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Fate/Silver or Heart 第八訓:反撃の雨
作者:亀鳥虎龍   2018/01/12(金) 23:19公開   ID:L6TukelU0BA
 鬼兵隊の船にある一室。

この部屋には、大量の紅桜を製造するカプセルが多数もあった。

室内には高杉と鉄矢だけがおり、二人がこんな会話をしている。

「酔狂な話しじゃねぇか。 大砲ブッ放してドンパチやる時代に、こんな刀を作るたァ」

「そいつで幕府を転覆するなどと大法螺吹く貴殿も、充分酔狂と思うがな!!」

「法螺を実現させた英雄は、英傑と言われるのさ。 俺は出来ねぇ法螺は吹かねぇ。 しかし流石は稀代の刀工、村田仁鉄が1人息子…まさかこんな代物を作り出しちまうたァ。 “鳶が鷹を生む”とは聞いたことがあるが、鷹が龍を生んだか。 侍も剣も終わっちゃいねぇことを、奴等に思い知らせてやろうじゃねぇか」

不敵な笑みを浮かべる高杉に、鉄矢は何時もの大声で叫ぶ。

「貴殿らが何を企み何を成そうとしているかなど興味はない! 刀匠はただ、斬れる刀を作るのみ! 私に言える事はただ一つ…」

そしてカプセルの一つに手を置き、ハッキリとこう言った。

「この紅桜に、斬れぬものはない!!」





―第八訓:反撃の雨―





 江戸の何処かにある、名のある料亭。

エリザベスと合流した新八達は、桂の仲間達と接触していた。

「高杉晋助……それが、桂さんの失踪と岡田似蔵に関わる重要人物だと?」

新八の問いに対し、浪士達も知っている情報を伝える。

「俺達も桂さんを探すうちに、色々調べたんだが…」

「まさか俺達と同じ、攘夷志士の仕業だったとはな…」

「しかも高杉晋助といやぁ、桂さんと銀時殿と共に攘夷戦争を戦った盟友だ。 それが何で……」

「桂さんは最近、武力による攘夷を捨て、別の道を考えになられた。 嘗ての仲間の生き方に、高杉は苛立ちを感じたんだろう」

岡田似蔵のバックに高杉がいる――そう感じた浪士達が、一斉に立ち上がった。

「何にせよ、このまま黙ってはいられん!」

「エリザベスさん! 我々も出動しましょう!」

「桂さんの仇を! 高杉の首を取りましょう!」

『落ち着け!』

エリザベスが仲間達をなだめる最中、新八とランサーは地図の示した場所へと向かったのである。





 場所は変わり、万事屋の事務所では、

「成程、高杉がねぇ……。 事情は知らんが、オメェの兄ちゃん、とんでもねーことに関わってるらしいな。 で? 俺はさしずめダシに使われちまったわけか?」

お妙が出してくれたお茶を啜りながら、銀時はコレまでの状況を簡潔的に整理した。

「妖刀を捜せってのも、要はその妖刀に俺の血を吸わせる為だったんだろ。 それとも俺に恨みをもつ似蔵に頼まれたのか……いや、その両方か」

「………」

「でも、ヒデェ話しだよな。 話を聞く限り、オメェは全てを知っていたんだろ? 知っていて、何も言わなかった。そのせいで俺や仲間達が重傷を負わされたのに、そこへ今さら兄ちゃんを止めてくれってな。 オメェのツラの皮はタウンページですか?」

「いや、例え方が分かりにくい」

最後の台詞にツッコミを入れたユーリだったが、鉄子はようやく口を開く。

「……スマン、返す言葉もない。 アンタの言う通り、全部知ってたよ。 だが…事が露見すれば兄者はただではすむまいと…今まで誰にも言えんかった」

「大層兄思いの妹だね。 兄ちゃんが人殺しに加担してるってのに、見て見ぬフリかい?」

「銀さん!」

今のは言い過ぎだと思い、お妙はすぐに窘めるが、鉄子も反論の資格がないのを自覚している為、甘んじてそれを受け入れた。

「……刀なんぞ、所詮は人斬り包丁。どんなに精魂込めて打とうが、使う相手は選べん──死んだ父がよく言っていた、私たちの身体に染みついている言葉だ」

死んだ父・仁鉄の言葉を口にしながら、鉄子は兄の事を話し始める。

「兄者は刀を作ることしか頭にないバカだ。父を超えようといつも必死に鉄を打っていた」

彼女の脳裏に思い浮かぶのは、父が亡くなって鍛冶屋を継ぎ、ガムシャラに鉄を打っていた鉄矢の姿。

「やがて、より大きな力を求めて機械からくりまで研究しだした。 妙な連中を付き合いだしたのはその頃だ。 連中がよからぬ輩だということは薄々勘づいてはいたが、私は止めなかった。 私たちは何も考えずに刀を打っていればいい。 それが私達の仕事なんだって……」

兄を止められる機会何度かあった。

しかし鉄子はそれを見て見ぬフリをし、自分たちは刀を打っていればいいと言い訳をして、目をそらし続けていた。

「分かってたんだ。人斬り包丁だって。 あんなのもの、ただの人殺しの道具だって、わかってるんだ。 なのに……悔しくて仕方ない」

語るに連れて、鉄子の目元から涙が零れる。

兄がした事は、決して許される事ではない。

しかし、妹だから知っている。

兄がどんなに努力していたのか。

“父を超えたい”という願いが、兄にとってどれだけ大きな目標なのかも。

「兄者が必死に作ったあの刀を…あんなことに使われるのは悔しくて仕方ない……でももう、事は私1人じゃ、止められない所まで来てしまった。 どうしていいか分からないんだ…私はどうしたら……」

「………」

今まで無言だった銀時であったが、ようやく口を開いた。

「どうしたらいいか分かんねぇのは、俺も同じだよ。 こっちはこんな怪我するは、ツレがやられるわで、頭ん中がめちゃくちゃなんだよ」

封筒を彼女に返すように投げ落とすと、そのまま寝室へと向かう。

「ほら、こんな慰謝料もいらねぇから、とっとと帰ってくれや。 もう、痛いのはゴメンなんだよ」

そんな彼の背中を見て、誰もが切ない気持になってしまった。





 その頃、港の方では…、

「おい、オマエ! 見ない顔だな?」

一人の浪人が、船に向かう青年に声をかける。

「お、俺だよ! 俺俺!」

「ん? ……あっ、お前か!?」

「そうそう、俺!」

「悪い悪い!」

反射的に謝り、浪人が去っていく。

青年は再び歩き出すが、再び浪人に声をかけられる。

「おい、オマエ…どこのもんだ?」

「お、俺だよ! 俺俺!」

「ん? あ、お前か!?」

「そうそう」

「ゴメンゴメン!」

浪人が去った後、青年が再び船へと歩いて行く。

『新八、案外この方法イケるんだな…』

「ええ、おじいちゃんお婆ちゃんが騙されるワケだ」

霊体化したランサーに声をかけられ、変装した新八も痛感したのであった。





 一方その頃、船の中では、

「いったぁ〜。 くそ、似蔵のヤツ、調子に乗りやがって」

締められた首をさすりながら、また子は廊下を歩いていた。

「(あの剣、本当に大丈夫なんだろうか? 嫌な予感が――)」

紅桜に対する不安を募らせるが、その時である。

「もっと持ってこいやぁ〜!」

「おかわり、持って来ぉい!」

「ん?」

通り過ぎようとした部屋から、聞き覚えのある声が聞こえ、

「――って、何やっとんじゃぁ!?」

中を覗いたら、とんでもない事になっていた。

ズズゥ!とラーメンを啜る神楽が、お椀を重ねるアーチャーが、箸を持つ手を動かすジュディスが、

「「おかわり!」」

「おかわりお願い」

どこから連れて来たのか、三人の女性とフードバトルを始めていたのだ。

「はい、神楽ちゃん! おかわり追加!」

「“白”のアーチャーさんもおかわり追加!」

「ジュディスちゃんも負けてない!」

というか、実況司会者までいるので、カオスな空間となっていた。

そんな状況を、武市と“黒”のライダーは微笑ましい顔で眺めている。

謎が謎を呼んでしまう。

「何やってるんスか!? このままじゃこの船にある食糧、全部食いつくされるッスよ!?」

「いや〜、この年頃の少女は、食べてる姿がプリティーでござるなぁ」

「そうですねぇ。 いや、流石に寂しい食事は良くないと思って、こんなふうにしちゃいました」

「おかわりアル!」

「あっ、神楽ちゃん。 もうおかわりなの?」

「デュフフフフ…。 食べる元気がまた、たまらないでござるなぁ〜」

「まったく、何で早く殺さないんスか?」

苛立つまた子に対し、武市は当然のように答える。

「何も情報も吐かせずに殺してどうするんです? それにねぇ、この年頃の少女は、あと2〜3年経てば一番輝く」

「全く、将来が楽しみでござるなぁ〜」

神楽の将来を楽しむ光景は、まさしく変態そのもの。

そんな変態二人に、また子も呆れるしかなかった。

「ロリコンもたいがいにして下さいよ、二人とも」

「ロリコンじゃありません、フェミニストです」

「そして拙者は紳士でござる」

「どうでもいいっスけど、このTVチャ○ピオン状態、どうにかして下さいよ!」

また子が怒鳴る中、武市は神楽の左肩や左足の事を指摘する。

「見て下さい。 昨夜、貴方に撃たれた傷が、一晩で完治されています。 それにあの尋常ならざる剛力、そして白い肌」

「水も弾く、もっちもちの肌でござる」

「お前等マジでいい加減にしろ!」

遂には汚物を見る目で見るまた子に、武市と“黒”のライダーが堂々と否定する。

「だから違ぇって言ってるでござる!」

「フェミニストと紳士だって言ってるじゃん、ただの子供好きの!」

「だから、それがロリコンだって言ってんだろうが!」

マジギレのまた子に対し、二人は呆れながら呟く。

「もう良いでござる。 今の来島氏には、何を言っても無駄でござるよバカ」

「オメェ等がバカだ」

「あれですよ。 これは、夜兎の特性と一致してると言ってるんですよ死ね」

「オメェ等が死ね」

罵り合う三人であったが、また子がすぐに話題を変えた。

「夜兎って、あの傭兵部族の『夜兎』ッスか? なにもん何スかね? 晋助様を殺しに来た、プロの殺し屋って事ッスか? 誰に雇われたんスかね?」

「「それが何を言っても、ヅラしか言わないんだヅラ」」

「それ、絶対に舐められてるんスよ。 見て下さい、こんなガキひと捻りで!」

また子は神楽の方へと近付くと、神楽は口から何かを飛ばす。

それは鳴門なるとで、見事にまた子の頬に密着した。

これにはまた子も遂に怒りが爆発し、銃を両手に構えたのだ。

「このガキィィィィィィ! ぶっ殺す!」

そんな彼女の暴走を、武市は背後から押さえる。

「まあまあ、あと2〜3年すれば、凄い事になるってこの子」

「止めないでください、武市変態!」

「先輩だから、変態じゃないから」

因みにラーメン勝負は、しばらく続くのだった。





 場所は戻って万事屋では、

「助かりました」

「んあ?」

「てっきり、引き受けるんじゃないかと思いましたよ」

布団で横になる銀時に、お妙が穏やかにそう言った。

「あの子には申し訳ありませんけど、その怪我じゃ無理ですよね」

「そうだなぁ〜」

「銀さん、あまり無理をしないでくださいね。 新ちゃんも神楽ちゃんも心配しますから」

「そうだなぁ〜」

「昔は銀さんもやんちゃしてましたけど、もうそんな年齢としじゃないですよね」

「しつけぇんだよ! どこにも行かねぇから、ジャンプ買って来い! 近所の駄菓子屋で売ってるから」

「はいはい」

お妙が外出した事を確認し、銀時はゆっくりと起き上がる。

「すまねぇな……俺だってやんちゃしたくねぇけど」





 依頼を断られ、事務所を後にした鉄子。

途中で人とぶつかり、封筒を落としてしまう。

拾おうとしたが、中から手紙がでてきたのだ。

『鍛冶屋で待ってろ。 万事屋』

「!!」

これを呼んだ鉄子は、急いで鍛冶屋へと戻った。





 場所は戻って万事屋では、

「いってぇ〜」

「まだ痛むかい?」

「まあな」

似蔵にやられた怪我が痛み、翔太郎はソファーで横になってしまう。

「どうするの? 翔太郎が戦えないんじゃ、Wへの変身は…」

「同感だ。 流石に怪我人を戦わせるわけにはいかねぇか」

カロルとライダーは不安を募らせるが、その時だった。

『クワー!』

「「へ?」」

突然の声に、二人は思わず振り返る。

そこには、恐竜のような小さなガジェットがデスクの上に立っており、

『クワー!』

驚異的な跳躍力で、フィリップの肩へと移動した。

ガジェットの名はファング。

仮面ライダーWの持つ“第7のガイアメモリ”だ。

「今回は、僕が戦う番だね」

「任せたぜ、相棒」

互いに軽く拳を当て、翔太郎とフィリップは信頼の確かめ合う。

「カッコイイ……」

「ゴールデンなコンビだ。 妬けるぜ」

そんな二人に、カロルとライダーは憧れを感じたのであった。

一方でネウロと弥子は、顔を合わせながら頷き合う。

「私達も行くんでしょ?」

「無論だ。 この『謎』はもう、我が輩の舌の上だ」





 その頃、隣の部屋では、

「――っつ」

一人だけとなったジークが、布団から起き上がった。

部屋を出ようとしたが、その時である。

「行くんですね」

「……!?」

背後からジャンヌが声をかけた。

「…すまない。 でも、このまま黙ってるワケにもいかない」

申し訳なさそうな顔をするジークに、彼女はゆっくりと近づく。

「ジークくんは頑固ですからね。 これと決めたら、絶対にやり遂げようとしますから」

「そうだな…自覚はある」

「できれば、私も行きたいんですが……」

もう私は、英霊ではない――そう言おうとしたジャンヌだが、ジークはある物を差し出す。

それは彼女が、自身にプレゼントしてくれたペンダントだ。

「預かってて欲しい。 それと……」

「え?」

「俺や皆の帰りを、信じて待っててくれ。 必ず帰って来る」

真っ直ぐな目で見つめるジークに、ジャンヌはペンダントを受け取った。

「貴方や皆に、主の御加護があらんことを」

「行って来る」

背を向け、ジークは部屋を後にする。

「必ず…必ず帰ってきてくださいね」

恋人の帰りを信じ、聖女は優しく微笑んだ。





 部屋を出たジークに、ユーリは不敵な笑みを見せた。

「ったく、お熱い仲なこった」

似蔵戦で負傷した右腕は、包帯で首に吊されている。

「貴方も行くのか? その腕で?」

「生憎、利き手は左なもんでね。 むしろ、連中には良いハンデだ」

「そうか」

「準備は良いかい?」

「じゃあ、行こうか」

「ゴールデンなリベンジタイムだ」

ユーリ達が玄関まで向かうと、銀時が普段の服装で待っていた。

「行くぞ、オメェ等」

「おう」

「ああ」

「うん」

「勿論だ」

「行こう」

「フン、当然だ」

「行くぜ、大将」

彼等が外へと出る中、一枚の手紙が床に落ちる。

『私のお気に入りの傘、ちゃんと返して下さいね』

どうやらお妙には、銀時の考えはお見通しだったようだ。

うさぎの柄がプリントされた傘を差し、銀髪の侍は仲間達と歩いて行く。

「(ったく、かわいくねーヤツ)」

そんな彼等の姿を、お妙は万事屋の応接室の窓から覗きこみ、

「(バカなひと)」

思った通り――と考えながら、彼女は溜息を吐くのだった。


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■作者からのメッセージ
 紅桜編は原作と映画版の内容をごちゃ混ぜにしてますので、少しカオスになってます。

銀時「まあ、面白いかどうかは読者次第だ」
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