるのね。ええ私は死んでるわよ、あの時の爆発で私の体は木っ端微塵……魂だけでレイシフトしちゃったのを理解したわ。……謝罪するわ、あなた達は人理を背負うに値するわ……私が死んでる事に気づくなんてね。ロマン、報告を」
『はい、所長の肉体は消滅……作るなら聖杯かそれに類似する物を使うしかな───っ!!そちらに複数のサーヴァントと大型の反応……これは生物と……核h─────────!?』
突然の轟音と共に通信が途切れる。地面から巨大な黄色い人型の巨人と黒く全身に目玉を生やした怪物が何体も現れ、更にその頭には黒く染まっているがサーヴァントの姿があった。
サーヴァントは知らない、だが黄色い巨人の姿ははっきりと覚えていた。一つ目のその目に巨大な棍棒兼ビームライフルでもある歪な形をしたその機体と黒い怪物の名をしんのすけは叫んだ。
「デスアーミーとインベーダー!?なんでこの世界にいるの!?」
デスアーミー……とある世界で生み出された地球を再生するために生み出された機動兵器『アルティメットガンダム』が変質した『デビルガンダム』が死体を使って生み出したゾンビ兵器。
インベーダー……ゲッター線と呼ばれるエネルギーによって人類と共通する祖先から分かれて誕生した宇宙バクテリアの変異生命体。
しんのすけ達野原家が訳あって異世界でスーパーロボットと呼ばれるメカを操る者達と共に戦った相手であるが、なぜこの世界にいるのかは分からない。
「なんですかあれは!?」
「アレは別の世界のオラ達が戦ったロボットと怪獣だゾ!」
「怪物の方は宇宙の方だな……」
「おいあっちにもメデューサがいるぞ!」
それらの頭から飛び降りたのはランサー、アサシン、ライダー、そしてバーサーカーである。モードレッドの言う通りライダーは間違いなくメデューサである。だがやはり他のサーヴァントと同じように黒くなっている。
「私が2人!?」
「私が次の狩りの対象ですか……それもそれで面白いですね」
「ならば首を出せい!」
黒いメデューサが落下する途中で突如山の翁が強襲するも、ぎりぎり回避して地面に降り立った。微かだが首周りに斬撃の跡がかすかに見えるが、異常な魔力反応が出るとすぐに消えていた。
「山の翁……その初代か!……聖杯のバックアップが無かったら危なかった……」
どうやら相手は聖杯の力を貰っているらしい……その事を聞いて山の翁が口を開いた。
「我が一撃を寸前とは言え、回避するとは……それにその霊基は聖杯を使ったとしても異常、それにその魔力量は聖杯のものでは無い……何を使った?」
士郎とメデューサは直感的にこの違和感に気づいた。切嗣も資料で読んだ事があるのか思い当たるものを一つ思い出した。
「聖杯……いや違うな、まさかお前達は『大聖杯』を使っているのか!?」
「大聖杯って何よ!?」
「ホムンクルスだけの一族……アインツベルンが遥か昔にとあるホムンクルスを元にして生み出した大魔術の魔力炉心……下手したら第三魔法と同レベルのことも行える。だが中身はアインツベルンが前に召喚したサーヴァントの1人『アンリ・マユ』の影響で汚染されている……それで聖杯が暴走し冬木を飲み込んだ。これが冬木大火災の真実。第四次聖杯戦争が引き起こした災厄の正体だ」
切嗣から語られる大聖杯の正体とその中身と大火災の真実、さらに貯蔵される魔力の量からしてかなりの強化が加えられている。そして前方の強化オルタサーヴァントとデスアーミー、後方のインベーダー。進が地獄下がるも地獄。
本来の流れが変われば新たな変異が繰り返される。
少し遠くから4人と一体の戦士が接近していた。1人は右腕が変質していおり、巨大なブレードを腕から生やし、口にタバコを咥えている。
1人は巨大な大剣を背中に背負った男だ。何処かの軍隊の服装みたいだが大剣を背負ったままだが、それを感じさせない速度で移動する。
1人は水色のフードを被り、その手にはルーン文字を刻んだ杖を持っていた。キャスターとして存在しているが明らかにキャスターとは思えない運動能力を持っている。その目はキャスターと言うよりランサーと言うべきだ。
1人は腰に黄金と銀の装飾を施した1振りの剣を持ち、フードを被った騎士の鎧を付けた金髪の青年である。
空の彼方から落ちて来る一体は赤い巨人である。鬼にも見えるその姿には赤いマントが背中から生えていた。
彼等が巡り会うまであと少し。