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Fate/Silver or Heart 第六訓:紅桜
作者:亀鳥虎龍   2018/01/08(月) 23:55公開   ID:L6TukelU0BA
 前回のあらすじ。

失踪した桂の手掛かりを追う為、新八達はエリザベスと夜に、現場近くの路地に来ていた。

しかし遭遇した岡っ引きが、件の辻斬りに殺害されてしまう。

襲いかかる辻斬りであったが、銀時の参戦でことなきを得た新八達。

「――ったく、妖刀探しで此処まで来てみれば…どっかで見たツラじゃねぇか」

「ホントだ…何処かで嗅いだニオイだね……」

そして辻斬りは、自らの素顔を晒したのだった。





―紅桜―





 辻斬りの顔を見た新八は、驚きを隠せずにいた。

「あ…アンタは!? 人斬り…人斬り似蔵!」

岡田似蔵、またの名を人斬り似蔵。

盲目でありながら、研ぎ澄まされた聴覚と嗅覚だけで相手を斬り伏せた攘夷志士。

数日前に起こった橋田屋の一件で、銀時と戦った事がある。

鼻炎用スプレーを鼻腔内に吹きかける似蔵を、新八は強く睨みつけた。

「件の辻斬りは、アンタの仕業だったのか! でも、二人はどうしてここに!?」

刀を抜きながら、ジークは彼等を護るように背を向ける。

「どうやらお互いの目的が、あの男へと繋がっていたようだ」

「へ?」

「つまり、俺等全員、アイツに用があるって事だよ新八君」

銀時が分かり易く教えると、似蔵は地面に刺さった愛刀を引き抜く。

その刀身は、淡い紅色に光っている。

コレを見た銀時は、すぐに確信したのだ。

アレが盗まれた妖刀、紅桜であることを……。

「嬉しいね。 わざわざ俺に会いにきてくれたってワケか…。 コイツは災いを呼ぶ妖刀と聞くがね、どうやら強者を引き寄せてくれるようだ。 桂にアンタ、こうも会いたい奴に会えるなんて、俺にとっては吉兆を呼ぶ刀だ」

「なっ!? 桂さんをどうしたんだ!?」

新八の激昂に対し、似蔵は平然と答える。

「おや、おたくらの知り合いだったのかい? それはすまない事をしたね。 オニューの刀を手に入れたから、つい斬っちまったよ」

「ヅラがテメェみてぇなただの人殺しに、負けるワケがねぇだろ」

「怒るなよ、悪かったと言ってる。 あっ、そうだ……」

すると似蔵は、懐から一房の髪の毛を見せた。

「ホラ、ついでに奴の形見だけでも返しておくよ」

「!?」

コレを見た新八とエリザベスは、驚愕で声が出なくなる。

まさにそれは、似蔵が桂を殺害した証拠となったからだ。

「記念にむしり取ったんだが、アンタ等に渡した方がヤツも喜ぶだろう。ところで、桂ってのはホントに男かい? この滑らかな髪、どう見ても女の様な……」

しかし、まさにその時だ。

銀時が一気に駆けより、容赦なく木刀を振り下ろす。

勿論、似蔵も紅桜でそれを防ぐ。

「寝ぼけた事言ってんじゃねぇよ! ヅラはテメェみてぇな雑魚に、やられるような奴じゃねぇ!!」

今までない怒りを露わにする銀時。

その場にいた者達が戦慄し、新八はその怒りを誰よりも察した。

銀時にとって桂は、共に攘夷戦争を戦った昔馴染み。

そんな桂の死を、誰よりも信じたくないのは、紛れもない銀時なのだ。

怒りを露わにする銀時に対し、似蔵は愉しむかのように笑う。

「クククク…確かに俺一人じゃ、奴には敵うまいよ。 だが、ヤツを斬ったのは俺じゃない」

「!?」

「俺はちょいと、体を貸してやっただけでね。 なあ、紅桜よ……」

だがこの時、銀時はあるものを目にしたのだ。

果たして、彼が見たモノとは!?





 その頃、桂を捜索していた神楽とアーチャーとジュディスは、

「定春、ここにヅラのニオイがするアルか?」

「ワン!」

「港のようじゃの」

定春の嗅覚を頼りに、港まで足を運んでいた。

「それにしても、なんじゃあの船?」

「おい、見つかったか?」

「「!?」」

しかし突然の声に反応し、三人と一匹は物陰に隠れる。

そこには、三人の男達が何かを話していた。

「ダメだ、こりゃまた例の病気が出たな。 岡田さん…どこぞの侍にやられてから、しばらく大人してたってのに」

「やっぱアブネーよ、あの人。 こないだもあの桂を斬ったとか触れ回ってたが、あの人ならやりかねんよ」

「どーすんだお前ら。 ちゃんと見張っとかねーから。 アレの存在が明るみに出たら……」

そんな会話をしながら、船へと向かって歩いて行く男達。

彼らの口から「桂を斬った」という言葉を聞いて、神楽達は三人が去ったのを確認。

そして紙と筆を取り出し、この港の場所を示す地図を描き始める。

地図を定春の首輪に括りつけると、彼にこう言ったのだ。

「定春、これを銀ちゃん達のところに届けるアル」

「ワン!」

「可愛いメス犬がいても、寄り道しちゃダメだよ」

「ワン!」

「上に乗っかっちゃダメだヨ」

定春が走り去るのを確認すると、三人は互いに頷き合う。

「よし、行くか」

「うむ」

「ええ」

船へと向かおうとしたが、ピキーン!と神楽が何かを感じ取った。

「右!」

「「!?」」

彼女と共に、二人も首を右に振る。

そこにはラーメン屋台があり、店主の男が包丁でネギを切っていた。

「感じてしまったものは、仕方ないアル」

「腹が減ったら戦は出来ん。 是非もなしじゃ」

「そうね。 お腹も空いてきちゃったし」

三人とも賛成のようで、すぐさま屋台へと直行し、

「おい、ハゲ親父! ラーメン三杯」

「儂、味噌ラーメンの大盛り♪」

「私は塩ラーメンの大盛りで」

「はいよ。 それとチャイナさん、俺ぁハゲてねぇよ」

店主もラーメンを振る舞うのである。






 一方の銀時は、とんでもない状況に陥っていた。

似蔵との激戦は、苛烈さを増していたからだ。

何度も打ち合う中、二人は橋まで移動する。

しかし似蔵が振るう紅桜の速度は、一太刀ごとに速くなっていく。

勿論、威力も同等だ。

何せ攻撃を防いだ銀時ごと、橋の底板を崩壊させ、彼を川底に叩きつけたのである。

もはやそれは、人間業ではない。

「ゲホッ、ゲホッ……」

「おかしいねぇ…。 アンタ、もっと強くなかったかい?」

「おかしいね、おい…。 アンタそれ、ホントに刀なのか?」

橋から見下ろす似蔵に対し、銀時は彼の右腕に目を向ける。

正確には、紅桜に目を向けていた。

一本の刀だった紅桜が、似蔵の右腕と一体化していたのだ。

「“刀というより生き物みたいだった”って? 冗談じゃねよ。 ありゃ生き物っていうより――化け物じゃねぇか!」

橋から降りて来た似蔵が、銀時に攻撃を仕掛ける。

落下の勢いを利用し、叩き潰そうとしたのだ。

水しぶきが舞う中、銀時は似蔵の背後に回っていた。

彼の膝に下段蹴りを放ち、そのまま川の中へと転ばせる。

さらに右腕を足で踏みつけ、その動きを封じこんだ。

「喧嘩は剣だけでやるもんじゃねぇんだよ!」

剣が使えなければ、後は勝負は決まると感じたのだろう。

しかし、紅桜はそんなに甘い代物ではなかった。

「何っ!?」

紅桜の刀身から伸びた触手が、木刀に絡みついたのだ。

この瞬間を見逃さなかった似蔵は、そのまま銀時を跳ね飛ばす。

「喧嘩じゃない、殺し合いだろうが!」

大きく薙ぎ払われた一閃。

コレを見た銀時は、咄嗟に木刀で受け止めた。

バキィィィィン!と、凄まじい一撃が彼を吹き飛ばす。

しかし木刀では妖刀に太刀打ちできなかったのか、銀時の木刀は粉々に砕けた。

「がっ!」

吹き飛ばされた銀時は、橋脚へと叩きつけられる。

「銀さぁぁぁぁん!」

欄干から戦いを見守っていた新八は、思わず叫んでしまう。

「ククク……こんなもんかい?」

似蔵が襲いかかるが、まさにその時である。

「ハッ!」

「!?」

欄干から飛び降りたジークが、刀を振り下ろしたのだ。






「ほう、今度はボウヤが遊んでくれるのかい?」

「………」

愉悦の笑みを浮かべる似蔵に対し、ジークは無言のままである。

「(あの男……表情を見れば分かる! アレは、殺し合いを快楽として楽しんでいる!)」

英霊たちの中には、強き者との戦いを臨む者達が多い。

しかしそれは、互いに己の誇りを懸けての戦いだからである。

だが似蔵は違った。

彼の表情は、血の味を好み、殺しを愉しむ者が見せる顔だ。

「来ないのかい? だったら、こっちから行くよ」

似蔵は真っ向から跳び込み、紅桜を豪快に振るった。

「くっ!」

ジークは咄嗟に攻撃を避け、似蔵の隙を窺い、

「(一瞬で良い! 一瞬の隙さえ見つければ!)」

冷静に行動パターンを分析する。

そして、似蔵が紅桜を上に挙げた瞬間、

「そこだ!」

真っ向から、ジークは懐へと飛び込んだのだ。

「なっ!?」

「うおぉぉぉぉぉ!」

勝負は決まった――誰もが内心でそう思った。

しかし、予想は大きく外れてしまう。

「なぁ〜んちゃって」

紅桜の触手が伸び、ジークの刀に絡みついたのだ。

「なっ!?」

これには彼も、驚愕を隠す事が出来ない。

そして、その時であった。

ドスン!と、紅桜の凶刃が、ジークの腹部を貫いたのだ。

「いや…イヤぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

この光景を目にしたジャンヌは、絶望の叫びを上げてしまったのだった。






 腹部を――正確には脇腹を貫かれたジークは、口から血を吐き出してしまう。

「ガハッ!」

似蔵が紅桜を引き抜いた瞬間、彼はその場で倒れてしまった。

「俺の隙を狙ったのは良かったが、紅桜の性能自体は読めなかったようだねぇ…」

「ハァ…ハァ……」

出血が酷く、ジークも意識を保つのが精一杯である。

「それじゃ、さよならだ」

似蔵が紅桜を振り下ろそうとしたが、まさにその時だ。

「「させるかよ!」」

「!?」

振り返ろうとした似蔵の顔面を、二人の男が蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされた似蔵の前に立つのは、ユーリ・ローウェルと左翔太郎だった。

「フィリップ!」

翔太郎はダブルドライバーを装着すると、フィリップの腰にもドライバーが出現する。

「遅いよ、翔太郎!」

《CYCLONE》

「すまねぇ!」

《JOKER》

「「変身!」」

《CYCLONE・JOKER》

そして二人は、仮面ライダーWへと変身したのだ。





「翔太郎、ジークを頼む!」

「分かった!」

愛刀のニバンボシを鞘から抜き、ユーリは似蔵へと飛び掛かる。

その間にWは、ジークの介抱に向かった。

「ジーク! おいっ、しっかりしろ!」

「ハァ…ハァ……」

『マズイ! 意識を保つのが精一杯のようだ!』

「手当が必要か…。 なら、ここから引き上げるぞ」

《LUNA》

黄色いメモリをドライバーの右スロットに挿し込むと、Wの右半身は黄色へと変わる。

《LUNA・JOKER》

『幻想の記憶』を宿す、ルナジョーカーへと姿を変えたのだ。

左腕でジークを抱えると、Wは右腕を欄干へと伸ばした。

ルナジョーカーの特性は、右半身の手足が伸縮自在に伸びること。

その分、他のフォームよりもパワーが落ちてしまうのだ。

「よっと!」

右手で欄干を掴むと、Wはジークごと上へと上がった。






 土手から上がると、ジークを新八達の元へと運んだW。

彼を寝かせると、すぐさまジャンヌが駆けつけた。

「ジークくん! しっかりして下さい!」

涙声で叫び、彼女はジークの手を握り締める。

出血の酷さから、間違いなく重傷だった。

誰もがダメだと感じたが、まさにその時である。

「……まだ…死ねない…」

「!?」

ジークが力強く、ジャンヌの手を握り締めたのだ。

「一人にしない…絶対に…一人には……しない……」

「!!」

コレを聞いたジャンヌは、世界の裏側でジークと再会した時の事を思い出す。

――もう決して、貴方を一人にしません。

あの時の自身の言葉を思い出し、涙が零れ出たのだ。

「ジークくん、私はここにいます。 ですから…死んだら…嫌ですよ……」

「ああ…分かってる」

瀕死の重傷を負いながらも、ジークは意地と『生きたい」という意志だけで意識を保っていた。

それに応えるかのように、ジャンヌも力強く手を握り締める。

『愛は無敵ってヤツだね』

「そのようだな!」

これを観てWは、即座に欄干へと駆け寄ったのだ。

最悪の辻斬り、岡田似蔵を倒すために…。






 川の方では、ユーリと似蔵の激戦が繰り広げられていた。

激しい攻防戦であるが、明らかに似蔵の方が圧倒している。

「(くそっ! なんだ、この腕力は!? 明らかに人間離れしてやがるじゃねぇか!)」

一撃一撃が重くなっていき、ユーリの腕も痺れていく。

「(マジでコイツ、体に機械か何かが埋め込まれてんのか!?)」

するとその時であった。

《HEAT・JOKER》

「オラァ!」

右半身が赤く染まったWが、拳を振り下ろしてきたのだ。

『熱の記憶』を宿したヒートジョーカーへと姿を変えたのである。

それを見た似蔵は、即座にそれを回避。

「ちっ! 不意打ちも無理だったか!」

右手に炎を纏い、拳を強く握ったWは、

「いくぜぇぇぇぇ!」

真っ向から拳を放ったのである。

ドガァ!と、拳が紅桜の刀身に直撃したが、

「なにっ!?」

『バカな!? ヒビ一つも入ってない!?』

亀裂の一つも出来ていない事に、驚きを隠せなかった。

「無駄だよ。 簡単にコイツを壊そうなんざ、無理な話だね!」

豪快に紅桜を振るった似蔵に対し、Wはメタルメモリを挿し込む。

《METAL》

「だったらコレだ!」

《HEAT・METAL》

サイクロンジョーカーに続く、メモリの相性が高い『ヒートメタル』へとチェンジしたのだ。

左半身ボディサイドのメモリの中でも、高い攻撃と防御に優れたメタルメモリ。

そして右半身ソウルサイドのメモリの中で熱を操り、闘争心を高める事が出来るヒートメモリ。

闘士の力を熱の力で高めるヒートメタルは、まさに相性のいい形態なのである。

メタルシャフトを握り、紅桜の一撃を防いだW。

しかしその一撃は重く、護りに徹するのが精一杯であった。

「ぐっ! なんだ、この重さは!?」

『ヒートメタルの防御ですら通用しないなんて!?』

翔太郎とフィリップ、二人の驚愕がWから感じられる。

「余所見してる場合かい?」

「『!?』」

懐に入った似蔵が、再び大振りの一閃を放つ。

「しまっ――」

ドガァ!と、この一撃がWに直撃した。

「ガッ!」

吹き飛ばされたWは、そのまま倒れ込んでしまう。

『翔太郎! しっかりするんだ!』

「やべぇ…肋骨アバラが何本か折れた……」

ヒートメタルの防御ですら防ぐ事が出来ず、Wはそのまま変身が解けてしまった。

「ゴフッ…」

翔太郎は口から血を吐いてしまい、似蔵はゆっくりと歩み寄る。

「次はアンタの番だよ、帽子のお兄さん」

紅桜の刃が怪しく光るが、背後からユーリが突進する。

「俺の事、忘れてんじゃねぇ!」

ニバンボシを振るい、似蔵の首を狙ったが、

「あー、そうだった。 忘れるところだったよ!」

ガキィーン!と、その場で防がれてしまう。

「なにっ!?」

「俺ァ、病で目をやっちまってねぇ。 その代わり、ニオイと音で相手を把握してるんだよ」

振り返ると同時に、似蔵は再び凶刃を振るった。

「つまり、俺に死角はないんだよ!」

咄嗟にユーリは、ニバンボシで防いだが、

「ぐあっ!」

ドガァーン!と、橋脚へと吹き飛ばされたのだ。

「ユーリ!」

「いっつ……。 くそっ、右腕を折っちまったぜ」

上半身を起こすほどの気力を見せたユーリだが、右腕を骨折するほどの重傷を負う。

「アンタも中々の強さだったね。 でも、ここまでのようだ」

愉悦の笑みを見せた似蔵に対し、ユーリも何故か笑みを見せる。

「はっ、そうでもねぇみてぇだぜ?」

まさにその時だった。

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

銀時が似蔵に向かって、飛びかかって来たのだ。

手にはジークが使っていた刀が握られており、彼はそれを容赦なく振るった。

「クククク…隙を窺ってたのか。 中々やるねぇ。 でも忘れたのかい?」

しかし似蔵は、銀時の方へと振り向き、

「俺の鼻に、死角はない!」

同時に紅桜の刃を振るったのだ。

ガキィーン!と、凄まじい一撃を放ち、

「なっ!?」

刀もその場で折れてしまった。

「がっ!」

再び橋脚へと吹き飛ばされた銀時であったが、すぐさま起き上がろうとする。

「(ヤロ〜……。 何やったらあんなに強くなれんだ? 人間の力じゃねぇぞ――)」

しかし、その時であった。

ブシュゥと、彼の胸が横一線に切れたのだ。

「おいおい、こりゃヤベ――」

完全に不利を感じた銀時であったが、次の瞬間だった。

似蔵が紅桜での刺突を放ったのだ。

心臓を狙って来たが、銀時は両手で軌道を逸らす事に成功。

しかし代償として、自身の脇腹を貫かせる事になってしまう。

「うぐっ!」

口からは血を吐き、この光景を見ていた新八は狼狽える。

「(嘘だ…嘘だ銀さんが!?)」

だが新八は、咄嗟にエリザベスから刀を奪った。

果たして、彼は何を使用というのか!?






 似蔵に追い詰められた銀時は、彼にこう言われたのである。

「後悔してるのかい? あの時何故、俺を殺さなかったのかを。 俺を殺しておけば、アンタ等も桂もこうならずに済んだ。 全てはアンタの甘さが招いた結果だよ、白夜叉」

「………」

「あの人もがっかりしてるだろうね。 共に闘った盟友達が、揃いも揃ってこのザマだ。 アンタ達の様な弱い侍の所為で、この国は腐敗した。 もし…アンタじゃなく、俺があの人の隣にいれば、この国は腐敗せずに済んだはず。 士道だ摂理だ…そんなモノは侍には不要。 侍に必要は剣のみさね。 剣を折れたアンタは、もう侍じゃない。 惰弱な侍は、この国から消えるがいい」

トドメを刺そうと、似蔵は刃に力を込める。

しかし銀時も、タダでやられるつもりはない。

「剣が折れたって? 剣ならまだあるぜ。 とっておきのがもう一本……」

両手で紅桜の刀身を掴み、その動きを封じたのだ。

「(なっ!? 抜けない――)」

刀を抜こうとするが、抜く事が出来ない似蔵。

まさにその時だった。

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

上から飛び降りて来た新八が、刀を振り下ろしたのだ。

これにより似蔵の右腕は切り落とされ、そのまま宙を舞った。

同時に切り離された紅桜も、元の日本刀の形に戻ったのである。

「あ〜らら…腕が取れちまったよ。 酷いことするね、僕ぅ?」

「それ以上来てみろ! 次は、左腕を貰う!」

腕を落とされたにもかかわらず、似蔵は平然としか顔を見せた。

コレを見て新八も、戦闘態勢に入る。

しかし、その時だった。

突然何者かが、土手から飛び降りて来たのだ。

それは真選組一番隊隊長、沖田総悟だった。

どうやら立ち去ったユーリと翔太郎が気になり、二人を追って来たのだろう。

「真選組の沖田だ。 貴様、岡田似蔵だな?」

鋭く睨む沖田に対し、似蔵は紅桜を拾い上げ、

「邪魔なのが来ちまったねぇ。 勝負はお預けだ。 まあ、次会った時は、やり合おうや」

それだけ言い残し、似蔵はその場から走り去った。

沖田は部下達に「追え!」と命令し、自身は銀時の方へと歩み寄る。

銀時の傷を見て、沖田はすぐに深手だと分かった。

今の彼には、自力で立てる力が残っていないのだ。

「銀さん! しっかりして下さい!」

「旦那、大丈夫ですか!? くそっ、もう少し早く来ていれば!」

駆けつけるのが遅かった事を悔やむ沖田であったが、

「新八…オメェ…やれば…できる子だと……信じてたよ……」

銀時は新八にそう言い残し、その場で意識を失ってしまう。

「銀さん!」

「運びますぜ!」

「はい!」

沖田と新八は、銀時を抱きかかえ、

「ユーリさん、しっかりして下さい!」

「俺は右腕だけだ。 銀時やジークよりは軽症だ」

「それでも重症ですよ!」

セイバーがユーリを抱える。

「翔太郎、大丈夫かい!?」

「悪いな、相棒……」

そして翔太郎は、相棒であるフィリップが肩を貸す。

「ハァ…ハァ…流石に……キツイな」

「喋ってはダメです! 傷口が開きます!」

ジークもジャンヌが肩を貸すことで、なんとか歩けるようになっていた。

「(この『謎』……ただの辻斬り事件では終わらんようだ)」

内心で呟きながら、ネウロは夜空を見上げたのだ。


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■作者からのメッセージ
 紅桜での戦闘は、工夫に一苦労しました。
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