銀時達が似蔵との死闘から逃れた中、
「おい。 オマエ、この船の船員アルか?」
「ちょいと、中を案内させて貰おうかのう。 頭をぶち抜かれたくなかったらな」
船首に立つ男に、神楽とアーチャーが銃口を向けた。
「おい、聞いてんのか?」
まさにその時だ。
男は一度だけ振り返り、狂気に満ちた笑みを見せた。
コレを見たジュディスは、本能で感じ取る。
この男は危険だと――。
―月は人を狂わせる―
背後に銃口を向けられながら、男は不敵な笑みを浮かべる。
「今日はデケェ月が出てるもんだから、かぐや姫が降りて来る夜かと思ったら、とんだじゃじゃ馬姫が二人も来たもんだ。 だが、かぐや姫も驚く別嬪さんもいたようだな」
煙管を吹かす男であるが、神楽達三人は本能で感じ取った。
「(ヤバイ…)」
「(こやつ…)」
「(危険なニオイがするわ)」
しかしその時、背後から銃声が聞こえたのだ。
「「「!?」」」
三人は一度散ると、弾丸を何度も回避する。
「チッ!」
狙撃の主は舌打ちをすると、その場で走り出したのだ。
「!」
コレを見たジュディスも、即座に相手の方へと走り出す。
互いに真っ向から近付き、相手は銃口、ジュディスは槍の穂先を互いの顔に向けた。
「貴様等ぁ、何者だ! 晋助様を襲撃するなんて、絶対に許さないッス!」
狙撃手の正体は、金髪のサイドテールにヘソ出しミニスカの和服を着た女のようだ、
「武器を下ろせ! この来島また子の早撃ちに勝てるとでも思ってるんスか!?」
女――来島また子が叫ぶが、ジュディスはニヤリと笑う。
「確かに、この距離なら、貴方に勝てるとは思ってないわ」
「だったら武器を――」
「でも、後ろは確認する事ね」
「え?」
「「ほわちゃぁぁぁぁ!」」
背後から神楽とアーチャーの飛び蹴りが放たれ、また子は吹き飛ばされてしまう。
「逃げるわよ、二人とも!」
「アイツ等ぁ! 武市先輩ィ、そっちに行ったっス!」
この叫びと共に、スポットライトの光が三人を照らし出す。
和装で丁髷頭の男がライトの横に立ち、部下達に叫んだのだった。
「皆さん、女子供を殺めては、侍の名が廃ります。 生かして捕えるのです」
「先輩! ロリコンも大概にするっス! ここまで侵入されておきながら、何を生ぬるい事を!」
叫ぶまた子に対し、男――武市変平太は当然のように答える。
「ロリコンじゃありません、フェミニストです。 例え敵といえど、女子供に優しくするのがフェミの道というもの」
浪人達が一斉に襲いかかるが、神楽達は簡単にやられない。
「ホワチャァ!」
「そらァ!」
神楽が傘と体術を活かし、アーチャーが愛刀の『圧切長谷部』で薙ぎ払う。
「ハッ!」
更にジュディスが、槍と蹴り技で蹴散らすのだった。
「な、何だコイツ等は!?」
「強過ぎるぞ!?」
三人の強さを前に、浪人達も圧倒されてしまう。
「ヅラァ! どこアルか!? そこにいるんでしょぉぉぉ!? 返事するアル!」
神楽が大声で叫ぶが、まさにその時である。
パァン!と、左肩を撃たれたのだ。
撃ったのは、背後に立っているまた子だった。
更に彼女に左足を撃ち抜かれ、神楽はその場で倒れてしまう。
「神楽ぁ!」
マスターの危機を前に、アーチャーは即座に駆けだす。
「今だぁぁぁぁ! 捕えろぉぉぉぉ!」
捕縛の為、浪人達も駆け寄ったが、
「ふんごぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
神楽は根性で立ち上がったのだ。
依頼人の為、万事屋の使命を果たす為に、ここで止まるワケにはいかなかったのだ。
負傷した体に鞭を打って…。
「な、なんてガキだ!?」
驚愕する浪人達に、アーチャーが容赦なく刃を振るう。
「そこをどけぇ!」
そんな中、また子が冷酷に呟く。
「やれ、アサシン」
まさにその時だった。
何者かが、アーチャーの背後を押さえ込んだ。
「がっ!」
うつ伏せにされたアーチャーは、自身を押さえ込んでいる相手を見る。
そこには黒い肌に、髑髏を模した仮面を被った集団がいた。
「貴様等…サーヴァントか!? しかも、全員がアサシン!?」
「我等は“黒”のアサシン、真名は『ハサン・ザッバーハ』。 我等は“個”にして“群”。 数で我等に勝てるとでも思ったか?」
“黒”のアサシンの人海戦術を前に、アーチャーは手も足も出ない。
「アーチャー!?」
叫ぶジュディスであったが、背後からの声が聞こえた。
「よう、お前さんは俺が相手してやるよ」
「!?」
振り返った彼女の前に、男が歩み寄って来る。
ニヤリと笑う彼の目を見て、ジュディスはゴクリと唾を飲む。
「(この男は危険だわ……勝てる気が――)」
額から汗が流れ出てしまうほど、彼女はこれまでにない恐怖を感じ取ったが、
「おいおい、考え事か?」
「しまっ――」
既に接近してきた事に気付かず、ジュディスは防御の余裕すらなかった。
男の放った一閃により、彼女はその場で倒れてしまう。
「安心しろ、峰打ちだ」
アーチャーとジュディスが倒されたと知らず、神楽は船内へと入っていく。
そこで彼女は、ある物を見てしまった。
見た事もない複雑な
機械による、あまりにも異質過ぎる空間――。
「なんだ……ココ」
まさにその時である。
背後からガチャリと、神楽のこみかみに銃口が向けられた。
「そいつを見ちゃあ、もう生かして帰せないな」
また子の冷徹な台詞と共に、銃声が鳴り響いたのだ。
その頃、真選組屯所の道場にて、
「フン! フン!」
上半身の肌を晒し、木刀で素振りをする近藤。
そんな彼の元に、沖田総悟が入って来る。
銀時達を万事屋に運び、諸々の後始末をセイバーに任せて(というよりは押しつけて)戻って来たのだ。
そんな彼等の元に、土方とバーサーカーもやって来る。
「噂は本当だったようだ」
「噂?」
素振りを途中でやめた近藤に、土方はある人物に関する情報を提出した。
「高杉が、遂に動きだした」
「何っ!?」
近藤が驚く中、沖田がゆっくり口を開く。
「攘夷浪士で最も過激で危険な男、高杉晋助……の事ですよね?」
「ああ。 奴は岡田似蔵を、仲間に引き入れたようだ」
「あの、“人斬り似蔵”か……」
「ついさっき、万事屋の旦那達とやり合ってるところを見てきやした。 あらぁ、間違いなく岡田似蔵でさぁ」
「似蔵のほかにも、“紅い弾丸”と呼ばれる拳銃使い『来島また子』、変人謀略家の『武市変平太』、そして似蔵と同じ“人斬り”と呼ばれる剣豪『河上万斉』……高杉は奴等を引き入れ、『鬼兵隊』を復活させる気だ」
“鬼兵隊”…攘夷戦争時代、高杉が総督を務めた義勇軍の名称。
文字通り、鬼の如き強さといわれている。
「今更そんなモノ作って、何をするつもりだ?」
「恐らく強力な武装集団を作り、クーデターを起こすのが奴の狙いだ。 近藤さん、アイツは危険すぎる」
「でも、岡田似蔵だけであれだけ強いと厄介ですぜ? なんせ、万事屋の旦那達ですら歯が立たなかったんですから」
沖田がそう言うと、近藤は「うむ…」と深く考える。
銀時の実力は、自身も嫌と言うほど知っている方だ。
そんな彼ですら追い詰められる程、岡田似蔵は相当の実力を得ていたようだ。
「クーデターなど起こされたら、多くの犠牲が出てしまう。 それだけは避けないとならん。 ……トシ、奴等の情報を出来るだけ集めろ」
「了解した」
会話は終わり、近藤は再び素振りを開始する。
バーサーカーと共に道場を出る直前、土方は近藤にこう言った。
「それから近藤さん、素振りは全裸じゃなくても良いんじゃねぇか?」
実は近藤は、全裸で素振りをしていたのだ。
土方が指摘をするのは当然である。
というか、せめてズボンくらいは穿け。
同時刻、万事屋の方では……、
「ん…んあ……」
ジークがゆっくりと、瞼を開けたのである。
「ジークくん!」
それを見てジャンヌは、誰よりも一番安堵した。
「ジャンヌ……」
「動かないでくださいね。 傷が治っていないので」
「傷? そうだ…あの時刺されて――!!」
するとジークは、思わず起き上がろうとするが、
「ぐっ!?」
「ジークくん!」
激痛が走り、自力で立つ事が出来ない。
「ダメです、まだ起きては!」
「それより、銀さんは!?」
「銀時さんも無事です。 ただ、腹部を刺されて重傷を……」
「!? そ…そうか……」
「あの後、真選組の方々が、此処まで運んでくれて……」
「失礼します」
すると隣の部屋から、セイバーが入って来た。
普段の真選組の制服姿ではなく、和装に浅葱色の羽織り姿であった。
「セイバー……」
「御無事でなによりです、ジークくん」
「こちらこそ、貴方達には借りが出来た」
「お固い事はなしですよ」
「岡田似蔵は?」
「あの後、隊士達が追ったのですが、撒かれてしまったようです」
「逃げられた――とうことか」
「情けない話ですが…。 ですが、彼のバックにいる相手が分かりました」
「本当か!?」
「ですが、ここからは警察の仕事です」
不敵な笑みを浮かべ、セイバーは彼等の前で背中を見せる。
そして背中には、大きく刻まれた“誠”の文字が――。
「この背の“誠”がある限り、我が士道は不滅です」
それだけ言い残し、彼女は万事屋を後にしたのであった。
「真選組の強さは知ってるが、大丈夫だろうか…」
「大丈夫ですよ。 それよりジークくん……」
「あ、ああ。 どうした――」
ジャンヌはジークの手を掴むと、同時に大粒の涙を流す。
「良かった…生きてくれて……本当に…本当によかった……」
彼の無事に安心したと同時に、押し殺した気持ちが面に出たのだ。
誰よりも彼を心配し、誰よりも彼を愛し、誰よりも彼の死を恐れた。
英霊ではなくなったジャンヌは、聖女と呼ばれただけの一人の少女。
だからこそ、誰よりもジークの身を案じていた。
「すまない…。 それと、ありがとう」
心配してくれた恋人の涙を見て、彼も優しく笑みを見せたのである。
翌日の早朝、万事屋にて……、
「ん…んあ?」
「あっ、気が付きましたか?」
外は雨が降る中、銀時は目を覚ました。
横には、お妙が正座しながら顔を覗く。
「あの、私の事が分かります?」
「……バイオ兵器みたいな料理作る女」
自身の余計な一言が原因で、銀時は彼女の鉄拳を喰らってしまう。
明らかに自業自得であるが、怪我人相手に容赦無いお妙も恐ろしい。
「オマエ、何でここにいるの?」
銀時が問うと、お妙は薙刀を構えながら答える。
「新ちゃんに頼まれたんです。 銀さんを看病してあげてって」
キラリと光る薙刀を見て、銀時は青ざめながら再び問う。
「何で看病する人が、薙刀持ってんの?」
「これも新ちゃんに頼まれたんです。 絶対安静に、出ていこうとしたら止めてくれって」
「止めるって何を? 息の根?」
「ふふっ、面白い。 冗談が言えるほど、元気になったみたいですね」
「冗談かなぁ〜」
絶対に冗談じゃない――そう思った銀時であったが、ユーリ達の事を思い出す。
特にジークは、最初に似蔵に刺されたのだ。
念の為、彼の安否を確認する。
「そういや、ジークはどうした?」
「隣の部屋で寝てますよ。 あっちはジャンヌちゃんが看病してあげてます」
「羨ましい……」
恋人に看病して貰ってるジークに対し、思わず本音が出てしまった銀時。
「そういや、新八と神楽は?」
「用事でちょっと出てます」
「用事って?」
「いいからいいから、怪我人は寝てて下さいな」
お妙の態度を見て、何かを隠していると察した銀時。
「おい、何か隠して――」
上体を起こした彼であったが、まさにその時だった。
ドスーン!と、お妙が薙刀を突き刺したのだ。
咄嗟に避けた銀時に、彼女は鋭い眼光で睨む。
「動くなっつってんだろう。 傷口が開いたら、どうするんだコノヤロー」
「………」
ドスのある台詞とガンを飛ばすお妙に、銀時は顔を青ざめるしかなかった。
その様子を別の部屋から覗いていたユーリと翔太郎は、
「おっかねぇ女……」
「ドーパントよりもヤバいぞ」
お妙の恐ろしさを改めて認識出来たのである。
「彼女なら銀さんを逃がさないだろうという、新八君の判断は恐ろしいね」
そしてフィリップは、彼女に看病を任せた新八を評価するのであった。
その頃、村田邸の方では、
「何ですってぇぇぇぇ!?」
新八とランサーが村田兄妹に、事件の状況報告を伝えていた。
「では、紅桜はその辻斬りの手に!?」
「すいません。 なんとか取り戻そうとしたんですが…」
「それで、取り戻せたんですか!?」
「いや、出来なかったって言ってんでしょうが!」
「なんて事だぁぁぁ! 紅桜が人斬りの道具にぃぃぃ! ヤバイってレベルじゃあねぇぞぉ!」
「それで、生きてるのか? あの人…」
「銀時の事か? まあ、無事なのは無事なんだけどよ…怪我がヒデェ方だ……」
「………」
銀時の容体を聞いた鉄子は、ゆっくりと腰を上げる。
「兄者、気分が悪い。 外すぞ」
「ん!? どうした鉄子! 気分でも悪いのか!?」
「だから、気分が悪いって言ってんでしょうが!」
「アンタ、人の話聞いてた!?」
「すいませんね、なんか空気の読めないやつでして」
「「(オメェが空気読めてねぇよ…)」」
内心でツッコみながら、二人はすぐさま本題に入った。
今回の発端となった紅桜について…。
「ところで、聞きたい事があるんですけど…」
「あの紅桜って刀。 妖刀とは聞いたがよ……明らかに妖刀と呼ぶにゃ、生易し過ぎんじゃねぇか……」
その問いに対し、鉄矢は何時もの大声で答える。
「残念ながら、私も紅桜については何も知らないのだ。 決して人の手に渡すなと、蔵の奥に封じ込めていたのですから。 アレをごらんなさい」
鉄矢が外の方へと顔を向ける。
屋根から一滴の雨水が、一つの石板へと落ちていく。
何十回、何百回も。
それにより石板は、一点だけくぼみが出来ている。
「一滴ずつ落ちて来た雨水が、石板の一点に穴を開けた。 これを刀鍛冶の仕事に例えるとどうだろう? 鎚に乗せた思いが一つずつ鉄に打ち込まれ、それが一本の刀へと生まれるというもの!」
「つまり…親父さんの思いが、刀を妖刀に変えたと?」
「フハハハハハハ! 少々ロマンチック過ぎたかな?」
暫くした後、新八とランサーはお暇したのであった。
街中を歩いている中、新八はある事を思い出す。
「そういえば…、神楽ちゃんとアーチャーさん、ジュディスさんが帰ってきてないような……」
「確かに、昨日は定春だけしか帰って来てなかったよな…」
桂の捜索に向かった三人が帰っておらず、心配になってしまう。
しかし、ある事を思い出した。
「「………あっ!」」
「確か、定春の首輪に紙が括られてたよな!?」
「そうだ! コレですよね!?」
紙を広げると、何かの図面が描かれていた。
「もしかしてこれって、地図…ですよね?」
「神楽の嬢ちゃんが、もしもの時に描き記したってことか?」
「ランサーさん…」
「行ってみるか?」
「はい」
互いに頷き合い、二人はすぐさま行動に移った。
場所は変わって、万事屋の事務所。
――ピンポーン!
「はーい」
インターホンが鳴り、お妙がゆっくりと扉を開ける。
そこにいたのは、村田鉄子であった。
「どうしました?」
「え〜と…あの人は……」
「ああ、銀さんなら…」
「怪我で動けない」と言おうとしたお妙であったが、
「ここにいるぜ」
起きたところなのか、銀時は壁に背中をつける。
「おう、入れや。 来ると思ったぜ」
場所は変わり、鬼兵隊の船では、
「こってりやられてきましたね。 紅桜を無断で持ち去ったあげく、更に深手を負って逃げ帰って来るとは…。 腹を切る覚悟はできてますよね、岡田さん?」
怒りのこもった声を発しながら、武市は視線を似蔵へと向ける。
彼等の視点から見れば、似蔵の行いは組織の秩序を乱す行為。
武市が怒らないのも無理もない。
そんな彼に対し、似蔵は平然と答えたのである。
「片腕を落とされても、コイツを持ち帰った勤勉さだけは評価してもらいたいよ。 コイツにも良い経験になったと思うんだがね」
「しかし岡田氏! お主の行動がキッカケで、幕府に紅桜の存在を知られたらどうするでござったか?」
上半身裸で黒い
顎髯を生やした男――“黒”のライダーがそう言うと、また子もそれに同意するのだった。
「最近のアンタの行動は目に余るんスよ。 実際に坂田銀時とやり合った時、真選組の連中もいたんでしょ? アンタ、正直言って晋助様の邪魔なんスよ。 しかも桂の次に坂田銀時? 晋助様を刺激するような連中を狙って、一体何がやりたいんスか? アンタ、自分が強くなったと思ってんの? 勘違いすんじゃないよ。 アンタがあの二人に勝てたのも、全部紅桜のおかげ――」
呆れるまた子であったが、まさにその時である。
「がっ!?」
シュルルル!と紅桜を持った似蔵の左腕から触手が生え、それがまた子の首に巻き付いたのだ。
「おっと、悪く思わないでくれよ? 最近は浸食が進んでるみたいでね…俺の体をもう、自分のものだと思ってるようだ。 俺への言動は気を着けた方が良いよ?」
バタンと落とされたまた子は、「ゲホッ! ゲホッ!」と嗚咽し、コレを見た武市と“黒”のライダーが恐怖する。
「お、岡田さん…」
「……どうにも邪魔でねェ。 俺達ァ、あの人とこの腐った国でひと暴れしてやろうと集まった輩だ。 言わば伝説になろうとしてるわけじゃないかィ。それをいつまでも後ろでキラキラとねェ」
そこまで言うと似蔵は、その盲目の目を強く見開きながら言い放つ。
「目障りなんだよ、邪魔なんだよアイツ等が。 そろそろ古い伝説には朽ちてもらって、その上に新しい伝説を打ち建てる時じゃないかィ? あの人の隣にいるのは、もうアイツ等じゃない。 俺達なんだよ」
そんな中で高杉は、とある一室で誰かと顔を合わせていたのであった。
果たして、その人物とは!?
その頃の万事屋では、銀時達が鉄子と顔を合わせていた。
「本当の事を話しに来たんだろ? この期に及んで、妖刀だったとかはナシだぜ? ありゃ、なんだ? 誰が作ったんだ、あの化物」
銀時に問われた鉄子は、遂に真実を語ってくれたのだ。
「……紅桜とは、私の父が打った紅桜を雛型に作られた、対戦艦用
機械機動兵器」
「兵器だと?」
紅桜の正体を知り、ユーリも翔太郎も内心から驚きを隠せなかった。
「『
電魄』と呼ばれる人工知能を有し、使用者に寄生することでその身体をも操る。 戦闘の経緯をデータ化し学習を積むことでその能力を向上させていく、まさに生きた刀……」
「何それ? 寄生獣じゃん!? その内、刀が喋り出すんじゃないの!? 「私はミギーです」って名乗り出るんじゃないの!?」
「銀さん、ちょっと黙っててくれ」
「あんなものを作れるのは、江戸には1人しかいない」
鉄子は札束の入った封筒を置き、頭を深く下げながら叫んだ。
「頼む、兄者を止めてくれ! 連中は…高杉は…アレを使って、江戸を火の海にするつもりなんだ」