ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

Fate/Silver or Heart 第十訓:見参! 宇宙一バカな侍!!
作者:亀鳥虎龍   2018/01/16(火) 19:14公開   ID:L6TukelU0BA
 鬼兵隊の船では……、

「うおぉぉぉぉ!」

「おおおおお!」

真選組と鬼兵隊が、壮絶な戦いを繰り広げてた。

「おらぁ!」

当然、バーサーカーも浪士達を倒していく。

するとその時であった。

「まさか、“白”のサーヴァントが現れるなんてね……」

緑の衣に身を包んだ中年男性が、面倒そうな顔でため息をする。

「この気配、サーヴァントだな?」

「そうそう。 オジサンは“黒”のランサーをやってる、ヘクトールってもんだ」

「ヘクトール…トロイア戦争で有名な、あのギリシアの英雄」

「そういうこと。 悪いけど、アンタ達は消えて貰うよ。 真っ向勝負は得意じゃないけど」

槍を構える“黒”のランサーに、バーサーカーも剣を構えた。

「“白”のバーサーカー。 真選組副長代理・土方歳三!……いざ、参る!」

「はぁ、疲れるな……」

そう思いながらも、“黒”のランサーは槍を振るうのである。





―見参! 宇宙一バカな侍!!―





 浪士達を切り伏せ、土方と沖田は足を進める。

しかし、その時であった。

「「「「ぐあぁぁぁぁぁ!」」」」

「!?」

隊士達の数人が、船の向こう側へと吹き飛ばされたのだ。

吹き飛ばした張本人は、ゆっくりと姿を現す。

「岡田……」

「似蔵……」

その正体は、一連の辻斬りの犯人にして盲目の剣士、岡田似蔵であった。

「ようこそいらっしゃった、幕府の犬ども」

不敵を見せる似蔵に、土方は鋭い眼つきで睨む。

「御用改めである、岡田似蔵。 江戸市中の辻斬りの罪により、神妙にお縄につけ」

出方を窺うつもりの土方であったが、沖田が迷いなくバズーカを放った。

「何してんだぁぁぁ!?」

「なにって、面倒だから早めに済ませようと思って」

「だからって撃つ奴があるかぁぁぁ!」

しかし、その時である。

「フン!」

似蔵は紅桜で、バズーカの砲弾を真っ二つにしたのだ。

「なにィ!?」

「ありゃもう、剣なんて呼べるもんじゃねぇや」

これには二人も、驚愕を禁じ得なかった。

飛んで来た砲弾を避けるならまだ良い。

しかし真っ二つに斬るというのは、予想できなかったのだ。

「おやおや? 天下の真選組が、この程度かい?」

「仕方ねぇ……副長、ここは」

「あん?」

挑発するかのように笑う似蔵に、沖田はある行動にでたのである。

「どうぞ。 斬るなり斬るなり」

それはなんと、土方を鉄パイプに縛り付けたのだ。

更に簡潔的に言えば、彼を囮にしたのである。

常に日頃から土方抹殺を企てる彼にとって、絶好のチャンスだと感じたのだろう。

“サディスティック星の王子”という称号がお似合いの見事なサディストぶりだった。

「おい、待て総悟! テメェェェェェ!!」

怒りの叫びを上げる土方であったが、沖田はスタコラ走り去っていく。

「たかだか警察の犬が、高杉晋助を捕えようなんざねぇ」

そして似蔵は、紅桜の刃を土方に向けた、

「嘘でしょぉぉぉぉぉぉ!?」

襲いかかる似蔵を前に、彼はこの窮地を脱する事が出来るのだろうか!?

果たして、その運命はいかに!?






 その頃、セイバーはというと、

「はぁぁぁ!」

鬼兵隊の浪士達を、容赦なく斬り伏せていく。

本家新撰組の一番隊組長だけに、その剣捌きは人智を超えている。

「気を緩めるな! 刀で斬るな! 体で斬れ!」

「「「は、はい!」」」

彼女の剣幕に驚き、隊士達も敵へと向かっていく。

「ぐあぁぁぁ!」

そんな中、隊士の何人かが負傷を負ってしまう。

「!?」

即座にセイバーは、相手の姿を捉える。

呪わしい異形の顔を、髑髏仮面で隠した怪人。

和装の多い鬼兵隊の中で、唯一の燕尾服姿。

顔の半分は整った美顔であるが、両手の指先は鋭い爪。

「我が名はファントム・オブ・ジ・オペラ。 “黒”のバーサーカーとして召喚された」

「言葉が通じそうですね。 鬼兵隊の者なら、貴方を斬る!」

「おお〜、我が歌姫クリスティーヌのため、貴方には消えて貰おう」

「宣言撤回、やっぱり言葉が通じないようです。 “白”のセイバー。 真選組一番隊特別副官・沖田総司……いざ、参る!」

刀を構え、眼前の敵を斬る。

セイバー踏み込み、“黒”のバーサーカーへと立ち向かった。





 一方のアサシンは、浪人達を斬り伏せ、

「ほう、アーチャーが相手とはな」

眼前の相手を前に笑ってしまう。

蝶をモチーフとした近現代衣装を纏ったアラフィフ紳士。

肩には棺桶の様なものを背負っており、カメレオンの持ち手が特徴なステッキを握っている。

「キミが、“白”のサーヴァントかね?」

「如何にも。 “白”のアサシンにして、真選組局長代理の佐々木小次郎だ」

「ほう、あの有名な剣豪とは。 しかし私はアーチャーだ。 悪いが、飛び道具は使わせて貰うよ」

「構わん。 聖杯戦争ならば、当然であろうよ」

「“黒”のアーチャー、ジェームズ・モリアーティ」

「“白”のアサシン、佐々木小次郎」

「「参る!」」

今ここに、弓使いと暗殺者の戦いが始まろうとしていた。





 鬼兵隊の船が停泊していた港では、

「オイオイ。 とっくに始まってんぞ? 俺達が来る前に、カタが着くんじゃねぇか?」

接舷された二隻の船を見上げながら、銀時がそんな事を言ったのだ。

しかし、鉄子は深刻な顔で答えた。

「使い込んだ紅桜は、一振りで戦艦10隻分の戦闘力を有する。 真選組でも止めるのは無理だ」

「かめはめ波じゃねぇか!? それともスペシウム光線? どれくらいの破壊力?」

「どちらも見た事がないから、比較のしようがない。 とりあえず、二人にはコレを」

「「ん?」」

鉄子は布に包まれたものを二つ差し出し、銀時とジークに手渡す。

布を取ると、中から出たのは刀だった。

一度鞘から抜き、ジークはその刃の出来に心を奪われる。

柄が青く、鍔の装飾が百合の花を模していた。

「これは?」

「私の打った刀だ。 丸腰で紅桜と戦えない。 使ってくれ」

「ありがとう、使わせて貰う」

刃を鞘に納め、ジークは刀を腰に差す。

一方の銀時は、ジト目で自身の刀を見ている。

鍛冶師の娘だけあって、出来栄えはとても良い方だ。

ただし、鍔の装飾が気になった。

体長の長い龍が、とぐろ巻きになっている。

しかし、如何にもにしか見えない。

「なあ、刀は良いとして、なにコレ。 この鍔の装飾。 ウン――」

何かを言おうとしたが、鉄子の鉄拳が飛んで来た。

殴られた銀時も、「コォォォォォ!」と叫んでしまう。

「ウンコではない! とぐろを巻いた龍だ!」

「テメェ! 俺がウンコと言う前にウンコと言ったということは、自分でも薄々ウンコだと思ってたってことじゃねぇか!」

「しかし、どうやってあんな高さへ行けば」

「兄妹そろって人の話聞かない感じ!? シカトブラザース!?」

「間に合いました!」

そう言って何者かが駆け寄って来る。

長い髪に露出度の高い修道服、手には十字架を意識した長い杖。

志村家で居候になっている女性、ルーラーであった。






「ルーラー?」

銀時が彼女の姿を目にすると、ある部分に目がいってしまう。

それは露出度が高過ぎる修道服。

特に胸元が見えている。

「え、何その格好? コスプレ?」

「フン!」

流石に癇に障ったのか、ルーラーの拳が銀時の顔面を捉えた。

「んが!」

「これは立派な聖衣! 清く正しい聖女の服よ! 次コスプレって言ったら、実力行使で黙らせる」

「いや、もうしましたよね?」

殴られた顔を抑えながら、銀時は青ざめてしまう。

「しかし、何故貴方がここに?」

ジークが尋ねると、ルーラーは当然のように答える。

「“黒”の陣営が、この街で起きてる事件に関わってると知り、それを阻止しに来たんです。 聖杯戦争のルールから外れた行動は、完全に規則違反ですから」

「でもよ、あんな高さまで行けんのか?」

ユーリがニバンボシを肩に置きながら、視線を彼女へと向けた。

「ご安心を。 私には飛行能力はありませんが、あの子なら可能です」

「あの子?」

ルーラーは杖を両手で握り、祈るように目を閉じる。

「愛を知らない哀しき竜……ここに。 星のように! 『愛知らぬ哀しき竜よタラスク』!」

そして甲羅に凶悪な顔の生物が、彼女の眼前に現れた。

その名は、邪竜『タラスク』。

「タラスク…。 まさかルーラー、貴方の真名は『聖女マルタ』」

コレを見たジークが、即座にルーラーの真名に気付いた。

マルタ……ベタニアという町で生まれ育った町娘であり、悪竜タラスクを鎮めた一世紀の聖女。

「あの、この子…飛べるのか?」

鉄子が問うと、ルーラーも「はい」と答える。

「手足や頭を甲羅に引っこめると、回転しながら空へ飛びます」

すると銀時は、タラスクを見ながら、

「……なんというか、この子あれだよね? ガメ――」

「フン!」

何かを言おうとした瞬間、ルーラーの鉄拳が炸裂。

殴られた銀時も、「ラァァァァァァ!」と叫んでしまう。

「ガメラじゃないわ! この子はタラスクよ!」

「テメェ! 俺がガメラと言う前にガメラと言ったということは、自分でも薄々ガメラだと思ってたってことじゃねぇか!」

鉄子の時と同じパターンとなり、ユーリ達は深く呆れてしまった。





 ルーラーと銀時がいがみ合う中、

「銀の字!」

今度は平賀源外が現れたのである。

「爺さん?」

「さっきはすまなかったな。 コイツを使え」

そう言って彼の脇には、白い大きな翼のような乗り物が置かれていた。

翼の長さは約三メートル、洗練された流線形の翼は、どう見てもあの宮○アニメに出て来るアレである。

しかも横には、青い衣を纏った少女が立っていた。

どう見ても、あの『風の谷』で有名なあの人だ。

「なっ!?」 

「えぇぇぇぇぇ!?」

「「「………」」」

コレを見た全員が驚き、銀時ですら驚愕の叫びを上げてしまう。

因みにネウロは、ドSな笑みを見せている。

「こいつも修理品なんじゃが、お客さんが是非とも貸してくるそうじゃ」

「どうぞ」

「ここ風の谷じゃないけど、飛べますコレ?」

不安な気持ちになる銀時であったが、他も同じ気持ちであった。

「ほ、ホントに良いのか!?」

「どう見ても踏み込んじゃいけねぇ領域に踏み入れてねぇか!?」

「明らかにブラックな予感がするぜ!?」

思わず鉄子とユーリ、そしてライダーが焦った顔で源外に詰め寄った。

「絶妙じゃろ? 絶妙に、アレな感じじゃろう?」

王蟲オームが怒り出す前に早く!」

「甘えます!」

遂に決心した銀時は、翼の上へと乗る。

「さあ、行くのじゃ! 銀の字!」

源外が叫び、少女は微笑みを見せた。

そして銀時は、彼女に感謝の言葉をかける。

「ありがとう、ナカさん!」

「ホントに、甘えて良いのだろうか?」

流石のジークも、冷や汗が流れるほど不安になったのだった。






 その頃、新八達はというと…、

「な!?」

「何だこりゃ!?」

船内の工場区画に辿りついていた。

そこには紅桜が量産されたカプセルが、大量に設置されていたのだ。

「紅桜が……こんなにたくさん!?」

驚きを隠せない一行であったが、まさにその時であった。

「おい」

「!?」

突然の声に、全員がすぐさま振り返る。

「そこは坊っちゃん嬢ちゃんの来るところじゃねぇぜ?」

左目を包帯で隠し、紫色の着流し姿の優男。

桂の仲間達から得た情報、そして神楽から聞いた情報と一致する風貌。

彼こそが、鬼兵隊総督――高杉晋助だ。

「お前が、高杉晋助! なんで銀さんを狙った!? 嘗ての仲間の銀さんを!」

「銀ちゃん!? 銀ちゃんに何があったアルか!?」

「ほう、お前等みたいなガキを連れてるのか、銀時の奴は」

ゆっくり歩み寄る高杉に、神楽が拳を構える。

「お前、銀ちゃんに何したアルか!? 答えによっては、その命貰うアル!」

「じゃあお前等は、その仲良し銀ちゃんと、天国で暮らすんだな」

まさにその瞬間だった。

キッ!と睨んだ高杉から、凄まじい気迫が放たれたのだ。

この気迫を受けた神楽は、背筋が凍るほどの恐怖を感じ取る。

一人だと思って侮っていた。

サーヴァントであるアーチャーやランサーも、冷や汗が流れていたからだ。

ゆっくりと歩み寄って来る高杉を前に、誰もが動く事が出来なかった。

しかし、その時である。

「!?」

上から現れた何者かを目にし、高杉は即座に下がった。

その正体は、桂の相棒のエリザベスと、

「ソコマデダ、高杉晋助」

エジプト神話に出て来る謎の神『メジェド』みたいな誰かである。

「エリザベス! 来てくれたんだね!」

『ここは任せろ!』

「我々ニ任セテ、逃ゲナサイ」

突然の助っ人に安堵した新八であったが、まさにその時だ。

ズバン!と、エリザベスの頭部が斬り落とされた。

「エリィィィィィ!」

「エリザベスゥゥゥゥ!」

「「「っ!?」」」

神楽と新八は叫び、アーチャーとランサーとジュディスは驚愕する。

「おいおい、何時からここは仮装パーティになったんだ? ガキの来て良いところじゃねぇぞ――」

だが頭部を失ったエリザベスから、何者かが斬りかかったのだ。

高杉は斬られて後ろへ退ってしまうが、致命傷にはいたらなかった。

「ガキじゃない、桂だ!」

そして現れたのは、死んだと思われていた桂小太郎である。

「そして私は、ファラオです!」

因みにメジェドの正体は、キャスターのニトクリスであった。





「ヅラ!?」

「変な髪型!」

死んだと思っていた桂に、神楽も新八も驚く。

髪が短くなっている以外は、普段と変わっていなかった。

「晋助様!」

「ほう、コレは驚きました。 まさかこんなところで、死者とお会いできるとは」

後から来たまた子と武市も驚き、桂は当然のようにこう言ったのだ。

「この世に未練があったのでな、黄泉から戻ってきたのだ。 嘗ての仲間に斬られたとあれば、死にたくても死にきれん。 なあ高杉、お前もそうだろ?」

視線を向けられた高杉であるが、不敵な笑みを浮かべている。

「クク…仲間ねェ。まだそう思ってくれていたとは、ありがた迷惑な話だ」

その懐からは、1冊の本が覗いていた。

それが先ほどの一太刀を受け止めた所為か、表紙部分が切り裂かれている。

「まだそんなものを持っていたか。 お互いバカらしい」

そして桂も、懐から同じ表紙の本を見せた。

同じく、表紙部分が切り裂かれている。

「お前もそいつのお陰で、紅桜から助かったのかい? 思い出は大切にするもんだねぇ」

「いや、貴様の無能な部下のお陰だ」

そう言って桂の脳裏には、自身が似蔵に斬られた時の光景が浮かぶ。

「余程興奮していたのだろう。 ロクに生死を確認せずに、髪だけ切り取って去って行った。 大した人斬りだ」

「逃げ回るだけじゃなく、死んだフリまで上手くなったらしい。 で? わざわざ復讐に来たわけかィ。 奴を差し向けたのは俺だと?」

「アレが貴様の差し金だろうが、奴の独断だろうが関係ない。 だが、お前のやろうとしていること、黙って見過ごすワケにもいくまい」

すると桂は、新八達の方へと振り向く。

「お前達。 なにも知らせず、こんなところまで巻き込んですまなかった。 今回の件は、敵が俺個人を狙ったものかと思い、内情を知るには死んだ事にすれば良いと考えたんだ」

回想場面には、エリザベスに化けた桂と、メジェド様に化けたキャスターの姿が浮かんだのだが、

「返って目立つでしょ!」

あまりにもシュール過ぎるものだったので、新八にもツッコミを入れられてしまう。

「ククク…。 悪いなヅラ。 来て貰って申し訳ないが、俺の野望はこんなとこでは終わらないんでな」

それだけ言い残すと、高杉は即座に立ち去る。

「待て高杉! 話し合おう、話せば分かる!」

追いかけようとした桂であったが、

「追わせると思うか?」

「ヅラ氏。 拙者達を忘れては困るでござるよ」

また子のサーヴァントである“黒”のアサシン、武市のサーヴァントである“黒”のライダーが行く手を阻んだ。

「ここを通りたければ、拙者達をたお――」

ヒニルな事を言おうとした“黒”のライダーであったが、

「オラァァァ!」

ドガッ!と、ランサーの蹴りを顔面に喰らった。

「ブヘェ!」

「なにやってんだあのアホ!」

これには“黒”のアサシンもツッコミを入れてしまうが、アーチャーが斬りかかって来たのだ。

「!?」

すぐさま短刀で防ぐが、アーチャーとランサーとジュディスが叫んだのである。

「ヅラ! ここはワシ等が引き受けるぞ!」

「テメェは自分のやる事を済ませろ!」

「早くしなさい!」

「何っ!?」

驚く桂であったが、新八が刀を構えながら叫んだ。

「高杉さんとしっかり話し合ってください! 帰ったら色々と奢って貰いますからね」

「しかしお前達に何かあったら、俺は銀時に合わせる顔がない!」

彼等の身を案じた桂に、今度は神楽が叫ぶ。

「なに言ってるアルか! その髪型見せて笑って貰うネ! ただ、今回は完全に騙されたから、帰ったらフルボッコな。 それと酢昆布一年分!」

「……すまない! いくぞ、ニトクリス殿」

「はい!」

新八達に任せ、彼はキャスターと共に高杉の後を追うのだった。





 一方の甲板では、

「くっ! オラ!」

「フン!」

土方と似蔵の激戦が行われていた。

沖田に縛られた彼であったが、幸いにも縄の部分だけが斬られたのである。

お陰で難を逃れた土方は、心おきなく刀を振るえたからだ。

刃と刃のぶつかり合い、飛び散る火花。

「中々やるねぇ。 縛られたまま殺しておけばよかったよ」

「真選組、鬼の副長を舐めんじゃねぇ!」

勝負は互角に見えるが、似蔵の方が明らかに上であった。

一撃一撃が重くなり、受け止めるだけで痺れるような衝撃を感じてしまう。

流石の土方も、攻撃を受け止めるのが精一杯だったのだ。






 場所は戻って船内の工場区画。

「悪いがフェミニストといえど、鬼になることもあります。 綿密にたてた計画…コレを台無しにされるのが、一番腹立つ。 それが、フェミニストです」

「それ、フェミニスト関係ないっすよ」

刀を抜く武市と、銃を握るまた子。

そんな彼等に対し、新八と神楽も戦闘態勢に入る。

「読めませんね…この船にあって貴方達だけが異質。 攘夷浪士でもなければ、桂の配下でもない様子…。 しかし、真選組の手先でもない。 勿論、私達の味方でもない」

「なんなんスかお前ら! 一体何者なんスか!! 何が目的スか! 一体誰の回し者スか!?」

武市は新八達の存在に疑問を抱き、また子は叫びながら問いかける。

この問いに対し、二人はニカッと笑いながら答えた。

「「宇宙一バカな侍だ! コノヤロー!」」






 屋根の方まで追い込まれ、息が上がって来た土方。

「ククククク……」

彼を追い詰め、ゆっくりと歩み寄る似蔵。

「ん?」

しかしその時、彼の嗅覚が何かを嗅ぎ取った。

嗅ぎ取った方向へと顔を向け、土方も同じ方向へと顔を向ける。

そこには、一人の侍が歩み寄って来た。

雨上がりの曇り空から、暖かな陽光が差し込まれ、

「ちわ〜」

彼は緩みきった笑顔を見せた。

宇宙一バカな侍――坂田銀時が、遅れてやって来たのだ。

その後ろには、鉄子とライダーが立っている。

「テメェ……」

「そいつは俺のお客さんだ。 ここは任せて、お前は大将首を取りに行け」

「しかしテメェ、そんな身体で…」

「お互い様だろ。 警察は警察らしく、自分の仕事を全うしろぃ!」

「……死ぬなよ、万事屋!」

それだけ言い残すと、土方はその場を銀時に任せた。

するとすれ違うように、鉄矢が彼等の前に現れた。

恐らく、紅桜の戦闘データを収集する為であろう。

ライダーに護られる形で、鉄子は兄と正面から向き合った。

そんな中で銀時は、彼女から託された刀を鞘から引き抜く。

今まさに、紅桜との戦いが始まろうとしていた!


■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
 真選組における、“白”のセイバー達の役職。

セイバー→一番隊特別副官

バーサーカー→副長代理

アサシン→局長代理

銀時「色々と危なくない?」
テキストサイズ:15k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.