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Fate/Silver or Heart 第四訓:鍛【しゅぎょう】
作者:亀鳥虎龍   2018/01/07(日) 19:50公開   ID:N.Js9IKYFA2
 真選組屯所にある道場にて、

「ハッ!」

「でやぁ!」

ジークとセイバーが、木刀で打ち合いをしていたのだ。

何故彼が真選組の屯所にいるかというと、それには理由があった。 

それは、少し前に遡る。




―鍛【しゅぎょう】―




 最初は、万事屋の事務所から始まった。

「えっ? 鍛えてくれだと?」

「ああ。 正直、万事屋の仕事は楽しいが、何時までも甘えさせて貰うわけにはいかないからな」

ユーリやジャンヌ達が出掛けている時、ジークが銀時に「鍛えて欲しい」と頼んで来たのだ。

「俺は、銀さんやユーリの様な戦場を駆け抜けた経験は無い。 勿論、翔太郎のように修行で鍛えたワケでもない」

純粋で真っ直ぐな目で、ジークははっきりとこう言った。

「少しでも皆の役に立てるように…特に彼女ジャンヌを護れるように、俺は強くなりたいんだ」

「ふっ、そうか」

不敵に笑った銀時であったが、内心では……、

「(おいぃぃぃぃぃ! カッコ良過ぎだろぉぉぉぉぉ!? 少年漫画の主人公顔負けのカッコ良さだよぉぉぉぉ!?)」

ジークの強い意志に、主人公としての焦りが出たのだ。

「(どうすんの!? えっ、これどうすんの!? どうすれば良いのぉぉぉぉぉ!?)」

脂汗が滲み出るほどの焦りを見せ、こんな事を言ったのである。

「よ、よし! ならば良いところがあるぞ!」

「良いところ?」

首を傾げるジークに対し、銀時はこう言ったのだ。

「真選組だ」

「真選組?」

「そうだ。 アイツ等、国を守る組織だろ? だから連中のところで、腕を磨いて来いって事だ」

「なるほど、そうだな」

銀時は半分ヤケクソになってしまうが、ジークはすぐさま納得したのである。

「分かった。 じゃあ、今から真選組に行って来る」

「お、おう。 行って来い!」

ジークが事務所を後にし、様子を見ていた新八が尋ねた。

「良いんですか銀さん、あんな事言って?」

「大丈夫だって。 あの汚職警官どものところで働けば、銀魂色に染まるさ」

「全然大丈夫じゃ無いじゃん!」

「もしそうなったら、ジャンヌに怒られるのは銀ちゃんアルな」

そう思いながら、酢昆布を齧る神楽なのである。





 真選組の屯所にて……、

「成程、話しは分かりました」

ジークから話しを聞いたセイバーが、何処か楽しそうな顔をする。

「では、さっそく始めましょうか」

「始める?」

「鍛練ですよ。 まずは準備からです」

そう言って彼女は、水の入ったバケツと雑巾を持つ。

「セイバー、それは?」

「まずは道場の床掃除です。 これも大切な鍛錬の一つだと思って下さい」

当然のように答え、早速掃除を始めるのであった。





 掃除を行って約30分。

「こんなところか?」

「はい。 上出来です」

汚れが一つもない道場に、セイバーも合格点を与える。

「では、準備運動をしましょうか。 屈伸や柔軟体操をして、体をほぐして下さい」

「分かった」

言われた通り、柔軟体操で準備運動を行うジーク。

準備運動が終わると、セイバーが木刀を彼に渡した。

「ではこのまま、素振りをノルマで50回行ってください」

「分かった」

こうしてジークは、すぐさま素振りを始めたのである。





 素振りを始めてから約50分後、

「48…49……50!」

ジークはノルマである素振り50回を、見事にやり遂げたのである。

「凄いですね。 初めてとは思えないくらいですよ」

「いや、これも基礎鍛錬の一つだと思えば、楽な方だ」

「そうですか。 それでは……」

流れ出る汗を拭うジークに、セイバーは木刀を当然のように握っていた。

「構えて下さい」

「!?」

この瞬間、彼女の目付きが変わったのだ。

自身の経験上、ジークは本能で察した。

「(これが、セイバーの本来の“顔”か!?)」

幕末において新撰組は常に、『生きるか死ぬか』の斬り合いに身を投じでいた。

セイバー……沖田総司もまた、激しい戦いを経験している。

お調子者で子供好きな女性から、冷徹な人斬りへと変貌。

ゆっくりと木刀を構え、ジークは真っ直ぐ彼女の目を見る。

まさにその瞬間、セイバーが真っ向から跳び込んだ。

ガキィーン!と、彼女の木刀を防いだジーク。

この激しい戦いは続き、現在に至るのだった。





 激しい攻防戦が繰り広げられ、

「す、スゲェ!?」

「あの総司姐さんと渡り合ってやがる!?」

「なんだあのガキ!?」

隊士達が外から眺めていたのである。

「信じられん、総司ちゃんとここまで……」

「あいつ、結構粘るじゃねぇか」

「始まって1時間もやり合ってますよ」

「マジかよ……」

煙草を加えながら、土方も試合の光景を見ていた。

しかし、二人の体力は限界を迎え、

「ハァ…ハァ…」

「フゥ…フゥ……」

立っていられるのも精一杯になっていた。

「そろそろ止めんとマズイぞ?」

「だな…」

そして近藤が介入する形で、勝負は引き分けに終わったのである。





 万事屋に戻ると、

「ジ、ジークくん!? どうしたんですか、その顔!?」

顔中痣や絆創膏だらけの顔となったジークに、ジャンヌが真っ先に驚いた。

「真選組の元で、鍛練をしてて……」

「だからって、そんな怪我になるまでやってたんですか!?」

「すまない。 心配をかけたくはなかったが…」

「その怪我で十分に心配させてます!!」

因みに銀時達はというと、

「おい、マジで真選組んところで鍛えてたのかよ!?」

「というか、どんな鍛錬してたらああなるんですか!?」

「マジで凄いアルな」

真面目に鍛練をしてきたジークに、驚愕するのである。

「なあ、明日も行くのか?」

「ああ、そのつもりだ」

ユーリの問いにジークは当然のように答えるが、

「ジークくん、少し無茶し過ぎです……」

「…そうか?」

「そうですよ。 そんなにボロボロになる必要は……」

ジャンヌは少し寂しそうな表情で心配してしまう。

そんな彼女の頬に手を添え、ジークは優しく微笑む。

「すまない、ジャンヌ。 でも俺も、強くならなきゃいけないと思ってる。 少しでも、キミを守れるように……」

「!!」

その言葉に対し、ジャンヌは頬を赤く染めてしまう。

「そんな言い方は卑怯です。 私だって、ジークくんには無茶をして欲しくないんですよ……」

そんな二人を眺めながら、神楽はボソリと呟く。

「ジークはやっぱ男アルな。 ダメ人間の銀ちゃんと童貞しんぱちとでは、天地の差があるネ」

「リア充、爆発しろォォォォォ!」

「つーか神楽ちゃん、今なんて書いて『しんぱち』って呼んだ!?」

これには銀時も新八も、本気で悔しがるのであった。





 翌日、真選組の屯所にて、

「トシ、またジークくんが来てるらしいな」

「そうみてぇだな」

近藤と土方が、ジークの事で話しを持ちこんだ。

「所で彼、何してるんだ今?」

「総悟が隊士達を集めて――」

――ウチの隊士達を50人倒してみな。

「――なんて言いだしたんだよ」

「な〜んだ――って、それってマズくないか!?」

「俺も止めたんだがな、本人もやる気だったからよ。 止めるのもどうかと……」

「だ、だが…もし事故とかになったら――」

ジークの身を案じ、土方と共に道場へと向かった近藤。

そこで二人は、道場でとんでもない光景を目にしたのだ。






 道場に入った土方と近藤。

二人が目にしたのは……、

「ハァ…ハァ……」

「おぉ〜」

「やるじゃないですかぃ」

「つ、強ぇ……」

「マジで50人…一人で倒しやがった……」

「バケモンかアイツ…」

息を切らしながらも、『隊士50人抜き』を完遂させたジーク。

彼の周りには、隊士達の殆どが倒れていたのだ。

「何でお前等が倒れてんだぁぁぁぁぁ!?」

これには土方も、ツッコミを入れざる負えなかった。

まさか天下の真選組が、少年に負けるなんて思わなかったからだ。

「だって副長…あのガキ、マジで強いんスよ……」

「総司姐さんとバトって、引き分けになるんスよ!」

「いや、マジで勝てる気がしないんス」

「………」

サーヴァントと引けを取らない強さを見せるジークに、土方も汗が流れるほど驚愕する。

「んじゃ、今度は俺がやろうじゃねぇか」

そう言ってユーリが、当然の如く木刀を手に取った。

「つーか、ユーリの兄貴もいたんですか?」

「おう、面白そうだったしな」

「んじゃ、俺とやり合ってくれませんかねぇ?」

「上等だ」

楽しそうに笑に笑いながら、沖田とユーリは睨み合い、

「そんじゃ、いざ…」

「尋常に…」

「「勝負!」」

真っ向からぶつかったのである。





 夕方、午後5時ごろ、

「ん〜! やっぱ、体を動かすのが一番良いぜ」

「全くですね」

ひと汗かいたという感じで、ユーリと沖田は楽しそうに笑う。

「いや、約2時間もやり合ってけど?」

「マジでスゲェな…」

これには近藤も土方も、唖然とするしかなかった。

「俺は帰るが、ユーリはどうする?」

「もう少しここで休んでから帰るわ」

「そうか。 じゃあ、俺はこれで」

ジークは先に外へ出ると、ジャンヌが門の前で手を振る姿が見える。

「ふっ…」

彼女の迎えに嬉しかったのか、思わず笑みを浮かべてしまう。

歩み寄るジークの顔を見て、ジャンヌは胸を締め付けるように心配していた。

「随分と無茶をしましたね……」

「すまない、心配掛けてしまって」

彼の顔は青痣が出来ており、絆創膏が貼られている。

「心配しますよ。 さあ、帰りましょう」

「ああ」

二人は真選組屯所を後にし、その背中を近藤達は見守っていた。

「アイツ、恋人がいたのかぁ〜」

「しかも金髪で巨乳…」

「それに可愛い…」

「いいな〜……」

「羨ましい……」

この光景に、隊士達が羨望の眼差しを向け、

「俺も、あんな風にお妙さんと付き合えたらなぁ〜」

近藤がお妙への思いを口に出す。

「多分、それは無理だと思う」

ただし、土方に当たり前のように否定されたのである。





 街の中を歩く中、ジャンヌはジークに声をかける。

「ジークくん、暫くは真選組の元で鍛えるんですか?」

「まあ、相手の都合次第だが……」

頬を掻くジークであるが、彼女はとても心配してしまう。

「前にも言いましたけど、男の子の『大丈夫』は信用できませんから」

「そうだったな」

「それと、これを……」

「ん?」

「じっとしてて下さいね」

ジャンヌは手を伸ばすと、彼の首に何かを付けたのである。

それは竜の装飾の付いた、銀色のネックレスだ。

「昨日出掛けた時に、老舗で買ったんです。 ジークくんに似合うと思いまして……その…嫌だったでしょうか?」

恥ずかしそうに問うジャンヌであったが、ジークは首を横に振る。

「いや…ありがとう。 大事にするよ」

「良かった」

こうして二人は、再び万事屋への道を歩くのだった。

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■作者からのメッセージ
 次回から、銀魂で人気のあの長編を書かせていただきます。
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